神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

杓子岳・杓子尾根

2012年5月5日〜6日



”ジャンクションピークを過ぎると特徴的な雪庇のある山頂がぐっと近づく。そして風も強くなった。”


 今年のGWは早くから剣岳を考えていた。 富山県の登山条例の対象となる危険地域なので、早目にメンバーも集め、日程も決めていた。 ところが山行日のGW後半は天気予報がかんばしくなかった。 今年の春から今までは1週間先の天気予報しかできなかったのが10日先まで可能となる規則改正がった。 確立の低い天気予報を毎日見て一喜一憂する日々が続いた。 予報は次第に悪い方に変わっていった。 直前まで予報がよい方に変わるのを期待したが、出発の当日になってついに剣は断念することに決めた。 代案は日程も縮小して、1日の好天でもなんとかなる杓子尾根とした。

 5日の早朝に猿倉の駐車場に着いた。 臨時駐車場はすでに満車に近かった。ほとんどの登山者が山スキーのようだった。 当初は5日はのんびりと入山するだけだったが、翌6日にはまた天気が悪くなるようなので、 5日中に頂上まで行ってしまうことに決めていた。 杓子尾根は猿倉から日帰りできるルートだが、今回はせっかくのGWなので1泊することにしていた。 駐車場からしっかりと付いたトレースに導かれて林道を歩いた。 長走沢を横切り、大きく尾根を巻いて堰堤を見送ると白馬大雪渓の末端・白馬尻である。 いくつかのテントが張ってあったが、静けさを求めて右岸の台地に上がった。 すでに1張りのテントがあって、数人が出発の準備をしていた。 私たちは話し声の聞こえない程度の距離をとってテントを張った。 そして杓子尾根に向かった。

 杓子尾根にはすでに5人パーティーが先行していた。 私たちが出発する時には最初の緩斜面を越えて雪壁になるあたりを登っていた。 先にテントを張っていた人たちは私たちの後を登って来ていたが、 どうした訳か小さなクレバスを巻くあたりで姿が見えなくなってしまった。 雪はやや腐っていて足首くらいまでもぐった。 時々の踏み抜きなどもあり、先行パーティーのトレースはありがたかった。 雪壁の最後は雪が切れてブッシュが出ていた。 そこを越えるとルートは顕著な尾根になり、左手の双子尾根が見え出し、樺平にある岳樺の大木も見えるようになった。 私たちはゆっくりと登っていたが、尾根の上部で先頭になってしまった。 歩きやすいといえ、先頭に立つてみるとトレースのありがたみを感じた。

 歩き始めたころは尾根の上部は雲の中だったが、天気は回復に向かっていて視界が広がっていった。 大雪渓をはさんだ蓮華方面には青空も見えるようになった。 その蓮華方面にはヘリの音が絶えなかった。 下山してから小蓮華で6人が死亡する遭難を知ったが、その時は遭難には結びつけて考えなかった。

 暖かかった天候も双子尾根とのジャンクションに着く少し手前から風も加わって寒さを感じるようになった。 オーバーパンツはすでに着けていたが、手袋を冬用に替え、上も雨具を着けた。 双子尾根と合流するとトレースがあった。 すぐに顕著な台地になり、天気の回復もあり今まで見えなかった杓子岳の山頂が見えるようになった。 稜線の向こう側から白い雲が押し寄せていたが、一瞬頂上の雪庇が青空に浮かんだ時があった。 しかし写真を1枚写す間に空は白い雲に覆われてしまった。 稜線に出れば、きっと強風に落ち着いては休めないと想像して、体力をセーブして登高を続けた。


 尾根は一部細くなっていて、降ったばかりと思われる新雪に覆われていた。 空は灰色だが、雪は今までの春の汚れた雪と違って白さが際立っていた。 ピッケルを刺した後の穴が青く見えてきれいだった。 頂上直下の尾根は一部岩が露出していた。 岩はベルグラに覆われていて、大きな岩も手をかけると簡単に動いた。 ここを慎重に越え雪庇を左に見ながら雪壁を越えると杓子岳の山頂だった。

 想像していたとおり、稜線の風は強かった。 頂上の標柱の前で完登の握手を交わしただけで下山に移った。 少し下ると岩の陰にぽっかりとあいた雪の窪地があり、ここに入り込むと風がないので大休止した。 背後の岩にはベルグラが張り付いているが、暖かさに氷が緩み、それが風で飛ばされて時々休んでいる場所に落ちてくる。 それでも風のあたらないこの窪地は天国のようだった。

 大雪渓の降り口は急斜面となっていて、雪の状態によっては嫌な箇所だ。 2年前の4月にここを下降した時は雪が堅くて後向きにならされた。 しかし今回は雪が適度に緩んでいて後ろ向きになるような箇所はなかった。 テントまで標高差1000mもあるが、雪渓の下りは楽だ。 ちょっと疲れて白馬尻のテントに戻って落ち着くと、すぐに雨が落ちてきた。 雨は時として強風を伴い、しばらくで静かになったかと思うとまた吹き出す。 こんな天気が夜まで続いた。

 Fさんはこの山行の少し前に○○才の誕生日を迎えた。 OさんとはFさんには知らせずに泊りの山で誕生祝いをすることにしていた。 今年はテント泊まりの山行がなかったので、この山行まで延び延びになってしまっていた。 ちょうどFさんが食事前の時間に一眠りしている時を利用してこっそりとケーキを用意した。 食事が終わり暗くなってからケーキを取り出して、ささやかに誕生日を祝った。


 翌日は明るくなってから起きた。 テントの外からは鳥のさえずりが聞こえた。 テントから身体を半分出して外を見ると、昨日と同じような天気で東側はまずまずの天気だが、高い山は雲の中だ。 のんびりと仕度してテントを後にした。 白馬尻に張ってあったテントの数も減っていた。 やはり天気が悪いので早目に下山したのだろう。 ゴールデンウィークという感じのしない風景だった。 簡単に猿倉に着いたが、駐車場の直前で雨が降ってきた。 帰りには木崎湖温泉の「ユープル」に寄った。 ここは朝7時から入浴ができる。 風呂からあがり休憩スペースで地元の新聞を読むと、前日の小蓮華岳での6人が死亡する遭難が一面に大きく出ていた。 ヘリの音がずっと聞こえていたのはこの遭難のためだったようだ。

 結局今年のゴールデンウィークは所期の目的の山である剣岳は登れなかった。 私の年齢からは雪の剣岳に登るチャンスは多くないので残念な気持ちが強かった。 しかし今回の山行は短期間の小さな山だったが、ポピュラーな山塊にもかかわらずに比較的静かな山を楽しめたと思う。 そして悪天候の合間を上手く利用して、計画のルートを歩ききることができた。 いつもの山仲間とよい山ができたことに満足だった。
(S記)


5日 天気:くもり、夜雨
猿倉6:00〜7:20白馬尻BC8:10〜12:00JP〜13:10杓子岳〜大雪渓〜15:15BC

6日 天気:くもりのち雨
BC7:10〜7:55猿倉

メンバー:S、F、O(山の仲間 浮雲)