ヤーコブ・オブレヒト
Jacob Obrecht
1457/8年生-1505年没



MIDIサンプル


ミサ「恵まれし御胎」
Missa "Beata viscera"
オブレヒト初期の作品。Wegman博士によると、ビュノワの影響下から脱しようとする段階のもの。残念ながら、この写本では、サンクトゥスとアニュス・デイが一部のみ伝わっているだけです。グローリアは、この写本では一部を欠き、これは他の写本でも部分的に声部が残っているだけです。Wegman博士のサイトRenaissance Masses, 1440-1520では、残っている限り全ての部分を聴く事ができます。

キリエ
Kyrie
(2' 40)

グローリア
Gloria
(5' 43)

クレド
Credo
(7' 49)

サンクトゥス
Sanctus
(2' 17)
残念ながら、この写本ではベネディクトゥス以降は省かれています。

アニュス・デイ I
Agnus Dei I
(1' 25)
残念ながら、この写本では最初のアニュス・デイしか伝わっていません。


器楽曲「タンデルナーケン」
Instrumental "Tandernaken"
(2' 19)
フランドルの俗謡に基づく器楽曲は、ブリュメルその他によっても数多く作られているほか、ミサ曲にも転用されてもいます。ここでは屋外でのショームなどでの演奏を何とかMIDIで模倣しようとしましたが、上手くいっているかどうか。


ミサ「めでたし、神の御母」
Missa "Salve Diva parens"
第1キリエ
Kyrie
(0' 55)



参考文献


Rob C. Wegman. Born for the Muses: the life and Masses of Jacob obrecht. Oxford: Oxford University Press,1994. ISBN 0-19-816650-8. (Paperback 1996)

オブレヒト研究のみならず、ルネサンス音楽研究の金字塔的一冊。ペーパーバック版が出ていて、お手頃な値段で入手できます。


関連テクスト


Mille quingentis verum bis sex minus annis 乙女より生まれしキリストの生誕より (2)
Virgine progeniti lapsis ab origine Christi 実に1500年から12年を引いた年が経ちし時 (1)
Sicilides flerunt Musae, dum Fata tulerunt シチリアのミューズらは涙を流せり。そは運命が
Hobrecht Guillermum, magna probitate decorum. ヴィルヘルム・オブレヒト、偉大な公正さにより飾られし者を取り上げし時。


Ceciliae ad festum, qui Ceciliam peragravit そはチェチリアの祀りの日。彼はまた、チェチリアの岸辺を
Oram; idem Orpheicum Musis Jacobum generavit, 旅せしが。同じその者は、ミューズの為に、オルフェウスの如きヤコブスを産みたり。
Ergo dulce melos, succentorum chorus alme, それゆえ、甘き(この)歌を、先唱者らによる恵まれし合唱隊よ、
Concine, ut ad caelos sit vecta anima et data palme. 歌え、かの魂が天に運ばれ、椰子の葉に与えられんがため。
オブレヒトの父、ヴィルヘルム・オブレヒトの死の後(Wegmanによると1周忌の際)に作曲されたモテットの歌詞。オブレヒト自身が作詞しています。ヴィルヘルムの死亡はおそらく1488年11月22日(聖チェチリアの日)と考えられます。




CDその他



János Bali指揮A:N:S chorus:
Jacob Obrecht: Missa Si dedero, Missa Pfauenschwanz.
HUNGAROTON CLASSIC HCD31946.
NEW

 



Edward Wickham指揮THE CLERKS' GROUP:
Missa Malheur me bat & Motets by Obrecht & Martini.
Sanctuary Classics Gaudeamus, GAU 171.

 少し前の録音になりますが、ザ・クラークス・グループによるオブレヒトとマルティーニの録音です。

 先に紹介している、A:N:S chorusによるMissa Malheur me batと比べると、こちらの方は音がシャープで構造的には分かりやすい反面、ふくよかさと迫力が若干劣る印象があります。特に、女性によるソプラノが直線的過ぎるのがここではあまりいい結果になっていません。しかし、オブレヒトの晩年近くのモテット、Laudes Christoが聴けるというのはプラスですし、それからジョスカンの前任者であったヨハンネス・マルティーニの、これも他には聴くのが困難なモテットが収められています。

 ただ、Missa Malheur me batを聴きたい人には、やはりA:N:S chorusのCDが優先されるべきでしょう。



János Bali指揮A:N:S chorus:
Jacob Obrecht: Missa O lumen ecclesiae, Missa Malheur me bat.
HUNGAROTON CLASSIC HCD31772.

 オブレヒトのミサ曲のうち、初期に属するMissa O lumen ecclesiaeと、成熟期に属するMissa Malheur me batをカップリングし、さらにモテットAve Regina caelorum、Alma redemptoris Materを聴く事ができるCDです。演奏は先に紹介しているハンガリーのA:N:S chorusです。

 演奏のスタイルは、これも先に紹介したものと同じく、ファルセットを用いた男性のみの、各パート3-4人からなる小規模ながらそれなりに厚みのある合唱によるものです。

 Missa O lumen ecclesiaeは、ライナーによると、1485-87年、Wegmanによると、1486年以前)に作曲されたと考えられており、Wegmanによると、初期の作品ながら、すでにかなりの部分で独自の語法が定着し、さらに構造的な統一も目指しているかなり野心的な作品ということになります。作品としては確かにすでに標準以上であるものですが、響き全体としてはまだまだ若書きの雰囲気を残していまが、逆にそれがある種の魅力になっていることも確かだとおもいます。

 一転して、Missa Malheur me batは、さすが成熟期の迫力が伝わってくる名作です。実はこのミサ曲はTHE CLERKS' GROUPによって演奏されていて、それなりに名演奏ですが、こちらのほうがこの対比が良く分るのでお薦めです。当時の流行曲、Malheur me batのパロディ・ミサではありますが、原曲の雰囲気を残しながら、オブレヒト独自の世界を展開させています。

 このCDも、オブレヒトファンにとっては必携の一枚でしょう。



János Bali指揮A:N:S chorus:
Jacob Obrecht: Missa De sancto Donatiano, Missa Sicut spina rosam.
HUNGAROTON CLASSIC HCD32192.

 オブレヒトの没後500周年が近付いているにも関わらず、大量にあるミサ曲はまだまだ録音されていませんが、このハンガリーの合唱団、A:N:S chorusはこれまでにオブレヒトのミサ曲を6曲も録音してくれています。そのうち、2曲を録音したものがこのCDです。

 ミサ曲は、ブルージュの慈善家Donaes de Moorの没後に、その名前を負っていた聖人Donatianusのために捧げられたミサ曲が、前者のMissa De sancto Donatiano で、また通常とは異なり、レスポンソリウムの旋律が定旋律に用いられている上、オケゲムのミサ・ミ・ミのバスが引用されているという、特異なミサが後者のMissa Sicut rosamです。これらについては詳細な解説をライナーで読むことができ、例えば前者では、オルガンの伴奏があったことなど、面白い情報があります(ただし、演奏は全て無伴奏です)。

 どちらのミサ曲も、オブレヒトがジョスカンに比肩するレベルの音楽家であったことを示す、傑作にあたると思います。演奏は14人の、ファルセットを含む男声のみのアンサンブルで、当時の演奏から見て、ほぼ同じ規模と様式のものです。イギリスなどのアンサンブルのように、極限まで音程をそろえるハイテクアンサンブルではなく、やや不揃いな部分も残っていますが、独特の暖かみのある音色になっている一方、他のアンサンブルには無い程に情感豊かに歌い上げています。むしろ当時としてはこのようなアンサンブルが普通であったと思われます。教会の反響も多めに取り込んでいますが、これもこのアンサンブルの場合は好印象です。特にMissa Sicut rosamのグロリアやクレドの後半、オブレヒトの真骨頂の絢爛なスタイルは、この反響をオブレヒトが意図したのではないかと思うぐらい、ぴったりとあっています。

 是非ともこのような素晴らしい演奏で、オブレヒトのミサ曲全集が聴けるようになりたいと思わせる、素晴らしいCDです。



Edward Wickham指揮THE CLERKS' GROUP:
Jacob Obrecht: Missa Sub tuum praesidium.
Sanctuary Classics Gaudeamus, GAU 341.

 オブレヒトのミサ曲はまだまだ知られていないものばかりですが、この曲はすでにレコード時代から録音があるそうで(たとえばこれ)、最近でもヒリヤー指揮Vocal Group Ars Novaで録音されているようです(未聴)。まだ未知の領域がおおい音楽家の作品のレパートリーが重なっているのは、ちょっと無駄なような気もしないではないですが、このMissa Sub tuum praesidiumは、それに値するだけの名作だと思いますし、このCDではオブレヒトの重要なモテットも収録されており、また演奏もクラークス・グループとしてもかなり上のものだと思います。

 このミサは、キリエが3声で、その後ミサの各章事に1声部加わって、最後に7声部のアニュス・デイになるもので、定旋律が芯に使われながら、それに次々に声部がからみ合って独特の音世界を作り上げてゆく、オブレヒトの独壇場のミサ曲です。しばしば様々な音楽家がジョスカンと比較されて評価されますが、オブレヒトはおそらく、ジョスカンの上を行くことすらある、独自の世界を持っている音楽家であることを示す格好のミサ曲でしょう。クラークス・グループの音も、きびきびとしたかっ達な動きは、ラ・リューでは少し上滑りをしているような印象を受けますが、オブレヒトではちょうどぴったりはまっています。歌手のほうも、水を得た魚のような高揚感が感じられるのは気のせいではないでしょう。

 モテットでは、オブレヒトの1488年のオブレヒトの父親の死の際に作られ、オブレヒトの生涯を知る上で重要なMille quingentisを聞くことができます(ちなみに最初の行はMille quingentis verum bis sex minus annis = 1 (mille) 500 (quingentis) - (minus) 2X6 (bis sex) で、1500-12=1488年となります)。これも名演ですが、その他独特の叙情たたえたBeata es Maria (これはPCAによる名演を超えています)、それから複数の歌詞が同時に歌われるこれも名作のFactor orbis (これもSinger Purの名演に匹敵します)などの、到底これ以上が考えられない名演つづきです。

 まずこれ1枚あれば、オブレヒトの魅力は大体カバー出来ているといっていいと思います。このCDでオブレヒトのファンになる人が増えて、オブレヒトの没後500周年となる2005年がオブレヒトの忘却から救われる年になってほしいものです。



Jeremy Summerly指揮Oxford Camerata:
Obrecht: Missa Caput, Salve Regina.
NAXOS, 8.553210.

 オブレヒトもジョスカン同世代の音楽家としては、その音楽の質に反して、存命中から不当な程に蔑ろにされて来た音楽家の一人で、現在もまだまだ他の作曲家に比べて録音が少ない作曲家です。

 このMissa Caputは、Venit ad PetrumというアンティフォナのCaputという歌詞の部分の極めて複雑で美しいメリスマを元に作られた、イギリスの無名のミサの形式に則って作られたものです。作曲時は推定1480年代、オブレヒト20歳代ですが、20歳代の時期のジョスカンは、Ave Maria ... Virgo serenaなどのモテットで既に頭角は表しているものの、より重要なジャンルのミサではまだオケゲムの模倣とコンペールの影響下にある模索期間であるのに対して、オブレヒトのほうはすでに十分自立したスタイルをもつミサ曲を書いていたというのは恐るべきことで、ひと世代前の理論家ティンクトーリスにも認められているのはうなずけるものがあります。

 Jeremy Summerly指揮Oxford Camerataの演奏は、ナクソスで多く聴く事が出来ますが必ずしも常によい演奏ばかりではありません。しかし、このCDは正規価格であってもいい程の素晴らしい出来で、躊躇なくお勧めできます。

 ミサ自体の出来が素晴らしい上に、闊達な旋律の絡みが見事に生かされている演奏になっており、特にグローリアの冒頭など本当に楽しくなってしまうほど見事な演奏です。

 ミサの他に、2曲のSalve Reginaが録音されていますが、これらもミサに劣らず名曲かつ名演奏になっています。特に4声のSalve Reginaは、アマチュア合唱団でも演奏効果が十分上がる名曲だと思います。是非とも演奏してもらいたい一曲です。




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