神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

八ヶ岳・阿弥陀岳南稜

2014年3月26日



”すっかり雪に埋まった阿弥陀岳標識の柱の上に座って記念撮影”



 Snさんの雪のバリエーションデビュー戦は阿弥陀南稜か北稜か? 南稜と北稜との難しさはトータルとしては微妙であるが、 北稜の場合、アイゼンの前爪2本で壁を登る技術が必要だ。 Snさんはまだゲレンデでもその経験がないということで、ルートは南稜に決めた。

 不安箇所・要素は、(1)P3ルンゼの状態、(2)P4の状態 (3)阿弥陀岳頂上でまったく視界が効かないときの下山ルートの発見、の3つを考えていた。 結果としては、(3)の不安が現実になった。


 前夜、船山十字路にテントを張って寝たがとにかく暖かい。 空には沢山の星が見えたが、 明日の天気は下り坂ということで翌日は4時に起きることにした。

 朝4時に起きると空に星は見えなかった。ヘッドライトを点けてデコボコの雪道を旭小屋に向かう。 旭小屋からもトレースはしっかりあったが、何故か変な方に行ってしまい、20分ほどロスしてしまった。 結局、トレースに従って稜線に出た。 ここからは雪のしまり具合といい、踏み跡によるステップの安定性といい、 無名峰まで本当に楽であった。 私は「この状態で頂上に辿り着けないなら、一生登れないな」などと考えながら歩いていた。 Snさんもゆっくりながら休まずに歩いてくれた。 立場山の辺りから薄日も射して、P1の先でギアを着けたときは「日差しが暑い」と感じられた。 ちなみに、ここまでは上半身薄手の下着2枚で歩いてきた。

 P3ルンゼの辺りでロープを準備するときには寒さで必ず泣くのだが、 ここに至ってもまったく寒くなく、しばし写真撮影会の余裕。 ルンゼ入り口のビレイ点は硬い雪で埋まっていてセルフビレイがとれない。 ルンゼ自身はこれまた階段状の踏み後がありビレイなしでも問題ないが、 Snさんの練習のために形だけシステム通りにしてトップのビレイをしてもらう。 2ピッチ目はSnさんリード。 乾いた岩ではできたシステムがうまくいかないようであったが、 雪山でのロープワークのよい経験になっただろう。 3ピッチ目は忠実にルンゼを詰めて真っ直ぐにロープを伸ばした。 岩、雪、氷、草付のミックスでちょっと悪い。 稜線直下までロープを伸ばすとアンカーがないのでアックス2本を硬い雪に深く刺し込んでセルフをとり、 肩がらみでまじめ(?)にセカンドをビレイした。 このピッチはセカンドに対するきちんとしたビレイの必要性を感じた。 このころから西風が強くなり、南稜らしくなってきた。 稜線に出ると視界は効かず、P4がまったく見えない。 ここで、Gは目出帽を着ける。 P4基部のトラバースと頂上直下の岩を右から回り込むところも、慎重に歩いて特に問題はなかった。

 頂上に着くと視界がまったくない。上記(3)の不安が頭を過ぎるが、とりあえず すっかり雪に埋まった阿弥陀岳標識の柱の上に座って記念撮影。 こんなことめったにできません。 下山は御小屋尾根の予定だが、始めまったく違う方向に進んでしまった。 ヤバイ、と思って引き返しすぐに正しいルートに入ったが、 今回もっともあせったところだ。 頂上の標識から1分程度歩いても摩利支天の大岩が見えるようにならなければ、 ルートを間違っていると思ってよい。 過去には阿弥陀頂上で悪視界のため下山ルートを見つけられず、最悪の結果になった例もある。

 正しいルートさえ見つかれば、風は強いが慎重に降るのみである。 長い御小屋尾根にはいつもながらうんざりするが、 時間に余裕があったので途中気分転換のためにも雪山でのビレイの練習をしてみた。 内容はスタンディングアックス、肩がらみ、腰がらみによるビレイであるが、 お互いに“おもり”になって衝撃を体感できるようにした。 それにより、ただの肩がらみよりもスタンディングアックスの方が ビレイヤーの安定性が格段に増すことをSnさんに理解・実感してもった。

 船山十字路に戻ってSnさんの雪山バリエーションのデビュー戦は無事終了した。 前夜から船山十字路に駐車した車は我々のものだけ。 この日の阿弥陀南稜から御小屋尾根に人の気配はなかった。

 私自身、雪山は実質6年ぶり、阿弥陀南稜は8年ぶりだったので不安だったが 無事終えられてホッとしている。Snさんは終始冷静に行動してくれた。ありがとう。 今回のチャレンジを振り返ってSnさんにアドバイスするとすれば、 「こんなに楽な南稜は2度とないよ」ですね。
(記事:G)

感想
 登山技術も登攀技術も未熟で体力もない私が経験豊富なGさんのご指導の下、 阿弥陀岳を南稜から、憧れの雪のバリエーションにデビューさせて頂く事が出来ました。 Gさんのお蔭です。ありがとうございました。

 Gさんのアドバイス「こんな楽な南稜はない」の言葉通り、 無名峰までの長く単調な登りもラッセルすることなく、 ルンゼ取り付きでの順番待ちも強風のための寒さに泣くこともなく、 初心者の私には恵まれた一日だったようです。お山の神様に感謝です。

 雪のクライミング経験のない私は2本のアックスの使い方や分厚い手袋をしたままのロープワークに苦労し、 Gさんに着いて行く事に必死でした。 ようやくたどり着いた山頂は2メートル先も見えないホワイトアウト状態でしたが、 Gさんと握手を交わして登頂の喜びを分かち合った時、素晴らしい眺望に感動したわけではなく、、 自分の持っている技術を駆使して、 Gさんに助けて頂きながらも協力し合いながら登頂できた事に何とも言えない大きな達成感に満たされました。

 まだまだ足りない技術や覚えるべき事など課題は山積みですが、 沢山の良い経験を積むことが出来た山行でした。浮雲の仲間の一人に加えて頂けた事に今更ながら感謝し、 幸せを感じた山行でした。次なる目標に向けてますます前進して行きたいと思います。

 次回、私の雪のバリエーションはどこに?・・・みなさん、よろしくお願い致します。
(記事:Sn)


コースタイム
舟山十字路0450→0540旭小屋→0805立場山→0910無名峰→10:20P3ルンゼ取付1030 →1130稜線→1200阿弥陀頂上→1530舟山十字路

メンバー:G、Sn