ドイツ製粉学校



まずどんな職種であっても、これからドイツ職業制度で学ぼうというは、そのときに決めた仕事を一生やるという覚悟でのぞんでください。封建教育の色合いが濃く、転職は日本の場合よりも深刻で、時間的にかなりの犠牲が残ります。

ドイツには、さまざまな職業に国立の専門学校があり、日本の小学校高学年頃から厳しい実地研修で励んできた者達が、学校へふたたび入学してきます。この制度の結果、数々のすばらしい手工業作品が生み出されています。私のときは名物講義を受ける為、すでに製粉、そして製パンやスイス国の製粉マイスター(親方)が在籍していました。

授業はすべてドイツ語で行なわれ、試験は各自用意した白紙から答案を書き出す形式です。ドイツ人と一緒に国語の授業もあります。小学校高学年の文章問題を、8割以上は難なく取るぐらいの語学力が必要とされます。2年コースと3年コースが用意されており、3年目の授業を受けようとする者は、まったく同じ内容での重複科目がいくつかあるために、かなりの覚悟が必要です。私の場合時間的猶予がなく、2年で卒業してきました。卒業の国家試験は、1ヵ月ほど前に発表される何科目かの筆記試験と、試験官に各自呼び出され、その時点で黒板に出題される問題を解いていくものがありました。卒業とともにドイツ国家認定製粉技師となります。一期生は鳥越製粉の故山下会長、鳥越製粉は朝日放送の鳥越俊太郎氏の親戚と聞いております。2期生には太陽製粉の古賀社長が卒業した製粉の名門校です。

私は資格がありませんでしたが、マイスター試験の受験資格には、最低5年間の就業条件があります。またマイスターの称号は、この国での営業許可が含まれるために規律を習得し、アンダークラスのベンツ・セダンが買えるほどの金額を納めてから取得することになります。

たとえばの話しですが、もし蕎麦屋の修行がドイツででき、職人制度が適用されているとするならば、そして東大や京大など卒業してある種の能力が長けていたとしても、すぐに蕎麦屋を開業することは許されません。現に山下会長は東大出身です。家業が蕎麦屋経営をしていても駄目です。レーリンク(でっち奉公)という職人身分から始めて来た人たちと肩を並べて、先ほど言ったとおり最低でも5年の修業はしなければなりません。そのラインで行くとするならば、親方として立派に開業できる頃には、かなりの年になってしまうため、このケースはまず考えられません。

徹底的に餅屋は餅屋で応用はなかなかできなく、また必要とされません。その事を十分にわきまえないと、日本で積み重ねてきた知識と相まって、職業の領域はどこにあるのかの判断を迷うかもしれません。職人はあくまでも物づくりの専門家です。この制度はSPD(ドイツ社会党)の力がとても強く、SPDはドイツ最古参の政党名です。考えようによってドイツ人は幸せ者です。