神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

槍ヶ岳・北鎌尾根

2015年9月16日〜18日



”独標のピークに立つ。 槍ヶ岳まで続く北鎌尾根の全貌が目に飛び込んで来る。”



 北鎌尾根から槍ヶ岳への登頂。
恐らく、チョットでも山をやった事がある人なら誰でも1回位はその名を耳にした事はあるだろうし、 加藤文太郎の「単独行」や松波明の「風雪のビバーク」等の書籍を読み、 憧れを抱いた事もあったのでは無いだろうか? 私は初めて登った北アルプスの山が槍ヶ岳だったのだが、登頂時にヘルメットを被り、 沢山のギアを付けた二人組が祠の裏側から現れた時の驚きは今でも覚えている。

 今では、北鎌尾根も沢山の人が入るルートとなっているが、 それでもしっかりしたルート判断と長い稜線を歩く体力の双方が必要とされる バリエーションルートである事には変わらない。 昨年秋に、剱岳源次郎尾根にトレースを付けて以降、いつか北鎌を歩きたいという思いは、 「次は北鎌」へと明確に変わっていた。だが実際に北鎌に向けたトレーニングとしては、 鋸岳〜甲斐駒ケ岳の縦走と丹沢主稜の縦走を数回こなしただけで、多少不安のある中での計画実行となった。 当初、単独であった計画も、最終的には鋸岳〜甲斐駒ケ岳の縦走を共にした友人の参加表明により、 最終的には二人で行く事になった。


9/19(土) 中房〜燕山荘〜大天井ヒュッテ〜貧乏沢〜天上沢出合(テン泊)
 中房温泉のバス停に7:30に到着。 前夜、沢渡駐車場と中房温泉駐車場は我々が到着した26時には既に満車状態で、 沢渡では何とか駐車場の先にある駐車スペースを見つけ駐車出来たのだが、 中房温泉にはゲート前に係の人がおり上は満車なので しゃくなげ荘の駐車場に停める様に言われ、 そちらに車を回した。結局仮眠出来たのは1時間位で、バス停に並ぶ事になる・・・。 計画では5時には中房を出発する予定であったのだが、早くも予定変更である。 登山口は7:30という時間にも関わらず、SWという事もあり物凄い数の登山客で溢れている。 準備万端な我々は直ぐに登りだしたのだが、10分も経たないうちに前が詰まり出す。 渋滞は結局、燕山荘前までほぼ続く事になった。 燕山荘到着後、19日の行程は貧乏沢を下り天上沢出合で幕営する事に決めた。 この先、大天井ヒュッテまでは北鎌尾根の全貌を見ながら歩けるコースであり、 何度か足を止めて、地形図と尾根を見比べて北鎌尾根の概要を実際に見ながら頭に入れた。

 大天井ヒュッテを越えて、いよいよ貧乏沢へ入る。 取り付きは、小さな古ぼけた標識板が登山道に置いてあるだけという事は認識していたので、 迷う事なく降り口に立つ。いよいよ北鎌尾根へのスタートだという気持ちが大きくなる。 ここから2時間下れば天上沢出合だな・・・と思い藪漕ぎ開始。 藪漕ぎは直ぐに無くなりガレの下りとなった。一昨日降った雨のせいか、 岩がかなり濡れていて足元が滑るのでかなり神経を使う下りだ。ルートを示す赤テープ等は無い。 踏み跡らしい踏み跡も無く、時々立ち止まってはルートを確認した。 ガレ場と巻き道を交互に下る感じのルートであったが、 本来は涸れているだろう貧乏沢が水量豊富な沢となっており、ルート判断に迫られる箇所複数。 ポイント・ポイントでは、事前に調べた通りのルートを辿っているのは確認出来ていたので、 大きなミスはしていないハズ。予定よりかなり時間を使い天上沢出合に着いたのは暗くなる手前であった。

9/20(日) 天上沢出合〜北鎌沢出合〜北鎌のコル〜独標〜北鎌平
 4:30起床、テントの外はまだ暗い。朝食を済ませ撤収する頃には明るくなり天上沢の概要を初めて目にする。 やはり水量がかなり多い。15分程度右岸を歩いて流が伏流してから左岸に渡れるハズなのだが、 右岸の巻き道もかなり水量がありルートを探りながら歩いた。 北鎌沢の出合はケルンが積んであり明瞭だ。ここで水を汲んで行くかどうか迷う。 これだけの水量であれば、北鎌のコル直下まで水が出ている可能性が高い。 同行者は水を汲む気配さえ無い。取敢えず、左俣との分岐までは水は汲まずに登る。 本来、右俣は涸れ沢なのだが、佐俣との分岐に来ても大量の水が落ちて来ている。 相当悩んだ末、最悪の事態を想定してここで各自5Lの水を汲む事とした。 コルまでは、基本右側の踏み跡と辿って、ゆっくり高度を上げて行った。 結局、沢の水はコルの直下まで出ており、後悔する事となったが判断としては間違っていないと自分に言い聞かせた。 コルに着くと先行のパーティーが出発する所だった。 6名のパーティーで、話を聞くと更に先行して4人は北鎌に入っているとの事だった。

 天狗の腰掛越しに独標が聳えている。槍ヶ岳は未だ見えない。 沢に水は豊富であったが、登山道は濡れている事なく歩きやすい状態だった。 明瞭な踏み跡もあり、ルートを外す事は無い。はやる気持ちを抑えてゆっくり歩く。 後ろを振り返ると剱岳・後立山連峰が良く見える。素晴らしい景色だ。 天狗の腰掛を下り、独標に向けて一旦巻き道っぽい箇所を通る。 すると突然、遠くに槍ヶ岳の姿が目に飛び込んでくる。 今まで何度か登っている槍ヶ岳であるが、この確度からの槍ヶ岳は今まで見てきた槍ヶ岳とは全く違う山に見える。 頂上に伸びる北鎌尾根がそうさせているのか?本当に天空に突き刺さる槍そのものの様に見える。

 独標の登頂には、巻き道を選択する。この巻き道の途中から独標に直上するのだが、 実際は、巻き道に入ると、どこからでも登れそうに見えてならない。 岩もしっかりしているしホールドも豊富に見える。 ただ、頂上まではかなり標高差があるので先がどうなっているかまでは分からないので、 一応、ルートとされているスリングがぶら下がっている箇所から取り付く。 最初の一手が核心で、そこを突破出来れば後は、3点支持が出来れば登れる様な岩が続き、独標ピークに立つ。

 独標頂上に立つと槍ヶ岳までの北鎌尾根の全貌が一望出来る。 長くうねった稜線の先に槍ヶ岳が聳えている。天気も良く、最高のロケーションである。 ここからは、基本的には稜線通しで歩くのだが、 大小数々のピークを越える為に自分がどの位置にいるのか分からなくなる。 北鎌平に着くとそこはもう、槍ヶ岳の直下である。 抜ける事も可能な時間であったが、抜けた後に殺生ヒュッテのテント場まで行く事と、 急いで本峰を登ってしまうという事がもったいない気持ちが大きく、 2日目は北鎌平の少し先にあった適地で幕営とした。 夕日で赤く染まった槍ヶ岳を見上げながらバーボンで乾杯した。日が落ちる頃には風が出て気温がグッと下がった。ダウンを来て寝た。

21日(月) 北鎌平〜槍ヶ岳頂上〜肩の小屋〜上高地
 5:00起床 テント脇を通る足音で目覚める。未だ薄暗い中登頂する様だ。きっと頂上で日の出を見たいのだろうと思った。 30分もすると周りは明るくなり、槍も赤く焼け始めた。 6:30に登頂開始。天候は良いが気温が未だ低く手が寒い。冷たい岩を触ると気が引締まる。 本峰には独標同様、何処からでも登れる様だ。ここは岩もしっかりしている。

 2つ目のチムニーで、先行パーティーがロープを出していて、プチ渋滞。 そこを巻く選択肢は無く、ザックを降ろしゆっくり待つ事とした。 本峰は基本的に北鎌平から見て左側から取り付く為に東鎌尾根越しに前穂北尾根が良く見える。 次はあそこかな?などと考えながら贅沢な時間を一時過ごした。 ルートが空き、取り付くと何て事は無い。同行者は最初の一手で難儀していたが何とかクリアして登って来た。 ただ、ここはテラスも何も無く、滑落しらた確実に数百メートルは落ちるであろう場所。 不安が少しでもあれば確保するのもやむを得ないだろうと思った。 実際にここで滑落して亡くなっている方もいるのだし、我々は何も考えずに取り付いたが、 少しそういった事にも気を使うべきだったかな?と反省した。

 このチムニーを越えると左右どちらのルートを取っても頂上には出られる。 ただ、祠の真裏に出るなら右側のルートを登るしかない。同行者は左のルートを取ったが、 私は真裏から頂上に立ちたく右側のルートに取り付いた。ネット等ではあまり書かれていないが、 2つ目のチムニーよりこちらの右側ルートの方がよほど難しいのでは?と思った。

 頂上に立つ。テント場を出て50分経っていた。途中で待ち時間があったので意外と時間が掛かっている。 登頂したら、もっと嬉しさが込上げてくるかと想像していたのだが、 特別な感情は無かった。先行パーティーと数人の登山者から拍手で迎えられ、同行者と写真を撮り合った。 最後に、祠の裏から後ろを振り返り北鎌尾根を見返した。 険しく、長く、うねりくねった稜線を見下ろした時に、何事も無く踏破出来た事の安堵感を感じた。 同行者と登頂の握手をし、上高地に向けて下山を開始した。


 最後に 今回の山行についてルート等で相談に乗って頂いた先輩各位に感謝をします。 「ありがとうございました。」 いつになるかは、分かりませんが 北鎌尾根末端からの踏破と残雪期での北鎌〜槍ヶ岳の登頂という新しい目標が出来ました。
(記事:Km)

719日(土)晴
中房温泉7:30〜9:30合戦小屋〜11:00燕山荘〜14:00大天井ヒュッテ〜17:30天上沢出合

20日(日)晴
天上沢出合6:00〜6:30北鎌沢出合〜9:00北鎌のコル〜10:00天狗の腰掛〜12:00独標〜16:00北鎌平

21日(月)晴
北鎌平6:30〜7:20槍ヶ岳頂上〜8:10肩の小屋〜12:30横尾〜15:15上高地BC

メンバー:Km、他1