アジア特別シノドスに参加して
前横浜教区長 大司教 濱尾 文郎



開会式のミサ

 アジア特別シノドスの成功のために、皆様が心を合わせて聖霊にお祈りくださいましたことを、心から感謝いたします。
 アジア特別シノドスは、4月19日、聖ペトロ大聖堂で教皇と一緒のミサで始まり、5月14日、閉会のミサで終了しました。午前9時から12時半(コ−ヒーブレークは30分)まで、次は午後5時から7時までという毎日を過ごして、バスで宿舎から会場まで2往復するのが、少々きつく感じました。毎朗、会議の初めには、教皇と一緒にラテン語の祈りをとなえました。

全体会

 西はイスラエルをはじめ中近東から、中央アジアとシベリアとモンゴルという北アジア、そして南、東南、東アジアの日本と中国に返還された香港からの参加と総計252人でした。正式な参加者は約200人、あとは教皇に招待されたオブザーバーや数人のキリスト教諸宗派の人でした。会場で使用する言語は、英語かフランス語で、同時通訳にはさらにイタリア語も加わりました。
 最初の一週間は、ひとり八分間の発言が許され、200人ぐらいが発表しました。ほとんどが英語で、中近東とベトナム、カンボジアなどがフランス語、イタリア語が10人くらい、ドイツ語1人、ロシア語1人でした。教会の伝統的な公式用語であるラテン語は、日本代表の島本大司教1人だけで、「日本のお陰で、教会の伝統が少なくともシンボル的に残されたのが嬉しい」という教皇のお言葉に、参加者一同の拍手を浴びました。

発言の内容

 中近東と他の国とでは当然、発言の内容が異なりました。中近東の教会は、「主イエスはわれわれの土地でお生まれになり、われわれの教会は使徒の教会である」という大きなプライドを持っています。16世紀以降にキリスト教が伝わった他のアジアの地域とは大いに異なります。中近東での最大の課題は、イスラム教の支配、少子化、海外へ移住するキリスト教徒などです。またユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの聖地であるエルサレムの保護が訴えられました。キリストの福音を伝統文化に適応させていくという問題は、すでに初代教会の時代から典礼や言語、風俗、習慣に十分に取り入れてきています。
 他のアジアの教会にとって、キリスト教の文化への適応は、諸宗教との対話、霊性と信徒の積極的な福音宣教活動などが主なものでした。この課題の中心として、典礼のアジア化とそれに伴う地方教会の自主性の問題、要理、養成のアジア化などが強調されました。諸宗教との対話なしに、アジアの中ではキリスト教も教会の存続も出来ない現状から、その重要性が提示されました。同時に主イエス・キリストが唯一の救い主という宣教の使命を持つ教会のジレンマや悩みも語られました。従来行われてきた西欧の宣教師たちによる福音宣教への並々ならない努力に全員が感謝すると共に、アジアの教会のアジア化という使命が今後の課題であることを確認しました。平和のために働く使命、第三世界の対外債務の削減への努力、地方教会とローマの聖座との連携の改善なども最後の提案に残りました。



教皇ヨハネ・パウロ2世と共に

 

中国、北朝鮮との関わり

 教皇は、アジア・シノドスに中国、四川省の万県(ワンシェン)教区のトアン・インミン(段蔭明)司教と同教区のシュイ・チーシュアン(徐志玄)協働司教の2人を正式に招待しました。しかし2人の指定席は、とうとう最後まで空席のままでした。会期中、トアン司教から、ラテン語で感動的なメッセージが届きました。「政治的な理由でローマには行かれません。そのために二晩も眠れずに過ごしました。身体はそこに行かれませんが、心はそこで皆さんと一緒にいます」。参加は不可能でしたが、カトリック教会として正式に中国大陸の2司教を招いたという事実は重要なものとなりました。
 発言の中で、たびたび北朝鮮と韓国の再統一を願って両国の和解を祈る言葉や、再統一への協力の決意も表明されました。3年前、マニラでのFABC総会において、中国と北朝鮮の問題はタブーとして誰も発言出来なかったことを考えると、この数年の変化は目覚ましいものです。聖霊の働きを感じました。

シノドスを終えて

 伝統的な他宗教の人々の中で、キリスト教徒が主イエス・キリストの福音を示すことは、今後の大きな課題となります。例外なくすべての人々に愛を注がれる天の御父のみ旨を実現し、苦しむ人々の痛みに共感して共に歩み、平和をもたらし和解を司るキリストの教えを伝えることが、アジアの教会の責務となることでしょう。
 このたび私は、教皇のアジアの教会に関する使徒的勧告作成に協力する12人の評議員の1人に選出されました。この仕事を通して、今後のアジアの教会のビジョンが具体化されることと思います。
(この原稿は、教皇庁移住・移動者司牧評議会議長に任命される以前に書かれたものです。)




ホームページに戻る  元のページに戻る