神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

能取岬の氷瀑群(クジラの滝、オジロの滝)

2013年3月2日



”オジロの滝は能取岬の氷瀑群の中で一番幅広く、流氷の海の渚から登るのが面白い”


 能取岬の氷瀑を登ろうという案を提案されるまでノーマークだった。 今回の北海道ツアーは期間が短く、美瑛をベースに層雲峡のアイスクライミングと 十勝での山歩きがそれぞれ一つだけこなせればよいと思っていた。 しかし能取岬の氷瀑を調べてみると、なかなか魅力ある計画との考えに変わった。 氷瀑そのものはどこにでもあるような平凡なものに感じたが、流氷の海に面したロケーションに強く惹かれた。 今回の北海道には登攀よりも旅的な要素を求めていたからである。

 しかし美瑛からは200キロをかなり越える距離があり無理だと考えた。 Bさんに上記のようなことを伝えると、「遠いですか」とまったく気にしない返信メールがあった。 彼の考える計画は層雲峡・銀河の滝でのアイスクライミングの後、その足で網走に行き、 網走で1泊後に能取岬に行くというものだった。 これなら無理はなく、是非行きましょうということになった。 ただ気がかりは能取岬での登攀の日に発達した低気圧が通過し、 気象庁は重大な交通障害の恐れがあるとの警告を発していたことだった。
能取岬の氷瀑群参照図


 前夜は網走市街地の高台にある「B&Bあばしり」に泊まった。 食事なしで3150円と安く、施設は立派で快適だった。 しかも管理人さんが親切でいろいろと便宜をはかっていただけた。 私たちの旅の目的がアイスクライミングと聞いて驚いていた。 網走でこんな遊びが行われているのは数日前に能取岬でのアイスクライミングの様子が地元の新聞に紹介されるまで知らなかったそうだ。

 天気予報では暴風雪となっていたが、翌朝は予想外の晴れである。 どうやら低気圧の通過が遅れているようで、網走は午後から雪となっている。 アプローチも短く滝も大きくないので午前中は楽しめるだろうと予定通り車を走らせた。

 能取岬の少し手前にキャンプ場があり、このあたりから海岸に降りるのが氷瀑群への道である。 キャンプ場への枝道は除雪していないのでどこだか解からなかった。 特徴のない地形だがカーナビの画面から「ここだろう」と検討をつけて車を停めた。 用意しているとカメラマンと思われる男が海岸から戻ってきて、「トレースはついていますよ」と教えてくれた。 ここはアイスクライミングよりスノーシュー散策のようなことが多く行われているようだ。

 スノーシューのトレースを辿るとガイドブック「北海道の山と谷」に記述のある小沢を越える。 そして海岸を見下ろす高台のヘリに出た。 流氷らしきものに渚付近は覆われ、その先は青い静かな海が広がり、流氷がところどころに浮かび、 さらにその先には一筋の白い線が見えた。 氷瀑群は網走側のF1から岬側のF9までがあるが、F4の少し網走側で海岸に降り立つ。 海岸沿いを少し歩くとF4クジラの滝の前に出る。 ここまで駐車場所から15分ほどである。

 F4は1997年にクジラが打ち上げられて滝の目印となったことからクジラの滝と呼ばれている。 正式な名称はチャラセナイの滝だと思う。 汀線と滝の間は数十mの距離があり林となっていて、わずかに滝を見えにくくしている。 高さは40mで形は八ケ岳ジョウゴ沢の乙女の滝にちょっと似ている。 荷物を持って登ってそのまま帰るという案もあったが、流氷見物もしたいという私の要望で荷を置いての往復とした。

 OさんのビレーでBさんが登り、写真を撮りたいという私のわがままを通してもらった。 もう春なのか氷は溶け始めところどころカリフラワー状態になっている。 トップは表面の氷を落としてアイススクリューを決めて慎重に高さを獲得して行った。 このあたりの滝は落口が高原状で豊かな樹林帯となっている。 そのために確保は立派な立ち木が使えて安心である。

 私はラストのつもりだったが、どういつ訳か私のロープが最初に引っぱられたのでセカンドとなった。 傾斜はところどころで強いが休む場所があるので楽だった。 氷が柔らかくアックスを振るのも楽だった。 登りきり後を振り向くと海がきれいだった。 天気はまだよく暖かい。 Oさんはヤッケを脱いて登って来た。 手袋はもちろん付けているが素手でも登れるような暖かさだった。


 クジラの滝を登攀し、荷物を背負って岬方面に進んだ。 いくつかの滝はもう末期という感じだった。 最後のハヤブサの滝はよく写真で見るがツララが小さくなっていてこれがハヤブサの滝とは信じられない姿となっていた。 流氷の上を歩いたりしながら少し戻り、F7を登ることにした。 この滝はオジロワシが頭上を飛ぶ姿をよく見ることができることからオジロの滝と呼ばれている。 能取岬の氷瀑群の中で最も幅の広い滝である。


 この滝もクジラの滝と同じように私は写真を撮らせてもらった。 Bさんが以前登った時にロープが足りなかったことがあったそうで、右側にあるデルタ状の斜面の上から取り付いた。 直上すると立ち木がないために途中でトラバースしなければならないルートとなってしまった。 このころから曇り空になり時々小雪も舞って寒くなってきた。 私は流氷と滝を同時に1枚の画面に入れたくて海の上から登攀の様子を眺めた。 登攀自体はクジラの滝よりも容易だったが、最上部の氷が溶けていて不安定な雪壁を登らなければならなかった。

 車に戻ったのは13時ごろだった。 天気はまだなんとかもっていた。 しかし網走の街を抜けるころから風雪となった。 防風柵のない箇所は吹き付ける雪煙で視界が一時的になくなった。 この日北海道各地、特に北見地方では多くの犠牲者を出す気象遭難が起こった。 網走でも死者が出ていた。 私たちも出発がもう少し遅かったら巻き込まれていたかもしれない。 楽しかったアイスクライミングと同じ日の悲劇。 私の記憶に長く残るであろう日になると思った。
(S記)


天気:はれのちくもり
クジラの滝8:20〜10:20、オジロの滝11:30〜12:30

メンバー:S、O、他1(山の仲間 浮雲)