ハープス店主が勝手に綴ったハーモニカ講座です。
まだまだ途中ですが、ハーモニカを吹き始めるきっかけになれば有り難いです。
ハーピストへの道 その1
“たて琴”の事ではない。ハーモニカの事を“マウス・ハープ”あるいは、単に“ハープ”という ことがある。これは、ハーモニカを横から見るとハープ(たて琴)に似ているところから来ていると言う人もいるが、本当のところはわからない。とにかく、そう呼び、吹き手の事をハーピストと呼ぶ。
はじめの一歩。ハーピストになるため には、ハープを持っている必要があることは誰にもわかるだろう。そして、それは楽器屋に行けば簡単に手にはいることも。では、もしあなたが何の予備知識もなくハーモニカを買いに楽器屋へ行ったらどんなことが起こるか?おそらく大抵 の人はパニックになり、その結果、手ぶらですごすごと店を出てくることになる だろう。何故か?それは、ハープの種類があまりにも多いのだ。復音、クロマチ ック、テンホールズと大きく三種類にわけられ、さらに、各々にメーカー、材質 、音域など様々に分岐しながらそれらはショーケースを占領するかのごとく陳列 されている。
「どれを買っていいかわからない・・・」
さて、ここではテンホー ルズ・ハープについて話を進めていこう。テンホールズすなわち10穴ハープは ブルースやカントリー、ロックに使用されるハープで一般的には“ブルース・ハ ープ”と呼ばれている。本来“ブルース・ハープ”というハープはドイツHOHNER社の商品名のひとつだが、あまりにも有名であることから、10穴ハープを総称してそう呼ばれている。カップラーメンの事をカップヌードルといったり 、宅配便のことを宅急便というようなものだ。話がすこしややこしくなった。シ ンプルにしよう。
「ホーナーのスペシャル・トエンティのデーを下さい」
あなた は3千円を握りしめ楽器屋の店員にこの台詞を告げればいい。楽器屋を出る時にはポケットの中で、ハープがひっそりと命を吹き込まれるのを待っている事だろう。楽器屋を出てから次にあなたがしなければいけないことも決まっている。自転車にまたがり富士森公園へと向かう。ベンチに腰掛け、まずはひと吹き。適当にがばっとくわえて吹いたにも関わらず、富士森公園にきれいな和音が響く。あ なたは気をよくし、もう一度。今度は[吹][吸][吹]と三動作。すると、なんと[気を付け][礼][直れ]の音楽になっているではないか!
「僕って天才 ?!」
あなたの天才は否定しないが、ハープはそういう風に出来ている。何度も 何度も[気を付け][礼][直れ]の音楽を繰り返すあなた。いつの間にかハー プを口にくわえながらあなた自身も立ち上がり、[気を付け][礼][直れ]の 動作を繰り返している。犬の散歩をしているおばさんが不思議そうにあなたを見 ている。なに、気にするものか、あのおばさんにはこの感動がわからないのだ。
“ドレミファソラシド”を吹いてみたくなった。10穴ハープのカバープレートには左から番号がふられている。4番を吹いて“ド”。あとは探りながら吹いたり吸ったりすれば1オクターブはマスターできる。とっても簡単。あなたが通っ た小学校の校歌を憶えてるだろうか?ハーモニカの多くの教則本には、はじめの 練習曲は「きらきら星」「聖者の行進」など誰でも知っている曲が載っている。 誰でも知ってる曲というのは間違えればすぐに人に気づかれてしまう危険な曲なのだ。しかし、あなたの母校の校歌なら・・・。
小学校2年生、あなたは初めて ハーモニカを吹いた。スペシャル・トエンティが奏でる校歌は、あの校庭を思い出させる。ひとしきり“探り吹き”の後、「ハーピストへの道」を決意しながら 、充実感とともにあなたはこう呟きたくなる。
「ビールが飲みたい」
ここまで来れば、「ハーピストへの道」は、そう遠くない。
ハーピストへの道 その2
実はハープを吹くときの口の形はかなり重要だ。10穴ハープの出す音は 普通に吹吸して20音。この20音を口の形、舌の加減によって30以上の音階の演奏を可能にさせる。このテクニックは後述するとして、基本的な口の形の話 をしよう。
基本は「ウ+オ」。「ウ」の口の形をして「オ」と発音する感じ。難しいようだが、要は「口の中を大きく開き、口をすぼめてひとつの音をはっきり 出すようにする」ということ。なに別に多少隣の音が混じったってかまわない。 そのうちきっとひとつの音になってくる。口の中を大きく開くのは、そうしないと貧相な音になってしまうのだ。それだけは避けたい!だって、楽器は音が命でしょ!「ウ+オ」を意識しながら適当に吹いていればある程度上手くなる。その 時の練習場所には風呂場がいい。浴槽に浸かってのんびりと「適当吹き」を繰り返す。おっと、持ち方を言ってなかった。
持ち方はこんな感じ。ハープの後ろに卵がひとつ入るくらいの空間をあけてしっかり密閉させる。次に右手を[開く][閉じる]を繰り返しながら吹いてみる。「ワウ ワウ ワウ・・・」と聞こえるだろうか?
オーケー!実はこれであなたは知らず知らずのうちにテクニックを ひとつ習得したのだ。その名も「ワウ」!何でもないようだが、このテクニックはかなり重要だ。プロのハーピストも「ワウ」を多用する。というか、ハープを 手持ちで吹くときに「ワウ」を使わないで吹くことはない!これを発展させて「ワウ」の動きを早くすれば「ハンド・ビブラート」になる。これでふたつのテクニックの習得!簡単、簡単。
「一息入れて、ビールでも飲むか」
ここまで来れば、「ハーピストへの道」は、そう遠くない。
ハーピストへの道 その3
あなたは、楽器屋に行った。あなたは「ホーナー・Special 20」を買った。そしてあなたは、ハー プを持って公園へ何回行っただろうか?
ハープを吹くにあたってとても大切なこ と。それはなんといっても「歌う」ことだ。慣れないハープの練習をしていると、どうしても「他の音が混じらないように」とか「間違えないように」などと様々な思いが頭の中を駆けめぐり、肩に力がはいり、そのくせ自信のない貧相な音で吹いてしまうようになる。その結果、一番大切な「楽しい」がずーと後ろの方に追いやられてしまい、終いには「上手くならないから、もー止ーめた。」となってしまう。そして、あなたの「ホーナー・Special 20」はいつの間にか部屋の飾りになり、リードからカバーへと少しずつ錆び始め最後には朽ち果てる・・・ これは悲しい。
では、どうすればよいか?
【表】
「てきとー」にやればいい。「 てきとー」に吹けばいい。いつでも持ち歩くようにすればいい。公園を見つけた らベンチに座って吹けばいい。河原を見つけたら堤防に座って吹けばいい。心の疲れや体の疲れをハープから音にして吐き出してやればいい。まずは体とハープを良く馴染ませる事が必要。そして、この「馴染み」が「楽しさ」を引き寄せてくれる。
【裏】
「とにかく練習」すればいい。一日何時間でも吹けばいい。あなたの唇から多少の血が出たってかまわない。吹き続ければいい。そのうちに厭でも体とハープが馴染んできて、いままでの力みが自然と消え、のびのびとした音がハーブからあふれ出てくるようになる。その時あなたは本当の「演奏の楽しさ 」を実感するだろう。逆に言えばこれなしで「楽しさ」を実感する事はないだろう。
どちらにしても、共通するのはたくさん吹くこと。
上手くなることと、楽しくなること。楽しく演奏するのに上手く演奏する必要はないが、上手く演奏出来るようになればそれだけ楽しくなる。どちらを選ぶかはあなた次第。あなたにはあなたのスタンスがある。どちらを選んだとしても選び方を間違えると「ホ ーナー・Special 20」は朽ち果てることになる。もう一つ。「ハープが吹ける ようになりたい」よりも「この曲をハープで吹きたい」と思うこと。まずは「お気に入りの一曲」を探してみる。そしてCDと勝手にセッション。勿論、CDは リピート・モードにして。
どのキーのハープを使えばいいかは、僕がそっと耳打ちしてあげるから。
ここまで来れば、「ハーピストへの道」は、そう遠くない。