学校教育職入門

現代の「教員に求められる資質能力」について

 時代の変化に伴い、教育事情も以前とは随分と様変わりしてきた。それに伴い、それぞれの時代によって教員に求められる資質能力も様変わりしてくる。で は、現代の教員に求められる資質能力とはどのようなものなのか。
 まず、現代の教員にもとめられる資質能力について述べる前に、いつの時代も教員に求められるものはどのようなものなのかについて述べたいと思う。その理 由は、時代は移り変わっても、いつの時代の教員にも求められているものがあるはずだからだ。このことについて、昭和62年12月18日付の本議会答申の、 「教員の資質能力の向上方策等について」の中で、次のように書かれている。
『学校教育の直接の担い手である教員の活動は、人間の心身の発達にかかわるものであり、幼児・児童・生徒の人格形成に大きな影響を及ぼすものである。この ような専門職としての教員の職責にかんがみ、教員については、教育者としての使命感、人間の成長・発達についての理解、幼児・児童・生徒に対する教育的愛 情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養、そしてこれからを基盤とした実践的指導力が必要である』
 文部科学省は1997年7月の第1次答申の中で、この記述を、『教員の資質能力とは、一般に、「専門的職業である『教職』に対する愛着、誇り、一体感に 支えられた知識、技能等の総体」といった意味内容を有するもので、「素質」とは区別され後天的に形成可能なものと解される。』としている。
 つまり、教員というのは人に物事を教えるということを公に認められた職業であり、学校教育に必要な専門的知識だけでなく、一般の教養に対する幅広い豊か な知識も求められる。また、人格形成や将来の進路にも大きな影響力を持つため、幼児・児童・生徒に対する教育的愛情は絶対不可欠なものである。しかし、こ れらの能力は生まれながらにある先天性のものではなく、誰しもが獲得できる後天性のものであり、資質能力というのは、素質とは区別されて扱われている。
 しかし、これだけでは教員という仕事は務まらない。初めに示した様に、時代の変化に伴い、教育の事情も変化を遂げているからだ。では、変わりゆく教育事 情の中で、現代の教員に求められている資質能力とは具体的には一体どのようなものなのだろうか。これについて文部科学省は、現代の教員に3つの資質能力を 求めている。まず1つ目は、地球的視野に立って行動するための資質能力である。これは、「地球、国家、人間等に対する理解」、「豊かな人間性」、「国際社 会で必要とさせる基本的な資質能力」といったものである。個別に詳しく見ていくと、「地球、国家、人間等に対する理解」とは、地球感、国家感、人間感、個 人と地球や国家の関係についての適切な理解、社会・集団における規範意識などをさす。次に「豊かな人間性」とは、人間尊重、人権尊重の精神、男女平等の精 神、思いやりの心、ボランティア精神などである。そして、「国際社会で必要とされる基本的資質能力」とは、考え方や立場の相違を受容したような価値観を尊 重する態度、国際社会に貢献する態度、自国や他国の歴史・文化を理解し尊重する態度などである。
 2つ目は、変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力である。これは、「課題解決能力」、「人間関係にかかわる資質能力」、「社会の変化に対応する ための知識及び技能」といったものである。個別に詳しく見ていくと、「課題解決能力等にかかわるもの」とは、個性、完成、想像力、応用力、論理的思考力、 課題解決能力、継続的な自己教育の能力などである。「人間関係にかかわるもの」とは、社会性、対人関係能力、コミュニケーション能力、ネットワーキング能 力などである。「社会の変改に対応するための知識及び技能」とは、自己表現能力(外国語のコミュニケーション能力を含む)、メディア・リテラシー、基礎的 なコンピュータ活用能力などである。
 3つ目は、教員の職務から必然的に求められる資質能力。これは、「用事・児童・生徒や教育の在り方についての適切な理解」、「教識への愛着、誇り、一体 感」、「教科指導、生徒指導のための知識、技能及び態度」ということである。個別に詳しく見ていくと、「用事・児童・生徒や教育の在り方に関する適切な理 解」とは、用事・児童・生徒感、教育観(国家における教育の役割についての理解を含む)などである。「教職に対する愛着、誇り、一体感」とは、教職に対す る情熱・使命感、子どもに対する責任感や興味・関心などである。「教科指導、生徒指導等のための知識、技能及び態度」とは、教職の意義や教員の役割に関す る正確な知識、子供の個性や課題解決能力を生かす能力、子どもを思いやり感情移入できること、カウンセリング・マインド、困難な事態をうまく処理できる能 力、地域・家庭との円滑な関係を構築できる能力などである。
 また、上記の3つ以外にも得意分野を持つ個性豊かな教員の必要性も求められる。教員というのは授業で科目を教えるという以外に、部活動の指導や生徒指導 などと指導は多岐に渡る。子供や親のニーズも多様化している現在、授業で科目を教えること以外に得意分野がなく、ロボットのように個性を表現しない教員も 困ってしまう。それゆえに、授業で科目を教える以外にも得意な分野を持つことが必要とされる。例えば、コンピュータのネットワークに詳しいとか、コン ピュータの操作が得意などといったことや、学生時代に部活動で全国大会に出場したので、その種目を教えることは得意であるとか、例をあげればきりがいな い。しかし、それくらい人によって得意分野はさまざまであるということである。
  このように教員には多様な資質能力が求められ、教員一人一人がこれらについて必要な知識、技能等を備えることが不可欠である。しかしながら、すべての教員 が一律にこれら多様な資質能力を高度に身に付けることを期待しても、それは現実的ではない。
 第1次答申で指摘しているように、むしろ学校においては、多様な資質能力を持つ個性豊かな人材によって構成される教員集団が連携・協働することにより、 学校という組織全体として充実した教育活動を展開すべきものであり、また、いじめや不登校の問題をはじめとする現在の学校を取り巻く問題の複雑さ・困難さ の中では、学校と家庭と地域社会との協力、教員とそれ以外の専門家との連携・協働が一層重要なものとなることから、専門家による日常的な指導・助言・援助 の体制整備や学校と専門機関との連携の確保などを今後更に積極的に進める必要がある。
 さらに、教員一人一人の資質能力は決して固定的なものではなく、経験を積むことにより変化し、成長が可能なものであり、それぞれの職能、専門分野、能 力・適性、興味・関心等に応じ、生涯にわたりその向上が図られる必要がある。教員としての力量の向上は、日々の教育実践や教員自身の研鑽により図られるの が基本であるが、任命権者等が行う研修も極めて重要である。
 このようなことを踏まえ、今後における教員の資質能力の在り方を考えるに当たっては、画一的な教員像を求めることは避け、生涯にわたり資質能力の向上を 図るという前提に立って、全教員に共通に求められる基礎的・基本的な資質能力を確保するとともに、更に積極的に各人の得意分野づくりや個性の伸長を図るこ とが必要である。結局は、このことが学校に活力をもたらし、学校の教育力を高めることに資するものと考える。