神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

剣岳・八ツ峰上半から北方稜線

2012年9月25日〜27日



”仙人池からの朝日に染まった八ツ峰からチンネに続く岩稜”


 今年の夏は泊まりで山に(沢以外で)入っていないので、どこか縦走に行きたいと思っていた。 Sさんより剣のお誘いがあり、クライミングのルートより稜線上に抜けるようなルートが良いと希望したところ、 八ツ峰か源次郎尾根から本峰を提案された。 結局、小屋泊まりで荷物を軽くして、八ツ峰上半を登り、北方稜線から裏剣の方へ抜けるルートに決定した。


1日目
室堂〜剣沢〜真砂沢ロッジ


 紅葉が始まっている室堂の景色を楽しみながら、いつもよりは軽い荷物で歩く。 剣沢の下りに入ると剣沢小屋の方とすれ違い、雪渓の状況を書いたとても丁寧な地図を頂いた。 この下の雪渓はクレバスだらけなので右岸の巻き道を行くように指導された。 また小さなスノーブリッジの下を通る箇所があり注意をうながされた。。 地図通り、クレバスを上手く避けて、ぐずぐずの雪渓を下り、真砂沢ロッジに到着。 小屋にはお客が全部で6名で、1部屋を貸し切りで使用でき、快適。 初めての小屋泊、美味しい食事と、お風呂に感動!!


2日目
八ツ峰上半〜北方稜線〜小窓雪渓〜池の平小屋〜仙人池ヒュッテへ


 起きた時は源次郎尾根に行くというガイドパーティーは出発していた。 私たちは明るくなってから出発。 長次郎谷の出合いからアイゼンを付け、雪渓は締まっているので、快適に登れる。 見上げる空の青さが濃い。 長次郎谷の途中は切れているところがあるが、安定していて歩きやすかった。 最後急なガレをAフェイスの基部に向かって登り、右へトラバースして5・6のコルへ。

 6峰は、右にトラバースするように登っていく。ロープは出さなかった。 先行パーティがすんなり登っている。 快適だが高度感があり、フリーだとかなり慎重になってしまう。岩場登りきると歩くような道になる。 背後に高くそびえていた5峰の尖塔も見下すようになり、遠く槍ヶ岳も望める。 今日泊る予定の仙人池ヒュッテも見える。 そしてDフェースの頭に。ここはいかにも頂上という感じのピークで、以前登った剣岳本峰北壁を感慨深く眺めた。 一息ついてDフェースの頭からの下りはクライムダウンできそうだが、悪そうなところもあるので懸垂に切り替える。 Eフェースの頭からの下りも懸垂して、7峰の基部へ。チンネ左稜線がますます近づく。 7峰は見た目は垂直に見えたが、取りついてみると簡単。 登りきったあと狭いリッジを慎重に超えると、三の窓側の下の方にはっきりした道が見える。 この先のリッジは簡単そうには見えなかったので三の窓側へ懸垂で降りる。7峰の巻き道だ。


 7峰の巻き道で8峰の登り口を見逃すととチンネの方に行ってしまうと、事前情報があったにも関わらず、 行きあたった壁の登れそうなところを探していたら、右側に寄ってしまい、気がつくと目の前にクレオパトラニードルがあった。 間違っていることは分かっても、今登ってきたルートを戻るのは厳しい。 そのままクレオパトラニードル基部を越え、急な岩場を登っていくと広いコルにでた。 コルの右壁に新しい懸垂支点がある。ここはどこだろう。 とりあえず、目の前にある簡単なピークの上から周囲を眺めることにした。 ここはチンネのピークだ。目の前にある八ツ峰の頭から懸垂で降りようとしている先行パーティが見えた。 ここから八ツ峰の頭へ出るにはもう一つ三の窓ノ頭という小ピークを越えなければならない。 時間がかかりそうなので、そのまま池ノ谷ガリーに降りることにする。

 コルに戻ると、チンネ左稜線を登っている2人パーティーがすぐ目の前に見えた。 コルからの懸垂は、偵察したところ50mのロープ1本では下まで届かなそうである。 ガレをクライムダウンするのは恐く感じた。 申し訳なく思いながら、左稜線の方に声をかけ、ロープをお借りすることにする。 京都と兵庫から来たという若いお二人は、チンネ左稜線を宿泊セットすべて背負って登っている強者である。 ロープありがとうございました。助かりました。

 池ノ谷ガリーの急なガレを慎重に下り、三の窓に到着。 ここは危険地帯ばかりの剣の岩稜帯で唯一ほっとできる場所である。 しかし、のんびりはできない。 この先にまだルートファインディングの核心が残っている。 北方稜線の下りは迷いやすい。ところどころ道が不明瞭になっており、一部踏み跡を失い、強引な藪こぎから懸垂をした。 それが良かったのか、その後の道は間違えることなく、小窓雪渓までスムーズに降りられた。 小窓雪渓から尾根への登り口も印がハッキリしており、迷うことなく池の平小屋に出られた。 予想より時間がかかり、仙人池ヒュッテに着いたのは17時すぎとなってしまった。

 仙人池ヒュッテはなんと私たちの他に宿泊者なしの貸し切りであった。 そして、なにより熱い湯船に浸かれるのは疲れた体にありがたい。 小屋の中からから八ツ峰やチンネが良く見える。 あんなところにいたのかと食堂の窓からお茶を飲みながら眺められるのはなんとも言えない。


3日目
仙人池ヒュッテ〜ハシゴ谷乗越〜黒部ダム




 仙人池ヒュッテに泊まらないと見られないという、朝日に輝く八ツ峰を快晴無風のもと見ることができた。 仙人峠までの道端ではチングルマが白く凍っていた。 剣沢二股への下りでは八ツ峰から北方稜線にかけての岩稜や氷河と確認された小窓雪渓・三ノ窓雪渓を眺めながらのんびりと下った。

 やはり、剣は体力やルートファインディング、雪渓の処理など全体的にレベルが高い。 体力をつけてまた同じルートをチャレンジしたいと思う。
(O記)


感想

 好きな山は、と聞かれる私はといつも「剣岳」と答えている。 剣には若い時の思い出がたくさんつまっている。 そんなよき思い出を抜きにしても、行けばいつも期待を裏切らない山だ。 厳しい山だが、これからも体力の許す限り小さな足跡を積み重ねて行きたいと思っている。

 多くの山行を重ねている剣岳だが、 私の経験は夏の最盛期と春に集中している。 今回の9月下旬という時期は雪渓も惨めな姿になっているし、紅葉には早い。 なんとなく魅力の少ない時期と思われるが、静けさという貴重なものがある時期だった。

 計画段階では営業小屋に連泊するという禁じ手を使うのが少し後めたかった。 しかし終わってみると山小屋泊の山行もテント泊では味わえないよさを感じた。 北アルプスの山小屋というと、すぐに「混雑」を連想してしまうが、 今回は運よく混雑とはほど遠い状態で不快を感じることがなかった。 ゆったりとした気持ちで山が楽しめた。 大勢のスタッフからのサービスにはネパールでの大名登山を思い出してしまった。 今回は本峰は目指さず、変化のある山旅のようなコースだった。 常にヒマラヤのトレッキングのように感じて歩いていた。
(S記)



25日 天気:はれのちくもり
室堂9:30〜11:35剣御前〜14:40真砂沢ロッジ

26日 天気:快晴
真砂沢ロッジ5:30〜6:05長次郎出合〜8:20五六のコル〜9:10Dフェイスの頭〜11:00チンネの頭〜12:20池ノ谷ガリー〜 12:55三の窓〜14:55小窓〜16:20池ノ平小屋〜17:20仙人池ヒュッテ

27日 天気:快晴
仙人池ヒュッテ6:05〜7:25剣沢二股〜8:15ハシゴ段分岐〜9:35ハシゴ段乗越〜14:15黒四ダム

メンバー:S、O(山の仲間 浮雲)