神奈川県の山の仲間 浮雲の記録です


山行記録

石鎚山系・面河本谷

2011年5月27日〜28日



”磨かれた花崗岩の岩床を流れる水は見た目より勢いがある”


 東日本大震災があって、私の山仲間たちも山行が低調になってしまった。 いつもは名残の雪を求めての山に行っている時期なのに特別に計画もなかった。 そのような時に、ふと四国への沢旅を思い立った。 さっそく松山のOさんにお願いすると、同行していただけるとの返事をもらった。 計画は石鎚山系の面河本谷から南沢につなげての石鎚山を1泊で歩くものになった。

 面河谷は仁淀川の源流にあり、四国を代表する渓谷と言うことは知っていた。 しかしどのような沢か私にはほとんど知識がなかった。 なんとなく深い淵が連続する沢というイメージがあった。 計画が決まってから事前に記録を少しだけ読んだ。 面河本谷と南沢との性格の違い、そして最後は石鎚東稜と変化に富んだコースと知り興味が増したきた。

 せっかく遠い四国に行くので、石鎚山行の前に小さな沢を歩く計画を付け加えた。 山から山への移動日は休養も兼ねて観光も入れた。 車での一人旅だったので山以外は行き当たりばったりの旅だった。 9日間、目的意識が持続するか自らを試された旅でもあった。



27日 天気:くもり、夕方から雨
亀腹・渓泉亭8:25〜8:45入谷〜10:10金山谷〜11:15番匠谷〜12:10大吠谷〜12:55南沢〜13:35御来光の滝〜14:50愛大小屋

 楽しみにしていた計画だったが、前日の天気予報からは計画のコースは無理だった。 特に面河本谷は連日の雨で遡行が難しいだろうからと、 愛大小屋から面河本谷上部の御来光の滝付近に下降して南沢だけの計画変更を考えた。 とりあえず1日目は尾根道から愛大小屋までと、松山を出発した。 最悪の場合は愛大小屋に泊るだけの山になる可能性があった。 ところが当日になると、1日目はなんとか歩けるが2日目は土砂降りの雨が予想された。 急きょ、1日目に本谷に入り、本格的な雨が降る前に小屋に逃げ込む計画に変えた。

 車窓から面河川の様子を見て、リーダーのOさんは水量は多いものの面河本谷はなんとか遡行可能と判断したようだ。 予定通りに亀腹にある渓泉亭下に駐車した。 今夜は小屋泊しか考えないので、不要な装備などを整理した。 渓谷沿いの道を歩き、上熊淵の上手にある東屋で沢装備になった。 遊歩道をしばらく歩くとロープで立ち入り禁止となっている。 このロープを越えて入谷した。 ちなみに四国では沢と言う言い方はほとんどなく谷が使われる。

 入谷しすぐにちょつとした淵があり、これを巻き終わると渡渉が避けられない箇所に出た。 水流の幅は狭いが水の勢いが強く、失敗を許せない箇所だった。 地元の二人は何回もこの谷を歩いているので、躊躇なくロープを出した。 ここはロープの助けを得て越えたが、水勢が強く水中の岩を掴んでバランスを保つ必要があった。 沢は露出した岩床とゴーロが交差し、時として青々とした水を蓄える淵がある。 ゴーロを形成する岩は大きく、乗越に数回お助け紐を出した。 金山谷を分けるまでは水量が多く、スケールの大きさを感じた。 そして河原の合間にある深い淵、小さな滝、赤い色をした滑、とその変化が楽しめる。 今にも降りそうな天気だが、岸を埋める樹林も瑞々しく美しかった。 腰程度の渡渉を何回かし、これが思ったより体力を消耗させた。

 入谷して1時間強で左岸から金山谷が合流する。 金山谷は最大の支流で水量が多い。 このあたりは花崗岩が露出していて、本流も金山谷も固い岩の上を勢い良く流れていて壮観である。 本谷は合流部で淵となっていて、右岸は切り立ち、左岸が傾斜の緩いスラブとなっている。 ルートはもちろん左岸だが急流となった金山谷を越えなければならない。 水流の幅は狭いが、飛び越せる微妙な幅だった。 ここはロープで確保して空身となって思い切ってジャンプして越えた。

 金山谷を越えると水量は明らかに減り、渡渉が楽になった。 面河本谷は下から遡行することなく、 石鎚スカイラインの展望台から金山谷出合上部に下降して下流を省略することもあるらしい。 次の支流である番匠谷の出合までの間に堰堤が2箇所あった。 堰堤の上は一転して平坦な穏やかな流れとなっていて、なんだか東北の沢にいるかのような感があった。 番匠谷は滝ではなく、ゴーロの沢となって合流していた。

 面河谷は石鎚スカイラインの建設による土砂の流出でかっての美しさが損なわれたそうだ。 しかしスカイラインの影響は番匠谷出合まてで、ここからは面河谷の本来の美しさが味わえる。 次の支流である犬吠谷出合までは小滝と淵が多く楽しめる箇所だ。 しかし下流と比べて水量が少ないためか美しさは感じるものの迫力はもうなかった。

 犬吠谷は滝となって合流する。 これを越えると本流には魚止ノ滝がかかる。 これは右岸にあるガレのルンゼを使って越えた。 ここまで来ると、さすがの面河本流も目に見えて水量が減った。 ちょつと単調さを感じ始めたころに右岸から南沢が傾斜の緩い末広がりの滝となって合流した。 計画では遡行するつもりの沢だったが、写真を撮っただけで先を急いだ。


 南沢出合付近からは右岸にはっきりとした踏み跡がある。 時間を節約するために、御来光の滝下までこの踏み跡を利用した。 小さな尾根を越すと木の間に御来光の滝が見えた。 岩峰をV字状に裂いて落ちる姿は見事だ。 この滝は落差100mとも言われているが実際の落差は60m強らしい。 滝下まで行くと、滝上部は見えなくなる。 しかし下部は垂直で水量もあって迫力があった。

 ここからは愛大尾根と呼ばれる尾根にある踏み跡を愛大小屋へ向かった。 最後は笹がうるさくなり雨が落ちてきた。 沢靴のためと疲労から足元が滑って歩きにくかった。 そして沢よりも濡れて愛媛大学山岳会の小屋に着いた。 こじんまりとした小屋だが、清潔で快適だった。 備品もきれいに片付けられていた。 まきストーブに火を入れると、たちまち濡れが乾き始めた。


28日 天気:雨
愛大小屋6:45〜8:45亀腹・渓泉亭

 雨は時々小降りになるものの降り止まなかった。 登山道を降りるだけなのでゆっくりと帰り仕度をした。 道は急な箇所もなく歩きやすかった。 狭霧の中に鬱蒼とした樹林が美しかった。 今年は新緑が遅かったためか、緑がより瑞々しく感じた。 ブナやナラの大木も目立った。 途中からは滑りやすい岩畳に注意しながらの下山となった。 鳥居のある登山口からは渓谷を見下ろしながらの道となる。 水量はと谷を見て、昨日と同じような、またはちょつと増えたかと、答えに迷いながら駐車場に戻った。
(S記)

メンバー:O(山の子),A(松山労山)、S(浮雲)