オルランド・デ・ラッスス
Orlande de Lassus
1532年生-1594年6月14日没



MIDIサンプル


ミサ「甘き思い出」
Missa ad imitationem moduli Doulce memoire
キリエ
Kyrie
(3' 14)


モテット「悲しみに満てる御母は立ち給えり」(スターバト・マーテル)
Motettus "Stabat mater dolorosa"
ラッススが老齢に差し掛かろうとするころ(1580年頃)に作られたと思われる名作モテット。全体は10部に別れ、高声部4声と低声部4声が、交互に唱ってゆきます。最後の10部目は、両方が掛け合いながら唱う複合唱のスタイルになります。無駄な動きがないにも関わらず、それでいて、苦悩を不協和音や音の動きで表現しつつ、感情の起伏を大きく表現する対位法が見事な作品です。
全曲
(13' 40)

1. 悲しみに満てる御母は立ち給えり
1. Stabat mater dolorosa
(1' 23)

2. ああ、なんと悲しげな
2. O quam tristis
(1' 27)

3. 涙しない者あらんや
3. Quis est homo qui non fleret?
(1' 17)

4. その民の罪の為に
4. Pro peccatis suae gentis
(1' 25)

5. ああ、母よ、命の泉よ
5. Eia Mater, fons amoris
(1' 20)

6. 聖なるマリアよ、これを為し給へ
6. Sancta Maria, istud agas
(1' 22)

7. いざ、まこと我をして汝と涙流させしめよ
7. Fac me vere tecum flere
(1' 14)

8. 乙女の中の乙女よ
8. Virgo Virginum
(1' 32)

9. いざ、我をして打ち傷つかしめよ
9. Fac me plagis vulnerari
(1' 32)

10. いざ、我をして十字架を守らせよ
10. Fac me cruce custodri
(2' 06)


死者のためのミサ曲
Missa pro defunctis (Requiem)
イントロイトゥス
(5' 35)



CDその他


ANDREW CARWOOD指揮THE CARDINALL'S MUSICK:
ORLANDUS LASSUS: Missa Surge Propera.
Sanctuary Classics Gaudeamus, GAU 310.
NEW

 ラッススのミサ「起きて急げ」と、このミサが基づいている自作のモテット他、6つのモテットに8声もマニフィカトが収録されています。

 演奏は後期ルネサンスを中心にCDを出しており、現在バードの全集を収録しつつあるカーウッド指揮カーディナルス・ミュージックの演奏です。メンバーがクラークス・グループと重なっているところからも容易に推察できるように、演奏水準は極めて高く、ラッススの演奏で特徴的な豊富な和声や、劇的なテクストの表出などを過不足なく行える団体です。このCDでは、その魅力が十分に発揮されています。

 中心となるこのミサ曲は、1477年出版で、すでに21才で合唱隊長になっているラッススにとっては、油の乗り切ったころの作品のようです。先にも述べたように、60曲もあるミサ曲が、殆ど耳にする機会がないにもかかわらず、なぜかミサ曲に限っては『構築力が弱くマンネリズムに陥り易い』という汚名を音楽学者によって着せられてしまっていますが、このCDでの演奏は、先に紹介したシンガープールの演奏同様、その迷信を打破するに値する素晴らしい作品で、カーディナルス・ミュージックの演奏も、ラッススの極限まで高められた緊張を伴う対位法を見事に唱い切っています。モテットはそれぞれ魅力的な作品かつそれに相応しい演奏ですが、個人的には若干ゴンベールの影響が見えかくれしているように思われるVulnerasti cor meumが非常に気に入りました。

 シンガー・プールの名盤とならんで、このCDもルネサンス音楽、特に後期ルネサンス音楽のファンには必携の一枚だと思います。


Singer Pur:
Orlando di Lasso.
Freiburger Musik Forum, AM 1242-2.

 主にドイツはレーゲンスブルク出身歌手で構成されたシンガー・プールがラッススの作品にのみ照準を絞って出した一枚です。

 このCDではラッススのMissa "Tous les regrez"を中心に、9曲ものラッススのモテット、それからミサ曲の元になったゴンベールのシャンソンTous les regrezが収録されています。

 ラッススのミサ曲は一般になぜか低く評価されていますが、おそらく、オケゲムらの音楽の低評価のように、実際は演奏が殆どされないという事情を反映しているのだと思います。このCDでも、ラッススのミサ曲は、彼のむしろ本領だったと言われているモテットに対して別にひけをとっているようには聞こえません。このミサ曲はゴンベールのシャンソンに基づくものですが、おそらくゴンベールのシャンソン自体も何らかの形でMedia Vitaと関係しているのか、冒頭のラッススのモテットのMedia vitaと、ゴンベールのシャンソンTous les regrez、それにゴンベールのミサとモテットMedia vitaは殆ど同じテーマを持っています。この辺の相互関係はなにかあるのでしょうか。それはともかく、ミサはゴンベールのシャンソンに基づきながら、ラッススらしい魅力が出ている名作だと思います。オザンナの部分では特にそうだと思います。

 演奏の仕方はミサの間にモテットを適宜はさんでいるもので、聴きやすくはありますが、これは別に特定のミサの再現ではありません。適宜グレゴリオ聖歌をはさんでも面白かったかもしれませんが。

 シンガー・プールは以前のソプラノに変ってHedwig Westhoff-Düppmannがメンバーになっています。先のソプラノはスウェーデン出身で、北欧の透明な声だったのですが、それがなくなってしまったのは少し残念ですが、彼女もそれに劣らず素晴らしい声で、新しい音色も悪くはないと思います。今後もルネサンス音楽のレパートリーをどんどんCD化してもらいたいと思います。


Gerhard Schmidt-Gaden指揮Tölzer Knabenchor,
Musicalische Compagney Berlin:
Orlando di Lasso: Bußpsalmen.
CAPRICCIO, 67081.
注意!CCCD!

 「悔悟詩編」はラッススの代表作と謳われていながら、なかなか満足の行く録音が出なかった作品です。このCDは今年発売されたばかりですが、今までの不満を払拭する素晴らしい仕上がりになっています。

 演奏しているのは、これも1956年、この指揮者であるシュミット-ガーデン氏が創立して、いわゆる古楽の分野では取り分け活躍が目覚ましかったテルツ少年合唱団ですが、このCDでは精鋭8人に人数を絞っています。それによって質は通常以上に高いですが、音量的にも成人によって唱われるテノール・バス声部に決して劣らないのは驚異的です。

 この演奏では少年合唱と器楽陣でMusicalische Compagney Berlinが加わって豊富な音をつくり出すことで、ラッススのプレ・バロックの逞しい音楽構造にがっしりとした芯を入れる事に成功しています。何よりも少年合唱のソロを唱っているPhilipp MoschとTom Anirが素晴らしく、それもただ純粋な少年の声という以上に、声量ならびに歌唱力でも大人のソリスト以上のものを発揮しています。このソロを聴くだけのためにでも、このCDを買う意味があるぐらいです。成人男声のソロではRodrigo del Pozoのイタリア風のアクセントが効いている歌声がまた魅力的です。通奏低音も響きが実に良く、特にリュートとキタローネの音が入る事で独特な響きになっています。合唱総勢15人、器楽17人による演奏は豪華絢爛で、特に各詩編の最後のSicut erat inprincipioは素晴らしい迫力です。今まで声量をおさえ、純粋なハーモニーを目ざすだけの演奏に飽き足らなかった人には特にお勧めのCDでしょう。

 録音時間が55分程度と現代のCDにしては少々短かめですが、余計な曲を入れずにこの大作にのみ照準を絞っているだけあって、演奏から感じられる熱気にも心うたれます。50年近くの歴史をもつテルツ少年合唱団が、フランドルの音楽でももっと活躍して欲しいと感じる一枚でした。

 なお、ポザウネに日本人のMutsuhiko Iizukaさんという方が参加されています。こういうところでも日本人が活躍するのは嬉しいですね。

CCCDに関する追記

 最近になって、ステレオを一段階アップグレード(といってもオーディオファンにはかなりいい加減なものですが)しました。今までCDラジカセだったのをDVDプレイヤーと外付けの安いわりにはいいスピーカーに代えて、CDの音が良くなったのに気をよくしていましたが、このCDをかけてみると、冒頭の合唱と合奏のTuttiの部分に、僕でも気がつくほどの不自然なノイズのようなもの(あるいはその周波数帯だけ不鮮明化しているのか?)が入っていることに明らかに気付きました。演奏自体はいいので、FMエアチェックで録音したものと思えばいいのでしょうが、これはオーディオマニアなら、かなりマイナスの録音には違いありません。我無人は音キチではないので、音が悪いのは割合許容できるのですが、何となく聴いていて肩が凝るような気もします。購入には十分お気をつけ下さい。

CCCDに関する追記

 このCCCDの第2弾が出たようです……



Bruno Turner, Mark Brown指揮PRO CANTIONE ANTIQUA:
Orlandus Lassus: Music for holy week and Easter Sunday,
Requiem in four parts.
hyperion dyad, LC7533.

 レコード時代のプロ・カンツィオーネ・アンティークヮ(以後長いのでPCAとします)の中でも名盤中の名盤が、2枚組のCDになって再発売されたものです。個人的にも、このレコードはかなり早い時期に馴染んでいた思い出の演奏でした。

 PCAの説明は別ページにあるので、そちらを参照して下さい。このCDでは復活祭前に唱われるエレミア哀歌と、復活祭のモテット、そして復活祭の晩課に唱われるマニフィカト、さらにそれに加えて、死者のためのミサ曲(4声)を聴く事が出来ます。

 演奏は極めてレベルが高く、この団体の最盛期のレベルを堪能することが出来ます。復活祭前の木曜から土曜日の夜に行われる祈祷(晩歌)では、イスラエルがその傲慢ゆえに敵の手に下り、首都エルサレムを捨てざるを得なくなる運命を預言したエレミアの哀歌が祈祷の中で唱われるのですが、これには、フランドルの音楽家もしばしば曲をつけています。ラッススもアグリーコラやアルカデルトのそれと同じように、和声の充実した密な音楽を作り出していますが、この手のタイプの音楽は特にPCAは得意としているようで、タリスのそれや、ホワイト、パレストリーナらの曲でも名盤を出しいます。

 CDの2枚目はキリスト復活を祝う賛歌とモテットを聴く事ができます。ここではPCAには珍しく女性歌手も参加しています。エレミア哀歌での暗目の雰囲気とは対照的な明るい和声が響き、復活の喜びを満面に表しているかのような名演奏が楽しめます。

 その後に、ラッススの死者のためのミサ曲が入っています(レコード発売時は別売り)。これもPCAの中では代表的な名演です。先の演奏では8-12人の歌手が参加していますが、こちらは歌手を4人に絞って演奏しています。全くの無伴奏ですが、豊かな声が紡ぎ出す音の波は、この団体にしかできない演奏だと思います。しばしばラッススのミサは構成力がない、とか、マンネリズムに陥りがちといった間違った偏見が日本の音楽学者にしばしば見られますが、この演奏を聴く限りではそんなことは決してないことが明白でしょう。このレクイエムでは、それどころか定旋律を用いる復古的な技法を用いており、オケゲム、ブリュメルらの世界を後期ルネサンスに垣間見させてくれるものです。  

 数あるPCAの録音中でも、このCDの充実度は極めて高いもので、ルネサンス音楽を聴きはじめる人にも安心して勧められるCDだと思います。




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