地球温暖化と気候変動

キリスト者の優先課題

推薦の言葉

 「公害は少しずつ被害が大きくなるというのではない。はじめは少しの影響だが、ある限界点に達すると壊滅的な被害がでる」という言葉を聞いたことがあります。地球温暖化もある限界点を通過すると・・・。

 この冊子は、このまま温暖化が進めば地球がどうなっていくのかをとても分かりやすく教えてくれます。それだけでなく、私たちが今何から取りくむことができるかも具体的に示してくれています。私たちの問題としてぜひこの冊子を読み、広め、一緒に地球を守っていきましょう。今ならまだ間に合うからです。

大阪教区補佐司教
正義と平和協議会会長

松浦 悟郎

はじめに

 現在、私たちは多くの深刻な問題と直面しています:鳥インフルエンザ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、エイズ、テロ、環境破壊、貧困、など。 このため人間文明が完全に崩れるだろうと言う学者、科学者などは少なくなくありません。繰り返して言います。人間文明が完全に崩れるでしょう。言い換えると温暖化、そして他の環境破壊の結果地球自体が地球を守るために(地球を滅ぼす)人類を全滅させるかも知れないということです。深刻な状況で緊急状態です。テロより大きな脅威です。私は恐ろしく思います。

 中でも一番深刻な問題は気候変動・地球の温暖化ではないかと思います。温暖化のため、北極の氷が溶けて北極グマが絶滅するだろう、などと聞くと私は大変悲しみや怒りを感じます。

 何かしなければならないと思ってこの小冊子を書くことにしました。

この小冊子は、気候変動・温暖化を簡単に説明して、これからどうしたらいいかを、そしてなぜキリスト者がこの間題に関わるべきなのかを理解するためです。(勿論、こういう問題ですから、キリスト者でなくても関わるべきですが。)

現在の状況

1.自然災害は、深刻さを増して、より頻繁に起こっています。

 新聞を読んでいる人は分かるでしょうが、最近天災が増えてきています。そして以前よりもつと激しくなってきています。2005年夏米でハリケーン・カトリーナが起こりました。色んな国々で、嵐、洪水、熱波、干ばつ、山火事などがもつと激しくなってきています。2003年にヨーロッパで熱波のため2万人もの死者がでました。 同年だけで天災の被害額は(全世界で)6兆円にもなりました。日本でも、2005ー2006年の冬に記録的な雪が降りました。

2.氷や雪が溶けてしまう

 これも新聞を読む人なら分かるでしょうが、北極、南極の氷と氷河が溶けてきています。キリマンジャロ山の雪も後少しですべて溶けてしまいます。

3.日本では冬の始まりは遅くなっていますし、春の始まりは早く なっています。東京、大阪、名古屋などの桜の木は昔より早く咲いています。

つまり、気候が変動しています。

なぜ気候が変動するのだろう

 なぜ気候が変動しているかというと簡単に言えば、地球の温度は以前より上昇してきているためです。そして天災が激しくなっています。

これは国連の2000年の報告〔The UN Year 2000 Report on the State of the Planet〕の結論です。史上最も暑い年は1998年、2001年、そして2002年でした。これからももつと暖かくなってくるだろうと科学者たちが予告しています。地震、洪水、ハリケーン、サイクロン、そして干ばつのような自然災害は、深刻さを増して、より頻繁に起こるだろうと言っています。

 地球の温度はなぜ上昇しているかというと、太陽からのエネルギー(光、熱)は地球を暖めます。他方、地球はそのエネルギーを宇宙空間に放射します。大気中の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、その他のガスは地球から出て行こうとするエネルギーの一部を捕らえ、ちようど温室のビニールのような働きをして、熟を蓄積します。そのためこのガスは温室効果ガスと呼ばれています。

 地球を暖めるためは、この温室効果がある程度必要です。暖かくなかったら、私たちは地球に住むことが出来ません。しかし、最近、大気中の温室効果ガスの濃度が必要以上に上昇しています。そのため、地球が放射するべきエネルギーが必要以上に捕らえられ、地球が以前より暖かくなっています。

温室効果ガスはどこから来るか

 なぜ大気中の温室効果ガスの濃度が増加しているかというと、私たちの日々の行いがそのガスを出しています。

ですから、

 第二次世界大戦以来、世界の自動車の数は4千万台から6億8千万台に増加しました。自動車の利用は、人類によって大気中に放出される炭酸ガスの総量を増加しています。
 過去50年の間に、私たちは世界の森林の50%以上を破壊しました。森林が減少している原因は、主に先進国が発展途上国の森林を乱伐しているからです。日本は世界第2番目の森林資源国(国土比で66%)にもかかわらず、消費木材の8割を輸入し、世界有数の木材輸入国です。日本の紙の消費は、消費木材全体の4割以上、毎年1人当たり約250kgの紙を使っているのです。
 これで私たちの生活がいかに温室効果ガスを排出して地球を暖かくしていることが分かったでしょう。なぜ干ばつのような自然災害は、深刻さを増して、より頻繁に起こるかについてもつと詳しく説明しましょう。

東京が沈没する?

 地球の温度は上昇しています。海の水も暖かくなって膨張して海面が上昇します。また、地球が暖かくなっているため氷河と雪が溶けてその水は海に流れるため海面はもっと上がってきます。

 島や低い海岸が沈没します。何千万人の海岸沿いの住まいが破壊されます。ツバル(太平洋中部の9つの環礁からなる国)では、実際に海水に浸かってしまう場所が生じています。温暖化だけの理由だとは特定できないまでも、ニュージーランドへの移住がすでに始まっています。ある科学者たちによると、海抜の低い地域の多い東京でも、温暖化による海面上昇が原因で大きな被害が出る可能性があるということです。考えて下さい。東京の住民は(1千万人あまり)どこに移動できるでしょうか。新しい道路、学校、病院のための予算は誰が出しますか。大阪、名古屋、などは?世界の保険会社はもう既に天災の被害のコストを心配しています。

 地球が以前より暖かくなったため海水は(以前より)もっと蒸発しています。また、地球も暖かくなっているため空気も暖かくなって膨張して蒸発した水を捕らえます。そのため雨がもっと降ります。洪水がより頻繁に起こるのです。

◎天災が激しくなる

 台風やハリケーンはその組成のためのエネルギーを海の熱から取ります。海がもつと暖かくなっているため台風やハリケーンはもっと強力になってきています。大きな天候災害は1960年以来約10倍に増加しています。
 台風、ハリケーン、洪水だけではありません。地球が暖かくなっているため、川や湖の水がもつと蒸発して、ある地域では干ばつの深刻さが増えて、より頻繁に起こっています。

◎病気が広まる

 温暖化のもう一つの効果は病気が広まることです。昆虫を媒介とした熱帯性の病気の蔓延する範囲が両半球に拡大しています。例えば、マラリアを持つ蚊は暑いところにしか生息しません。しかし今まで住めなかった地域が温暖化のため暖かくなって、その蚊は新しいところに発生するようになります。

◎食糧の生産が減る

 小麦、米、トウモロコシのような世界の主要食糧穀物のうち、ある物は収穫量が次の100年の間に、地球温暖化が原因で30%程減少するだろうと言われています。

天災難民

 ツバルと東京のことを話しましたが、世界中低いところに住む多くの人々は移動しなければならなくなります。また、今パキスタン、インド、中国の山の氷河と雪は少しずつ溶けて人々はその水を利用して生活しています。しかし、溶けてしまったら、その人々の生活の水はなくなってしまいます。移動しなければならなくなります。どこに行けるでしょうか。水が豊かな日本へ来たいかも知れません。

 人だけではありません。動物もそうです。沈没する島に住む動物たちは皆生活の場を失ってしまいます。最近科学者が指摘しているように、北極グマは本当に絶滅してしまうかも知れません。温暖化のため日本の山の木々は今までの生態系が崩れて生育出来なくなり、もつと涼しいところ(北へ)移動します。動物も(熊、シカ、イノシシ、猿)木について移動しなければなりません。また、たとえば、今リンゴを作るところでも作れなくなって、もつと涼しいところで作ることになります。

 海が暖かくなるため多くのサンゴ礁は絶滅するそうです。オーストラリアの大サンゴ礁も死にます。

どうしたらいいでしょうか

 科学者によると、今世紀半ばくらいまでには、温室効果ガスの排出を50%減らさなければなりません。これは全世界の数字です。日本、アメリカ、カナダなど、豊かな国々は貧しくさせられた国々よりも温室効果ガスを現在沢山排出し、これまで温暖化を引き起こしてきた歴史的な責任があり、そして排出を減らしていく技術やノウハウを持っているため、貧しい国々より減らす必要があります。日本、アメリカ、カナダなどは約90%減らさなければなりません。90%!痛い!

(しかし最近日本は温室効果ガスをもっと排出しています。)

 私たちのエネルギーは78%化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)からです。温暖化を止めるために石油、石炭、天然ガスなどをほとんど止めなければなりません。その代わりに温室効果ガスを出さない燃料に替えなければなりません。

 つまり、太陽光や太陽熱、風力、波力、地熱、そしてバイオマスなどです。

ですから、

 工場でものを作る時に、電気を利用します。その電気の多くは石油を燃焼してできます。できたものを店まで運ぶには石油を利用します。

ものを宣伝する(広告)にはまた電気を利用します。新聞用紙を作るには遠い国で森を伐採して日本まで運びます。何をしても私たちは化石燃料を燃やして温室効果ガスを出します。ですから、100円の買い物をする時に炭素を約1リットル大気に出しているとイメージしてみるといいでしょう。物を買う必要がある時には、なるべく地元で作られた物を買いましょう。輸入品より、国産の物。国産の物でも、なるべく近くで作られた物を買いましょう。

ですから、

 しかも日本は約70%の食料品を輸入しています。遠い国から船や飛行機で運ぶためガソリンを沢山利用しています。(しかもせっかく輸入したにもかかわらず沢山捨ててしまいます。日本のゴミの41%は食料品です。)

ですから、

 チョコレートの材料となるカカオ豆を作るために原生林を伐採することがあります。それから遠い日本まで運ぶには石油を利用します。

ですから、

牧畜がメタンや窒素酸化物を排出しますから、

政府に任せていいだろうか

 政府は地球の味方ではありません。国民の味方でもありません。政府は企業の味方です。政治家は企業から寄付をもらって企業を守ります。企業は化石燃料などを利用することを止める気持ちはあんまりありません。また、政府が考えている炭素税に反対しています。

 今の政府には頼ることができません。次の選挙に環境問題に関心を持っている人を選ぶのは私たちの責任です。しかし、選挙まで待ってはいけません。政府へも官僚へも企業へもロビーしなければなりません。これは、一人でできませんから、環境団体と一緒にやったほうがいいでしょう。グリーンピース、地球の友、などのニュースレターを読み、その活動に参加しましよう。

 地球を救うため、温暖化を止めるため、温室効果ガスを減らすため、私たちの生活の仕方を変える必要があります。すべてのことを見直す必要があります。経済のあり方も直す必要があります。

「現代社会の生活様式を真剣に反省しないかぎり、環境問題に対する解決を見いだすことはできません。」
ヨハネ・パウロ2世『創造主である神とともに生きる平和、創造されたすべてのものとともに生きる平和』(1990年「世界平和の日」教皇メッセージ)#13

 多くの企業はもちろんこれに反対するでしょう。例えばガソリンをなるべく利用しないようにしたら、石油会社は怒るでしょう。輸入食品を減らしたら、貿易会社に勤める人々はリストラされると言うでしょう。しかし、迷ってはいけません。

会社に勤めている人々や、官庁に勤めている人々も上司から非難されると思っても、勇気を持って地球を救うために必要な新しい政策ややり方を出して下さい。

 生活のレベルを下げる必要もあります。嫌でしょうけど、生活のレベルをある程度下げるか、地球を破壊するかという選択です。

「簡素、慎ましさ、節制、犠牲の精神などが日常生活の一部とならなければ、一部の人の惰性が引き起こす事態ゆえに全人類が苦しむことになるでしょう。」 
ヨハネ・パウロ2世(同上)

化石燃料を止めたら、良いことも沢山ある

 地球に優しいエネルギーを利用することは多くの人々のために新しい仕事を作ります。優しいエネルギーは化石燃料よりも、原発よりもエネルギーの単位にとって多くの雇用を作り出すからです。リサイクル産業でも多くの新たな雇用が生まれます。(リサイクルは古い資源を利用します。新しい資源を利用するほどには、二酸化炭素を排出しません。)カナダのレジーナ市は1988年と比べて温室効果ガスの排出を18%減らすことによって$4千万を節約できました。化石燃料の利用を止めたら空気は奇麗になります。また、化石燃料を止めたら、多くの災害を防ぐことができ、その被害も避けられるでしょう。

キリスト者の立場

 温暖化も含めて環境破壊によって私たちは少しずつ地球を破壊しています。もう一度言います。私たちは地球を破壊しています。神様が創造された美しい地球を破壊しています。平気で破壊しています。

「天地の創造主、全能の神である父を信じます。」

 あなたは愛する人が作ってくれた物を壊しますか。普通は大事にします。ですが、神様が創造された地球を平気で破壊しています。気付いていません。地球(環境)破壊より大きな罪がありますか。殺人犯罪と同じぐらい大きいでしょう。しかし、この罪を告白もしません。神様を信じると言えますか。日曜日に教会へ行ってミサに預かりますが、月曜日から土曜日までは神様のことを忘れるだけでなく、その地球を破壊します。これは信者の生活ですか。

 地球破壊という一番大きな罪にも気付かない私たちの信仰教育には何か足りないところがあります。私たちは宇宙・地球とのつながりに気付いていません。全ての被造物の相互関連性も分かっていません。聖書(創世記)の物語は足りません。新しい物語が必要です。地球を大切にすることを教えてくれる物語が必要です。(アメリカのトマス・ベリー神父の天地万物の創世物語がいいでしょう。)

「全能の神が私達をあわれみ、罪をゆるし、永遠の命に導いてくださいますように。」

 小教区の委員会は環境問題を取り上げていますか。カトリックの学校は取り上げていますか。教区、修道会は?これより大事な課題はないでしょう。バザーの準備、クリスマスの準備、遠足より大事です。聖書の講座などは参加者に環境問題に気づかせないとあんまり意味がないでしょう。

 教皇は15年前にやっと環境問題に気付きました。ローマ教皇の画期的な公文書に、専ら環境と開発の問題を取り上げた、「創造主である神と共に生きる平和、創造されたすべてのものと共に生きる平和」(1990年1月1日)と題されたものがあります。その中で「自然と被造物に対する義務は、私たちの信仰の本質的な部分である事を認識する」(No.15)キリスト者を求めています。

 十字架上でご自分を犠牲にしたイエスを信じる私たちは、地球のため、動物のため、また他の人々のため、自分の生活を必要な程度喜んで犠牲にする決意がありますか。

より深い理解を得るための情報

http://www.ofm-J.or.jp/doc/globalwarming2002.html(フランシスコ会のウェブサイトです。)

http://www.chikyumura.org/(ネットワーク『地球村』のウェブサイトです。)

http://www.greenpeace.or.jp/campaign/climate/(グリーンピース・ジャパンのウェブサイトです。)

 この小冊子は「地球環境の一体性 地球温暖化と気候変動 キリスト者の課題」(ローマ在住諸修道会「正義と平和、エコロジー」委員会有志による対策グループ作成文書:イタリア、ローマ2002年3月)を参考にして書かれました。

著者:マッカーテイン・ポール(聖コロンバン会司祭)

〒158-0098東京都世田谷区上用賀4-1-10 聖コロンバン会
Tel (03)3427−9427
Fax (03)3439−7792
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(小冊子ご希望の方は上記までご連絡ください)