1940年  パリのドイツ人(+1)



1940年 8月中頃 ドイツ軍パリ入城





(史実ではこの時東部で歩兵大将)


「うひょー!ここがパリですか!綺麗な街ですねえ!」

「こら!走り回るんじゃない!みっともない!」

「えへー すいません、テンションあがっちゃって!」

「君も軍人ならばそれに相応しい振る舞いをしたまえ」

「はーい 気をつけますー」

「で、えーとどちらさまでしたっけ?」

「名前くらい一度で覚えたまえ、私はマンシュタインだ」

「えっ?饅頭足りん?」

「ハラペコさんですね!」

「そんな事いっとらん!」

ま・ん・しゅ・た・い・ん!だ!」

「まんじゅうー」

「饅頭から離れたまえ!」

「えっ!? 饅頭爆弾ですか!?」

離れろってそういう意味ではない!」

「もー 驚かさないでくださいよー ハラペコさん」

「誰がハラペコだ!私はマンシュタインだ!」

「私も饅頭食べたいですー」

「聞けよ!」


「ドイツ軍は強いですねー」

「フランス軍をこんなに簡単に倒しちゃうなんてー」

「メーレン守はそのドイツの強さを学びに来たのだったな」

「そうです、えーと 饅頭大尉!

「やっと私の名前を覚えたな!少し発音が変だがまあいいだろう」

「饅頭大尉!」

「そう!私はマンシュタイン!」

「で、ドイツ軍の勝利の秘訣は!?」

マンシュタイン・プラン、電撃戦ドクトリン、この辺りの話は既に聞いているな?」

「えっ なんですかそれ」

「いや!聞いてるはずだぞ!」

「そ、そうでしたっけ」

「そうだよ!メモを見直したまえ!」

「いやーそれがですね、いろいろメモしたはずなんですが」

「見直してみたら しゅりけんとかお好み焼きとか意味不明の羅列になっててー」

「なんだと?それは敵のスパイに何かされているのではないか?」

「まじで!スパイ恐るべし!」

「英国は地味な情報戦になるとやけに張り切るからな」

「ハッ、そういえば、昨日 お風呂借りた時も視線を感じたような!」

「いや、それはゲーリングだ」

「まじで!」

「まあいい、ではドイツの勝利の秘訣は何か」

「君に解説しよう、心して聞きたまえ」

「はい!」

「昔々 ある所にプロイセンと言う偉大な国家が―――」



けーね先生の歴史的なワンポイント

ドイツの勝因 フランスの敗因



フォン・マンシュタイン将軍の話が長くなりそうなので、
その間に史実面での西方戦役のドイツの勝因、そしてフランスの敗因をざっと見てみよう。

まず西方戦役の主戦場となった フランス北東部の戦いの参加兵力は、
連合側81師団程度、ドイツ側74師団程度と言われている。
兵力には諸説あるが、少なくとも連合側が兵力に勝っていた事は間違いがない。
でもまあ、HoI2中ではドイツ側の方が多くなる。多分おそらく。

では、中核的役割を果たした機甲戦力でドイツ側が圧倒していたかと言うとそうでもない。
車両数で言えば、連合・ドイツ共に総数は2600輌程度でほぼ互角。
ドイツ戦車は優秀なイメージがあるが、西方戦役の段階で連合との戦車に性能差はそれほど無く、
さらに対仏戦ではドイツ側戦車の半数ほどは旧式のT型・U型戦車(HoI2で言う所の「豆戦車」「基本型軽戦車」)だった。



旧式が駆り出されたのは英仏側も同じだが
寧ろ連合側戦車の方が性能面で優位に立つ場面もあったのだ。


両軍に大きな差があったのは、その運用、そして指揮統制だ。
フランス側は多くの戦車を歩兵師団に分属させたのに対し、
ドイツ側は戦車を集中運用し強力な打撃単位として利用した。
実戦での運用でも車内用咽喉マイク、各車両間の無線連絡の使用など、
ドイツ側は効率的な指揮・連携に力を入れていた。
一方フランス側戦車にはそういった配慮はなく、
殆んどの戦車は、手旗しか連絡手段がなかったと言う。
こんなの戦闘中に見てられるか、という話だな。


そして、この通信・指揮の差というのは戦車だけでなく、
前線と司令部というレベルでも存在していた。
ドイツ側はテレタイプ・無線・ロータ式暗号機械等を駆使し、
前線・各級司令部間の連絡を効率的に行っていたが、
フランス側は総司令部・北東軍司令部の間、さらにはその下級司令部間には
無線などの迅速な連絡手段は用意されていなかったと言う。
フランス軍総司令官 ガムラン大将によれば、
大将の出した命令が前線司令部に届くまでに「通常48時間掛かった」らしい。
ドイツとフランスでは明らかに速度の感覚が違っていた。


フランスの敗因 ガムランさん



そして、この総司令官ガムランさんは、
フランスの敗因の一つに数えられるほどアレな人物として有名だったりもする。
ガムランさんは神経梅毒に脳を犯され、まともな思考が出来る状態ではなかった。
その病気の事は陸軍病院の一部の医師以外には極秘にされており、
ガムランさんの梅毒による無気力・不決断な様子を周囲は「慎重・冷静」と見ていたという。
なんだか泣けてくる話ではある。

ガムランさんがフランスの敗北に一番大きく貢献したのは、所謂「ブレダの修正」を決めた事だろう。



ドイツ軍のオランダ・ベルギーへの侵攻に対し、
オランダのブレダまで進出して防衛線を引くというガムランの決定は、
まさにマンシュタインの罠に頭から突っ込む事を意味した。
ガムランは貴重な予備兵力を低地諸国に放り込み、
ドイツの機動戦に対応する能力を著しく弱めたのだ。

まあ、ドイツ侵攻後にベルギーへ前進展開するーという点は、
本来は共通の利害を有していたベルギーの中立化が原因の一つでもある。
WW1後のフランスのドイツへの残酷な振る舞い、
ドイツを囲みこむ為のフランスの東欧諸国への肩入れなど、
ベルギーがフランス側から距離を置こうとする流れが無ければ
ベルギーは開戦時からフランスの側に立ち、
フランス軍が最初からベルギーに展開した状態でドイツ軍を迎えた可能性もあった。
そうすれば、アルデンヌの空白は早めに埋める手を講じただろうし、
予備を無駄に消費する事はなかっただろう。

・・・とだいたいアレでナニな感じのガムランさんなのだが、
ドイツ軍の黄作戦開始から6日後の5月16日
仏首相に加えチャーチルやイズメイも出席していた英仏の会合では、
セダンを突破したドイツ軍の目標は「アブヴィル付近の英仏海峡海岸とみられる」
と、マンシュタイン・プランを読み切った戦況解説をしているらしい。
結局、特に手は打たなかったし 打てなかった訳だが、
ひょっとしたら梅毒さえなければ歴史は変わっていたかもしれない。

・・・いや、変わらないかな。



「・・・とまあ、こんな所か」

「だいたい把握できたかね?」

「むにゃみゅにゃ もう食べられにゃいです・・・」

「寝てるのかよ!」

「ハッ!起きてます!」

「いや、さっきのは寝言の定型だ!私の目は誤魔化せん!」

「と、途中までは起きてました!」

「どこまで聞いていたのかね?」

ある所にプロ 辺りまでは記憶にあります!」

それは出だしだ!もう一度最初からやり直す!」


「おや、メーレンちゃん こんな所にいたのか?」

「るんるんとっとさん!」

「グデーリアン君が呼んでたぞ」 


「おい、メーレンそろそろ帰国だろ? 折角だから電撃お別れ会やってやんよ!」


「とかなんとか」

「まじで!今行きます!」

「待ちたまえ!私の講義は終わっていない!」

「じゃ、じゃあ 何か一つだけアドバイスお願いします!」

「一つ?一つか・・・」

これからの戦争は攻勢においても防勢においても機動力・打撃力が重要であり―――

(以下十分ほど続く)

「えーと つまりー」

装甲師団が大事だよ かな」

「なるほど!戦車が大事!覚えました!

「いや、そうじゃない!いや、そうだけど!」

「マンシュタイン君もメーレンちゃんと仲良くなったようだね」

「なってませんよ!」

「それじゃ私、行きますね!饅頭大尉!るんるんとっとさん!ありがとうございました!

「走って転ばないようにね」

「はい!びゅーん!」


「まったく、あんなのが国家元首とは・・・」

「いや、面白い子だよ」

「案外 我がドイツに足りないのは、あの子のような”馬鹿な子”なのかもしれない」

「・・・・・・。」

「・・・まあ、一人くらいなら居ても良いかも知れませんが」

「ハハ、それでは我々もお別れ会に顔を出すとするか」



8月15日 ドイツ-フランス休戦協定締結






「ットラーさん!フランスが休戦協定に合意しました!」

「うむ!大変結構!」

「パリを含むフランス北部は我がドイツの直接支配地になりました!」

「でもよかったんですかね?」

フランス南部と海外植民地には手をつけていませんがー」

「かまわん、くれてやれ! もはやフランスの問題は解決済みだ!」

「さすがットラーの兄貴は寛大だーッ!」

「そう!私は寛大なのだ!超な!」

「フランスは涙ズビズバ小便ダラジョワでットラーさんに感謝しまくってます!」

「感動のあまり何かあいつら」


議会制民主主義は終わった!俺らもドイツっぽくなろうぜ!」

「まあ、いきなり国家社会主義は体に悪いし、とりあえず権威主義から始めようぜ!」




「フランス中部、ヴィシーに首都を置く ヴィシーフランスに生まれ変わりました!



「ハハハハ!すばらしい!」

「これでフランスに背後を刺される危険はなくなった訳だ!」

「一部将校はアフリカに落ち延び―――」

自由フランスを名乗って、抗戦を続けるつもりのようです」





本家と元祖に分裂したような物か、フランスも落ちたものだ」

「あと例によって、今は同盟国のムッソリが」



「フランスと休戦なんてットラーちゃん甘いよ!」

「独伊両国でフランス全土を占領して、艦隊は拿捕すべき!」

「面倒な艦隊の管理はうちで引き受けてもいいのよ!」



「とか言ってますけどー」

「うるせー パスタ野郎 勝ち馬乗りが口だけは立派だな!」

「お前は地中海だけ見てりゃ良いんだよ!ペッ!」

「・・・という趣旨の事をオブラートに包んで優しく返信しとけ」

「了解です!」

親愛の情も伝わるような文にしておけよ」

「先輩に対する敬意を忘れない!さすがットラーの兄貴は謙虚!」

「過大な要求をしてフランスの徹底抗戦を招く必要は無い!」

「フランス戦はさっさと終わらせる!」

「ドイツの真の敵はまだ健在だ!我がドイツ1000年の繁栄の為に!」

「次に進もうではないか、諸君!」



同じ頃 境産党


「・・・という感じで、ドイツがフランスを倒したそうです」

前大戦で膨大な戦力と四年の歳月を磨り潰した西部戦線が」

「僅か四ヶ月で決着とはね・・・」

「魔法でも使ったとしか思えないわ」

「うす」

「ドイツにどこぞの人外でも味方してる形跡は?」

「その様子はないようですが」

「・・・そう」

「こと戦争に関しては人間は侮れないわねえ」

「ドイツには中国を派遣してあります」

「帰国して話を聞けばドイツの手法も少しは解るでしょう」

「だと、良いけどねー」

「で、フランスが脱落した後 イギリスはどうしてるの?」

講和ーって話になってもおかしくない所だけど」

「ットラーは和平アピールをしていますが―――」



「英国ちゃんが、どーしてもって言うなら 和平交渉に乗ってもいいんだけどなァー」

(チラッ)



「英国は徹底抗戦の構えを崩していません」



「フランスの戦いは終わった、次は英国の戦いが始まる」

「いかなる犠牲を払っても我々の島国を守ってみせよう」

「我々は海岸で、上陸地点で、平原で街路で、そして高地で戦う」

「我々は決して降伏しない!」



ハト派のハリファクスが倒れたのが効いてるのかしら」

「それともチャーチルの指導力がすごいのかしら?」

「或いは―――」

「誰かさんが和平を許さないのか、ですかね」

「ま、いいわ」

「情勢は気になるけど 欧州はユーラシアの反対側だし」

「当分は極東に影響が及ぶ事もないでしょう」

「いいえ、そうでもありませんわ」

「早速影響が出てますわよ」

「咲夜か、・・・何事だ?」

日本帝国がヴィシーフランスにインドシナ植民地への進駐を求め」

「ヴィシー政府はそれを認めました」



「既にインドシナには日本軍が進出しています」



「いきなり、華南に新しい戦線ができた訳か」

「厄介な事だな」

「日本も無茶するわねー」

「我々と戦争をしながら」

火事場泥棒みたいに脱落したフランスから領土を分捕るなんて」

「おそらく例の狂犬()が強硬に話を通したのでしょう」

「日本はドイツの友邦だからな、ヴィシーフランスも言い分を呑むしかなかったのだろう」

「で、軍は対応できるの?」

「それは問題ありません」



「日本軍16個師団が立て篭もっていたターリエンを落し」



鴨緑江の渡河も成功しました」

「兵力に余裕が出たので」

12師団ほど華南に回すそうです」

「了解了解」

「それと日本絡みでもう一つ―――」

「まだあるのか?」

「ええ、私が報告に来たのはこちらがメインですわ」

「何かしら ワクワクするわね」

「香港で日本政府からの非公式な接触がありました」

「何だ?」



和平提案ですわ」



「和平案 渡してきたよー」

「ご苦労だった、諏訪子」

「でも、あんな条件で和平しようってのは」



「ちょっと甘すぎるんじゃないかな?」

「だろうな」

「だが、意思表示にはなる」

こちらに和平の意思がある、まずはそれが伝われば良い」

「今回の接触は和平の第一歩だ」

「その第一歩が外務省を通さないルートかー」



早苗には知らせてないんだね」

「ああ、賛成するとは思えないからな」

「賛成どころか 絶対潰してくるよ」

「だろうな、しばらくは内緒だぞ」

内緒、ねえ」

「でも、和平が現実味を帯びてきたら」

「どこかで それは公にしなきゃいけなくなる」

「その時 早苗がどうでるか・・・」

早苗は軍にも結構食い込んでるからね」

「何か仕出かしそうで怖いよ」

「まあ、早苗については私に考えがある」

「お前は憲兵を何時でも動かせるようにしておけ」

「・・・早苗を逮捕するつもり?」

「必要があれば拘束する」

「・・・・・・。」

「諏訪子、覚悟を決めろ」

「この戦争が終わる時は、日本が大きく変わる時だ」


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