海の幸


フランスでの魚の鮮度にはがっかりさせられることが多いのですが、魚以外の魚介類は対照的にかなりよいです。何しろ海の幸をフランス語ではFuits de mer、海の果実というくらいですから、痛んだ果実ではどうにもなりません。というのもフランスでは、魚以外の魚介類を原則的に生で食べるからです。魚介類を扱うレストランでは海の幸盛り合わせなど豪華ですね。

*えび

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えびには大きく分類して3種のものがあります。

一番一般的でお手軽なのCrevetteと呼ばれる中えびで、やすいものはおつまみ用塩茹でのものです。生のものは塩茹での数倍高価ですが、塩串焼きはなかなかいけます。冷凍のものもあり、えび天、エビフライに使えます。鍋に入れてもいい出汁がでます。

大えびはGambasと呼ばれるもので結構大きいです。あまりにも大きいのでジャンボエビフライくらいしか使い道がありません。小さなエビは塩茹でのものが店頭に並んでいます。生のものもありますがこれらエビは暖かい海で養殖されているものなので生で食べる品質の見極めが難しいです。これよりもっと小さなCrevette griseと呼ばれる小エビもあります。これは主に塩茹でされたものがメインで殻ごと食べられます。

エビとはちょっと違いますが、はさみエビ(アカザエビ)Langoustineは近海ものがほとんどで輸送にも鮮度が重視されているので新鮮なものが手に入ります。特上品は生をわさびしょうゆでいただけますし、胴体の殻の雰囲気がシャコににているので代替に使えます。

イセエビ/Langouste、オマール/Homardの類は代用和食の範囲を超えるので特に書きません。一点注意事項があるとすれば、ゆでてあるものは絶対に買ってはいけないことです。日本人の味覚では食べられません。Ecrivisseという真っ赤なエビ風のものもありますがこれがザリガニですご注意を。

*かに/Crabe

フランスでよく見る蟹は2種類、硬いからを持ったTourteau、足の細いAraignée(直訳で蜘蛛)。Tourteauxは爪だけばら売りされていますが、出所さえよければ大変おいしいおつまみですがやっぱり高価です。もちろん丸一匹を自宅で塩茹でもOKで、出汁も取れます。身は結構しっかりしているので蟹クリームコロッケのような用途にはつかえますが、原型をとどめたまま身を取り出すのは至難です。うまくゆでることができると身をおいしくいただくことができ日本の酢醤油にもあいますが、この蟹の醍醐味は胴体のエラが張っている部分の中身です。

*ムール貝/Moule

フランスでもっとも安価な貝です。日本ではカラス貝なんて呼ばれて岩場にくっついているくらいならまだよいほうですが、港や防波堤にへばりついているさまを見ているととても食べる気にはなりません。フランスでは養殖が盛んです。

何しろべらぼうに安いので使い勝手がよいです。この貝を味噌汁に使うとけっこうおいしいです。和食でアサリのかわりにいろいろなところに使いえます。ムールといえばベルギーのワイン蒸し、フライドポテト添えですが、もちろん和風酒蒸しでも結構いけます。が、貝よりも酒が高価です。鍋に入れると味はよいのですが見た目があまりよくありません。

新鮮なものは生で食べることができます。結構な苦味というか渋みがありますが酒好きにはなかなかの味ではないかと思います。ホヤの好き嫌いのような。貝を生食用に開けるときは手早くやらないと貝殻も身も手の熱でぬるくなってしまいます。

*コック貝/Coque

白く、比較的頑丈にできた白い二枚貝で中身も淡白です。どう料理しても淡白なのでいかようにも使えますが、缶詰水煮アサリのようなつまらなさもあります。

新鮮なものは当然生で食べることができます。

*アマンド貝/Amande

日本のアサリより確実に大きく、ハマグリほどでもない、縞々の二枚貝です。海の幸盛り合わせでは例外なく生食ですが、和風に加熱調理もおいしいです。魚焼きグリルあるいはバーベキューグリルがあれば、焼き貝にしょうゆを垂らすのが絶品です。貝肉は比較的しっかりしておりコリコリします。火の通しすぎにはくれぐれも注意。また、たまに中に子蟹が住んでいるものもあります。

これもまた結構安いのでむやみに食べて財布にやさしいです。

*アサリ貝/Palourde

アサリ貝は結構高価です。味噌汁あるいはお吸い物の具のつもりで買うと4-5ユーロもするほどです。当然、酒蒸しをもりもり食べると言うわけにはいきません。しかし、これもまた新鮮なものならば生で食べることができます。しかし新鮮でないものはたとえ加熱調理するといえども見送ったほうがよいでしょう。砂だしがうまくいかず、味噌汁がじゃりじゃりになってしまいます。

*つぶ貝/Bulot

この貝は生で売られているものもありますがほとんどが調理品です。塩茹でかハーブや調味用で味付けしてあり、爪楊枝でクルンと取って食べるだけです。からし、七味マヨネーズがよく合う、日本の酒の肴です。

*Bigorneau

黒い、タニシのような小さな貝です。つぶ貝ともども調理品がメインで、楊枝でつついて食べるおつまみです。いわゆる爪楊枝ではなかなか取りにくいので専用の針のような楊枝をつかいます。店には生のものも並んでいますが、この小さな黒い巻貝がカタツムリのような角を出して動き回る姿はあまり見たくないものです。調理品の味付けにもよりますが、ピリッとした味付けが多く、苦味のある後味が残ります。

*カキ貝

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フランスの海の幸、貝の王様です。店では例外なく殻つきで売られ、日本のようなむき身は一切ありませんし、生食が前提なので加熱用もありません。最盛期には1ダース単位での販売となり、スーパーでは2、3、4ダースいりの箱も登場します。もちろん量り売りもありますが、殻つきの量り売りなので貝選びには細心の注意を。

産地や種類の違いで結構な味の違いがあります。緑ががかったもの、ヨードが強いもの、塩分が強いもの、中には貝が平たいものもあります。日本のむき身の味に慣れるとどれもこれもかなりしょっぱく感じるはずです。

フランス人のようにふたをあけてからつきでサーブし、そこにおろしポン酢、もみじおろししょうゆは最高です。

手軽に買えるお手ごろのものは比較的小ぶりの貝が多いので、カキフライには小さすぎるようです。もちろん味にはなんら問題ありません。

*ホタテ貝

店には殻つきで並んでいます。いい貝が見つかったら面倒でも殻つきのまま持ち帰り、自宅で剥くことをおすすめします。新鮮な貝も適当に剥かれて貝柱だけ無造作に袋に入れられたのではせっかくの鮮度も台無しです。貝をあけるにはアイスキャンディーの棒のような金属へらあるいは医師がのどの奥を見るときに使うベロスティックのような金属棒が必要です。鮮度がよければ刺身にできますし、バターしょうゆ焼きも格別です。基本的に日本でのホタテと同様に扱うことができます。貝柱だけ売られているものもありますがお勧めしません。

**あわび/Ormeau

あわびは魚屋でも海の幸に強い店でたまに見かけることができます。鮮度が第一なので朝市でまだ生きているのを入手したらあわびのお刺身です。

**ハマグリ/clam

新鮮なハマグリは大変高価です。ここ一番の高級和食材として、お吸い物、焼きハマグリにでもどうぞ。フランス人はこれを生で食べるので鮮度はとてもよいです。

**うに/Oursin

魚屋でうにを見かけることはよくありますが、食欲をそそるうににはなかなかめぐりあえません。いいうにが手に入れば日本のうにのように味わうことができます。しかしほとんど人にとってうには常にむき身で売られているもので、殻から取り出すのはなかなか難しいかもしれません。うまくいけばうに丼です。

***ホヤ/Violet

ホヤのような原索動物。ホヤそのものかもしれませんが、まだ試したことがありません。なにしろ店先に並ぶものはみんなしなびているのですから。

***亀の手/bernacle/bernache/barnache?

なんだかよくわかりませんが海の幸です。一度だけブルターニュ方面のレストランで食べたことがあるくらいで、普通の店で見たことはほとんどありません。料理辞典によるとずいぶん希少なものらしいです。見かけたらぜひお試しあれ。写真はありませんがまさに亀の手なのですぐにわかると思います。

***タラバガニ

フランスでポピュラーなTourteauも始めはおいしいのですが、何か物足りないです。やっぱり蟹といえば毛がにの繊細さがほしいところですが、毛がにはフランス近海にはいないようです。いやいや、蟹といえばタラバガニ、大きな足から身をスポンと抜いて豪快にかぶりつく事こそ・・・というタラバ派には朗報。ごく稀にタラバガニが市中に出回ることがあるようです。フランスに住むこと8年(2006年)、先日ヴェルサイユのマルシェではタラバガニの大足が出ていました。その名もClabe royale。アラスカ産で札にはTres rareと。価格のほうも類稀なるもので1キログラム49ユーロでした。このタラバガニへのフランス人の反応がなかなかなものです。希少とうたうだけあって店で眺めるフランス人のほとんどがだれも知らない。口をそろえて「こんなもの見たことない」と。人物金がグローバルに行き交うこの時勢には珍しい光景です。そして市場の新顔とあってその呼び名もまちまち。Clabe royale、King Clabe、Clabe Chatkaなどなど。

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