石臼

 まず、日本語で「ウス」とは何を指しているのだろうか?この疑問の答えを出すには、まず1番単純な方法、言葉の響きから考えてみよう

 餅をウツ、米をウツの変音だと思う。日本において、現在使われている漢字があてがわれる前から、ウスという物がまずあったと考えられる。今日の手碾きウスより以前に、「搗(つ)きウス」があった。少なくても、搗きウスのほうが一般社会では主流を強めていたに違いない。「」の漢字は、その形から、間切れも無く「手碾き臼」である。それはウスが広く使われ始め、庶民言葉となった後に漢字に当てはめたことを如実にあらわしている。

  いつから、そしてどのようか過程を経て日本庶民の文化にまで臼が溶け込んできたのかの話は別の範疇に任せるとして、世界のどこにでもその地域に適合し開発されてきた臼が存在している。広義で型がよければ自然石でも良い訳だ。

 小麦を臼で粉にして練ってパンを作る。この作業工程は、8000年前にすでに完成していたことが判明している。ヨーロッパにおいては6000年前にさかのぼることができ、これはヨーロッパ人の食物史上重要な部分を占めてきたことは明らかだ。19世紀後半にイギリスに占領されたことのある、古代文明発祥の一つエジプトに、パンの過程を示すエジプト文字で書かれた壁画があった。それは大英博物館で現在見ることができる。その壁画に表現してある事象は、基本的には現在の方法と変わらない。ヨーロッパにおいて空腹を満たしてきたパンの重要性は、米文化をもつ我々アジア人には到底創造できないほどだ。そのパンを作る食材である粉を砕いてきたのがまぎれも無く臼である。⇒アジアの石臼

 ドイツ語で臼と言えば、私がちょっと調べてみてもなんと、ざっと9種の語彙(カテゴリーを超えるので、その表現は割愛)がある。教養あるドイツ人ならもっと知っているはずだ。我々が単に石臼と言っている中でも、表面が石でなく人工石のもの、大型のもの、型にはまったもの、荒挽き専用のものがあるではないか。それをすべて石臼と表現しているのもおかしなものだ。高回転臼、研磨臼、工芸臼、陶器臼・・・など呼び方である程度臼の仕組みが判るようにしたい。少なくても臼の前に、表面の材質名をどうどうと名のることは必要だ。なんでも石臼にしようとするから作りが保守的になる。それはそれ、これはこれだ。

 臼回転が原料に対して種々問題を引き起こすまでの境界線、「臨界点」のところの研究がもっと冷静に解明されれば、恐れなくどんどんと日本の臼は進化してくるに違いない。そしていずれか、美しい言葉の響きと字形を持つ「臼」、が前面に出てくる装置は、枚挙にいとまがないほど出現することになるであろう。
紀元前2000年、すりいし
(シュツュットガルト出土) 
有名な「粉を挽く人」  紀元前200年回転ミル
ポンペイで活躍。さてその構造は・・・
 
1950年インド製臼
                    
                    いずれもウルムパン博物館所蔵(撮影1998年)