アントワーヌ・ビュノワ
Antoine Busnoys
1430年頃生-1492年没



MIDIサンプル


ミサ「おお、十字架、輝かしき木よ」
Missa O crux lignum
キリエ
Kyrie
(2' 58)


モテット「過ぎ越しの生け贄に」
Motettus "Victimae Paschali"
(6'10)
復活祭のセクエンツィア。後半には初期フランドル楽派ならではのプロポルツィオを駆使した技法が見られます。終結部では一旦ゆっくりになったあとに、本来はその4倍の速さ(Proportio quadrupta)になるのですが、MIDIにしてみたところ、コンピューターなら難無く演奏できますが、到底人間の耳に聞き分けられるスピードではなく、恐らく演奏も無理なので、速さを演奏可能な程度まで落としています。


モテット「ノエル、ノエル、ノエル」
Motettus "Noel, Noel"
(1'11)
クリスマスに歌われる、キリストの誕生を意味するノエル、ノエルという言葉を繰り返す曲。


第6旋法のマニフィカト
Magnificat sexti toni
全声部で同じ音形が模倣されるという、通模倣が顕著に見られるマニフィカト。技法の上ではジョスカン世代を先取りするものですが、ジョスカンの世代と異なり、冒頭の"Magnificat"を除き、全ての節が多声化されています (ジョスカンの世代では偶数節を多声化するのが普通です)。冒頭のグレゴリオ聖歌の部分は明らかに定量で書かれているので、通常ののグレゴリオ聖歌のようにはしませんでした。
全曲
(9' 28)

歌詞対訳

1. 我が心は主を讃う - 2. 我が心は歓喜せり
- 3. 卑しさを見返り給いしゆえ - 4. 我に偉大なるものをなし給いしゆえ
1. Magnificat anima mea Dominum-- 2. Exsultavit spiritus meus
-- 3. Quia respexit humilitatem-- 4. Quia fecit mihi magna
(3' 00)

5. そして彼の憐れみは- 6. 彼は権力を自らの手にしたり
-7. 彼は権力者をその座より打ち払い- 8. 卑しき者を高めたり
5. Et misericordia eius-- 6. Fecit potentiam in brecchio suo
-- 7. Deposuit potentes de sede -- 8. et exaltavit humiles
(3' 13)

9. イスラエルを引き受けたり- 10. 語りし如くに
- 11. 父と子と精霊に栄光あれ - 12. 始めにありし如く
9. Suscepit Israel -- 10. Sicut locutus est
-- 11. Gloria patri et filio et spiritui sancto -- 12. Sicut erat in principio
(3' 18)


CD紹介



Andrew Kirkman指揮The Binchois Consort:
Antoine Busnois: Missa L'homme armé Petrus de Domarto: Missa Spiritus almus.
Hyperion, CDA67319.

 ビュノワの名声の多くを負っているといってもいいミサ曲、ミサ「武装せる人」のCDが、プロ・カンツィオーネ・アンティークヮ(PCA)の名盤の後に、ほぼ30年ぶりに登場しました。

 バンショワの名前を冠するグループでは、フランスのアンサンブル・ジル・バンショワが有名ですが、このイギリスのバンショワ・コンソートも実力的にはかなりのレベルです。最上声部も男声で唱っており、しばしばタリス・スコラーズなどの女声の入った合唱で、響きが現代混声合唱的になってしまうのに不満足な人(我無人もですが)にはまさに待ちわびた演奏団体と言えるでしょう。

 今までのイギリスの音楽に見られがちだった、ある種のプロ的な印象、例えば数回のリハーサルで作り上げたような、非常に上手いのに、手が入り切っていない、ベタのMIDIのようなところが残っているような印象は、このグループからは殆ど感じられません。殆ど総ての音が表情豊かに語りかけてくるような演奏は、ビュノワの音楽のそこ知れない迫力をまざまざと感じさせます。プロカンの演奏でも十分に感じられたように思われたビュノワ芸術は、このCDを聴いたあとではまだ殆どその一部しか感じられなかったように思います。絶品はクレドで、プロラツィオを組み合わせながら唱われるそれは、ラ・リューやブリュメルのミサ「武装せる人」の手本になっていることを想像させ、後代の作曲家への影響が少なからぬことを示しています。

 ビュノワの他に、このCDには、我々リスナーにはなじみのない(しかし同時代には高く評価されていた)ドマルトのミサ曲(Missa spiritus almus)が収めされています。これはビュノワの音楽的影響を示している作品の一つであるとしています。印象の上では後代の音楽に近付いていると解説されていますが、確かにラ・リューらの音楽に近い響きの節回しが聴かれます。いずれにしろ、この殆ど知られていなかったミサ曲も、見事な演奏で、この団体がジョスカンやラ・リューらの音楽へ是非とも向かって欲しいと思います。

 我無人はたまたま殆ど注目していなかったグループですが、これは大きな誤算で、ひょっとするとクラークス・グループ以上に優れたイギリスのグループなのかも知れません。少なくとも、このCDは、ルネサンス音楽のCDでは5本の指に入る仕上がりだと思います。






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