神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

面河渓北沢から石鎚山・天狗岳

2013年10月5日〜6日



”しばらくゴーロを歩くと傾斜の緩い滝の連続となり、安全を考えてロープを出した”


 2年前の5月下旬に面河本谷から南沢を計画した。 その時は1日目の午後から雨になり、南沢の遡行をあきらめて御来光の滝上から愛大小屋にエスケープしてしまった。 私には面河本谷だけでも楽しめた山行だったが、 松山在住のOさんから今度は天気が安定する秋にぜひチャレンジしましょうと言われていた。 関東から四国は遠く、また他にも行きたい山もたくさんあるので、外交辞令的な提案と軽く考えていた。 しかし白い岩を奔流となって流れる面河谷のよき想い出は再訪したいと気持ちを持たせていた。 そして下部とは趣の違う上部の沢から石鎚山に立ちたいという気持ちはあった。

 実は昨年、Oさんのヒマラヤ登山の準備山行として富士山に一緒に行くことになっていた。 それが諸事情によって中止となり、今年の秋に富士山にとなった。 これも中止となり、その代わり私が松山に出かけて懸案の面河本谷から南沢に行くことになった。 切符を手配し、もう行くだけという時に絶望的な天気予報となった。 1週間延期するという提案があったが、もう準備が済んでいるし、翌週には別の予定があったので決行とした。


 計画では1日目は面河本谷を遡行して魚止ノ滝あたりでのテント泊だった。 天気予報から1日目の5日は確実に雨だったので、出発の前日に下部は登山道から省略して上部の中沢にと計画変更した。 雨の中で荷物を整理して面河道を歩き始める。 樹林帯の中の道なので雨はさほど気にならなかった。 歩行中は風がなかったが、小屋に着いてから出始めた。 小屋の前庭からは中沢と北沢が谷をへだてて一望できる。 中沢は滝場が白い筋となって、あたかも長大な滝のように見えた。 その左手には北沢の二股にある二つの滝が並んで見えた。 愛大小屋に泊るのは2回目だが、快適の一語につきる小屋だ。 ストーブに火を入れるとたちまち暖かくなり濡れたものもすぐに乾いた。 断熱もよいようだ。 夜には雨風ともに強くなり、本当に翌日には雨が止むのか心配になった。 外に出ると標高差で300mも下にある御来光の滝のものと思われる「ゴゥォー」という轟音が響いていた。

 未明に外に出ると小雨が降っていた。私は中止を確信して再び眠りにつてた。 起床は5時と決めていた。 目覚ましで起き、すぐにOさんが外に出て「星が見える」と叫んだ。 決行である。 外に出てみると御来光の滝の音は聞こえなかった。 これなら本谷の渡渉も問題ないだろう。 ところがIさんがどうしたことか沢靴を車に置いてきてしまったことが判明した。 仕方なくOさんと私の二人で出発することになった。 小屋の片付けや不要な荷の山頂への運搬をIさんにお願いした。 サポート隊付のアタックとなった。

 本谷への下降路は前回よりも笹が刈られていて歩きやすかった。 笹で濡れると思って雨具上下を着たが不要だった。 本谷に降り立つが、水量は想像していたより少なく渡渉はまったく問題なかった。 少しゴーロを下ると左から顕著な沢が入る。 この上流で西沢・中沢・北沢が分かれる(らしい)。 少し支沢を遡行して、右手に小滝が見えたあたりで小さな尾根を左へ越えて隣の沢に入った。 この沢を中沢と思って遡行し始めた。 しばらくしてOさんが中沢ではないと言った。どうやら北沢に入っているらしい。 私はどちらでもよいのでそのまま遡行した。

 やがて滝場が始まった。 小さな滝を簡単に越えると美しい樋状の滝(写真)に出会った。 ロープを出そうかと言われたが、簡単そうなのでノーロープで登った。 1箇所出だしが微妙な滝があり、ショルダーを使い後続にはお助け紐を出した。 その後の連瀑は傾斜が緩く困難な滝はなかったが、滝が連続して一連の滝となっていたので滑落はできなかった。 途中からロープを出した。ほとんど中間支点をとらず、ロープを一杯一杯伸ばしたスタカットで進んだ。

 そして二股となり、両股とも30m以上は確実にある滝となっている。 ここは中間の樹林帯をの右俣側にルートをとった。 微妙な箇所もあるとかでロープを出した。 私は滝下でビレーしていたが、そこは上からしぶきが落ちてくる。 当初は滝の水しぶきかと思ったが、どうやら小雨模様になったようだ。 尾根を滝の落ち口まで登り、左側の沢に入ると水は伏流となっていた。 伏流は音をたてて流れているが、大石は苔で厚く覆われて水流はまったく見えなかった。

 樹林帯の歩きやすい場所を拾いながら、時には笹をこぎ進むと、幅広の岩場の下に出た。 この岩場を私は第一幕岩と思って、もう終了点は近いと思って、 「あと1時間で終わりですかね」とOさんに言うと、まだ第一幕岩の下だとの答えだった。 さらに急斜面の藪をこぐと岩壁にぶつかり、どうやらこれが第一幕岩らしい。 岩壁と笹の斜面のコンタクト・ラインを左手は岩、右手は笹を掴んで右手に斜上した。 岩壁は1枚岩ではなく、途中にいくつかの小沢があり、雨上りのためか皆水流があった。 Oさんが以前北沢を登った時はチムニーを越えて岩壁を越えたと聞いていた。 それらしきチムニーに気を付けて歩いたが気付かなかった。 下を巻き続けると嫌らしいザレがあるとかで、 途中の岩の切れ目をロープを出して越えることにした。 ここは出だしこそ数メートルが立っているが、すぐに所々立木のある緩い草付斜面となっている。 草付斜面を登ると緩いスラブとなった。 途中までノーロープで登ると傾斜が強くなった。 ここはロープを出すことにした。 ロープの準備をしている時に、このルートが幕岩を越えるノーマルルートかとOさんに聞いた。 「このルートは初めてで、しかも下の取付でこのルートを見て決めた」との返答だった。 登ってみるとスラブは雨のためか土が洗われていてフリクションが効いて容易だった。 スラブを越えると笹原だったが、ロープを付けたまま1ピッチ分の笹をこぐと踏み跡が明瞭な主稜線に出た。 そこは石鎚山系の最高峰・天狗岳の直下南尖峰側だった。


 もしかしてIさんが南尖峰に待っていると思い、Oさんが探しに行ったがいなかった。 後で判明するのだが、我々が中沢を登って来るものと信じ、南尖峰の最後のつめにフィクスロープを張ったらしい。 弥山山頂の小屋に入って沢装備を整理した。 その間、Iさんは南尖峰にロープを回収に行った。 小屋の中は暖かく快適で、まだ下山が残っているのだがもう山が終わったような気になった。 土小屋への下山ではのんびりと紅葉も楽しみながら、横切るルンゼや山頂へと延びる尾根についてOさんのルート説明を受けた。 眼下には広大な面河谷流域の緑が広がっている。 なんだかまた来なければいけないような気にさせられた。
(S記)


5日 天気:雨
面河・亀腹9:40〜13:05愛大小屋

6日 天気:くもり一時雨
愛大小屋6:15〜6:45中沢出合〜8:00大滝下〜10:30主稜線〜天狗岳〜弥山12:00〜13:50石小屋

メンバー:M、I(以上「山の子」所属)、S(山の仲間 浮雲)