Gunma Life
おぢさんの雑学辞書 更新; 2006/ 2/24
ことば ブロークン・ウィンドウズ理論 JA−B001
区分 犯罪

ブロークン・ウィンドウズ理論

誰の理論?;
ブロークン・ウィンドウズ理論は米国ルドガーズ大学の刑事司法学者のジョージ・ケリング教授の理論。ケリング教授は世界中の警察活動を調査・分析してブロークン・ウィンドウズ理論に至った。

理論の内容は?;
犯罪学上の理論で、『犯罪者は、窓が割れたりしているのを放置している場所、落書きがされたりしているのに放置したままの場所、を司直や世間の関心が向かない場所、言い換えれば、犯罪者の居心地の良い場所という安心感を与える場所と感じる。』という理論で、『そのような場所では、(1)最初の段階では落書きや窓割が増加する、(2)次にはひったくりや恐喝などが発生する、(3)更に放置すると、麻薬の売買やレイプ等が発生する、(4)更に放置すると麻薬常習者がたむろしたり強盗事件が多発し、(5)更に放置すると殺人事件が発生する』と、いうものである。つまり、法が及ぶ地域と、法が及ばない地域(無法地帯)の分かれ目を表す言葉が『ブロークン・ウィンドウズ(窓割り)』なのである。

理論の元になった実験;
1969年にスタンフォード大学のフリップ・ジンバルド教授(心理学者)によってカリフォルニア州の住宅街に自動車を放置する方法で行なわれた。
(1)ナンバープレートを外し、ボンネットを空けたままにしたが、最初の1週間は何も無かった。
(2)そこで、フロント・ガラスを壊してみた。すると、すぐにバッテリーが持ち去られ、その後、多くの部品が持ち去られてしまった。
(3)2週間が終わる頃には、落書きが書かれ、ほとんどの窓ガラスが割られ、車は完全に破壊されてしまった。

実験の理論付け;
ゲリング教授は、この実験を以下のように理論付けたのである。そのどのステップにおいても『自分だけではない』と言う気持ちを犯罪者に与えており、そのことが以下のステップを徐々に進めてしまい犯罪が増加してしまうのである。
(1)落書きが放置されていると、小さな行動に対しても罪悪感が薄れやすくなる。
(2)軽犯罪が多発し、治安が悪くなる。
(3)この街は、警察の監視がない場所だと判断され、より凶悪な犯罪者が寄り付く。
(4)犯罪がエスカレートし、凶悪事件が発生する。
そして、整理したのが『ブロークン・ウィンドウズ理論』なのである。

ニューヨーク市の状況変化
19970年代以前;
1970年以前のニューヨーク市ではスラム街などは無かったのだが、大都市には職の無い人々や移民の人達があつまってしまい、特定地域(例えば、家賃が安い場所)のアパートなどに住み始めると、その地域に住んでいた高収入の人々が環境悪化をきらって他の地域に移住してしまい、空き部屋には更に貧困者達が流れ込んできた。しかし、その人々の圧倒的多数は、勤勉に働く人々ではあったが、所得金額はニューヨーク市民の中では非常に少ない人々であった。

1970−1980年;
そのような状態が10年単位で継続してしまうと、その地域一体は、平均収入が非常に低くまた定職に付かない人が多くなり街がスラム化していき、子供達の環境にも悪影響を与え始め、子供たちは一部の大人が行なう悪事の手伝いをして金を稼いだり、グループの存在や縄張りを主張するマークを落書きし始めたり、グループ同士の争いや殺人を行なうようになった。1970年頃からニューヨーク市は犯罪が増加してしまい、『危険な街』になっていった。
そして・・・・

1980年代;
スラム街と言われる地域が出来てしまい、建物にはスプレーで落書きがされてしまい、窓ガラスは割られ、盗難されたと思われる自動車が放置されっぱなにになり、麻薬の売買、強姦、強盗、殺人が多発した。地下鉄でも、車体の内外もスプレーで落書きされ、一般の生活者は夜間には決して地下鉄に乗れない(危険で)ような状態であった。市の財政も圧迫しており、市の職員である警察官も削減されモチベーションも上がらなかった状態の中で、落書きや、窓割り、ひったくりの取り締まりには人が避けず、殺人事件など重大犯罪に捜査が集中していた。

1990年;
ニューヨーク市警が発表した年間の殺人時件数は、なんと2,245件を記録してしまった。この結果、ニューヨーク市は『アメリカ1番の犯罪都市』になってしまったのである。
ニューヨーク市交通局の実験
1980年代前半;
ニューヨーク市警は、犯罪の増加に頭を痛めていたが、重大事件から捜査をする方針を実施しており、殺人事件を中心に捜査していたが、増加する犯罪に対応できなかった。ニューヨーク市交通局でも、地下鉄の治安に悩みパトロールや警備強化の手を売っていたが治安の回復は行なわれず、地下鉄利用者数は年々減少し続けていた。

1984年の決心;
ニューヨーク市・交通局のデビッド・ガン局長は、ゲリング教授のアドバイスに従い150万ドルの費用を投じて治安回復プロジェクトを実施することとした。のだが、なんとゲリング教授は『その費用を使って、地下鉄の落書きを消す』と、発表したのだ。当時のニューヨーク市の地下鉄は、駅のホームから車両の外・内の総てが落書きで覆われていた。ニューヨーク市交通局の職員達は、落書き消しよりか犯罪者の取締りを優先させたほうが良いという意見が大多数であったが、ガン局長はゲリング教授のアイデアに従い、徹底してニューヨーク市の6000両の落書き消しの実施を決定した
ニューヨーク市交通局実験の成果
1989年;
ニューヨーク市交通局の地下鉄の落書き消し作業は徹底して行なわれた、5年後、ついにニューヨーク市交通局は、総ての地下鉄車両から『落書き』を消すのに成功したのであった。なんと、増加一方であった地下鉄車内での犯罪がこの年を境に減少に転じたのである。

1989年・第2弾発表;
そして、ゲリング教授は、ブロークン・ウィンドウズ理論の正しさに確信を持って、第2弾を発表した。その第2弾とは、なんと『地下鉄内の軽犯罪を取り締まる』ことであった。重大犯罪を取り締まるのではなくて、軽犯罪なのである。そして、ニューヨーク市交通局は、地下鉄内での、落書き行為、社内での喫煙、無賃乗車などの軽犯罪だけを徹底して取り締まったのである。

1994年;
第2弾の軽犯罪の取り締まりを実施した結果、凶悪犯罪が半分にまで減少したのである。
ニューヨーク市の治安維持へ
1994年ニューヨーク市の決心;
ニューヨーク市長に当選したジュリアーノ市長は、市交通局で成功した犯罪抑制対策を、ニューヨーク市警に導入する決定したのである。そして、徹底した落書きけしと軽犯罪の取締りを実行した結果、地下鉄と同じように犯罪発生件数が激減して、『犯罪都市』の汚名返上をすることが出来たのである。
日本・その現状
ところが今の日本では、まさにブロークン・ウィンドウズ理論で指摘されている街の環境悪化がどんどん進んでいる。第1段階であるスプレー落書きは新宿、渋谷を始めそこら中に見受けられて、なおかつ消されることもほとんど無い。第2段階の窓割り、痴漢行為、万引き、詐欺、引ったくりは、もう日本中で行なわれており、子供たちばかりでなく、主婦も、会社員も、公務員も、国会議員も、民生委員も、裁判官も、年金生活者もやっているのだ。そして、1部の地域では盗難自動車の部品やタイヤが盗まれて、何十台もがそのまま放置されている場所が出来始めている。集団コンパでそのまま集団強姦したり、ATMに盗撮器を仕掛けたカード、ATMを重機で破壊して金を強奪する事件、犯罪自動車から模造拳銃で撃たれたり、コンビニ強盗、自動車でのひき逃げ、保険金詐欺殺人、など、日本は犯罪野放しな状態になろうとしている。
日本・札幌市の挑戦
札幌中央署では、2001年にこの理論に基づいた犯罪対策を導入した。重大犯罪を優先的に取り締まっていたのを、軽犯罪を重点的に取り締まる方針に切り替えたのである。すすきの地区で徹底した違法駐車の取り締まりを行った結果、犯罪発生件数が12パーセント以上減少したという。
駐車違反、万引き、痴漢、禁煙指定地域での喫煙、などの取締りが凶悪犯罪の発生を防ぐのである。
 おぢさんの雑学辞書、 おたくな趣味、 ヘ戻る