神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

立山・雄山東尾根

2013年5月4日〜5日



”翌朝は快晴。一晩吹いた強い風がまだ残り、新雪を巻き上げ、まるで厳冬期のような世界が広がっていた。”


 2年前の年末に黒部横断を無事に達成されたSさんから、 その時に魅力的に見えた綺麗な雪稜があるので行ってみませんかとお誘いを受けた。 そして、できれば雪洞を掘りたいと彼の希望があり、GWは雄山東尾根、雪洞山行に決まった。

 1日目:取り付きから山頂までの尾根の標高差は1200mほど、頑張れば日帰りできるくらいである。 扇沢の駐車場では急がずに出発準備を進める。観光客であふれているトロリーバス等を乗り継ぎ、黒部平へ。 黒部平駅のすぐ右側から延びる尾根が雄山東尾根で、展望広場からロープをくぐって出発する。

 最初から快適な雪稜歩きである。左にロープウェイの行き来と、 広大なカールを気持ちよさそうに滑っているスキーヤーを眺めながら高度を上げていく。 足首程度に沈む重い雪でやや急なところが多く、予想より時間がかかる。 大観峰駅の高さに近づくころ傾斜がきつくなってきたため、念のためアンザイレンする。 昼過ぎからガスが広がり、粉雪が舞い始めた。雪洞に適したところを探しながら進むが、どこも両側が切れ落ちていて安心できない。 14時を過ぎたころ2681mのピークと思われる平らな所に出るが、ここも雪洞を掘るのに適した斜面がない。 時間がないので、少し進んだ先のコルの北側斜面に掘ることにする。 ホワイトアウトで下が見えないが、見えていたらかなりの高度感がある雪洞掘りである。


 まずは、テラスを作り平らな場所に立ちほっと一息。 それから、ブロックの切りだしや天井の仕上げなどいろいろ工夫しながら雪洞掘りを楽しんだ。 1時間半ほどで2人には広いくらいの快適な空間が出来上がった。 落ちるとただでは済まない高さなので、テラスに目印と風よけを兼ねてブロック塀を積んだ。 時折吹く強い風も中には届かず、細い尾根上では雪洞の方が安全で快適かもしれない。

 翌朝は快晴。一晩吹いた強い風がまだ残り、新雪を巻き上げ、まるで厳冬期のような世界が広がっていた。 小さなピークをいくつか超えると、岩と氷が混ざった雪壁が出てくる。右から巻けるが、ロープを付けずに直登してみる。 岩壁を越えてピークに立つと雄山山頂が見えた。ピークから先は小さな岩尾根が続いている。 この岩尾根は右から巻くのが正解だったかも知れない。岩尾根のトラバースは、難しくはないが、一応ロープで確保する。 Sさんは、帰りはここから降りましょうと、直接タンボ平に降りるルートを、岩尾根の間に見つけた。 当初の計画では東一ノ越から室堂の降りる予定であったが、 雪質も安定しており、黒部平に戻った方が、交通費も節約できるし、何より人がいなくて静かで良い。

 岩のピークを下り、平らな広いコルにザックをデポして、空身で雄山山頂をピストンする。 次々と登ってくる人で山頂はいっぱいだが、我々の登ってきたルートは我々のみだ。 山頂はすぐに降りてコルで大休止。下降のルンゼは、雪質は安定しているが、時々団子になり急なため後ろ向きで慎重に降りる。 途中からSさんはシリセードであっという間に降りてしまった。 私はスキーをやらないので、この高さの滑降に慣れず、どうしても前向きに降りられない。 傾斜が緩んだところから、ようやくシリセードに踏み切り、雪まみれになりながら楽しんだ。 タンボ平は緩やかで、つぼ足では深く沈む。 黒部平駅までスキーヤーに追い越されながら、最後の大汗をかいた。

 全体的に雪質は安定しており、ロープは使用しなくても問題なかった。 白馬主稜をややマイルドにしたような雪稜であった。 しかし、展望は最高で、黒部湖を挟んで後立山の雄大な姿を常に眺めながら、 手つかずの真っ白な雪稜にトレースをつけることができる。 あまり知られていないため、こんなに美しい良いルートもったいないという気持ちと、 白馬主稜のように階段状のトレースがついて欲しくないという気持ちと、複雑である。 本やネットからではなく、自分の目で見つけたルートを自分で切り開いてみると、 思いがけず素晴らしいルートに出会えるのかも知れない。 今回お誘いいただき、またほとんど前を歩いて下さったSさんに感謝いたします。
(O記)

(下記の写真はカーソルをあてると説明が出ます)
雪質は安定し快適 雪洞からの朝焼け
トレースは自分たちでつける この岩ピークは巻くことができた
山頂への最後の登り 下りのルンゼ


5/4 黒部平駅9:00〜2681mピーク14:00〜雪洞掘り開始14:30
5/5 雪洞出発6:30〜山頂8:40〜コルから下降開始9:30〜黒部平駅11:30

メンバー:S(無所属)、O(山の仲間 浮雲)