山の仲間 浮雲(神奈川県)の記録です


山行記録

中央アルプス・将棋頭山/行者岩(桂小場から往復)

2011年12月27日〜29日



”長い樹林帯の登りが終わると、歩きやすい稜線が将棋頭山へと続く”


 長い山行をする気力も体力もすでにないが、やはり年末年始にはいつもとは違った山をやりたいという気持ちは残っている。 少し前までは4日間での山が多かったが、最近は3日間での往復登山と言う形態が定着してしまった。 時期はトレースのない静かな山を味わうために、登山者が多い正月休みの前に実施する計画もすっかり定着した。

 今回のメンバーは秋には決まり、目標は早くから中央アルプスの将棋頭山を桂小場から往復することに決めた。 このルートは途中にある避難小屋が使え、 登山を開始する小黒川キャンプ場のゲート(1070m)から将棋頭山(2730m)までの標高差1700mは適度な標高差と考えた。 避難小屋(2065m)の高度は少し低いが、雪が多くても確実に入山できる安心感はある。 この山域の少ない経験からは2300mからの深いラッセルに苦しめられていたので、 余裕のあり過ぎる計画とは思っていなかった。



27日 天気:はれ
ゲート7:30〜7:55桂小場〜11:50大樽避難小屋

 山行の直前に非常に強い寒波が日本中を覆った。 このクリスマス寒波は日本海側だけでなく東海地方にも雪をもたらした。 車での山行は山の中での行動だけでなく、登山口へのアクセスも心配となる。 ネットで調べると木曽谷側は国道も白くなっているようだが、伊奈谷側には雪はないようだと解り一安心である。 寒波は登山1日目は少し残るものの、次第に北に去って行くという予報であった。

 前夜は中央道のPAで車中泊したが、まだまだ寒さが残っていた。 事前の情報のように伊奈谷は積雪がなく、登山口も雪がうっすらとある程度だった。 小黒川渓谷キャンプ場にあるゲート前に車を停めて、うっすらと白くなった舗装路から登山開始である。 桂小場にある信大の建物の前にある看板に従って山に入った。 ほどなく導水管に行き当たった。国土地理院の地図ではこの導水管を越えて道が続いているのだが、 導水管を越える階段の先には道はなかった。 実際は導水管の末端から道は山に入っていて、ここで少し時間をロスしてしまった。 道が見つかり、取り付き敗退は免れたので安堵した。

 ここからは歩きやすい登山道が緩やかな傾斜をきれいに切り開かて続いていた。 すぐに「ぶどうの泉」という湧水があった。 冬山に入ればおいしい水は飲めないので、一休みして喉を潤した。 湧水なので冷たくなく、やわらかな水であった。 道は大きなジグザグを繰り返して順調に高度を稼げた。 一面のカラマツ林は単調だが明るさがよい。 天気は晴れているのだが、樹林の中なので木漏れ日での恩恵である。

 尾根に出る少し手前で野田場という水場があった。 ここは凍っていて、ツララを壊すとわずかに水が得られた。 登山口から500mほど登ったが、左手に見える権現ツルネの尾根よりまだまだ低い。 野田場から150mほど登った標高1900mあたりで尾根に出た。 この尾根の右側は信濃川水系の奈良井川、左側は天竜川水系の小黒川である。 すなわちこの変哲もない尾根は日本海と太平洋を分ける中央分水嶺となっているのである。

 尾根に出ると風が強くなり、寒さが増した。 雪は少ないものの、所々では吹き溜まりとなっていた。 足首程度の雪道となって、深い針葉樹林帯にある大樽避難小屋に着いた。 小屋は狭く板の間の部分は10人がやっとというスペースである。 トイレは少し下ったところに別棟があり使用可となっていた。 寒いので小屋の中にテントを張った。 テントの中で着込んだ状態でガスを炊いても暖かさをあまり感じないくらい寒さは厳しかった。 通常、朝に寒さの頂点を迎えるのだが、不思議なことに夜半から寒気も緩んだ。


28日 天気:はれ
小屋6:30〜9:10稜線〜10:20将棋頭山10:45〜11:15分岐〜行者岩〜12:30分岐〜13:40小屋

 風も収まり絶好のアタック日和となった。事前の天気予報どおりである。 あきらかに寒さも緩み、素手での出発準備も苦痛ではなかった。 ゆっくりと準備して、出発時間をちょうどヘッドランプが不要となる時間に調整した。 足首ほどだった雪も次第に深くなった。 直前の3連休のものと思われるトレースが所々にうっすらと残っていた。 すぐに残っていたトレースも消え、時には膝程度のラッセルとなった。 それでもワカンが欲しいという量ではなく、結局最後までアイゼンのままで通してしまった。 計画段階では深いラッセルの末に手に入れる登頂を目指していたが、 登頂を第一に考えるとこの寡雪も喜んで受け入れなければならない。

 中央アルプス特有の長い単調な針葉樹林帯が続いた。 しかし尾根は特に急な箇所もなく、胸付八丁という看板があったが、登り易い斜面だった。 次第に針葉樹の純林から樺が混交するようになった。 今まではまったく視界がなかったが、木の間ごしに南アルプスらしき山が見えるようになった。 尾根の傾斜が落ち、稜線に出る少し手前に「胸付の頭」という標識があった。 ここからトラバースぎみに進むと樹林がやっと切れた。 背後には山頂付近だけ岩場となっている行者岩が見えるようになり、するとすぐに将棋頭山から茶臼山へと続く稜線に出た。 稜線に出ると真っ白な堂々とした姿の御岳が眼前に姿を見せた。 いつも反対側の景色を見る瞬間は感動的だが、この対面もこれまでの登高が長かっただけに嬉しかった。

 稜線は雪もクラストしていて、傾斜もないので歩きやすかった。 歩く方向に太陽があり、逆光の中で正面に見る将棋頭山は神々しかった。 背後には行者岩に隠れて全貌が見えなかった北アルプスも、 登るにつれて行者岩の上に展望が広がるようになった。 やはり北アルプスの真っ白な山並みは他の山とは格が一段上という感じで見事だった。

 将棋頭山は南北に長く、二つ目の高みに山頂を示すささやかな標柱があった。 将棋頭山は最高峰である木曽駒ヶ岳途中の峰のように思われるが、山頂からの展望はすばらしいものがある。 宝剣岳を中央に左に伊奈前岳、右に木曽駒と並ぶ山並みは安定感が感じられる景色だ。 一昨年同じ時期に登った木曽前岳の姿もなつかしい。 南アルプスの上にちょこんと山頂だけの富士山も面白かった。


 小屋にこのまま帰っては時間が余ってしまうので行者岩を往復することにした。 ここは雪が深く始めてラッセルらしいセッセルとなった。 100mにも満たない標高差はラッセルにもプレッシャーを感じず、余裕を持って楽しめるものである。 行者岩に登っても景色は変わらないので、わざわざ行く価値がはたしてあるのかと思いながら来てみたが、 山頂にある岩の一画に憩うと、行者岩は登るに値するピークとの想いが湧いてきた。


29日 天気:はれ
小屋7:20〜8:00野田場〜桂小場〜9:25ゲート

 下山だけなので、のんびりと仕度した。今日も風は弱く穏やかな日となった。 重荷でも下山は楽だ。夏時間と同じような時間で下りれた。 ぶどうの泉で休憩していると登ってくる4人パーティーに会った。 3日間で始めて会った登山者で、登山日を3連休と年末の間に設定した計画のために静かな山を味わえた。
(S記)

メンバー:S、F、O