The Fantastic World of Hiro Fujikake - 藤掛さん追っかけある記 2003年
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2003年もくじ
ソロ・オーケストラ・コンサート@有松 竹田邸
ソロ・オーケストラ・コンサート@土岐文化プラザ・サンホール
ソロ・オーケストラ・コンサート@金山中学校
ソロ・オーケストラ・コンサート@土岐津中学校
ソロ・オーケストラ・コンサート@穂積北中学校
岐阜県交響楽団創立50周年記念公演@サントリーホール
ソロ・オーケストラ・コンサート@萩原町 星雲会館 天慶の間
イル ヴェント マンドリーノ第7回定期演奏会@浜離宮朝日ホール
新作オペラ『一粒の豆』一日目@関市文化会館大ホール
新作オペラ『一粒の豆』二日目@関市文化会館大ホール


ソロ・オーケストラ・コンサート@有松 竹田邸     2003/3/3

3月3日、名古屋市緑区有松で開かれた、藤掛さんのひなまつりコンサートに行ってきた。会場の竹田邸は、旧東海道沿いにある有松絞りの旧家で、古くて大きなお屋敷だ。コンサートは午後2時からだが、その前にミニ茶会があるということで、母とともに1時のおじゃました。柔らかな春雨に包まれたお屋敷の外はひっそりしていて、コンサートが行われるような雰囲気はまるで感じられなかったが、玄関に回るともうたくさんの靴が下駄箱に並んでいた。

茶室でお抹茶をいただく前に、別室で干菓子と桜湯をいただいていたら、藤掛さんが隣の部屋から出ていらして、通って行かれたので、「藤掛さん」と声をかける。ご挨拶して母を紹介した。

コンサートはお座敷で。畳の上で演奏するのも、靴をはかずに演奏するのも初めてですと、藤掛さんはおっしゃっていた。ついでに金屏風の前で演奏されるのも初めてだったのでは? 左右には背丈ほどもある桃の枝が生けられ、横手にはお雛さまが飾られている。聴衆は、昼の部の後、お店の方にうかがったところ、90人ほどということだった。夜の部も同じくらい入っていたのではないかと思う。

前の方で聴こうよと母を引っ張っていって、いったんは一番前に座ったのだが、開始直前になって、足がしびれそうだから、と母は後方に移って行ってしまった(^^;)。

コンサートの時間は45分と予定されていたが、おなじみの楽しいトークでついつい時間が延びてしまい、しかもプログラムにあった曲はすべて演奏されたので、昼の部は結局1時間15分に。なんと30分も延長したのだった。とっても得した気分。『ロミオとジュリエット』を今回初めて聴いたが、中ほどで出てくる鐘の音をフィーチャーしたパートがすごく素敵だった。

藤掛さんの演奏は初めて聴くという人がほとんどのようだったが、ソロ・オーケストラの迫力に、みなさん、非常に感銘を受けたようすで、終演後かなりの人がCDを買って帰られた。母も、ほんとに素晴らしいコンサートだった、また聴きたいと言ったので、誘った私も嬉しかった。

コンサートの後は、手作りのケーキやスイーツのおもてなしまであって、お店の方たちのこまやかな心遣いが感じられた。

昼の部 演奏曲目
1. 早春賦
2. 釧路湿原花便り
3. ふるさと紀行のテーマ
4. アルハンブラ幻想曲
5. アルビノーニのアダジオ
6. 浜辺の歌
7. ネコふんじゃった変奏曲
8. 木馬
9. 悠久の翔
10. 木曽ファンタジー
11. ロミオとジュリエット
12. タイタニック 愛のテーマ
13. モルダウ*我が心のふるさと
14. 徳山の子守歌

夜の部は6時からお食事、7時からコンサートだったので、予定ではいったん鳴海にある母の家へ戻って、私だけ出直すつもりでいた。でも、ティータイムなど楽しんでいたら、4時近くなってしまったので、母ひとりで帰宅し、私はそのまま竹田邸に居させてもらうことにした。

雨模様でちょっと薄暗い室内、片隅の椅子にすわってお雛さまを眺めていると、日ごろのあわただしい日常は心から流れ去ってしまい、ゆったりと別の速さで流れる豊かな時間がここには存在しているかのようだった。合間に、お店の方とお話ししたり、傘をさして、庭に出てみたりした。少し肌寒かったので、それほど長くは出ていなかったが、ちょっと高くなったところにあるあずまやなど、晴れた日ならずっとすわっていたくなりそうだった。

5時半ころからだんだんと人が集まり始め、来た人から順に、コンサートの行われるお座敷とは別の部屋で、琴のライブ演奏を聴きながら、白酒とお食事をいただく。その後、演奏会場の方へ戻ると、藤掛さんがいらっしゃったので、始まるまでお話しした。実のところ、これはコンサートと同じくらい楽しいひとときだった。

bondの「Strange Paradice」という曲の話を持ち出したとき、どの曲だった?と藤掛さんに聞かれて、でも、藤掛さんの前で口ずさむのは……とためらってしまい、「だったん人の踊り」が原曲の……と申しあげたら、即座に一節を歌ってくださったのだが、そんなちょっとした会話の一こまが、流れていく時の小川の川底で宝石のようにきらめく事象の砂粒だったりするのだ。

コンサートは10分ほど遅れて7時10分スタート。その直前までお話ししていたけれど、私がむりやり引き止めたわけじゃないのよ(笑)。夜の部も昼の部と同じ曲を演奏されるはずだったが、社長さんをはじめ2度聴く人も何人かいたし、藤掛さんご自身、「ぼくは短気なので同じ曲をやると飽きるので」ということで、大幅に曲目や曲順が変更された。

この時のトークで藤掛さんがおっしゃったのだが、「作曲家は短気な方がいい曲が作れる。気が長いと同じフレーズを延々と繰り返して退屈な曲になるから」と。藤掛さんの曲がどの曲も、メリハリが効いて、変化に富んでいるのは、そういうわけだったのね。

それはともかく、時間が延びてもいいですか?という藤掛さんの問いかけに、社長さんは「どうぞ、どうぞ、いくらでも」という、おおようなお返事をしてくださったので、夜の部のコンサートは1時間40分にも及んだのだった。後で藤掛さんにお聞きしたところでは、初めのうち、ちょっと気分がのらなかったそうだが(聴衆が遠慮がちで後ろの方から座っていき、前の方に空間が空いていたせい)、昼の部とは違う曲を演奏しますと宣言されたあたりからどんどん盛り上がって、総体的にはお昼の部より迫力のあるコンサートだったと私は思った。

夜の部 演奏曲目
1. 早春賦
2. 釧路湿原花便り
3. ふるさと紀行のテーマ
4. 白鳥
5. やしの実
6. 木曽ファンタジー
7. リバーサイド・セレナーデ
8. アルハンブラ幻想曲
9. ロミオとジュリエット
10. タイタニック 愛のテーマ
11. 徳山の子守歌
12. ネコふんじゃった変奏曲
13. おじいさんの古時計
14. モルダウ*我が心のふるさと
15. トルコ行進曲

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ソロ・オーケストラ・コンサート@土岐文化プラザ・サンホール     2003/6/3

今回のコンサートは、岐阜県が推進する能力開花支援事業の一環として、県の援助で土岐津小学校児童と保護者のために行われたもの。早めに昼食を食べて、お昼過ぎに家を出たけれど、道を少し間違えて戻ったりしていたため、会場の土岐文化プラザに着いたのは1時15分になってしまった。とはいえ、1時開場、1時半開演だったので、ちょうどいい時間ではあった。

児童はもちろん全員聴きに来ているが、その数に比べて保護者の数が少ない。百人もいなかったように思う。きっと藤掛さんとその音楽について知らないからだろうが、せっかくのチャンスをもったいないなと思ってしまう。

第一部は45分間で、これまでも演奏されたレパートリーが多かった。休憩をはさんだ第二部では、まず校長先生がハーモニカによる演奏で『シャボン玉』を披露された後、リコーダー教育で輝かしい実績のある、今は山岡小学校校長の林茂雄さんをゲストに迎えて、藤掛さんとの共演で、『メヌエット』『千と千尋の神隠しのテーマ いつも何度でも』『リバーサイド・セレナーデ』が演奏された。

『リバーサイド・セレナーデ』のメイン・メロディーは、パンフルートもそうだったけれど、リコーダーの音色にもとてもよく似合う。リコーダーが主旋律を奏でたパートでは控えめな伴奏をつけられただけだったが、間奏になると藤掛さんがシンセのフル演奏を入れられて、いつもと一味ちがったあじわいがあって素敵だった。『千と千尋の神隠しのテーマ』は、リコーダーとの共演もよかったけれど、今度はソロ・オーケストラだけの演奏で聴いてみたいと思った。この他に、『星に願いを』『トトロのテーマ』『フラワー』を今回初めてソロ・オーケストラの演奏で聴いた。

ひと通り演奏が終わって、児童の代表がコンサートの感想とお礼を述べたのに応えて、藤掛さんはもう1曲『フラワー』を演奏されたのだが、その後、図らずも児童の間からわき起こったアンコールの声は、このコンサートが児童たちにとっても素晴らしいものだったということを示していた。時間の制約で、そのアンコールには応えられなかったのだが、小学校の授業の一環として行われる音楽鑑賞会で、子どもたちから自発的にアンコールの合唱が起こるのは珍しいのではないだろうか。

ところで、この時の模様は、後日、岐阜放送の『みのひだ愛ランド』という番組の『みのひだアラカルト・青春まん真ん中』というコーナーで紹介された。時間は5分と短かったものの、藤掛さんや校長先生、児童、保護者のインタビューとコンサートの様子をうまく織り込んで、なかなかうまく編集してあった。コンサートのうち、流れたのは、冒頭の『2001年宇宙の旅』から『木曽ファンタジー』へと続く部分、土岐津小学校校歌、リコーダーと共演した『千と千尋の神隠しのテーマ』、ラストの『フラワー』のそれぞれ一部分だった。そして最後は、児童から花束を受け取る藤掛さんのとっても素敵な笑顔でストップ・モーションがかかって、きれいに締めくくられていた。

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ソロ・オーケストラ・コンサート@金山中学校     2003/6/21

梅雨も一休みで、すばらしい晴天。飛騨川沿いに41号線を北上する。両側の山々はすでに初夏の装いをまとっている。会場の金山中学校には1時間20分で着いた。学校は長い坂を登った高台にあった。

今回のコンサートは「ふれあい地域学校公開」の一環として行われたもので、「ふれあい演奏会」と題された藤掛さんのコンサートの開演は2時50分。私が着いた時にはまだ授業の公開が行われていた。まず体育館を覗いてみたら、シンセがセッティングされていたが、藤掛さんの姿はない。学校内を見学してこようかなと思っていたら、藤掛さんが入っていらしたのでご挨拶する。開演までの間、授業ものぞいてみたのだが、娘たちの頃よりいっそう進んだパソコン授業が行われていて興味深かった。

土岐のコンサートからあまり日が経っていないこともあり、今回は新しいレパートリーの披露はなかったが、生徒たちを鼓舞するような熱のこもったトークが素晴らしかった。実は、コンサートが始まった時から、この日の藤掛さんはいつになく楽しそうで、演奏にノッておられると思ったのだが、そのわけは終わり近くなって明らかになった。その朝、お嬢さんから国際電話があって、とても嬉しいニュースが届いたのだそう。

それはなんとも素敵なエピソードで、藤掛さんは、音楽家としてだけでなく、父親としても本当に素晴らしい方だと思わずにはいられない。その部分のトークはとりわけ長くて力が入っていて、コンサート+講演会と言ってもいいくらいだった。生徒や保護者はかなり感銘を受けたはずだ。

1時間10分の予定が、最後にもう1曲『フラワー』を演奏して、5分だけ延長して終了。次は10月までコンサートの予定がないと思うと、ちょっとさみしい。

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ソロ・オーケストラ・コンサート@土岐津中学校     2003/10/19

まばゆいほどの秋晴れの一日。いつもより早起きして、岐阜県土岐市まで藤掛さんの演奏を聴きに出かける。コンサートが朝9時からというのは珍しいかもしれないが、これは土岐津中学校の生徒と保護者のための学校行事だからで、私は部外者ながら、こっそり混ぜて聴かせていただいたというわけ。こういう時、岐阜に住んでいてよかったなーとつくづく思う。藤掛さんは今は千葉にお住まいだが、岐阜のご出身なので、岐阜の学校からの演奏依頼が多いのだ。

開演を待って外に立っていると、PTAの役員と思しき男の人がもうひとりの人に、「めったに聞ける演奏じゃないから、聞いてかなきゃ損だよ」と話しているのが聞こえてきた。おせっかいな私はつい、ほんとにそうですよ、私なんか各務原から聴きに来たんですからと言ってしまう。ところが、ところが、その役員さんは、「あなた、有名な藤掛さんの追っかけでしょ。ホームページで写真見たから、すぐにわかりましたよ」と私に向かって言うのである。ぎょえ〜、私ってそんなに目立ってたかしら。まあ、たしかに、ファン・サイトでは控えめとはとても言えないが。でも、ごく一部で知られているだけだと思ってたのよね、これまで。

コンサートの内容は、『トルコ行進曲』、『剣の舞』、『おじいさんの古時計』など誰もが知っている曲に、藤掛さんのオリジナルを少し加えた構成。と言っても、編曲はすべて藤掛さんの手になるので、通り一遍の演奏とはひと味もふた味も違う。なかでも『ロミオとジュリエット』と『ふるさと+モルダウ』の編曲が、私はとりわけ好きだ。『タイタニックのテーマ』では、初めの部分で、演奏プログラムをつかさどるコンピューターが反乱を起こしかけて、ちょっとハラハラさせられた。サティの『ジムノペディ』を今回初めて生演奏で聴いた。たとえコンサートでおなじみの曲でも、聴くたびに浮かぶ想いはさまざまで、飽きるということは全くないが、次はどんな曲が新しいレパートリーとして加わるかというのも、また楽しみ。

藤掛さんの演奏はもちろんすばらしいけれど、何事にもポジティブなお人柄が伝わってくる演奏の合間のトークも、私は大好きだ。今回、心に残ったお話をひとつ。『星に願いを』の演奏に寄せてのお話――。「流れ星が消えるまでの間に願い事を唱えれば叶うと言うけれど、流れ星が現れて消えるまでの時間はほんの一瞬だよね。その短い間にすぐに唱えられるような願い事というのは、ほんとにいつもいつも心にあるような願いであるはず。それくらい強く思い続けるような夢だからこそ叶うんだ。もし何かを望むなら心から願ってごらん。Nothing is impossible!」 

願い事を流れ星に叶えてもらうというと、一見他力本願のようだけど、実は流れ星は、その人の思いの強さを確かめる尺度だというわけ。流星雨の夜はこの場合、除外よ(笑)。

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ソロ・オーケストラ・コンサート@穂積北中学校     2003/11/16

待ちに待ったゴールデンな1ヵ月の始まり。というのも、これから来月の半ばにかけて、毎週末、藤掛さん関連のコンサートがあるからだ。しかも、藤掛さんのシンセ演奏によるソロ・オーケストラのコンサートもあれば、シンフォニック・オーケストラのものもあるし、藤掛さんが指揮をされるマンドリン・オーケストラの演奏会もあり、さらには新作オペラの初演と、実にバラエティに富んだ取り合わせなのだ。まず手始めに、11月15日は瑞浪市の瑞浪中学校へ。

藤掛さんのコンサートへ行くようになってから、知らないところへ車でどんどん出かける楽しみができた。しかも、今回は、先週の日曜に届いたばかりの真っ赤なデミオでドライブ。思えば、赤い車には、免許を取ったときからずっとあこがれてた。ほんとは藤掛さんが乗っておられるような、シックなボルドーの方がよかったけど、デミオにはないのでしかたがない。それに、デミオにはボルドーよりレッドの方が似合ってるかもしれない。

それにしても、今月は滅多にないようなハッピーなできごとがたて続け。念願の赤い車をゲットしたこともそう。そのうえ、藤掛さんのコンサート・ラッシュだなんて、あまりにも幸せすぎる。すべて順調に行くなんて信じられないという気持も心のどこかにあったのよね。

案の定、それは現実になった。時間どおりに会場に着いたのに、コンサートがあるような気配はまるでないのだ。いったい、どうしてー? 会場はここじゃないの? 

思い余って、もう長いことケータイのメモリに登録してあるけれど、一度もかけたことはなかった藤掛さんのケータイに電話してみる。でも、出たのは別の人。どうやら藤掛さんはケータイの番号をお変えになったらしい。ケータイの番号は、少しの間を置くだけですぐに使いまわしすると聞いたけど、あれは本当のようだ。

私はいつもたいてい、会場へ開始時間の30分以上前に着いている。知らない場所へ行く時は余裕を見ておくことにしているから。でも、この日は途中、道路工事のため片側一車線になって何キロも渋滞していて、着いたのは開始15分前。手だてを考えるには時間がなさ過ぎた。結局あきらめて帰ることにした。片道1時間半の道のり。うーん、次の日もコンサートの予定があったから、救われた気分だったが、そうでなかったら、ものすごく落ち込んでたことだろう。

さて、翌11月16日の日曜日は、瑞穂市(元穂積町)の穂積北中学校へ。創立20周年記念行事の「穂北フェスタ20」のゲストとして、藤掛さんが演奏されるのだ。昨日のことがあったので、道すがらなんとなく心配だった。でも、会場に着くと、体育館の外まで、リハーサルの音が聞こえてきたので一安心。

耳を傾けて、わくわくしながら外に立っていたら、学校の職員らしき方が、今、リハーサル中だから中でお聞きになるといいですよ、と言ってくださる。会場の扉の外から中を覗くと、すぐ近くに藤掛さんの奥様がいらしたのでごあいさつする。「昨日は瑞浪市でコンサートだったんですよ」と言われるので、「実は私も瑞浪まで行ったんですけど」と、事情を説明する。

そして、判明した事実――コンサートが行われたのは、瑞浪市のもうひとつの中学校、瑞陵だったのだ。すぐ近くまで行っていながら、ああ、ショック! あまりにお忙し過ぎて、藤掛さんが校名を勘違いされたらしい。それにしても、「2日連続だから、片方だけに来ることにされたのだろうと思ってました」って、私に限ってそんなわけないですよ、藤掛さん! 「昨日のコンサートはよかったですよ、生徒たちもとてもノッてて」 わあ、くやしい。余計に聴きたかったよぉ! 「今日のコンサートで2回分楽しんでください」 ええ、もちろんですとも!

というわけで、期待感いっぱいだったので、前置きの長いセレモニーも全然気にならず。会場は体育館にしてはわりと音響がいい。そして、右手の壁に、藤掛さんのアップを投影するという演出も。だから、後ろの保護者席からでも、藤掛さんの指の動きや表情がわかってよかった。

コンサートの開始時、藤掛さんは後方の扉から中央通路を通って入場されたのだが、生徒たちからひときわ大きな拍手がわき起こったので、いつもと違い、藤掛さんは両手を高くあげて、それに応えられる。すでにして、楽しいコンサートになりそうな予感。そして1時間半の間、その予感どおりに、トークもまじえて迫力あるソロ・オーケストラ・サウンドにどっぷりひたれたのだった。

会場の音響がいいと上に書いたが、実際、『星に願いを』など、ドラム・パートがいつもより強調されているように感じた。でも、あとで「編曲を変えられたのですか」とうかがったところ、特に変えてませんというお返事だったから、これは会場のせいに違いない。

他に、ほんの些細なことではあるけれど、『アルバンブラ幻想曲』の前半から後半へ移る箇所で3度鳴らされる鐘の音――以前は3つ目の音は前2つと違って、そっと優しく鍵盤に触れる感じだったのが、ここ2、3回は、あまり変わらない強度で鳴らされるようになっている。それから、『リバーサイド・セレナーデ』のメロディーラインがちょっぴり変化してたり。やはり、何度聴いても、聴くたび違うものがあって、だから、何度でも足を運ばずにはいられないのだ。

「では、来週、サントリーホールで」とご挨拶して、ハッピーな気分で会場を後にしたのだった。

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岐阜県交響楽団創立50周年記念公演@サントリーホール     2003/11/23

今回は、東京で行われた岐阜県交響楽団のコンサートへ、藤掛さんの大曲、交響曲『岐阜』を聴きに出かけた。CDで初演の演奏はもう数え切れないほど聴いているが、ライブで聴くのは初めて。それに、再演とはいえ、かなり書き直されているそうなので、どんなふうに変わっているかも楽しみだった。

会場のサントリーホールへは余裕を持って早めに到着したので、ホールの建物と噴水を見渡せる素敵なロケーションのカフェテラスで温かいラッテとマフィンを口で賞味しながら、心ではコンサートへの高まる期待を味わっていた。開演前の極上のひとときだ。 余談だが、このカフェテラスのテーブルには「動物にえさを与えないでください」という張り紙がしてあって、初め不思議だったのだが、座って食べ始めてすぐにその理由がわかった。すずめ数羽と鳩が一羽、おこぼれを期待して集まってきたのだ。こういう場合、鳩は近づいてきても珍しくないが、すずめは鳩より慎重なのが普通だ。ところが、ここのすずめはすぐ隣のテーブルに飛来して、じっと私を見ているし、別のすずめはテーブルの下、私の足から10センチと離れていないところまで寄って来て見上げているのだ。張り紙の指示に反してえさを与えるつもりは決してなかったのだが、マフィンはぽろぽろと崩れやすくて、図らずもすずめは数片のおこぼれにありつく結果となった。ありふれたすずめといえども、近くで見るととてもかわいかったので、それが内心嬉しくもあった私だった。

さて、コンサートの第一部は、團伊玖磨作曲の交響詩『長良川』、池辺晋一郎氏と小松一彦氏のトークをはさんで、池辺氏への委嘱作品で今回が初演となる『夢の跡へ』。第二部が、交響曲『岐阜』だった。はっきり言って、第一部は私にとって前座という印象しか残らなかった。『夢の跡へ』は、重くて暗くて、作曲者の意図した戦国時代のイメージはしっかり伝わってきたが、私の好みではなかった。

音楽の好みというのは、とりわけ原初的な感覚とつながっていると思う。好きなものと嫌いなものを、理性で感情に押しつけるということができない。まるで好きな音楽はもう遺伝子に刷り込まれているみたいだ。そして、藤掛さんの作曲された曲はどれもこれも私の好みにぴったり適合し、この曲だけはちょっとね……という例外をあげることが不可能なのは不思議なほどである。

閑話休題。生で聴く交響曲『岐阜』は実に素晴らしかった。今回、和太鼓は初演より数が減って2台だけだったが、初演に比べて遜色はなく、第四楽章の迫力は会場を満たして聴衆を圧倒した。聴きながら、あ、ここは初演版と違ってる!と思うところはいくつかあった。たとえばラスト。畳み掛けるように盛り上げる変更がなされていたが、専門用語に詳しくない私にはうまく説明できない。指揮者の小松さんは、第一部では割と静かな指揮ぶりで、これが小松さんのスタイルかなと思っていたら、第二部では体全体を使って大きな表現をされていたのが印象的だった。やっぱり曲によって変わるんだなあ。ホルンの奏でるテーマは何度聴いても素敵だし、歯切れのいいマリンバと管楽器の組み合わせも本当に心地よい。

演奏が終了すると、割れんばかりの拍手がいつまでも鳴り止まず、ブラボーの声がいくつもあがった。こういう時いつも、私にもああいう声が出せたらいいのに、と思ってしまうのだが、一方、藤掛さんの奥様は、「私もブラボーと叫びたいけれど、私が叫ぶのもなんだか変だし」とおっしゃるのだった。お茶目〜!(^_^)

藤掛さんとは、第一部と第二部の間の休憩時間に少しお話しした。来月初演の『一粒の豆』はかなりの自信作であるらしい。自信作であるがゆえに、アマチュアのコーラスの出来を心配してもおられた。「各務原市民合唱団はとてもよかったんだけどね」とも。これを聞いて、各務原市民合唱団のみなさん、「また『かかみ野の空』をやってやろうじゃないか」と思ってくれないでしょうかねえ。

次の日は娘と会って、昼食を食べながらおしゃべりして別れたのだが、まだ時間が早かったので、ふと銀座に寄ってからくり人形を見てこようかと思いついた。でも、上演時間がどうにも思い出せなくて…… 結局今回は残念ながらパスしたのだが、いつか絶対に行くぞ!

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ソロ・オーケストラ・コンサート@萩原町 星雲会館 天慶の間     2003/11/30

前日の雨も朝にはあがっていた。黄色からレンガ色の間の様々な色調に色づいた木々に彩られた国道41号線沿いの山々には、渦巻き流れるガスがかかって、いつもの静的なたたずまいとは違った味わいがある。

萩原町は下呂の北隣に位置している。コンサートの開始は10時半だったが、余裕を見て、7時半に家を出た。でも、9時前に下呂に着いてしまったので、そこでコーヒーを飲んで一休みしてから会場に向かう。着いたのはコンサート開始の1時間前だったが、星雲会館の駐車場はもういっぱい。ひょっとして、時間が間違ってて、もうコンサートが始まってるの?と一瞬思ってしまう。実は、今回のコンサートは萩原小学校の児童・保護者のために学校公開行事に付随して開催されたもので、保護者は会館の駐車場に車を置いて、すぐ近くの小学校で授業を参観したりしていたというわけ。

会場に近づくにつれ、例によって、リハーサル中の藤掛さんのシンセの音色が聞こえてくる。いつもながら、わくわくしてしまう瞬間だ。入り口の扉にもたれて、30分ほど藤掛さんの演奏に耳を傾ける。本番では演奏されなかった『エリーゼのために』が聞けたのはラッキー。これまでコンサートで聴いたことのない『もみじ』も、何度かリハーサルされていた。これは、コンサートの本番では、児童の合唱に合わせて演奏された。

リハーサルが終わった後、コンサートの開始を待って座っていたら、藤掛さんの奥様が私を探して近づいていらした。来年2月に名古屋市民会館で藤掛さんのコンサートが行われるのだが、刷りあがって届いたばかりのそのコンサートのチラシを持ってきてくださったのだった。「一番に渡したかったから」と言ってくださって感激。この場でいち早く公開しちゃおう(クリックすると、拡大画像が見られます)。

嬉しいことをもうひとつ発見。チラシの裏面にプレイヤーのプロフィール紹介が写真入りで載っているのだが、この藤掛さんの写真に、以前私が撮影して藤掛さんにさしあげたものを使ってくださっているのだ! すっごく嬉しいし、このうえなく光栄。

ところで、藤掛さんのリハーサル中、キーボードが一台と太鼓がいくつか搬入されていたのだが、ジョイントするのかなと思っていたらそうではなくて、藤掛さんの演奏が始まる前に、まず1曲披露されたのだった。地元の「花響」というグループで、演奏されたのは、藤掛さんの曲に太鼓を付けたという『真下川清流昇り打ち』。藤掛さんの曲だということは演奏が終わった後で知ったのだが、イントロからそんな感じはしていた。

今回のコンサートは小学生のためということで、演奏曲目は短めで元気な曲、なじみのあるわかりやすい曲が多かった。『星に願いを』の演奏が始まったとき、天井に埋め込まれたたくさんの小さなライトが点灯された。まるで夜空の星のよう。それで、星雲会館なのねと納得。

最後に、もう一度児童全員で『もみじ』を合唱して、コンサートは12時ちょうどに終了。今年のソロ・オーケストラ・コンサートはこれで終わりだと思うとちょっぴり寂しくなるのだった。

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イル ヴェント マンドリーノ第7回定期演奏会@浜離宮朝日ホール     2003/12/7

朝、家から駅に向かう間は、まだ時おり雨がぱらついていたが、新幹線に乗って静岡に入る頃には、雲が切れて青空がのぞくようになった。東へひた走るにつれ青空はどんどん広がり、写真のような富士山の壮麗な姿が車窓から眺められた。先月は、中腹から上は雲に隠れて、裾野しか見えなかったのだが。

イル ヴェント マンドリーノ定期演奏会には、一昨年も来ている。その時はやはり藤掛さんの指揮で『八つのバラード』を聴いたのだが、ほんとうに素晴らしい至福のひとときを味わえたものだった。だから、今回の期待も大きかった。打楽器のパートが加筆されているというのも、楽しみに思う要素だった。マンドリンやギターなどの弦楽器だけだと、サウンドが優しすぎて、私にはちょっと物足りない気がしてしまうのだ。

会場に入ると、最前列のやや左手に席を取った。音のバランスは中央やや後ろの方がいいとは思うが、ミーハー精神を発揮して、間近で藤掛さんの指揮ぶりを見る方を私は選んじゃうのだ。斜めからの方が藤掛さんの表情もよくわかるし。

席にすわってパンフを読んでいたら、藤掛さんの奥様が声をかけてくださった。ふたりのお嬢さんたちも一緒に聴きにいらしていた。ほんとに素敵なご一家だ。以前、松本幸四郎さんがインタビューで、芸術家を演じるにあたって、芸術家というのは芸術のためなら家族も切り捨てるような冷酷さがあるものだと言ってらしたが、藤掛さんの場合は芸術に対する厳しさは誰にも引けを取らずにいて、一方で家庭人としての側面もごく自然にそなえておられる。しかも、それが芸術家の側面と対立したり、矛盾したりすることはないように見える。もともとは藤掛さんの音楽に魅せられてファンになったのだが、今では人間的にもそのお人柄にすっかり魅せられてしまっている。

さて、第一部は藤掛さんの曲ではないので、退屈かなと思っていたのだが、思ったより楽しめた。朝日ホールは音の響きがすばらしく、ささやくような小さな音から、全パート揃って高らかに謳いあげる音まで申し分ない。

第一部が終わって、ファン・サイトの誰かに会えるかなとロビーの椅子に座っていたが、誰の姿も見えない。そこへ藤掛さんの奥様がいらっしゃったので、第二部の開演までおしゃべり。

さあ、いよいよ第二部だ。第一部は目を閉じて心地よい演奏にひたっているという感じで聴いていたが、第二部はまさに目のさめる演奏となった。黒い衣装でそろえたイル・ヴェント・マンドリーノの前に白いスーツで登場された藤掛さんは、舞台の上で一際目立つ。一曲目の交響詩『山河緑照』のジャンという出だしの力強い振りからして、実にカッコいい。『山河緑照』という曲自体、打楽器パートがすばらしい効果をあげていて、今まで聞いたいろいろなバージョンのなかでもとりわけ素敵だと思った。

一曲目が終わると、藤掛さんはマイクを握って、観客に挨拶された。「みなさん、こんにちは」と。オーディエンスからは反応なし。で、思わず、藤掛さんのいつもの「どうした、みんな、元気ないぞ」というセリフを心の中で言っている自分に気づいて、笑ってしまった。それはともかく、藤掛さんの楽しいトークで会場はいっそうなごやかな雰囲気になる。

二曲目は『悠久の翔』だったが、私にとって今回のコンサートで一番素晴らしかったのがこの曲だった。そもそもマンドリン合奏のための参考CDに入っている演奏は、打楽器が加わることを想定しないものだった。だから、この編曲からマンドリン版を想像して、私はソロ・オーケストラ版の迫力にはとても及ばないだろうと思っていた。今回の演奏はその予想をみごとに裏切ってくれた。きらびやかで、力強く、繊細で、激しく、ソロ・オーケストラ版とはまた違った魅力を表現しえた演奏だった。

『スプリング スプラング』は、ナレーションとソプラノ独唱付きで、ミュージカル『ブンナ』のハイライト集といった趣。四曲目の『星空のコンチェルト』はマンドリン演奏会でたびたび取り上げられているので、マンドリン曲としての方が有名かもしれない。しかし、もともとはミュージカルの中で使われていた曲で、そのミュージカルを去年の春に見て以来、幻想的なシーンで使われていたこのナンバーが、前にも増して私は大好きになったのだった。そして、この曲もまた、打楽器パートが加わって、いっそう色彩豊かな演奏となった。

アンコールは『竜宮ファンタジー』。藤掛さんが再登場して、譜面台に載った楽譜をお開きになったとき、タイトルが目に入ったので、これもまた打楽器加筆バージョンかなと期待したのだが、残念ながらそうではなかった。最後に『ブンナ』の曲をもう一度演奏して、コンサートは終了。素晴らしく濃密な1時間10分だった。

一昨年のコンサートでの藤掛さんは、にこにこと、時に歌手に合わせて歌いながら、本当に楽しそうに指揮をしておられた。今回は、曲目の違いもあって、それとはちょっと違ったけれど、体全体で音楽を表現されるような指揮ぶりには、やっぱり耳だけでなく目も楽しませてもらったのだった。

終了後、ファン4人でおしゃべりしながら、出待ち。やがて藤掛さんが出ていらっしゃったので、少しお話ししてから、ほんわかと暖かな心で暮れかかる東京の街を後にしたのだった。

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新作オペラ『一粒の豆』@関市文化会館大ホール     2003/12/13

開演は6時半からだが、席取りのためというよりは、チケット完売ということで、文化会館の駐車場に止められなくなるといけないので、1時間ほど早めに会場に行く。こういう場合、入り口で並んで待つのが普通だが、ここは整理券を配ってくれたので、喫茶室でカフェオーレを飲みながら、すわってゆっくり開場を待つことができた。

開演時間が近づくにつれて、だんだんどきどきしてくる。今日の初演は、すでにある作品をマンドリン・オーケストラ用に編曲したというような作品と違い、全くの新作なのだ。これまで聞いたことのない新しい曲が2時間たっぷり聞ける! そう思うと、興奮をおさえられない。

5時45分、入場が始まったので、ホール内へ。どこにすわろうかなと迷っていたら、来賓席の一角に作曲者用にリザーブされた席があったので、またまたミーハー精神を発揮して、通路をへだてた隣の席に決めた(^_^)。中央よりずっと左手だが、この席から舞台に向かっては通路になっていて、前にさえぎるものが何もなく、なかなかいい。

開演間際に来賓の方々が次々と入場されて、藤掛さんご夫妻も席につかれた。藤掛さんがこちらに気づかれたので、ちょっと頭をさげてごあいさつ。

いよいよ緞帳があがる。この作品は五つの民話からなるオムニバスで、二幕五場という構成。各場の初めに、舞台に下げられた『紙すきの歌』と同様な和紙のスクリーンに物語のタイトルが映写される。流れ出す序曲。最初の一音から、まぎれもない藤掛サウンドだ。そして、藤掛さんに特有の流麗なメロディー。ほんとうにすばらしい序曲だ。

第一話は、『天ん邪鬼』。しかし、正直に言うと、これはちょっと期待はずれだった。村人のコーラスと天ん邪鬼とのやり取りで進行する筋立てなのだが、天ん邪鬼の歌唱がいまいち。舞台を締めるべき役割を果たしていないのだ。ちなみに、天ん邪鬼を演じていたのは、『小さな虫の物語』でスズムシの妻をやっていた人だ。

しかし、第二話では一転、ぐいと引き込まれた。登場するのは、猿丸と母と都からの使者だけ。そして、猿丸の出生の秘密が物語られる。簡潔な歌詞から、悲恋と、母の毅然と生きてきた年月がしのばれる。都からの使者の出番は長くはなかったが、すばらしい歌唱だった。猿丸役の青年にもうちょっと表現力があるともっとよかったと思う。

第三話は、重々しく緊迫感あふれるサウンドでスタート。圧政に苦しむ村人を救うために代官を討ち果たしたかどで磔獄門にされようとする庄屋金右衛門に、別れを告げにきた妻と村人たちの場面である。この金右衛門役の歌唱もまた絶品だった。彼は『かかみ野の空』で大海人王子を、『紙すきの歌』では弥助を演じていた。庄屋夫婦の歌によるやり取り、それを盛り立てる村人のコーラスが合わさって、ここはまさにオペラのハイライトとなった。

第三話が終わって、幕が下りた時、私は思わず藤掛さんに駆け寄って、「藤掛さん、すばらしい!!」と言わずにはいられなかった。感極まったふうの私に、藤掛さんは両手で握手して応えてくださった。そして、「まだ後があるよ」と。

10分間の休憩をはさんでの第二幕は、コミカルな『狐の嫁入り』からスタート。白装束の狐の花嫁行列のシーンで流れる古謡風のメロディーがとても印象的。

第五話は、尼ちとが語り手となって、一粒の豆とお地蔵様にまつわる物語が進行する。だから、ちと役の歌手のうまさが成否の決め手となるのだが、情感あふれる歌唱で、ラストにふさわしい心温まるエピソードとなった。義母の歌唱も、若い時と年老いてからとを演じ分けていて、なかなかよかった。

フィナーレは、全員が舞台に登場して、各エピソードのさわりと、「一粒が千粒、二粒が万粒」という、このオペラのテーマが壮大に謳いあげられて、幕。アンコールで再び幕があがった時、藤掛さんも客席から舞台へ上がられて、ソリストたちとひとりずつ握手。そして、盛大な拍手とともに、この感動的な初演の幕は下りたのだった。

次の日の追加公演のチケットもゲットしておいて、ほんとによかったと思った。買ってなかったら、絶対に後悔したことだろう。

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新作オペラ『一粒の豆』@関市文化会館大ホール     2003/12/14

朝、目覚めてベッドの中でまず思ったこと――ああ、今日もう一度、あの素晴らしいオペラが聴ける! そして、たまらなくハッピーな気分に満たされた。

今日の公演は2時開演。正午ころ家を出る。すがすがしい晴天だ。空気はクリスタルガラスのように透明で凛と張りつめている。文化会館に着くと、入り口にはすでに20人ほどが並んでいた。今日は整理券を配っていないようだ。昨日は夜の公演だったから、気を利かせたのかもしれない。追加公演も早々と完売になったと言う。私の住んでいる各務原では前売り券を売っている場所がなかったので、本公演と追加公演、それぞれ別に関市まで足を運ばなければならなかった。いや、正確には3回だ。追加公演が決まったことをホームページで知ってすぐ買いに走ったら、まだチケットができあがっていなかったから。(実は、行く前に確認した方がいいなと思っていたのに、そう思ったことをすっかり忘れて出かけてしまったドジなやつ(^^;)) たとえ何度だろうと、足を運ぶ価値は十分あったが。

前日と同じく開演45分前に開場。その頃には列はものすごい長さになっていた。さて、今日はどこにすわろうか。前日は来賓が多くて、2列半ほどがリザーブしてあったが、今日は9席だけだった。少ないので、作曲者の席という表示は特にされてない。昨日と同じ、通路をはさんだ隣席という手もあったが、今日は反対側の隣席にすわることにした。そちら側は通路をはさんではいないのだ。内心、すぐお隣の席に「作曲者席」と張り紙したい気持ちだったが(笑)、ここは成り行きにまかせるしかない。

開演10分前になって、来賓の最初のひとりが入ってこられて、向こう端の席に腰を下ろされた。後に続く人たちは順にその隣にすわっていかれる。藤掛さんご夫妻は昨日と同じく最後に入っていらしたので、その時には空いているのはもう私の隣だけだった! で、奥様が私の隣に、その横に藤掛さんがおすわりになった。藤掛さんは、私を見て、「いいところにすわりましたね」とおっしゃった。ほんと、最高! 

「ひとつも空席がないですね」と言われて後ろを振り返ると、会場は最後列までぎっしり人で埋まっている。すごい人気だ。開演5分前のチャイムが鳴った。私は、オペラのプログラムを取り出して、藤掛さんに、オペラの作曲をされていた時に心にあった言葉、ないしは、オペラで伝えたかったメッセージを書いていただけないか、お願いしてみた。それが、これ。 ひとりで眺めているには、あまりにも惜しいので、みなさんにも見ていただこうと思う。今この時点では、これを読んでおられる方のほとんどがオペラをご覧になっていないだろうから、ピンとこないに違いないが、いつかCDなどで聴かれた時、きっと納得していただけると思う。

さて、いよいよ開演。わくわくしながら「昨日と違う楽しみ方ができそう」と言ったら、奥様は、「今日の方が緊張がとけて、きっといい出来でしょう」と言われた。その言葉どおり、第一話の天ん邪鬼と村人のコーラスからして、昨日より格段にいい。猿丸くんも昨日より聴かせる。ただ、第四話の下駄売りだけは、今日は声が割れていた。役柄そのままに、昨日の夜お酒を飲みすぎたんじゃないの?(笑) この下駄売りを演じていた野村富昭さんは、名前を確認できていないが、『ブンナ』でネズミ役をやっていた人のような気がする。幸いにもというべきか、幼児が大きな声でぐずっていたのもこの第四話でだったので、CDにする時には、ここは1日目を採ることになるんじゃないかな。でも、「親と子に捧げる創作音楽劇」と謳っているわりには、子供の観客が少なかった。実際、『小さな虫の物語』と違って、幼児が楽しめる内容ではないが。

ところで、昨日のレポでは、ストーリーとの絡みから主に歌唱についてコメントしたが、美しくかつ親しみやすい歌のメロディーと同じくらい、いや、それ以上に私が素敵だと思ったのは、歌のない演奏だけの部分だ。歌詞という制約がないぶん、より自由にイメージの翼に乗って飛翔しておられる藤掛さんという印象がある。

第二話で言えば、出だしや会話の合間を彩る叙情的な旋律。「冬虫夏草」の和歌を詠唱するバックの演奏も素敵だ。第三話の、村人のために自分や家族の幸せを犠牲にした英雄的行為を讃える、力強くも悲壮な旋律の感動的なことと言ったら! 『狐の嫁入り』で繰り返しでてくる日本的な曲が印象的なことは前にも書いた。それから、第五話。回想シーンの旋律もすばらしい。とりわけ、ちとが家を出た日の回想シーンに流れた曲は、キラキラと美しい音色の部分も、小刻みに鳴らされる打楽器と重々しい旋律が奏でる部分も、大好きだった。

フィナーレは、昨日よりさらに盛り上がった気がする。今年行った多くのコンサートのどれもがそれぞれに忘れられないけれども、『一粒の豆』の初演を観たことは、間違いなく死ぬまで忘れられない想い出になるだろう。

実は、このオペラより期待してたのに、今年はついに聴くことが叶わなかった交響曲『出雲』について、いつ頃聴けるか、藤掛さんにうかがってみた。答えは「来年中には」。遅れても来年早いうちだと思っていた私は、ちょっとがっかり。依頼された出雲大社の方では、「神様は人間とは時間の尺度が違うので、急がれない」とおっしゃっているそう。だから、藤掛さんは心置きなく完璧を目指されるというわけ。奥様によれば、『出雲』は『一粒の豆』以上の傑作になるとのこと。すでにできあがった第一楽章はものすごくかっこいいそうだ。ああ、待ちきれない! それを聴くまでは絶対に死ねない(笑)。

帰り道、運転しながら、知らず知らず「一粒が千粒、二粒が万粒」のフレーズを口ずさんでいた。この詞が自らこのメロディーを求めたと思えるくらい、自然でぴったりくる旋律だ。名曲ってそういうものじゃないかな。

それにしても、11月の半ばから今日まで、夢のような1ヵ月だった。それもとうとう終わってしまう。でも、来年はまた、もっと素晴らしいコンサートが待っているだろう。これまでずっとそうだったから。



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