神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

前穂高岳・北尾根(涸沢ベース)

2016年5月5日〜7日



"3峰からは登攀力に加えてスムーズなロープワークが 必要だ”



 今シーズンは例年に比べ雪が少なく雪の量も心配だったが、 昨夏に訪れた前穂高岳北尾根を雪の時期に行ってみよう!と計画をした。 しかし、GW前半北アルプスは天候が荒れて多くの遭難者が出たようだ。 その為、しっかりと積雪もあり十分に山の都合を判断した上アタックする事とした。

5月5日
 涸沢では、常念方面は青空だが、穂高の稜線は雲の中で 北尾根も4峰から上は見えない。GWで北尾根5−6のコルに向かう トレースもバッチリと思っていたが見当たらない。とりあえず、 設営して一杯飲んだ後、トレースを付けに行った。明日のアタックに 備えて17:00に就寝。

5月6日
 3:30に出発。先行のライトが遥か上に見える。4:50に5-6のコルに着き、 ここでギア類を装着。稜線は風が強い。先行2人組みはここから スタカットで登っていたが、我々はロープを出さず出発。すぐに彼らを 抜いて岩、雪、氷のミックス帯に入った。4-5のコルから岩、雪稜を詰めると 大きな一枚岩にぶつかる。ここを奥又白側にトラバースして、今回はすぐ右の 雪壁を登り、岩を詰めて4峰ピークへ。ピークからは左の急な雪面を降る こともできそうだが、忠実にリッジを降った。それにしても、この4峰ピークに ある大岩は3峰から見ると、ピークにちょこんと乗っかっているようだ。そのうち 落ちてしまうような…。3-4のコルは涸沢側に雪庇が張り 出した急な雪面で、休憩するには怖いところだ。その手前で休憩。

 ロープを結んで3峰の壁に向かう。ビレイ点は出ていた。
1P目(H)、出だしに何故かワカンが 一つ落ちていた。雪はないが、アイゼンだと神経を使う。
2P(G)、右のチムニーは 雪が詰まって急な雪壁だ。ダブルアックスで越え、左に抜けてビレイ。
3P(H)、出だしはベルグラから岩の凹角。ここを越えて平らな雪上でスタンディング アックスビレイ。ここでロープをしまうことはせず、ツルベを続ける判断をした。 ただし、できるだけロープを伸ばし、クライマーがビレイ点に着いたらほとんど 時間をおかずに先に進むようにしたので、スピードは落ちなかった。


 2峰に立つと前穂頂上から2人の登山者がこちらを見ていた。天気が良くないからかギャラリーは少ない。 1-2のコルに懸垂して先をみると、無雪期はなんでもない壁が怖そうな 雪壁になっている。この最終ピッチもスタカットで登った。

 前穂頂上は奥又白側に雪庇が張り出し、昨夏に記念写真を撮った支柱が雪に埋まって見当たらない。 昨夏の頂上は快晴で大勢のギャラリーに迎えられたが、今回は 曇りでギャラリーも2人のみ(奥明神沢を登って来たという)。かなりさびしい。 とりあえず握手。だが、今日の行程はまだ半分だ。曇っているが視界はよく、 奥穂がはっきり見える。そのなんと遠く険しいことか!吊尾根は始めは雪はない。 右はスッパリ切れてはいるが、左に行かないように注意しながら岩稜をガチャガチャと降りていく。 途中からはミックス帯になり最低コル。ここからは夏道を使った。 急な雪壁のトラバースはあるが、夏道は楽だ。長いながい登りでようやく奥穂頂上。

 風が特に強かった。この時間なのに誰もいない。後で知ったことだが、この日は 救助隊から奥穂への登山を自粛するようにとの通達があったようだ。 降りは雪壁のクライムダウンがあって気が抜けない。白出のコルに着いて、今日の ルートにおける危険地帯を脱出。ここも、4人しかおらず信じられないさびしさ。 ここまで、終始強風であったが雨にはならなかった。しかし、コルから見る空は すぐに降り出しそうだった。

 白出のコルからあずき沢をマッタリと降りテントへ。丁度そのとき雨が降ってきた。 今回予定のルートを完登できたのでとてもラッキーだったが、贅沢なものでやはり下山まで 雨は避けたかった。時間も早いので今日中に横尾か徳沢まで下げたかったが、今夜は ここに泊まり、翌早朝に(どんな天気でも)出発することにした。風雨は収まらなかったが、 あまり不快を感じずに眠れた(横になれた)。

5月7日
 2:00に起床。相変わらずの雨と風だ。撤収したテントからは水が絞れそうだ。 3:50下山開始。地形のためかすぐに風は止んだ。本谷橋まで来れば一安心。雨は 止まなかったが辛くなく、4時間ほどで上高地バスターミナルに到着。

 突然の天候変化、強風、雪、雨と改めてこの時期のアルプスは難しいと実感。 如何にスピーディーに行動できるかがポイントだった。5峰4峰はロープを出さな かったが、簡単ということではなく一歩のミスも許されない。ここをフリーで抜けられ なければ奥穂までは届かないだろう。3峰からは登攀力に加えてスムーズなロープワークが 必要だ。それにはパートナーとの息が合っていなければならない。そして、前穂頂上着後も 緊張感を保って白出のコルまでの長い吊尾根を歩く体力と精神力。ベース方式であっても 十分達成感のある、素晴らしいアルパインルートで岩、雪、氷の北尾根も美しい登攀ラインだった。
(記事:G、H)

5月5日
上高地5:20〜8:00横尾〜11:00涸沢TS

5月6日
TS3:30〜4:50X-Yコル〜6:20V-Wコル〜9:00前穂高岳〜11:30奥穂高岳〜12:20白出コル〜13:30TS

5月7日
TS3:50〜5:50横尾〜8:00上高地

メンバー:G、H