06年5月19日

法務委員会質疑(条約刑法関係)(暫定案)

民主党 平岡秀夫

 

(1)          組織犯罪集団

@      与党再修正案の「組織的な犯罪集団」の定義は、TOC条約の規定に反しているのではないか(与党提案者、外務副大臣)。法律が成立したら、政府は、国際的にはどのような手続きをとることになるのか(外務副大臣)。

A      官庁における組織ぐるみの裏金作りの共謀が、共謀罪に該当するのか。法文案に則しての説明を求める。昨年10月28日の答弁と質問趣意書の答弁書とで、答弁の食い違いがあり、4,28の政府答弁は納得がいかない。大臣は、「南野大臣の答弁を詳細に承知しておりませんけれども」と言っていたが、南野大臣の答弁を確認したうえでの答弁を求める。(法務大臣、与党提案者)

B      428日の法務大臣への質問で、「官庁が共謀罪の対象となるか」となるかという問に対して、「個別具体的な事実関係の下で、ただいま申し上げたものに該当するか否かによって決まることになるものと考えられます」と答弁。そして、与党修正案提出者は、「官庁というものが、重大な犯罪を行うことを継続的な結合関係の基礎となっている目的を持っている団体というふうには解されない」としている。法務大臣としても、与党修正案によって団体が限定されたと考えているか。(法務大臣、与党提案者)

C      (与党質問でも明らかなように、)ある団体が、組織的犯罪集団であるか否かは極めて不明確である。オウム真理教の例(ある宗教の教義を広め、信者を教化育成することを主たる目的として設立された宗教団体が、その目的を達成するために多くの重大な犯罪を行うことになってしまった、という事例)を参考に、共謀罪の適用の可否を説明せよ。(法務大臣、与党提案者)

D      与党再修正案で共謀罪の適用可能性がある団体として「その結合関係の基礎としての共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体」としているが、その規定は、「共同の目的」の中に「結合関係の基礎」となっているものとそうでないものとがあることを前提としているのか、それとも、「共同の目的」というのは「そもそも結合関係の基礎となっているものしかない」ことを前提としているのか。(与党提案者)

E      法2条では、団体の定義規定の中で「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」と規定しているが、その場合の「共同の目的」を有しているのは誰か。(法務大臣)

F      与党修正案の第6条の2で規定する「共同の目的」を有しているのは、誰か。(与党提案者)

G      「共同の目的」について、与党提案者は、5,12に「多数人が共同して有しており、かつ、継続的結合体として有しているもの」と答弁しているが、本来、「共同の目的を有する多数人」が結合して、「一定の目的を有する団体」となるのではないか。(与党提案者)

H      4,25の委員会審議で、与党提案者や政府から、「『共同の目的』とは、その団体の構成員の継続的な結合関係を基礎づけている根本的な目的である」と答弁されているが、与党再修正案における「共同の目的」の意義は何か。(与党提案者)

I      「その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体」がどんな団体なのかについて、4,28の審議で、@重大な犯罪等を実行することだけを「(共同の)目的」とする団体、Aいくつかある「(共同の)目的」の中に重大な犯罪等を実行することが含まれている団体、Bその「(共同の)目的」(例えば、団員の生活維持)の下に、正当な業務と違法な業務とを行っている団体は、それぞれ該当するのかを質問したが、「目的」と「行為又は活動」との関係が依然として明確でない。再確認したい。(与党提案者)

J      上記の質問に関連して、与党(再)修正案では次の例はどうなるか。また、政府の理解は同じなのか。(与党提案者、法務大臣)

     その会社の「目的」が「住宅建設」であり、その多くの業務が正当である会社が、リフォーム詐欺を行うことを決めた。又は、その会社の「目的」を「住宅建設」としてリフォーム詐欺を行う会社を設立し、その業務計画を策定した。

     選挙戦終盤に、選対本部が、苦戦のため電話掛けのアルバイトを使う(多数人買収)ことを決めた。又は、選挙戦は主として電話掛けのアルバイトで行う戦略で選対本部を立ち上げて、その実施計画を立てた。

     住民団体若しくは環境保護のNPO法人が、環境を壊すマンションの建設反対のため工事用資材の搬入を阻止するため座り込みの実行を決定した。又は、マンションの建設に反対の住民や環境保護活動家が、工事用資材の搬入に座り込みで対抗するための団体若しくはNPO法人を設立し、その実行を決定した。

     宗教団体が勢力拡大、批判分子粛清のため、「これから『重大な犯罪』を行ったり、財政基盤強化のため脱税を行っていく」ことを決めた。又は、「重大な犯罪」等を行ったことのある宗教団体(例、オウム真理教)が、さらに「重大な犯罪」等を行うことを計画した。

 

(2)          行為の越境性(必要があれば、再度質問)

@      条約34条2の文理的意味は、条約3条の解釈との整合性を考えれば、「共謀罪自体(共謀罪の対象となる重大な犯罪ではない)が国際性(越境性)を有しているものとして創設されてはならない」というものではないか。(外務副大臣)

A      4,28に伊藤外務大臣政務官は「国際性の要件を付さないことは、本条約の中核をなす規定である」旨の答弁をしているが、条約交渉経緯(フランス提案の内容、元々の条約案に入っていない等)に照らしても、そうは言えないのではないか。(外務副大臣)

B      5,16の審議で確認したとおり、我が国はこれまでの条約締結に当たって、「条約の趣旨・目的に両立しないものではない」との理由で、条約の留保を行ったことが何度となくある。「長期4年以上の自由刑」も、「国際性の要件を付さないこと」も、それと異なる国内法制化をすることは、「条約の趣旨・目的に両立しないものではない」のではないか。(外務副大臣)

 

(3)          顕示行為

@      5,10枝野質問に関連)修正案の「犯罪の実行に必要な準備その他の行為」と、条約の「合意の内容を推進するための行為」とは、どう違うのか。どちらが広い概念か。(与党提案者)

A      「犯罪の実行に必要な準備その他の行為」の範囲は、どこまで含まれるのか。与党提案者から、「犯罪の実行に資する行為」についての3要件が示されているが、その要件に変更はあるのか。「犯罪の実行に資する行為」は範囲が広くなり過ぎて、何が該当するのか判別が難しい。(与党提案者、法務大臣)

B      「犯罪の実行に必要な準備その他の行為」であることの立証が難しく、捜査が自白偏重となる危険性が高いのではないか。(与党提案者、法務大臣)

C      共謀罪容疑でとりあえず逮捕し、その後の捜査で「犯罪の実行に必要な準備その他の行為」を探すという捜査手法が使われるのではないか。(法務大臣)

D      外国において共謀罪を処罰する要件として、「合意の内容を推進する為の行為」を付していない場合に、我が国に対して捜査援助の要請があった場合は、どう対応することになるのか。「予備」でも問題ないはず(法務大臣、与党提案者)

E      5,16、与党提案者は、「犯罪の実現にとって客観的に相当程度の危険性を備えた行為であることが必要であるとすることは、共謀それ自体を犯罪として処罰対象とすることを義務付ける条約の趣旨に反する虞がある」と答弁しているが、予備罪における予備行為に該当するほど客観的に相当程度の危険性を備えたものでも、その多くは、「重大な犯罪」の予備罪として犯罪化されていない。そうしたものについても、共謀したことをもって共謀罪として犯罪化するのであるから、「予備行為」を伴うものを処罰対象とすることで良いのではないか。(与党提案者)

 

(4)          諸外国の取扱い

@      先進諸国において、「長期4年以上の自由刑」はどれくらいあるのか。(外務副大臣)

A      TOC条約5条に基づき、立法化に当たって、「合意」に「準備行為(顕示行為)」を伴うこととした国として、オーストラリア、ラトビア、サウジアラビア等を挙げたが、これらの国は、「準備行為(顕示行為)」をどのように規定しているのか。(昨年10月28日、5月16日)(外務副大臣)

B      「共謀罪は、コモンローの法体系の国で一般的に設けられている犯罪」(政府答弁)で、我が国の刑法の基本原則にそぐわないもの。そのコモンローの法体系である米国、英国、カナダでは、年間どのくらい共謀罪で起訴され、有罪とされているのか。(外務副大臣)

C      コモンローの法体系の国では「共謀罪」が抑制的に適用されているのではないか。(外務副大臣)

 

(5)          捜査

@  与党再修正案では、「長期5年以上の自由刑」以上の犯罪についてだけ必要的自首減免を認めるとしているが、そのようにした理由は何か。また、政府案と比べてどれだけの違いがあるのか。(与党提案者)

A  現在、必要的自首減免規定が設けられているものは、どんな犯罪についてか。その考え方は何か。(法務大臣)

B  5.10参議院決算委員会で大臣は「自主減免というのはどの罪にもある」と答弁しているが、どういう趣旨か。(法務大臣)

C  刑法42条(「刑を軽減することができる」)は、共謀罪にも適用があるのか。(法務大臣)

D  ある国では参加罪を定め、ある国では共謀罪を定めている場合には、国際的な捜査共助は、可能なのか。どのように行うことになるのか。(法務大臣)

E      428日の細川委員の質問に対する与党提案者の答弁「共謀で犯罪が成立する。逮捕することは法的に可能。しかし実行に資する行為がなければ事実上起訴できない」と、同日の稲田委員に対する与党提案者の答弁「処罰条件ということで、実行に資する行為というのを明定することにいたしました。ということは、この処罰条件を満たさないものについては、そもそも有罪をとることはできない、要するに、処罰の対象にならないということになります。結果的には、起訴をしても当然無罪にならなければならない。そういったものについて、犯罪の捜査をする、いわゆる強制捜査をするということは、これはあってはならないことだと私どもは考えております」とは不整合ではないか。(法務大臣、与党提案者)

F      捜査現場から共謀罪必要性、捜査の手法について以下のような意見がでているが、これについての見解を求める。(警察庁、法務大臣)

     「共謀罪 刑事が反対する理由」凶悪犯罪捜査一筋の刑事(東京新聞5.18

       「暴力団やらテロ集団一味の中から、警察に密告するヤツが出てくると思うか。しっかりした犯罪組織ほど、それはあり得ないんじゃないのか」「ヤクザとテロリストはな、警察より組織が怖いのよ。坊やの意見は、おりこうさんのキャリヤ官僚と同じ机上の空論ってやつよ」

       記者「年がら年中、盗聴をやるってことにいきつくんじゃないですか」「ふん、そこは分からんけどね」

       「共謀罪が始まったらきっと重大事件の捜査に支障が出てくるね」「組織の一員と名乗るヤツが密告してきたら、警察は一応、捜査しなきゃならなくなる。・・・こんなヤツが次々にでてきたら、どうなんの?本当に大事な事件の方は人手不足になっちまう」

     「ノルマ・・・市民に矛先」公安警察OB(東京新聞5.18

       「共謀罪は五年、十年かけて拡大解釈されていき、きっと治安維持法みたいになりますね」「警察はノルマ社会だから、事件数の統計を伸ばして統計を取りやすくしたいんです」

       「それに公安は、対象の組織にもぐりこんだり、人間関係をつくって情報収集する手法をやってますから、犯罪組織のメンバーの密告を促すような共謀罪法案があらためて必要とは思えません」

     ジャーナリスト大谷昭弘氏

       「共謀罪ができても犯罪組織からのタレこみなどあるはずがなく、市民団体にスパイを潜り込ませてつぶすために使われるだけだろう」

 

(6)中止犯

@  ある「重大な犯罪」の実行に着手した後に自己の意思で中止したという場合、刑法43条では、刑の必要的減免が行われる。他方、政府の答弁では、共謀罪が成立すれば、その後にその共謀罪に係る「重大な犯罪」を実行することを自分たちの意思で中止しても、処罰されることになる。しかし、このことはいかにも不整合な取扱いであり、法令上、その共謀罪に係る「重大な犯罪」を実行することを自分たちの意思で中止した場合には刑の必要的減免を行うための所要の規定が必要ではないか。(法務大臣)