『掌ヨリ』






 僕等なら こんな袋小路に
 今も迷い込んだまま 抜け出せずにいる
日も沈みだした頃、フェイトはシャワーを浴びて部屋でくつろいでいた。

想い人(恋人)であるクリフは、まだシャワーを浴びていて、

フェイトは少し暇になって、何気なく立ち上がり、窓の外を見た。



 夢見てるから儚くて
 探すから見つからなくて
 ほしがるから手にはいんなくて
 途方に暮れる
 何処で間違ったかなんて
 考えてる暇もなくて
 でも考えなきゃ不安で


何も考えず、ただ窓の外を見つめる。

窓の外では、夕陽に紅く染まった子供達が走り回っている。

家に帰るところなのだろうか。はしゃぎながら、走っていく様子が見える。

また少し視力が落ちたのか、心なしかぼんやりして見えるのは気のせいか。

(視力落ちて、今の眼鏡合わなくなったら戦闘辛くなるなぁ・・・。)

見えない訳じゃないので、フェイトは格別焦ってはいなかったが、

本を読むときは気を付けようと思った。



 君は君で 僕は僕 そんな当たり前のこと
 何でこんなにも簡単に 僕等
 見失ってしまえるんだろう。



 ー「また、酒場にでも行ってたの?」


 その一言で、昨日の夜に喧嘩をしてしまった。

(まぁ、喧嘩というのは大袈裟かもしれない。)

 我慢しきれなかった。宿に帰ってきてクリフが僕を抱きしめたとき、

香水らしい、甘い香りが鼻についたから。

 ー「ダメか?」

 ー「・・・んで、女の人と一緒だったんだ。」

 ー「酒場に行きゃ女くらいいるだろ。」

 ー「・・・香水臭い。」

 ー「だから、酒場行ったらそれっくらい・・・」

 ー「もぉいい。」

ろくに話も聞かずに、その日はベットに潜ってしまった。

 本当は、話しをしたくて待っていたのに、意地を張って・・・。

 そしてベットの上で、クリフが僕の名前を呼んだのを、静かに聞いた。

それが少し寂しくて、泣きそうになった。



 ひとつにならなくていいよ
 認め合うことが出来ればさ
 もちろん投げやりじゃなくて
 認め合うことが出来るから


不意に、後ろから抱きしめられた。間違いなくクリフだ。

「何、歌ってンだ?さっきからずっとだぞ、その歌。」

「ん・・・地球にいた頃良く聞いてた歌だよ。」

喧嘩と言っても、一方的に言っただけだったし、

口をきかない訳じゃない。

 でも、少しだけ、まだびくびくしてる僕がいる・・・。

「良い詩なんだよ、凄く。」

「へぇ・・・、その先歌えよ。聞かせてくれ。」

「恥ずかしい。」

いいから。と、耳元で促されて、フェイトは顔を桜色に染めた。

 

 ひとつにならなくていいよ
 価値観も 理念も 宗教もさ
 ひとつにならなくていいよ
 認め合うことができるから
 それで素晴らしい

 キスしながら唾を吐いて
 舐めるつもりが噛みついて
 着せたつもりが引き裂いて
 また愛 求める


歌い終わるか、終わらないかのうちに、背を向かされて、

そのままキスをされた。

強引に向かせたのに、なのに、優しいキス。

まるで機嫌を取ってるみたいな、甘い、キス。

離れて、見上げると、そこにあったのは優しい色を浮かべた瞳。

背伸びをして、クリフの首に腕を回して、そっと目を瞑った。

そしたらクリフも身体を抱いてくれた。

それだけで、昨日のことがなかったみたいで。

「・・・昨日は、ゴメン・・・。つい、意地張っちゃって・・・。」

「気にしてねぇよ。」

こう言うとき、やっぱりクリフは大人なんだって思う。凄く羨ましくて、

それと、凄く、安心する。



 ひとつにならなくていいよ
 認め合えばそれでいいよ
 それだけが僕等の前の
 暗闇を 優しく 散らして
 光を 振らして 与えてくれる


「またか。」

「あ、ゴメン。」

ベットの上に二人で寝転がって・・・僕は、クリフの腕枕をしてもらって。

気付けば、また口ずさんでいて。

「いや、嫌いじゃねぇけどな。」

「・・・僕ね、この詩ホントに気に入ってるんだ。

なんか凄く変な詩だと思ったけど、その通りだと思ったんだ。

お互いに認め合えれば、一つにならなくてもいいんだ。

そうだと思わない?クリフ。」

言ったら、クリフは少し笑ってその後に、そうだな、って、僕の髪を撫でた。

「確かにそうだな。・・・でも、俺はお前とひとつになりてぇな。」

「えっ?って、待て・・・身体とか言ったらっ・・・」

「身体もだけどよ(笑)・・・俺がこんな事言ったら変かも知れねぇけど、

誰かが間に入って来れねぇくらい、一つになっちまえばいいのになってよ。

ったく・・・こんな事考えちまうくらい、・・・お前に夢中なんだよ、フェイト。」

言った後、すぐにキスをされた。

急で驚いたけど、凄く嬉しかった。

昨日の今日だからか、それとも、ベットの中だからか・・・

いつものように怒る気もない。あるわけがないんだけど。

「そうだね。・・・そしたら、僕も意地張らなくて良いのに」

「意地張ってろよ、その方がお前らしくて可愛い。」

「ヤダよ;;」

そう言って笑ったら、クリフも笑ってた。

それが凄く、幸せだった。



 抱いたはずが突き飛ばして
 包むはずが切り刻んで
 撫でるつもりが引っ掻いて
 また愛 求める
 解り合えたふりしたって
 僕等は違った個体で
 だけどひとつになりたくて
 暗闇で もがいて もがいている
 
キスしながら唾を吐いて
 舐めるつもりが噛みついて
 着せたつもりが引き裂いて
 また愛 求める



ひとつにならなくていいよ
 ・・・ね?





「さて、・・・結構元気みたいだし・・・一つになるか♪」

「・・・一回死んでこい・・・;;;」

「いいのか〜?死んだらお前泣くだろ?」

「いい!!その体力馬鹿が治るならっ;;」



それでも、やっぱり好きなんだよ。











<言い訳。>
喧嘩というか・・・意地っ張りなフェイトが好き。
んで、ミスチルの『掌』で小説を書きたかった!!!;
と言うわけで、出来上がった小説。
どうもこうも・・・バカップルだな〜;;と、ため息が・・・。


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