ランメルスベルク鉱山における水の調達技術とその発展

 この写真は、ゴスラー近郊にあるランメルスベルグ鉱山跡地の顔である。鉱山の歴史は、それこそ人間が石を使い始めたころからあったと言っても過言ではない。人間最初の仕事、それは鉱山から始まった。この鉱山が最も繁栄した16世紀前半。かのナポレオンに敗れるまで続いたドイツ国家、神聖ローマ時代、その皇帝カール5世は、この鉱山が「神がドイツの地に下した最大の贈り物である」といってほめたたえたという。この鉱山は最初の採掘から1988年閉山に至るまで、約10世紀の間掘り続けられてきた。

 ランメルスベルク鉱山は地表から掘り進めて行く採掘方法とは違い、写真に写っているように、鉱山の坑道の内側から人が入り鉱石を掘り出してきた。
 採掘するということは、鉱石の運搬作業といっても良いほど運ぶことが重要である。そこで考えられたのが、この写真に示されるように水の流れを利用する方法だった。坑道が入水門ともなっている。水は電気の無い時代、モーターに変わる原動力でもあり車輪の付かない運び屋でもあった。

 水の流れを示した図(拡大リンク付き)。一本の水路の延長で4台すべての水車を動かしている。排水もこの図からわかる。地下の湧き水によって坑道が浸水するのを防いできた。この排水処理の技術が大きな発展につながる。この水路概念がある偉人によって、将来更にすごいことに発展するということを誰も知らなかった。

 これが実際の水路である。
 これはただの水路ではない。水車まで水をひくのにどうしても道がいる。この苦労を見ていた人物がいる。いや、今本人がいないのでたぶんそうに違いないと、想像するしかない。同じ州の、州都に本社をおくドイツ最大の電気会社、その名はジーメンス。創始者E.W.von Siemensとその子達ジーメンス兄弟だ。
 

 これが19世紀から活躍したジーメンスの生家である。すごく豊かな家である。ジーメンス姓と名の間にvonと書かれる。これはドイツでは貴族出身を表す。つまり彼らはもともと裕福だった。
 ここで少し堅苦しくなるが、彼らの考えてきたもの。1つは自動発電機。それは電気を起こす機械。これは水が水車の回転を起こし、逆に水車の回転から水をすくいあげる動作を見て、磁気という目には見えない力によって、エネルギー媒体を電気に変えたものと考えられる。
 そして第2に、発電所から電気が送られてくる、あの送電線である。これこそ水路をじっと見てきた発想の転換だ。送電されていれば家庭でも職場でもどこでも電気が使える。それを理論付けたのだった。水路よりも電線のほうがはるかに簡単に工事ができる。水車を回す為に遠方から水を供給する水路と送電線、そして水車と電動機を重複していたに違いない。電流がどれだけ流れやすいかを表す単位は、現在ジーメンスが使われている。


 その力を生み出したのが水車である。これは入り口近くに展示してあるモデルで、とても精巧にできている。モデルファンは同じくきっと魅了されているに違いない。
 ドイツ模型は、ドイツ鉄道模型のメルクインで代表されるように、日本と同じくとても緻密で、見ていると、何でこのようなものを作ったのか意図が伝わってくる。しかも頑丈そうに見える。





 本物はこれで、その直径は実に9mある巨大水車だ。それがこの鉱山の山中に4台据え付けられている。ここで良く写真を見てもらいたい。それは、水車羽が左右逆についているという点だ。水車の上から水を落とす際、右に落とす場合と、左に落とす場合とでは水車の回転方向は逆になる。つまりこの操作で、革袋の巻上げを上げたり下げたり、自由にコントロールしていたのだ。ランメルスベルク鉱山の技術は、この鉱石と排水装置でまたまたヨーロッパ全土へと影響を及ぼしていく。