
(外道竜神・作品感想)
「時間が一番残酷で・・・、優しい」
作品中の一言ですが、この一言がこの物語を表わしているといえるでしょう。3年の空白のため孝之への思いをよりどころにするしかない遙、そして、3年間ずっと付き添うことですでに孝之だけを見つめる水月。さらには、自分たちを裏切った主人公・孝之と水月への愛憎に苛まれる、遙の妹、茜。これら3人と主人公・孝之、主人公の親友・慎二、この5人の関係を軸に物語は進みます。時によってうつろいゆくもの、時がたっても変えられないもの、そして新たに芽生えるもの・・・、この3つのせめぎ合いの中で、何をよりどころに、どんな未来を描くのでしょうか?
辛く、苦しく、悲しいお話です。それは、扱っているのが、交通事故被害を巡るその家族・友人・恋人の苦悩という舞台設定であるだけではありません。最大の理由は、このゲームが、“誰かと結ばれる”ことではなく、“誰と別れるか”と言うことが主眼となっている点にあるのでしょう。このゲームは、主人公が誰かを選ぶことを決めることで終焉するのではなく、選ばなかった相手に対して恋人としての別れを告げなければならないのです。それは辛く、苦しい選択です。特にメインヒロインである遙と水月の二人は、主人公への愛だけをより所に生きているのですから。当然の事ながら、別れることを告げるだけで終わるのではなく、そこに至るまでの葛藤が残酷なまでに描かれます。結ばれた二人の新たな一歩のために、その二人にとって親しき者の苦悩と涙が求められるのです。そして、別れで傷ついた相手を癒す役割は、主人公にも選ばれたヒロインにも任されていません。それを成すのは、ただ時間だけ。だからこそ、前述の一言が重みを持つわけです。
このゲームは2部構成になっており、第1部では、孝之、慎二、水月、遙の4人の友情と、孝之と遙の恋を中心に、メインキャラクター5人の黄金時代が描かれます。様々な悩みを抱えながらも、確かにそれは輝いた時間でした。しかし、遙の事故で、それは終わりを告げてしまいます。そしてメインの第2部では3年間で変貌した孝之、水月、茜と、3年前と全く変わらない気持ちを持ち続ける遙との対比を軸に、時間がもたらした悲劇が描かれます。本来序章であるはずの第1部が念入りに描かれ、それぞれのキャラに感情移入してからメインの第2部を迎えるために、時間のもたらす残酷さを明確な形で見せつけられるわけです。さらに、孝之の夢として随所に出てくる黄金時代の回想シーンが、さらにそれを引き立てます。過去と現在との時間軸を非常にうまく活用することで、物語は深いものとなり、プレイヤーを引き込むのではないかと思います。
外道竜神のエロゲー歴が浅いせいなのかどうかは知りませんが、18禁ゲームであるというのに、人間としてのキャラクターがうまく描かれていることに驚かざるを得ません。外道竜神がこれまでにプレイ経験のある18禁ゲームは、『下級生』、『臭作』、『もみじ〜ワタシ人形じゃありません〜』、『行殺新撰組』、『エヴァと愉快な仲間たち・脱衣補完計画』の5点。(『Piaキャロットへようこそ!2』,『こみっくパーティー』の2点はアニメを見ただけに過ぎません。なぜか、画像は持ってますが。なお、謎のK氏さんより『Air』をもらい、半強制的にインストールさせられましたが、未プレイのままあっさり消しました。もらったゲームディスクは音楽CDとして大変貴重に使わせてもらっています。)『脱衣補完計画』と元々ギャグがメインの『行殺新撰組』はおいておいたとしても、『臭作』『もみじ』の中の女性キャラは、精々音声付きのダッチワイフの役割しか果たしていません。『下級生』にしても、段階を踏まないことに怒る事はあっても、人間が抱える苦悩などはほとんど見えません。主人公にしてからが、女性の同時攻略に関しての心理的葛藤の描写などありません。女性キャラは好意値というパラメーターによってどれだけ意のままにできるかが決まる人形にすぎません。正直、18禁ゲームというものは、こういうものであると考えていました。
しかし、『君が望む永遠』のキャラクターは、苦悩し、不安に苛まれ、物事に悲しみ、葛藤する、というように、人としての心理が深く描かれています。プレイヤーにとって都合がいいだけのキャラクターは存在しません。それだからこそ、キャラクターに共感し、ともに得ることができた喜びと悲しみが深く刻まれるように思われます。ゲームとしての性格上、主人公がなぜか女性にもてまくる点を変えることはできなかったようですが。
人間の苦悩を描くことに比重を置きすぎたためか、肝心の18禁シーンが、唐突でとってつけたように見えるものがあることは否定できません。長い物語の割に、そういうシーンが少ないことは否定できません。18禁ゲームとして、一般に思い浮かべられる使用目的のために使うつもりなら、別の作品を買った方がまず利用頻度が高いと思います。しかし、そんなことで、この作品の持つすばらしさが損なわれることはありません。外道竜神はこれがエロゲーと呼ばれるジャンルの作品であることをすっかり忘れて、どっぷりとこの作品につかり込んでいました。そして、この作品は、ある程度の年齢以上でなければ、その重み、深みを理解しづらいのではないかと思います。
ほぼ間違いなく遙と水月のことが歌われているオープニングテーマ、この作品をまさに総括しているエンディングテーマ。ともに、この作品のためにある、この作品以外では使えない名曲です。とりわけ、エンディングテーマが流れる場面の演出は、遙エンド、水月エンドともに、まさに名シーンです。エンディングに至った時に訪れるであろうわびしさは、エンディングテーマで救われます。
この作品は、万人向けではないでしょう。提示されている物語は、ちょっとした気晴らしやストレス解消のためにゲームをしようとする人にお勧めできる類のものではありません。18禁ゲームという特殊条件から、他人に対して、面と向かって、この作品を褒めることははばかれるところがあります。しかし、それでも尚、少なくとも11月の段階において、2001年に自分が出会った最高の作品だと断言できます。
問題は超熱核融合級地雷とささやかれる愛美エンドをまだ見ていない、というか、怖くて見ようという気すら起らないということですが。やっぱり、これも見なきゃ、作品の評価、やっちゃいけないんでしょうかねぇ・・・?(11月5日)
ええと、愛美エンドを見てのコメント。それを見るまでは、忘れられない作品でした。見た後は、忘れたくとも忘れられない作品となりました・・・・・・。
遙、水月、茜の3人のエンディングを見て、これが今年最高のゲームであるという評価は変えていません。ただ、彼女が・・・、穂村愛美が、その3人を吹き飛ばす悪夢となって・・・・・・ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!(11月11日)