神奈川県の「山の仲間 浮雲」の記録です


山行記録

谷川岳・一ノ倉沢烏帽子沢奥壁中央カンテ

2012年8月16日(木)



”大きな一枚岩を乗っ越すと一ノ倉岳まで後は笹薮のみだ”


 前日19:30にゆめが丘駅を出発し、土合駅には11:00前に着いた。一応、テントを持ってきたが、 土合駅のベンチは快適そうなので、そこで寝ることにする。シュラフどころかシュラフカバー でも暑い。土合駅は多少きれいになっていた。そして、そのトイレはすごーくきれいになっていた。 3:30に起きて軽く食べ、車でベースプラザ駐車場へ。4:30ごろ、うっすら明るくなり始めた車道を一ノ倉沢出合に向けて歩く。

テールリッジ  出合に着くころには陽が昇り、谷川の稜線を赤く染めていた。 出合付近の雪渓はもちろんないが、ヒョングリの滝付近はしっかり残っていて不安なく歩けた。 今年は雪が多かったのと気温が上がらないとの理由で、例年より雪渓が多いようだ。 雪渓に上がって軽アイゼンを着け、少し歩くとテールリッジ末端だ。 普通は向かって右の腹から取付くが、そちらは雪渓がなく近づけない。 左の側面でシュルンドの空き具合が小さいところを狙ってテールリッジに取付く。 しかし、リッジまでの側面は悪いのでロープを出した。 その後、中央稜取付きまでは暑い(熱い?)こと以外は快適。 黒いほどに青い空をバックに衝立岩が聳え立っている。 中央稜取付きでギアを着けてバンドを歩くとすぐに中央カンテの取付きだ。 人の気配がない。南陵でさえも。今日の一ノ倉の岩壁は我々のみか…。

(1ピッチ目=III+、トラバースから草付直上、Oリード)
トラバースの抜け口がちょっと怖い。その後の草付の直上から烏帽子岩の肩までずっと強い 日差しを浴びることになった。

(2ピッチ目=III、草付直上、Gリード)
直上すると、左上にビレイ点が見える。ランアウトしているが難しくない。右上には凹状 岩壁の見事なラインが見える。左上ランぺの下でビレイ。

(3ピッチ目=IV、左上ランぺからカンテ、Oリード)
ランぺの登り口がちょっとイヤラシイ。その後は快適なカンテ。烏帽子スラブが眩しい。

4ピッチ目のチムニー (4ピッチ目=IV、Gリード)
フェイスを直上の後、左にトラバースして直上。ここでのロープの屈曲で徐々にロープが 重くなる。目の前の大きな岩の左に出たいがロープが重い。ここは、「ロープの流れが悪く 途中でピッチを切ったために、次のピッチで面倒になった」という記録をネット上でいくつか 見ていた。その記憶があったので、我慢してロープを引きずりチムニーが見えるビレイ点まで ロープを伸ばした。

(5ピッチ目=V-、チムニーからフェース、Oリード)
出だしから左のフェースがいかにも簡単そうで、しかもその先にピンやスリングが見える。 しかし、それらはフェイクだ。恐らくそのフェースを登ると行き詰り、そこに懸垂もできる ような支点が作られたと思われる。皆が登っているようにチムニーを登った後、左のフェース には移らずそのまま先に進めばビレイ点だ。

(6ピッチ目=III、フェースを左上から右上、Gリード)
まず、左上してルンゼとぶつかる辺りから今度は右上。次ピッチの垂壁が見えるところで ビレイ。ハンギングではないが、テラス(レッジ)は狭い。

7ピッチ目 (7ピッチ目=V(A0)、垂壁からコーナークラック、O+Gリード)
ここは垂壁とコーナークラックの2つの難所があるので、途中でリードをチェンジ。まず、垂壁で あるが、はっきり言って我々がフリーで登れるものではなかった。残念ながら、今回はこの垂壁 のみA1となった(スリングでアブミを作って使用)。最近フリーも少しは自信がついてきたところ なのでショック。コーナークラックはレイバックで処理したが、フェースクライミングで充分に トライできると思った。アルパインの登り方としてはそちらの方がよいだろう。登り切ったところ で右を見ると4(2?)畳半テラス。ここで初めての小休止。

(8ピッチ目=IV、凹角、Oリード)
ビレイ点から左上に見える凹角を直上。登り切った先でビレイ。

(9ピッチ目=IV、フェース、Gリード)
烏帽子岩がすぐ上に見えている。その左(肩)を目指して草付のフェースを左上。烏帽子岩の肩で ビレイ。南稜終了点につなげる懸垂支点がある。振り返れば眼下に衝立の頭とロウソク岩、そして 烏帽子沢と一ノ倉沢の長い筋から出合まで見えるシーンは圧巻。

9ピッチ目終了点から (10ピッチ目=IV、ルンゼのトラバース、Oリード)
出だしはII級程度だが、烏帽子岩の左側面に回り込むと途端に悪くなる。今日のすさまじい 快晴の暑さでもびしょ濡れだ。ルートも奥壁(懸垂岩基部)にぶつかった後、沢を渡り左側の 壁上に出る格好だ。そのためロープの流れも悪い。笹に隠れた錆びたハーケンでビレイ。

(11ピッチ目=II、笹薮の急斜面、Gリード)
ビレイ点に向かって正面上と左上に大岩を挟んで2つの稜線が見える。我々は左に見える稜線を 目指した。結果的にはロープをしまってもよかったが、先が分からないのとビレイ点が不快 (ジメジメした笹薮)だったので、そのままロープを着けて急な笹薮を直上。烏帽子尾根の稜線に 出たところで肩がらみのビレイ、中央カンテ終了とした。この笹薮もかなり急壁だ。漸くクライ ミングシューズの痛さから解放されアプローチシューズに履き替える。

 ここから笹薮を掻き分けて烏帽子尾根を出発。5ルンゼの頭が見えている。5ルンゼの頭に着き、 念のためトップのみクライミングシューズに履き替えてスタカットで登攀(1P)。 烏帽子尾根を出発 ここで、ガスに巻かれて遠くでゴロゴロと聞こえたが天気が崩れることはなかった。 その後、大小の岩を越えながら稜線を進み、大きな一枚岩を乗っ越すと後は笹薮のみだ。 30分ほどの藪漕ぎで登山道に出る。そこから右に30秒で一ノ倉岳山頂。危険地帯を脱出した安堵感がこみ上げた。 というか、疲れすぎていて感慨もなかった。

 一ノ倉岳16:00。我々の計画には稜線でのビバークも予定されていたが、ここでビバークする には早すぎる。予定通り西黒尾根経由で下山することにした。その判断のポイントは次だ。 西黒尾根上部からラクダのこぶ下までの岩場を明るいうち抜け、樹林帯に辿り着けるかどうか。 樹林帯以後は、ヘッドライトの行動でも問題ないと考えている。 一ノ倉岳山頂にて 我々は確かにかなり疲労していたが、自分たちの技術と残存体力で十分可能と判断した。 結果的にヘッドライトを点けたのは樹林帯に入ってしばらくしてからだった。

 20:00に林道(西黒尾根登山口)に着き、我々の中央カンテは行動開始から15時間半で終わった。 二人とも疲労困憊で、その時思ったことは喜びというより、解放された安堵感ではなかったか。 喜びはおそらく、後々湧いてくるのであろう。

 今回の荷物(G)は水2リットルを含め、約15kg。二人とも初めてのルートで様子が分からない こともあり重くなってしまった。7ピッチ目の垂壁をフリーで登れなかったのは、この重量の せいにしよう。結局、今日の一ノ倉に人の気配はなかった。 肩の小屋付近にいた登山者2人が、行動中に見た人間のすべてであった。
(G記)


コースタイム

・ベースプラザ〜ベースプラザ
ベースプラザ4:30〜5:20出合5:30〜7:50中央カンテ取付8:10〜13:50終了点14:18 〜15:56一の倉岳16:13〜17:24肩の小屋〜20:00林道〜20:05ベースプラザ

・中央カンテ取付〜終了点(烏帽子尾根)
8:10<1P=22min>8:32<2P=28min>9:00<3P=30min>9:30<4P=30min>10:00<5P=42min>10:42<6P=16min> 10:58<7P=71min>12:09<8P=23min>12:32<9P=33min>13:05<10P=28min>13:33<11P=17min>13:50

・終了点〜国境稜線
終了点14:18〜5ルンゼの頭14:50〜一枚岩15:32〜15:55国境稜線(97min)

メンバー:G、O(山の仲間 浮雲)


感想

 谷川中央稜の後、今度は中央カンテに行きませんかとお誘いを受けた。 正直体力的にも技術的にも自信はなかったが、こんな自分でも誘ってくれたことが嬉しく、 また本気ルートに集中する感覚を思い出し、行ってみたくなってしまった。 それにしても、国境稜線まで抜けるのか・・。頑張るしかない。

 トレーニングとして行った、錫杖左方カンテと広沢寺は有効であった。 錫杖ではほとんど支点がない登りに慣れ、広沢寺では上まで50mを10本(500m)、 うち5本はザック(2リットルの水とアイゼン他)を背負って灼熱の中登った。

 さて、本番。Gさんも私も初めてのルートである。取りつきからルート取りが試される。 きっとここが中央カンテだろう。1ピッチ目私。登り始めたら、集中して登っていくしかない。 ルートが合っているのか不安な中、草つきのなかに埋もれているハーケンには古いシュリンゲがあり見つけやすいようになっていて安心。 浮き石も多いので丁寧に登っていく。 3ピッチ目が一番快適で楽しかった。 その後は、徐々に暑さにやられペースが落ち気味に。強烈な日差しと熱い岩。 誰もいない理由はこれか。

 核心も何とか超え、最終ピッチの10ピッチ目。傾斜の落ちた濡れたルンゼ。ここが一番気を使った。 支点がなくロープの流れが悪く重い。 かなり時間をかけて登ったが、トレーニングから一緒のGさんなので心配はしていると思うが、信頼できる。 慎重に登っていたら左の藪の中に道が見えた。終わった〜。

 国境稜線までは一度トレースしているので、それほど心配はないが、気の抜けない場所なので確実に。 最後の藪こぎは、笹やぶが以前より成長しているのではないかと思いながらかき分け、稜線に出た。 一ノ倉山頂で最後の水を飲み干してしまった。

 今回は暑さにかなりやられ、またルートファインディングや登りの未熟さなどで全体的に時間がかかってしまったが、 初見の二人でルートをクリアできたことは、経験者と行くよりも達成感がある。 Gさんには、リードでもフォローでも助けていただいた部分が沢山ありますが、 このような経験ができ、パートナーとしてとても貴重な相手と出会えたと思っています。
(O記)