兵要
(1)軍隊が敵に近づいたら、軍隊の配置としては情況を明らかにするために先発隊を行かせ、軍隊の前方10里までを偵察します。それぞれ左右についても調べて道を行き、このときも10里の範囲とします。5人が部隊を構成し、一人が一本の白旗をもち、高いところに登り、周囲を見渡し、見えにくいところを明らかにします。軍隊が到着したら、別の高いところを探して進みます。第一隊が敵を発見したら、後方の第二隊に通報します。第二隊の主将に伝令する担当者は、主将に報告します。およそ偵察して発見した敵が100人以内であれば、ただ旗を挙げ、その方向を指し示すだけにします。100以上であれば、旗を挙げ、大声で知らせます。大将は、快速な騎兵隊を出し、偵察に行かせます。

(2)およそ出陣して野営するときは、まず腹心と郷導(ガイド)を前もって調査に行かせて実情を明らかにします。それぞれ偵察係を先に行かせ、野営に適した場所を確定させます。防壁をつくり、軍隊の配置を決め、四方に標識を立て、偵察します。そのうえで野営地を移動します。さらに偵察の騎兵隊を前進させ、五色の旗を持たせます。溝になったところを発見したら、黄色の旗をあげさせます。道の交差したところを発見したら、白色の旗をあげさせます。水のあるところを発見したら、黒色の旗をあげさせます。森林があるのを発見したら、青色の旗をあげさせます。野火があるのを発見したら、赤色の旗をあげさせます。そうして本隊は太鼓をうって応答します。旗と太鼓を用意して、互いに見たり、聞いたりさせます。もし河を渡ったり、山をこえたり、深い森林をぬけたりするときには、勇敢な騎兵を使って、数里にわたって声がしないか、四方について敵の形跡はないかを捜索します。高い山や木の上に人を登らせて遠くを見張らせます。精兵を四方の要所に行かせて防御させます。それから、兵士を前後に分け、そうして1隊には防御を担当させ、1隊には道を切り開かせます。そこで、最初に補給車や老弱兵、次に歩兵隊、最後に騎兵隊の順番で進ませるわけですが、そのときには互いにぴたりとつかせて整然とさせ、敵の襲撃を防ぎます。人も馬も声を出さず、隊列を乱しません。険しい場所、狭い道も、部隊を鱗のように順序よくさせます。場合によっては、くるくると変化させて、どの方向にも対処できるようにし、後方を前方としたり、左翼を右翼としたりします。行くときには魚貫陣を組み、立つときには雁行陣を組みます。進んで停止ポイントに着いたら、游騎(遊撃する騎兵)と精鋭は、四方に向かって分散して立ち、それぞれ所定の位置に従って陣取ります。一人が一歩の地を占めますが、これは軍の規模に応じて大きくなったり、小さくなったりします。宿営地には、その範囲を示すために十二の方向に、それぞれ大きな旗を立てます。その旗の長さは、二丈八尺です。子(北)・午(南)・卯(東)・酉(西)の方角をきちんと定め、間違わせてはいけません。朱雀の旗を午の方角のところに立てます。白虎の旗を酉の方角のところに立てます。玄武の旗を子の方角のところに立てます。青龍の旗を卯の方角のところに立てます。招揺の旗を中央に立てます。薪を集めたり、食事をしたりするときは、区域外に出てはいけません。

(3)人が忠であるのは、ちょうど魚が水の中にいるようなものです。魚は水を失えば死にますが、人は忠を失えば悪くなります。ですから良い将軍は忠を守って、志が立って名が揚がるのです。(太平御覧より)

(4)長い防壁を愛さないで、ちょっとした時を愛するのは、時は得がたくて失いやすいものだからです。ですから、良い将軍が時を求めるときには、服の帯を解かないほど、足が地につかないほどすみやかにするのです。

(5)地位を高くしても、傲慢になりません。全権を与えても、好き勝手しません。助けられても、それを隠しません。くびにされても、それを恐れません。ですから、良い将軍の行動はというと、宝玉のように朽ちないのです。

(6)良い将軍の管理の仕方はというと、他人に人材を選抜させて、みずからは推挙しません。法律に従って功績を決め、みずからは判断しません。ですから、有能な人は、もれなく登用されます。無能な人は、有能なふりをできません。実績があるように見せかける人は、昇進できません。

(7)言葉と行動が一致せず、私情を優先して公正を無視し、外にあっては互いにウソをつきあい、内にあっては互いに悪口を言いあう。こういったことがあり、なくせないこと、これを「敗れて乱れる」と言います。

(8)臣下が君主よりも強大となり、同じ勢力の者どうしが仲良くし、それぞれが徒党を組み、よこしまな人を競って昇進させる。こういったことがあり、なくせないこと、これを「敗北の前兆」と言います。


(9)兵士がきちんとしているなら、将軍が無能でも、負けようがありません。兵士がだらしなければ、将軍が有能でも、勝ちようがありません。
 
(10)督将(軍隊の中間管理職)より下の人たちは、それぞれ幡(のぼり)をもちます。出陣したとき、幡(のぼり)が天を指しているほうが勝ちます。