神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

八幡平・大深岳から鏡沼

2016年4月25日



"意を決して慎重に滑り込んだ。滑ってみると雪もよく難しい斜面ではなかった。”



 例年ならGWはテント泊の縦走やピークハントをするのだが、今年は特別な計画はなかった。 ただ東北に山旅のような山行をしたいと漠然と思っていた。 GWが近づき山旅の具体的な計画が頭の中では固まっていた。 それは混雑を避けてGWの前にスキーを使った日帰りの山をいくつか組み合わせたらというものだった。 行き先として八幡平を思い描いた。 そして八幡平に3日間をあて、その後休養日を観光にあて、最後に船形山に登るというものだった。

 30年以上前のGWに私は乳頭温泉郷から玉川温泉までの4日間でスキーでの縦走をしたことがあった。 もう細部はすっかり忘れてしまったが、いくつかの出来事は記憶にある。 そのうちの印象的な記憶は大深岳・嶮岨森間の稜線から雪で覆われた鏡沼へ滑り降りたシーンだ。 よき思い出は大事に記憶の中にしまっておいた方がよいとの想いもあったが、 再訪したいという気持ちが勝った。

 5日間という期間にパートナー探しは難しいと思っていた。 浮雲のメンバーにも計画を匂わせたが、よい感触は得られなかった。 古い私と同世代の山仲間を誘うと、簡単に同行したいとの返事がきた。 時間に縛られないメンバーなのでのんびりとした計画には好都合だった。


 大深岳へは樹海ラインが赤川を越える地点あたりから適当に雪の斜面を登ることにした。 赤川は樹海ラインの少し下部で二股に分かれる。 一昨年の夏に大深沢を遡行した時には右俣を遡行して大深山荘に出るルートをとったが、 今回は右俣左俣の中間尾根をルートとして考えた。

 前日の夕方に東京の同行者宅を出発し高速での車中泊の後、松川温泉の樹海ラインのゲートに7時半に着いた。 樹海ラインは少し前の23日に開通していた。 事前の情報では夜間は閉鎖され、8時半に開門する。 ところが前日の冷え込みで道路が凍結していて10時までゲート前で待たされた。

 赤川を渡るあたりに駐車するつもりが、雪の壁が続いていて駐車スペースがない。 2キロほど戻ったあたりに除雪用車両が停められている広場があり、遠いがここに駐車することにした。 荷物はいったん赤川に降ろし、駐車後運動靴で荷物のデポ地に戻った。 荷物に戻るまで30分くらい余計な時間をくってしまった。

 雪は締まっていたので尾根はツボで歩きスキーは紐を付けて引いて登った。 登り始めは広かった尾根は一部痩せ尾根となっていた。 尾根の背は樹木が密で右側の斜面をトラバース気味に歩くことが多かった。 このようなルート取りはスキーを引いて歩く方法にはよくないが仕方ない。 痩せ尾根はすぐに終わり、赤川左俣の広々とした無立木の斜面に出た。 スキーで滑りたいような斜面だった。 この斜面を登りきり稜線に出て、少し大深岳と反対方向に進むと大深山荘だった。 大深山荘には夏と同じような時間で着いた。 まだ新しい小屋にはベランダがあり休憩には最適だ。 小屋に荷物を置き空身状態で大深岳を目指した。 ここからはシール登高とした。

 大深岳へは尾根の形状になっていない広大な緩い斜面が続く。 植生はオオシラビソ(アオモリトドマツ)の純林である。 八幡平は1200mあたりを境にして下部はブナ、上部はオオシラビソとなっている。 疎林だが、スキーを楽しむには少し斜面が緩い。 左手前方には岩手山の大きな姿が見える。雪が少なく黒い斜面が目立つ。 適当に上を目指すしているとピークの手前で雪が切れてしまった。 ここを左に巻いてピークに出ると、 目指す大深岳ではなく、源太ヶ岳との間にあるピークだった。 藪の下まで戻り、右手に進むと簡単に大深岳の山頂に着いた。 スキーでの滑降はがっかりだった。 斜面が広大で、一気に滑るとルートから離れてしまう恐れがあった。 このために細切れに方向を確認しながらのスキーで滑った感じがしなかった。 小屋に戻るとすぐにゲート前で会い会話を交わした地元の二人パーティーが到着した。 彼らは八幡平方面から縦走してきて大深岳方面に向かうようだ。

 大深山荘から嶮岨森方面へスキーのままで進んだ。 小さな登りもスキーのまま歩いた。嶮岨森の少し手前で鏡沼を見下ろすようになった。 鏡沼はまだ雪に覆われているが水が染み出しているのか少し水色を帯びている。 小さな雪庇が続く稜線を下降点を探しながら進んだ。 やがて沼をやや左手に見下ろす位置で雪庇の切れ目があり、 なんとなく周囲より滑り出しの傾斜が弱いように感じた。ここを下降点と決めた。 雪庇はないが緊張した。 以前来た時は縦走の重荷での滑降のはずだが急斜面という記憶はない。 やはり年なのか。

 意を決して慎重に滑り込んだ。滑ってみると雪もよく難しい斜面ではなかった。 2、3回の回転で一旦立ち止まり上を見ると同行者がドロップしようとしていた。 折からの逆光に斜面が輝き、きれいだった。 いっぺんに沼に下りてしまってはもったいないので、何回かに切った。 沼が近づくと枝ぶりのよい大きな岳樺が数本あり、 同行者に写真のために滑るラインを指定したりした。 そして沼に下りたった。ちょっと短いのが残念だが、よい斜面だった。


 右回りで沼のほとりを歩き、樹海ライン目指して下った。 できるだけ駐車場に近くと、右方向にトラバースぎみに下りた。 小さな沢形を横切ると赤川右俣の左岸尾根に出た。 なんとこの尾根には立ち木にペンキ印があった。 すぐにペンキ印は見失ったが、適当に下ると樹海ラインに出た。 ちょうど雪の壁が低くなっている箇所で、少し歩くと赤川右俣の橋だった。

 下山後は車を停めた場所での車中泊も考えだが、温泉に入れる時間が残っていそうだ。 見返峠を越えて、アスピーテラインに入り、秋田県側の「ふけの湯」を目指した。 アスピーテラインの売りは日本一長いという雪の回廊である。 雪の回廊の定義は解からないが長さ27キロらしい。 今年は雪が少ないというものの一番高いところは4mくらいありそうだった。 GW前の平日なので他の車もいないのでゆっくりと景色を楽しみながら運転した。 「ふけの湯」では時間が遅いので内風呂には入る時間がなく、野天風呂だけに入った。 この温泉では宿にあるのを露天風呂、火山地帯にあるのを野天風呂と呼んでいる。 野天風呂は他に客がいないので、写真を取り合ったりした。 歩道側の一方向だけに囲いのある野趣満点の開放感ある風呂だった。 この日は野天風呂を見下ろすトイレのある駐車場に泊った。 ゲート前で、夜間はゲートが締まり車の通行がないので静かな場所だった。 明日は後生掛温泉からの焼山の予定だ。 夜は星がきれいだった。明日も好天が約束されていると信じた。
(記事:S)

天気:晴れ
赤川右俣出合11:05〜12:20大深山荘12:50〜13:30大深岳〜13:50大深山荘14:10〜14:45鏡沼〜 15:15樹海ライン

メンバー:S、他1