書評もどき

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小説 (27冊)

タイトル
著者
出版社・出版年
コメント
青の炎
貴志祐介
角川書店・2002/10
映画化もされた悲しき17歳の殺人者のストーリー。綿密な殺人計画はもとより、主人公の少年の切ない心を詳細に描写する巧妙な筆致には、一気に読ませる力がある (2003)
赤い月(上・下)
なかしに礼
新潮社・2003/11
著者の自伝的小説。映画化され話題になった。映画は観ていないが、戦中・戦後の満州という混乱の時代を生きた、母である前に女であり続けた逞しい波子の生き様が上下巻を一気に読ませる。彼女を取り巻く3人の男性、特に氷室との関係も事実だというから壮絶。善悪を超え生き続けたいと願う心、そしてたくさんの悲惨な死を目撃しながら2人の子供と生き抜く力を男性に見出したいという彼女の想いに、同じ女性として深く共感できる (2004)
アンテナ
田口ランディ
幻冬舎・2000/10
15年前神隠しのように忽然と行方不明になった妹。なぜ妹はいなくなったのか?
兄の死が発端になりストーリーが展開する
『コンセント』と同様、ベースになっているのは、家族を失った喪失感と、いなくなった家族のために何かできたのではないかという罪悪感。
主人公が心の混沌から脱出する手段がSMというのは正直しっくりこない。SMプレイに心理的束縛を解き放つ要素はあるかもしれないけど、なんか強引でうそ臭い感はぬぐえない (2004)
ウエハースの椅子
江國香織
ハルキ文庫・2004/5
小説というより「私」の繊細な心が奏でるポエムのような、エッセイのような一冊。ストーリーはあるようでない。「私」の仕事と日常と、妹と恋人と、思い出と感情とが静かに描かれる (2003)
海辺のカフカ(上・下)
村上春樹
新潮社・2002/9
なにも言いません。独特な村上ワールドを堪能してください (2003)
贈る言葉 Mystery
綾辻行人 編
光文社・2002/11
ミステリーのアンソロジー。9人の著者による上質の作品を一冊で味わえ、得した気分に。あなたは、どれが好き?(2003)
泳ぐのに、安全でも適切でもありません
江國香織
ホーム社・2002/3
彼女の小説のタイトルのつけ方が好きで、図書館で借りた一冊。が、短編集だとは知らなかった…。しかも特に山場もなく、最後にオチやエスプリを期待すると大きく裏切られる淡々としたストーリー運びに、物足りなさが残る。個人的には、彼女は短編より長編(例えば『冷静と情熱のあいだ』(角川文庫・2001/9)とか)がいいと思う (2004)

完全犯罪はお静かに
ミステリー傑作選28
11人の推理作家たち
講談社・1995/05
小杉健治・小池真理子・連城三紀彦・日下圭介・山口雅也・本岡類・井上夢人・佐野洋・小林久三・宮部みゆき・乃南アサ11人のアンソロジー。人気作家揃いで、それぞれの個性がでていて読み応えがある。小池真理子の『老後の楽しみ』の不気味なラスト、日下圭介の『待合室で拾った殺人』の意外なラスト、ユニークな構成のちょっとした謎解きテイストを持つ井上夢人の『書かれなかった手紙』が特にお気に入り (2005)
キッチン
吉本ばなな
福武書店・1988/1
いまさらという感じだが、遅ればせながらばななワールドを体験。研ぎ澄まされた感性を持つ言葉の使い方がとても綺麗な作家。最も心に残るフレーズは「幸福とは、自分が実はひとりだということを、なるべく感じなくていい人生だ」(『満月−キッチン2』より)
「昔からたったひとつのことを言いたくて小説を書き、そのことをもう言いたくなくなるまでは何が何でも書き続けたい」。書き続けてください、ずっと (2005)
グロテスク
桐野夏生
文藝春秋・2003/6
現実に起きた東電OL殺人事件(昼はエリート総合職、夜は娼婦の二つの顔をもつ女性が外国人に殺された衝撃的な事件)に酷似した殺人事件を起点にして、何人かの登場人物を語り手とした回顧と日記の形式で、それぞれの人生と事件が語られていく。同じ事象も語り手によって捉え方が違い事実関係も異なるため、一体だれが本当のことを語っているのかわからなくなる。読み進めていくうち、人間の持つ闇の部分・醜い部分がむき出しにされるような気がして気分がずーんと重くなる。まさに、「グロテスク」。こんなにずばり的確に内容を表現したタイトルの小説がいまだかつてあっただろうか (2004)
号泣する準備はできていた
江國香織
新潮社・2003/11
直木賞受賞作ということで結構期待したけれど、はっきり言って期待はずれ。12編の短編で、若いとはいえない女性たちのそれぞれの生き方を描く、小説というより詩のような江國ワールド。著者と私の年が近いせいか共感できる部分も多いけれど、同じテンポで進むストーリーの連続に食傷気味。彼女の独特の世界についていける感性は私にはないらしい (2004)
幸福な朝食
乃南アサ
新潮社・1996/10
何度もの挫折に耐えながらプライドだけを支えに生きていたような主人公が、その重みに耐えられなくなり最後は壊れてしまう。厳密に言うと、封印してしまった衝撃的な過去に対するトラウマが一番大きな原因だと思うけど。あまりにも救いようのないラストに苦しい気持ちになる。
著者の初期の作品であるにもかかわらず、すでに彼女の真骨頂ともいえる綿密な人物描写力を十分に発揮している。
『凍える牙』でみせたと同様、主人公だけでなく周りの人物像もしっかりしていて、読んでいて安心感がある。そういった描写に重きを置きリアルさを醸し出すために、意図的に物語の進行を地味に淡々と抑えている感があり、そのせいで中盤ややダレてしまうのが少し残念 (2005)
凍える牙
乃南アサ
新潮社・2000/1
深夜のファミリーレストランで突然男が炎上・獣による咬殺事件の続発など異常な事件が立て続けに起きる女刑事を中心とした刑事小説ということで、ミステリーなテイストを求めると正直期待はずれ。事件の流れや殺人の動機が稚拙で、ツメの甘さがぬぐえない。
けれど、着想の奇抜さや警察の仕組みや薬品・オオカミ犬など多岐にわたる綿密な下調べ力には感服。特に、旧態然とした男社会な警察組織の中で奮闘する主人公の心の葛藤が、クライマックスのオオカミ犬追跡場面にうまくマッチしている。心理描写のうまさが一気に読ませ、直木賞受賞も納得 (2004)
コンセント
田口ランディ
幻冬舎・2000/5
著者のことはいろいろ知っていて(ネットコラムが執筆活動のきっかけとか、盗作疑惑や経歴詐称など嫌な取り上げられ方をすることが多いなど)とっても興味がありつつ、彼女の著書を読んだのはこれが初めて。

独特の視点で紡ぎだされるランディワールドにどっぷり。私自身は霊的な世界に対する知識は全くないけど、そういうのってきっとあると思うし、巷では批判が多い、彼女ならではの性描写やセックスの捉え方にも嫌悪感を感じることはなく、むしろそういう考え方もあるかなと思う。「生」と「性」、「あっち」と「こっち」の世界をつなぐコンセント。そのコンセントは人それぞれ、って視点結構好きかも。
難を言えば、書き方に波があるというか、時々やたら冗長だったり、あっさり投げやりな表現になっちゃったりしたこと。この点は、後に書かれた
『アンテナ』『モザイク』に期待 (2004)

サヨナライツカ
辻仁成
世界文化社・2001/1
「好青年」と呼ばれエリートコースを踏み外す愚かな行動は一切行わない豊は結婚を控える中、赴任地タイで沓子と出会う。狂おしいほどに彼女を愛した4ヶ月。しかしその間も、日本で待つ婚約者との関係を続け、結婚式間近に沓子との別れを選択する。そして25年後に再会し…。
彼の小説は他にもいくつか読んだことがあるけれど、いつも翻訳小説を読んでいるような錯覚に陥る。彼独特のくどい言い回し・レトリックのせいだと思うけど。果たして人は本当に、たった4ヶ月しか愛し合えなかった人を、もう二度と会えない人を、何十年間も思い続けることができるのだろうか (2005)

団欒
乃南アサ
新潮社・1998/07
『世にも不思議な物語』が好きな人ならきっと楽しめる奇妙な家族の短編全5編。伏線とその回収、意外でエスプリのきいたラストなどなど、相変わらず上手い (2005)
trai cay
 −チャイ・コイ−
岩井志麻子
中央公論新社・2002/5
すべて地の文で書かれた、ヴェトナム人の愛人との官能的な4日間。女性である『私』の視点から描かれる詳細な性描写が新しい。大人の女性への私のいちおし (2003)
薔薇の木 枇杷の木
檸檬の木
江國香織
集英社・2003/6
主婦、フラワーショップのオーナー、モデル、編集者など計5組の夫婦と彼らに関わるその他5人の様々な結婚生活・恋愛。
ドンピシャ自分の現状や気持ちに重なる登場人物はいないけれど、それぞれの行動や気持ちに少しずつ「ある、ある」とか「なんとなくわかる気がする」と思える部分がある (2004)
ピリオド
乃南アサ
双葉社・1999/05
サスペンス物だと思って読み始めたら、普通の小説だった。都会でフリーカメラマンという不安定な職種につく40歳バツイチ女の心の動きを描く。田舎にある実家や亡くなってしまった両親など、過去後ろに置いてきてしまったものを思う気持ちや、それらをないがしろにしてきてしまったという後悔の念はすごくわかる。若いころは前に進むことだけを考え、後ろに残すものに思いを馳せることは少ない。けれど、親が死に、生家を取り壊すことになって初めて思う「自分には帰る場所がなくなった」と思う心が切ない。
私にはまだ親もいる。生家もある。「帰る場所」が日々頑張る力になっている部分は大きい。なくなってしまう前に大切にしたいとじみじみ思う。私にとっての帰る場所も、母親なのかもしれない (2005)
白夜行
東野圭吾
集英社・2002/5
ある殺人事件を発端にした二人の男女の20年物語。彼らを取り巻くいくつもの恐ろしい犯罪。何の接点もないと思える二人は、ともに暗い想いを抱えて生きている。二人の成長を追いながら織りなすストーリーは息ができなくなるくらい悲しいサスペンス。超大作の流れを損なうことはなく、それでいて意外なラストシーンは切なすぎる (2004)
プラナリア
山本文緒
文芸春秋・2000/10
5つの短編を収録。登場人物ひとりひとりになかなか興味深い特徴がある。その中でも「プラナリア」の主人公、乳がんのため乳房を切除したことでひがみっぽくなっている25歳の春香には考えさせられるものがある。ウラ闘病記といっていいほどがん手術・治療の記述も正確(だと私は思うし)、病院の様子や春香の心・姿はいかにも現実にありそうな感じ。
その他、離婚・失業でありあまるほどの時間をもてあます36歳の泉水のストーリー「ネイキッド」など、収録短編のほとんどが完全に完結しておらず、読者にその先を想像させる構成も個人的には好き (2004)
ぼっけえ、きょうてえ
岩井志麻子
角川書店・1999/10
日本ホラー小説大賞を受賞したといっても、たかだか明治時代の岡山の怪談話でしょと高をくくって読み始めたが…。

怖い。身の毛もよだつほど怖い。小説を読んでこれほど背筋がぞぉっとしたことはありません。舞台こそ100年前の日本ですが、現代日本屈指のホラー小説に違いない。最近よくあるサイコキラーや近未来型のホラー物に慣れてしまった私にはとても新鮮な分、余計怖い。
徹底的に岡山弁で、客相手に身の上話をする遊郭の醜い女郎を語り手としたスタイルで、あたかも耳元で女郎が自分に語りかけているような臨場感がある。伏線の絶妙な回収、あっぱれなラストにもただただ感服。

彼女の初期の作品には自らが望まない形のセックスが女性の心や人生にもたらす黒い影をバックボーンにしたものが多く、最近は、そのセックスの主体としての女性を描いたものが多い。彼女が一生をかけて追求したいものは、セックスにほかならないのだろうと感じます。テレビでぶっとびなキャラを炸裂させている彼女ですが、作家としての才能はただものではない。このまま稀有な感性で素晴らしい作品を作り続けてください。 (2005)

モザイク
田口ランディ
幻冬舎・2001/04
精神病院への「移送屋」ミミが主人公。超常的というか、超自然・SF思想に、電磁波、分裂症、ネット、メール、新興宗教など世相を反映した要素を盛り込んだ、作者の妄想炸裂な一冊。ランディワールドにぐっと引き込まれ一気に読めた。
なにを隠そう私も常々思ってました。「キチガイ」(←放送禁止用語ですが、作中で使用されているので敢えて使います)に分類されている人たちは、ほんとうにみな狂っているのか。実は「正常」と言われる人たちの方が見るべきものを見ていない鈍感な人種で、非常に敏感な感性を持つまともな人たちこそ、あまりに廃頽した世の中に耐えられなくなって壊れていき、「おかしい」と判断されてしまうのではないかと。
『コンセント』『アンテナ』と共に三部作といわれる中ではこれが一番好き。前作2冊より筆力もパワーアップして、心に残る表現が多い (2004)
予知夢
東野圭吾
文藝春秋・2000/6
一見オカルトちっくな事件を、物理学者探偵ガリレオがさらりと科学的に解決していく一話完結型の全5話。彼のファンならご存知の通り、東野作品は長編と短編ではまったくタッチが違う。軽快でなかなかエンタテイニングではあるけれど、彼の作品の中ではどちらかというと長編の方が好きな私にとっては、物足りなさも残る (2005)
理由
宮部みゆき
新潮社・2004/7
東京で起きた一家四人惨殺事件を発端に、それに関わる数え切れないくらいたくさんの家族の歴史を通して家族のあり方を考えさせる。事件を描いているというより人間を描いた小説。
『模倣犯』でもそうだが、彼女の小説には、なにか事件を起こす人間の心の闇を作ったのはその人の生い立ち、ひいては家族であるという信念を感じさせるものが多い。直木賞を受賞したこの作品は今年の秋映画化されるらしいが、『模倣犯』のような、原作と全く違う駄作にならなければいいと願うばかり (2004)

レキシントンの幽霊
村上春樹
文藝春秋・1996/11
かなりひく〜いトーンでまとめられた短編7編。上手いとは思う。噛めば噛むほど味がでるするめのように読めば読むほどじわりとしみこんでくるものもある。でも、なんとなく物足りなさも残るかなぁ。上手いんだけど彼の世界はいつもどこか独特で、入りこみにくい雰囲気がある (2005)
私が彼を殺した
東野圭吾
講談社・2002/3
実は私は著者の大ファン。読者参加型推理小説で、最後まで真犯人はわからない。入院仲間と一緒に推理した楽しい思い出がある (2003)

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