神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

錫杖岳前衛壁左方カンテ

2012年8月3日(金)



”クリヤ谷を靴を脱がずに渡渉すると、錫杖正面壁が見え始める”


 5:00起床の予定が、4:30ごろに目が覚めてしまった。 緊張しているのだろうか。だとすればよいことだ。駐車場から槍が見える。槍見という地名はウソではない。予報通り天気はよい。 2人の単独行者が出発して行ったがクライマーではないようだ。 人気の錫杖も平日の今日は我々のみ(?)と期待して出発(後に、そうではないとわかる)。 笠が岳の登山道をしばらく行くと巨大なザックを背負った登山者を追い越した。 彼は今日から裏銀座方面に2週間の縦走予定だという。最近縦走してないな、と思う。

 クリヤ谷を靴を脱がずに渡渉すると、錫杖正面壁が見え始める。錫杖沢出合からは左岸の悪い道を登る。 壁に近づくとコールが聞こえてきた。やはり、クライマーがいた! 正面壁基部にぶつかったところから右に10秒で左方カンテの取付だ。 取付にはザックと靴がデポしてあった。先ほど聞こえたコールの主たちのものだろう。 左方カンテの取付は巨岩が横に並んでいるのが特徴的だ。

(1ピッチ目=III、Gリード)
 ルンゼ。
 左端の階段状の岩が登りやすそうだが、右端のチムニーに入る。ランニング も必要ない程度の簡単な登り。ルンゼの途中のビレイ点にはハンガーボルトが2つ。

(2ピッチ目=IV、Oリード)
 ルンゼの続き。
 1Pとは違い、出だし立っていてランニングが欲しい。カムが効くので安心だ。 ピナクルテラスのビレー点にはハンガーボルト。

(3ピッチ目=V+、Gリード)
 フェース。
 ビレイ点の辺りにキャメ#3を効かせてフェースの左から取付く。すぐに核心の フェースとなり、どう越えるかを探る。高度感もあり、ランニングはさっきのカムのみ なので足がすくむ。目の前には撤去されたリングボルトの跡が。ここにあればホント 心強いのに…、と思ってもしょうがない。覚悟を決めてバランスを取りながら少しづつ 右上し、右手のガバに届けばおしまい。その後、念のため一か所カムを効かせて登る。 “高度感付”ワンムーブという点では、ここがここが一番難しく感じた。

(4ピッチ目=IV、Oリード)
 チムニー。
 慎重に登れば難しくはないが、ザックを背負っていると面倒だ。バックの 壁が前傾しているのでザックが引っ掛って登れない。ザックが後ろの壁に触れないように 向きを考えて登る。大木(ホントに大きい、120のスリングでは巻けない)にある残置 スリングでビレイ。ちなみに、クライミング中はザックを一つだけにして、セカンド クライマーが背負うという形をとった。

(5ピッチ目=V、Gリード)
 フェース〜カンテ。
 4Pを終えて左を見ると、何度も写真で見たフェースだ。右から 取付く。立っているものの落ち着いて登れば難しくないが、何しろピンはない。 カムを効かせて登るが、上部はランアウトする。確実な登攀力が必要だ。ガイド本 などにある6ピッチも繋げて大テラスまでロープを伸ばした。しかし、声の通りや ロープ操作に問題は感じなかった。

(6ピッチ目=V+、Gリード)
 フェース。
 このピッチが核心だ。まずは出だしのすっきり(?)した3mの垂壁。5.11が 登れる人なら左右どこでも登れそうだが…。ああでもない、こうでもない…、と時間を かけて右のフェース(チムニーっぽい)を選ぶ。ホールドはないがバックの壁も使いな がら少しづつ上げて行く。最後は“華麗”とは程遠い動きでチョックストーンを越えた。 その後はカムでランニングを取りながらフェースを登るが、下部は細かい。登って行くと ホールドは大きくなるが完全なランアウト。最後の出口付近にハンガーボルトが見えるが 微妙に立っている。ここまではランニングを取らずに来たが、ここでフォールしたら 完全にアウトだ。足元にナッツ2つを効かせ、慎重にボルトにクリップ。この長いピッチで ようやくホッとした瞬間だった。立ったフェースを右から乗越すとビレイ点だ。

(7ピッチ目=IV、Oリード)
 細かいフェース。
 これまでのルートと違い、カム類が使えない。壁の途中に一つだけ ハンガーボルトがあるが、ランニングはそれだけ。カム類も使えないので結局はラン アウト。でも、ランニングを取りたいので、そのハンガーボルトから微妙な トラバースで右上し、木でランニングを取る。バンド上の細かいフェースを越えると 灌木帯に入り、ハンガーボルトでビレイ。

(8ピッチ目=II、Gリード)
 灌木帯を進みチョイ壁を登ったところ、木でセルフを取って肩がらみで最後の ビレイ。そこから一歩きで平らな場所に出る。西穂から奥穂、槍まで一望にできる 景色は圧巻だった。ただ、そこは癒される場所ではあったが、まだまだ先(高いところ) が見える場所であった。

(懸垂)
 6ピッチ目の終了点からまっすぐ降りると自然に「注文の多い料理店」に入る。 3ピッチで北沢に降りるが、2ピッチ目は50mロープだとギリギリだ。懸垂中、右を 見ながら懸垂アンカーを探すとよい。
(左方カンテ6ピッチ目の終了点で懸垂の準備をしていると、一人登ってきた。3人の パーティーで地元岐阜からとのこと。今日出会ったクライマーはこの3人のみだった。 リーダを含む2人が登って来るのを30分も待ってしまったが、彼らのリーダーに懸垂の ことを教えてもらった。リーダーのヘルメットには Right & Fast とあった)

 左方カンテ登攀の所要時間としてはまずまずであり、時間的には余裕があったと思うが、 炎天下の長いクライミングで心身ともに消耗していた。1,5リットルの水では足りず、 喉もカラカラ。下りの錫杖沢で顔を洗い、水を沢山飲むと少し楽になった。西日を浴び ながら慎重に登山道を降りた。
(G記)


コースタイム

駐車場5:23〜6:10渡渉〜6:50錫杖沢出合〜7:45左方カンテ取付8:20〜12:20終了点〜14:55左方カンテ取付〜16:35駐車場

(左方カンテ取付から終了点まで)
8:20<1P>8:47<2P>9:10<3P>9:35<4P>10:05<5P,15分休憩>10:50<6P>11:40<7,8P>12:20

メンバー:G、O(山の仲間 浮雲)