このページは、糖尿病と言う病気を理解していただくためのページです。
説明が長いところもありますが、糖尿病を確実に理解していただくためにも順番にご覧
ください。以下の項目に分かれています。

はじめに(人の体とブドウ糖の流れの基本)、 
糖尿病と尿糖の違い、 
インスリンの働きについて、 
耐糖能異常って何? 
75gブドウ糖負荷試験、
糖尿病の診断基準、
糖尿病のわかりやすい病態
インスリン分泌不全
インスリン抵抗性
,
目に見えない糖尿病の症状をお見せします

はじめに【人の体とブドウ糖の流れの基本】

糖尿病と言う病気は、あまりに有名です。
そのため本当はなにも知らなくても知っているつもりになりがちです。甘いものを食べると
糖尿病になるとか、インスリンを注射するようになったらおしまいだ・・など誤った知識の方
もずいぶん多いと思います。
しかし糖尿病と診断されたらいいかげんな知識ではいけません。しっかりとした知識を
持って取り組むことこそが、糖尿病を克服する上で一番大切です。それでは一緒に理解
していきましょう。

 (この範囲のポイント)

 (解説)
人間は多細胞動物です。いくつもの小さな細胞が集まって、人間ができています。この細胞
はもちろん生きています。そしてそれぞれの細胞が生きていることによって一人の人間が生
きているわけです。細胞にも、いろんな種類があります。肝臓を作っている肝細胞、心臓の
筋肉を作っている心筋細胞など。




この細胞が生きていくために、そしてその細胞が仕事をするためには、酸素と栄養分が必要
です。食事摂取によって消化吸収されたブドウ糖は、血液中に増加してきます。(血糖値が
上昇する)
血液は体の隅々まで流れていますから、血流によってブドウ糖も細胞の近くまで
運ばれるのです。

ところが、血液中からはブドウ糖だけが細胞に取り込まれることはできません。
ここで働くのが、インスリンと言う物質(ホルモン)なのです。血液中に存在していたブドウ糖
は、インスリンの作用によってはじめて細胞に取り込まれます
。その結果として、血液中
のブドウ糖はいつの間にか少なくなっています。(血糖が正常に戻る)

つまり、正常であれば食事によって増加した血液中のブドウ糖は、インスリンによって各
細胞に届けられて、結果として血糖値が以前の正常状態に戻るのです。

糖尿病は、このインスリンの分泌量、反応、作用の仕方に問題が生じたとき生じる病気
です。

(戻る)

糖尿病と尿糖の違い

 (この範囲のポイント)

(解説)
糖尿病は、尿に糖がでる病気と考えられがちで、このため尿検査で糖尿病であるかどうかが
判ると思っている人も多いようです。しかし実際には、尿に糖がでるから糖尿病ではありま
せん。
専門的に言うと耐糖能が、ある一定以上落ちているものを糖尿病と診断しています。
この耐糖能を調べることが、糖尿病の診断となりますが、これについては耐糖能の項目
で説明します。

それでは、尿中に糖がでる理由をおはなしいたします。以下の略図を見てください。

     

BはAに比べて、血液中の糖が容易に尿に漏れ出てしまう体質のため、同じ血液中の糖の
濃度であってもBでは、尿に糖が出やすい。仮に血液中の糖の濃度が高ければ、Aであっても
尿に糖が出ます。(正常人でも食直後には血糖が上昇し、尿に糖が出ることがある)
このような尿に糖が漏れやすい体質の人や、食後の一過性の血糖上昇による尿糖の出現が
あっても、糖尿病とは言えないのです。

それでは、どうして尿検査をするかと言うと、スクリーニング(拾い出しの検査)として利用さ
れているのです。糖尿病であれば、尿糖の出現頻度は高くなりますから、尿糖が出る人を調べ
れば、糖尿病の人が、早くに見つかりやすいからです。もう一度言いますが、尿糖が出るから
糖尿病とは言えませんし、尿糖が出ないから糖尿病ではないとも言えません。

以上のことからわかるように、糖尿病の診断は、血液検査が必要となります。

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インスリンの働きについて

インスリンと言う名前は聞かれたことがあると思います。糖尿病がインスリンと関係あると言うこと
を、知っている方は多いでしょう。しかしインスリンがどのような働きをしているかをご存じの方は
少ないと思います。 ここでは、インスリンの働きを説明します。

(この範囲のポイント)

(解説)
インスリンは、膵臓から分泌されています。分泌と言っても唾液や胃液などとは異なり、血液中
に分泌されており、こういった血液への分泌を内分泌と言います。
血液中に分泌されたインスリンは、血糖値を下げてくれます。しかしそれは、インスリンの作用
の結果であり、本当のインスリンの働きは、血液中のブドウ糖にひっついて(結合して)いろ
いろな細胞にブドウ糖という栄養分を届けることなのです。
食事によって増えたブドウ糖は、
インスリンがなければ、細胞の栄養分として利用することはできません。インスリンの働きによって、
血液中に増加したブドウ糖は各臓器の細胞で利用され、その結果として血糖値は正常にまで戻る
のです。『はじめに』でお話ししましたように、人間は多細胞動物です。この一個一個の細胞に栄養
分を届けているのがインスリンなのです。

インスリンが細胞へ運ぶ

インスリンは、例え食事を食べなくても、血液中にある程度分泌されています。これを基礎分泌と言い、
肝臓に蓄えてあった栄養分による血糖の調節やなどを行なっています。また食事によって急激に
血糖値は上昇してきます。この時多量のインスリンが短時間に分泌され、これを追加分泌と言ってい
ます。2型糖尿病では、この追加分泌が障害されることが多くの原因です。

よく、糖尿病の患者さんが風邪をひくと、体力をつけるために・・と言って食事療法を中止して、今日だけ
は・・と、たくさん食べることがあります。しかしインスリンが不足している糖尿病患者さんの場合、食べ
ても栄養分とならず、その上高血糖になってしまう恐れもあります。風邪の時こそ食事を守らなければ
なりません。

インスリンが絶対的に不足しますと、どんどん痩せてきます。これもインスリンがないために、ブドウ糖が
各細胞の栄養分として利用されず、徐々に栄養失調になっていくからなのです。

それでは、耐糖能について次にお話ししましょう。

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耐糖能異常って何?

糖尿病は、学術的に言えば耐糖能異常の病気です。ここでは、耐糖能という言葉を理解しつつ糖尿病
の本体を理解しましょう。

(この範囲のポイント)

(解説)
まず、耐糖能そのものの説明、そしてその検査法である75gブドウ糖負荷試験について説明しましょう。

【耐糖能】
糖尿病を考えるとき、この「耐糖能」と言う言葉が付いてきます。読んで字の如く、糖に耐える能力を示し
た言葉ですが、血液中の糖をいかに正常に戻す力があるかと言うことです。 一般に食物は、体内で
消化吸収され血液中にブドウ糖として増加してきます。このブドウ糖は、膵臓から分泌されるインスリンの
作用で栄養分として細胞の中へ取り込まれます。(結果として、血液中からブドウ糖は減っていく)
このように体内では、食事によって増加した血液中の糖分を、正常へ戻す働きが存在しています。
また、食事をしなくても、体内には肝臓はじめ脂肪などに栄養分を蓄積してあり、食後数時間以後は、
この栄養分を利用しています。インスリンはこう言った栄養分の出し入れにも働き、血糖値を正常に保
つよう働いているのです。
こういった一連の作用を通じて血糖値を正常に保つ働きを耐糖能と言います。 


【75gブドウ糖負荷試験
それでは、この耐糖能を調べる方法である75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)について説明しましよう。

方法は簡単で、空腹時に75gのブドウ糖を含んだジュース(およそ300カロリー)を飲んでいただき、
その後の血液中の糖の値(多くは同時に血液中のインスリンの値も)を時間を追って調べるのです。
下図の緑色の線は、正常のパターンを示しています。空腹でジュースを飲んだ後、ブドウ糖は腸管
より吸収されて血液中に入るため、血糖値の上昇を認めますが、すぐにインスリンが分泌され、血液中の
糖の値は減少し、やがて正常化します。
下記の図表中、正常の緑の線を注目して下さい。75gのブドウ糖を飲んだ後60分でピークの約200mg/dl
まで達していますが、その後は減少し120分後では、140mg/dl以下まで下がっています。これは、
インスリンが血液中に分泌され、ブドウ糖が種々の細胞内に運び込まれ、血液中から消えていったの
です。つまり血糖値が正常値に回復しているわけです。

縦軸は血糖値、横軸は75gブドウ糖摂取後の時間です。
赤線より上のパターンが糖尿病、緑線より下のパターンが正常、間は境界型と言います。
数値の詳細は診断基準を参照下さい。


赤い線が、耐糖能異常者(糖尿病患者さん)です。血糖値が赤い線のように上昇してきても、インスリン
の分泌不足があるか、又は働きが悪いため60分では220mg/dlを超える値となり、120分経過してもまだ
200mg/dl以上の値を示しています。つまり耐糖能異常とは、インスリンの分泌不足や作用不良などによって
生じる血糖値の正常化機構の不良なのです。(インスリンの反応の詳細はこちら

そして残念なことに、一度糖尿病という耐糖能異常が生じると、完全に元に戻ることはありません。
しかし、食事療法や運動療法、薬物療法にて血糖値を十分管理する事によって、この耐糖能異常を軽減して
血糖値を正常化して糖尿病を克服することは可能なのです。

次に、もう少し日常生活での糖尿病の内側を見てみましょう。

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糖尿病の診断基準

1999年に糖尿病学会から糖尿病の診断基準が変更になりました。これはWHO(世界保健機構)やアメリカ
糖尿病学会の診断基準をうけて日本人にあったものとなっています。
多少専門用語が含まれますが参考のため、ここに紹介しておきます。

下記のいずれかに該当するものを糖尿病と判定し、別の日の検査で下記のいずれかであれば、
糖尿病と診断する。

  1. 随時血糖値が200mg/dl以上の時
  2. 早朝空腹時血糖が126mg/dl以上の時
  3. 75gブドウ糖負荷試験で2時間値が200mg/dl以上の時

75gブドウ糖負荷試験での判定

検査のための詳細な注意点もあるが、省略します。

・糖尿病型:空腹時が126mg/dl以上かつ、あるいは又は負荷後2時間値が200mg/dl以上の場合
                             (どちらか一つでも満たせば糖尿病と判定する)
・正常型:空腹時が110mg/dl未満かつ負荷後2時間値が140mg/dl未満
  (両者を満たせば正常とする。ただし負荷後一時間値が180mg/dl以上の場合は境界型に準じた扱いとする)
・境界型:糖尿病型、正常型どちらにも属さないもの

血液検査を繰り返さなくても糖尿病と診断できる場合

糖尿病の解りやすい病態

これまでの説明では、糖尿病がどんな病気なのか、理解しにくかったかもしれません。ここでは、もっと
単純に糖尿病の病態(インスリンがどのようになっているのか?など)を説明します。

(この範囲のポイント)

(解説)

【インスリン分泌不全】

インスリンと言うものが、膵臓から分泌されることによって、血液中のブドウ糖が栄養分として各臓器の
細胞に届けられると言うことは理解していただけたと思います。(まだの方はこちら
糖尿病はこのインスリン分泌が悪くなるわけです。勿論個人差もあれば、進行もします。
では、インスリン分泌が悪くなるとどう言った状態になるのか、考えてみましょう。

上の図は、一日3食に加え、間食を取った場合の血糖値の動きとインスリンの動きです。黒線が血糖値で、
緑線がインスリンです。食事をすると、血液中のブドウ糖(黒線すなわち血糖値)が上昇します。
ほぼ同時にインスリンが、スパイク状に上昇しています。つまり急速にインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖
は各細胞に届けられ、結果として血糖値は早期に正常に戻り、黒線は下がっているのです。

上の図は、糖尿病(2型糖尿病、旧分類によるNIDDM)の患者さんの同様の血糖値とインスリンの動きです。
正常に比べ、緑のインスリンはダラダラとしか分泌されないため、血液中のブドウ糖はなかなか各細胞に届けられ
ず、結果として食後数時間経過しても血糖値は正常に戻っていません。そのうち次の食事時間となり再び血糖値
が上昇しています。

この図の糖尿病では、まだインスリンが分泌されていますが、このように反応が悪い状態にも関わらず生活改善を
含めた治療がなされないと、徐々に反応のみでなく分泌されるインスリンそのものの絶対量も減少してきます。
そうなると十分に栄養分が細胞に届けられなくなり、結果として体重減少などが生じてきます。

もちろん、上記に示したのみで糖尿病は説明できるほど簡単ではありません。
他にもいろいろと大切な糖尿病の原因があります。インスリン抵抗性がそれです。

【インスリン抵抗性】

近年この概念が定着してきました。糖尿病の人で、徐々に肥満傾向になってきて運動不足などの人の中には、
食後のみならず、空腹でもインスリンが血液中に多量に存在している人がわかってきました。上記までの説明ですと、
インスリンが存在しているのに高血糖というのは理解しにくいですが、実はインスリンがきちんと仕事ができないよう
な状態にあったのです。つまり、インスリンがブドウ糖とひっついて各細胞に届けると言いましたが、細胞とインスリン
の親和性が低下しているため、インスリンが正常に働かなくなっているのです。こういった状態をインスリン抵抗性と
言い、血糖を下げるため脳からの命令で、膵臓はどんどんインスリンを分泌します。その結果、正常よりも高いインス
リン値となっていることがしばしば認められます。この状態は、高インスリン血症と言って虚血性心疾患(心筋梗塞など)
にも関係が深いと言われています。

こう言った人たちは、インスリンと各細胞の感受性(親和性)を上げる必要性があり、近年内服薬が出ていますが、
基本は運動療法とダイエットです。

さて、インスリン分泌不全やインスリン抵抗性によって血糖がいつも高値となるとどうなるのでしょう。
下の図は正常の人と、糖尿病の人の血糖値変化を示したものです。黒線は正常、青線は糖尿病です。

黒線の正常の人に比べて、青線の糖尿病の人は血糖値がいつも高値であることが判ると思います。少し太い線で示し
ているのは、おおむねの平均値です。このように、いつも高血糖状態にあることが体にとって如何に良くないことか・・・!!

しかし残念ながら多くの糖尿病の方は、症状がないため治療に前向きになれません。
そこで次の項目では、目には見えない症状を目に見えるように語って説明しましょう。

(ページのはじめへ戻る)

目に見えない糖尿病の症状をお見せします

(ここでは、理解していただきやすくするため、特に詳細は省いています)

糖尿病の自覚症状はほとんどありません。しかもあったとしても、のどが渇く、多飲になる、多尿になる、疲れやすい・・・
くらいです。しかし裏返せば、これらの症状は恐ろしい糖尿病合併症の序曲に過ぎないのです。ここではこれらの症状を
目に見えるように説明いたします。

【のどが渇く】
浸透圧と言うのをご存じでしょうか?同じ容量の液体でも溶けている物質の濃度が高い方が浸透圧が高いのです。浸透圧
が周囲より高いと、水分を周囲より吸収して浸透圧を等しくさせようと言う動きがそこに生じます。糖分を多く含んだ血管と
その周囲にある細胞も同じことです。血液中のブドウ糖が高いと、浸透圧の関係で周囲の細胞から水分が奪われます。
人間というものは、細胞が生きているわけですから、細胞内の水分が減ればのどが渇くわけです。
(塩水を飲むとよけいにのどが渇くのと同じです)。

【多尿になる】
上の説明の続きと考えて下さい。のどが渇いて水分を補えば、本当に水分を必要としている細胞に届かず、血液中の水分
のみが増えます。結果として尿量が増えるわけです。

【疲れやすい】
これも続きみたいなものです。結局は細胞は栄養分も届かず、しかも水分不足になる。何度も言いますが生きているのは
細胞ですから、一つ一つの細胞は弱ってくる。結果として疲れやすくなるわけです。

他にも、高血糖状態により、血管の内側の壁は、浸透圧をはじめとする様々な侵襲を受けます。あたかもパイプが徐々に
めづまりしていくように、血管も徐々に動脈硬化が進行していきます。一般の人に比べて、糖尿病の人は動脈硬化が10年
早く進むと言われています。

どうでしょうか。目には見えないレベルで糖尿病が体をむしばんでいるのが少しは理解できたのではないでしょうか。
この局所の脱水や高血糖の血液が微少な血管内を流れることは人の体にとって有害きわまりないのです。
糖尿病で血糖をコントロールする目的は、合併症の予防の第一であると言うことも、このことを理解していただければ納得
されると思います。

(ここでは、医学的な詳細な説明を省略しました。)

(ぺーじのはじめへ戻る)

糖尿病は、実はインスリン分泌不全,もしくはインスリン抵抗性から来る耐糖能異常であることが分かったと思い
ます。それでは、なぜ糖尿病になってしまうのかを説明いたしましょう。

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