神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

八幡平・大深沢(関東沢右俣下降〜北ノ又沢)

2014年8月24日〜26日



”広い川幅一杯に流れ落ちるナイアガラの滝は圧巻の眺めである”



 私は登攀的な沢より沢旅的な沢が好きだ。 ぶなの森の中をゆったりと流れる沢に代表されるような明るい渓相の沢だ。 単調さに自然の大きさを感じられるのがよい。そしてやはり沢の中で泊らなければ駄目だ。 そんな沢を東北に求めて、毎年1度はこのような山行をしてきた。 今年は早くから八幡平の大深沢に目標を定めてメンバーを集めていた。 遠いのでドライブでの移動を考えて2日でも歩けるコースを3日間の計画にした。 樹海ライン・赤川〜大深山〜関東沢右俣下降〜大深沢本流〜北ノ又沢〜赤川下降の 大深沢の上流部だけを周遊するコースだ。 本当はもっと下流から遡行したら面白いのだが、車の回収がどうしてもネックになってしまう。

 私は30数年前に大深沢に入ったことがあった。 その時は障子沢を本流と間違えてしまい本流の上流部は遡行していない。 いつか行きたいと思いつつ長い年月がたってしまった。 Fさんは3年前に葛根田沢から八瀬森を越えて関東沢右俣を下降して東ノ俣沢をトレースしている。 こんなこ事情もあって、今回は関東沢左俣を下降しての北ノ俣沢の計画にした。 アクセスは最短ルートの樹海ラインの赤川右俣経由である。



24日 天気:くもり
樹海ライン9:10〜10:15大深山荘10:30〜11:00大深山〜11:45三石分岐〜14:35八瀬森避難小屋

 長距離ドライブを考慮して1日目は登山口に昼頃に着けばよいと考えていた。 それがドライバーのがんばりで9時前に樹海ラインの赤川入渓点に着いてしまった。 すでに地元ナンバーの車が2台停まっていた。 仕度をしていると登山道整備の人の車が停まった。どうやら人の多いルートらしい。 赤川は水流も少なく、途中に小さな滝もあるがステップが切られ、流されていたがフィクスロープもある。 岩はいかにも火山の山らしく、赤い色をしていて、所々では粘土化している。 歩き易いので1時間強で登山道に合し、左手を見上げると大深山荘が見えた。 小屋はまだ木の香がするかのように新しい。 誰かが自宅よりきれいだと言った。 ここに泊まる予定だったが、あまりにも早いので八瀬森避難小屋まで行くことにした。

 大深山は眺望のないピークだった。日曜日だったこともあってか何組かの登山者とすれ違った。 前の登山者を追って、三石分岐を通り過ぎてしまった。時間をだいぶロスしたが、時間は十分にある。 八瀬森方面に入ると極端に道が悪くなる。ぬかるみが多く歩きにくい。 それでも所々にある湿原には癒される。 途中後ろを歩いていた2人が熊の威嚇するような呻き声を聞いた。 それ以後は笛を吹いたり、意識的に声を出しながら歩いた。 予定したタイムよりかかって八瀬森避難小屋に着く。 小屋は湿原を通り過ぎて一段上がった斜面にあり、白樺の林に囲まれていた。 小屋は古いが、よく掃除されて広々として、水場にも近くて快適だった。 分岐からは他の登山者には会わなかった。当然屋を独占できた。


25日 天気:くもり
避難小屋6:50〜8:00関東沢二股〜9:15関東沢出合〜10:15ナイアガラ滝〜10:45三俣TS

 関東沢左俣を下降するつもりだったが、下降点からの藪が濃いので楽に下降できる関東沢右俣下降に変更した。 広い湿原を適当に突っ切って、低い所を目指すと水流に出会う。所々にテープが見られた。 最初は大きく蛇行を繰り返し、時々ナメ床となって歩き易い。水流を覆う樹木はうるさいほどではない。 しばらくはゴーロが続く。そしてナメと小滝が交互するようになる。 滝はフリクションがよく効き、簡単に下りれる。出発から1時間ほどで右から関東沢左俣が合流する。 水流が急に多くなり、渡渉する場所を選ばなければならなくなる。 二股から関東沢出合との中間あたりに立った豪快な滝があり、右岸をクライムダウンした。 これが関東沢で唯一の滝らしい滝だった。 河原が大きくなり、周囲に高い樹林が目立つようになると関東沢出合だった。 広い河原となっていて、ここから下流は大きな川という風情を感じた。 経験者のFさんによると前回より水量は多いと言う。 大深沢は関東沢左俣が地図では長いように見えるが、北ノ俣沢を本流としている記録が多い。


 本流は歩き始めは広々としたゴーロが続いた。所々にある淵では岩魚が走る。 本流に入って1時間ほど滝場となった。水流が多く見栄えがする。 フィクスのお世話になって越えると前方に大きな滝が見えた。 遠くからでも一目でナイアガラの滝と解かった。 ナイアガラの滝は広い川幅一杯に広がった横長の滝だ。水量が多く豪快だ。 しばらく見とれてから、どこを登ろうかとなった。 滝は2条になっていて、中間のカンテ状と右の水流の仲の2箇所にロープが垂れていた。 右手のロープは頼りない状態、左手のロープのラインはシャワーになる。 登るラインを決める前にと写真を撮っていると、 Fさんは2条の流れの中間を登り始めた。後に続いて登ると見た目より簡単だった。

 ナイアガラの滝の上からは素晴らしいナメの連続となった。 ナメというものは美しいという反面、単調に感じることが多い。 ここのナメは水量が多いこともあって力強く、傾斜や蛇行によって変化と奥行きを感じられて素晴らしい。 時には流れが弱く憩いを感じる場所もあった。 感嘆の連続だったナメが終わり、わずかにゴーロを歩くと左岸にナメの連続となった東ノ又沢が合流するのが見えた。 その20mほど手前の右岸の藪から仮戸沢が合流し、三俣となっていた。 国土地理院の2万五千図では仮戸沢出合の50mほど手前に滝記号があるが、これはナイアガラの滝ではない。 ナイアガラの滝はこの300mほど下流にある。


 まだ昼までにもかなり時間があった。 このまま遡行を続ければ今日中に稜線に抜けれる時間だ。 しかしこれでは今回考えていた沢にはならない。 予定通りここに泊まることにした。 事前に調べておいた記録から、真ん中の北ノ俣沢にかかる最初のナメ滝の落口左岸にテントサイトがあることを知っていた。 ここまで歩いて、大深沢はよいテントサイトの少ない沢である。 テントサイトは4人用のモノポールテントがやっと張れる広さで、水流との高低差は小さかった。 しかし予定地の草は水流によって寝ていなかったことから、最近の長雨にも耐えていたと判断した。 背後の斜面もいざと言う時には逃げられる。 念のために背後の斜に逃げやすい細工をしておいた。 テントサイトと落口の岩床に焚き火の痕跡があったが、焚き火の場所としては狭い。 滝の下には河原があり、焚き火はここですることにした。 マキはあまりなかったが、岩に挟まった流木を鋸で切ったりして、なんとか一晩には十分な量が集まった。 マキに火をつける前に小雨が降り出したので、河原にタープを張ってマキが濡れないようにした。 雨はすぐに止み、快適なキャンプとなった。 料理も手の込んだ沢のキャンプならではのものとなった。


26日 天気:くもり
TS6:10〜7:00北ノ又沢二股〜8:40源頭〜9:40登山道〜10:45樹海ライン

 帰りのドライブを考慮して早朝の出発とした。 テントサイトからはナメが続く。川幅は北ノ又沢に入って狭くなったが、まだナメは素晴らしい。 やがて右岸に2条の滝となった沢が合流し、本流は幅広の滝となっている。 滝と滝との距離があるが、両門の滝と言えるだろう。 滝は左側のスラブの細かいホールドを拾って比較的簡単に登れる。 この先に真ん中が盛り上がり、水流が溢れるに落ちている美しい滝があった。 水流の中を快適に越えることができる。 そしてミニ・ナイアガラと呼んでもよい滝がが現れる。 ちょっとルートに迷ったが、思い切って真ん中の水流をシャワーで越える。 そして顕著な二股を過ぎると赤い岩床のナメが美しい。 そして標高1250mあたりから沢の傾斜がきつくなった。 階段状の急登が標高差100mほどあり、最後の滝を越えると傾斜が急に落ち、沢は源頭の雰囲気となる。


 沢をこのまま遡り過ぎると登山道と離れてしまうので、右岸の支流から大深山荘の北側に出るつもりだった。 地図では1360m付近に浅い沢型があり、これをつめるつもりだった。 慎重に通り過ぎないように注意しながら歩いたが、現地では解からなかった。 意を決して少し先で沢型のない笹の中を方向を東に定めて進む。 距離は短いのだが1時間くらい藪を漕ぐと登山道に出た。 ここから南へ3分ほど歩くと赤川の下降点だった。赤川は行きにはなかったフィクスロープが小滝に設置されていた。 このルートは完全に沢だが、登山道化されているようだ。 1時間もかからないで出発地点に戻れた。


 今年の夏はどこの山も天候が不順だった。 浮雲でもいくつかの山行が中止となった。 今回も前線が本州にかかる不安定な天気状況だったが、雨らしい雨に会わずに山行を終える幸運に恵まれた。 装備を片付け、樹海ラインを走ると前方に白煙が見えてくる。 ここは日本最初の地熱発電所として知られた松川地熱発電所で、すぐ下の峡雲閣の温泉に入った。 事前にネットで調べて是非入りかった温泉だ。秘湯とも言われていたが、しゃれたホテル風の建物になっている。 湯は少し青みがかった乳白色が美しく感じる硫黄泉で、浴槽の雰囲気も温泉らしい温泉だった。 山は下山後の温泉で終わった感がするものだが、今回はまだ600数十キロのドライブが残っている。 温泉で長いドライブへの英気を養い、体に残った硫黄の臭を楽しかった沢旅の思い出にして長いドライブに向かった。
(S記)

メンバー:S、F、O、H