フランスの医療システム1


このあたりでフランスの医療事情のご紹介。
フランスの医療システムは日本とかなり異なっている。どちらが良いかは人それぞれ感じ方がやはり異なってくるがまったく異なるシステムを前にすると何かと合理的なところばかり見えてきてすばらしく感じることもある。
フランスでの病院はすべて予約制である。あらかじめ予約を取って決められた時間に診察に行き、待合室でまたされることなくすぐ診察、終わったらすぐ帰宅。日本の大きな病院のように受付前から並んで待って、さんざん待たされてようやく診察ということはない。そのほうが精神衛生上も良いし、ただでさえ弱っているあるいは体力を消耗したくない患者に無駄な待ち時間とエネルギーの消耗を強いることがない。待合室でもらい風邪もない。突然具合が悪くなった場合はどうするか?というと、予約なしで飛び込んでも見てもらえるとは限らないのでやはり電話で予約。本当に具合が悪いとの旨を伝えればなんとかしてくれる。本当にひどくてどうしようもない場合は、救急車と救急医療の施設の出番である。
しかし、妊娠しました、これから出産までよろしくお願いします、といった場合には急患やなんとか予約のような無理なお願いというわけには行かない。したがって予約は待ちの一手である。みんなが望む良い病院は予約が一杯なのである。我々が最初に予約をお願いした比較的近所の病院、会社の人からお勧めといわれたところはなんと予約が一月半先まで埋まっていた。
予約制の病院は日本にもある。本質的に日本と違ってくるのはここからである。フランスの医療機関はたいてい、診察、検査、治療、薬局、などなどが分業している。すなわち個人開業医で診察してもらい、必要あらば外部での検査を行い、処方箋に基づき薬品を購入ということになるのである。日本でも薬局は院外で処方箋を持って購入するというシステムが普及しているがそれが医療全体にまで拡大したようなものである。医者あるいは病院が一手に全てを担っていると、過剰な検査や薬の処方が医療従事者の不当な利益となり結果医療保険システムを圧迫するのはよく話題になることである。これらを全て利害関係のない独立したものとすることで弊害をなくすのである。面倒にも見えるが実際面倒である。薬局で薬を買うとき意外は全てやはり予約制なのでまたまた待合室で待たされることはない。薬局も混んでいることなどない。全部独立しているということは当然支払いは別々である。これらのフランス語名はそれぞれ、medcine、laboratoire d'analyse medicale、infirmiere、pharmacieとなる。なかでもlaboratoireは街中にぽつんと現れた医療分析所で奥には分析施設と装置が備わっていておもしろい。
医療の支払いは日本と同じく医療保険である程度カバーされる。医療保険、asurance maladieは全ての人が加入することが義務付けられている社会保障システム、securite socialeの中にある。保険システムは日本のような何もしなくても全て病院と保険組合で何とかしてくれるような便利なものではない。病院での支払いは初めに患者が全て全額支払った後、病院から交付される保険カバー分払い戻し申請書類を患者が医療保険の事務所に送付しなければならないのである。これはかなり面倒であるが大きなメリットがある。まず患者にとって医療にかかっている費用が透明なほどにわかる事である。日本のように支払い段階で2割、3割負担ということでは医療にかかる費用に対する認識があいまいになる。たとえば2000円の窓口での支払いに対して実際には10000円が診察、治療にかかった費用であるなどと真剣に考える人は少ない。そして表面上医療コストが安く見られるために必要以上、過剰に病院へ足を運ぶことになる。そして日本では病院から医療保険組合へ渡る保険支払請求の手続きが患者によって行われることで事務作業の手間が省かれる。
保険でカバーされるのは病院での医療費の何%という定義ではあるが、同時に基準となる基本料金が医療保険で設定されている。この基本料金しか請求しない病院で診察を受けた場合、この支払い金額から払い戻しが行われるが、基本料金以上の金額を請求される病院の場合、払い戻しはやはり基本料金基準となるので両者で同じ診察を受けた場合には同じ金額しか払い戻されない。基本料金以上の分は保険が適用されない、すなわち完全なる医者の利益である。診察料金が安い医師は価格の面で良心的な医師といえるが、保険外の医師の取り分をとっている医師はそれだけの技術やサービスを誇っているといえる。

面倒なことは多いがシンプルで合理的で心情的にも過剰支出を抑えるシステムである。

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