細腕一代記 1979年1月8日〜9月24日

「細腕シリーズ 装いも新たに登場!! 病弱にもめげず 驚くべきバイタリティとアイディア商法で財をなした質屋の女主人の半世紀 − 花登コバコが精魂こめて描く根性ドラマ」
(放送当日の新聞広告より)

細腕というと新珠三千代さんが主演の「細腕繁盛記」が有名で、富士真奈美さんの「加代、おみゃあに食わせる飯はにゃあだ」という台詞が流行したほどのヒット作だが、こちらの一代記はあからさまなイジメが少ないせいか、花登コバコ作品としては地味な仕上がりとなった。
何しろ主役のモデルはやり手の質店の女主人で、子供の頃お墓参りに行く度に山手線の窓から見ていた異様なオブジェ「ポルノ噴水」を屋上にしつらえた人。
だが主役は富士真奈美さんでも藤山直美さんでもなく、清純派だった坂口良子さんで、内容も純愛物語だった。

沖さん演じる一宮が内務大臣の家に押し入る回(第29回『熱血の燃ゆる日』)には、ガイド誌には『ショック!!沖雅也が血まみれに』というサブタイトルが出ていたが、沖さんが人気俳優であることを裏付けているようで嬉しかった記憶がある。

大正末期。
子供の頃から病弱だった良江(坂口良子)は、静岡から初めて上京した時に列車事故に遭い、助けてくれた一宮(沖さん)にひとめ惚れする。
彼女には親が決めた許婚・周造(仲真貴)がいたのだが、恋心が止められずに再び上京、一宮の下宿の前でちょうど良い具合に具合が悪くなり、ちょうど通りかかった一宮に再び助けられる。 あるかあるかそんなこと?とツッコんでいるうちに、彼女は病弱も何のその、みたび一人で上京して、彼の下宿で食事の世話などを始める。
う〜ん、態度は控えめだが、行動はかなり積極的だ。
やがて彼女は縫い子の技術を身につけて自分で工場を開くという、正にやり手の女性として活躍する。だが心を寄せる一宮は学生運動をしており、内務大臣の家に押し入ったところで逮捕されてしまう。

そして関東大震災。良江の工場は全壊し、縫い子たちの大半も死亡する。呆然とする良江のところへ二時間の外出を許された一宮が訪ねて来て、いち(菅井きん)の媒酌で二人は夫婦の盃を交わす。

震災の後、彼女は以前に一宮と行った高級レストランで、お金が足りなくなって質屋でお金を都合したことを思い出す。
そうだ、質屋だ!そう考えた彼女は、わざわざ老舗の質屋の隣で質屋を始め、新しいシステムで客を呼び込む。山手線の駅からもよく見えた「ポルノ噴水」は彼女のアイディアだった。
ポルノというよりはお相撲さんが向かい合っているようにしか見えないピンクの人形二つ。 子供の頃から不思議だったその噴水の謎が明らかになった。
良江は子供の頃から喘息がひどく、乾いた空気が苦手だったため、家の屋上に噴水を作ったのだ という。しかし、何故にポルノ?何故に屋上?何故に人形は回転する?
この「ポルノ噴水」という言葉が清純な坂口さんの口から出た時、私の口からは「何でポルノ?」という言葉が出た。お相撲さんにしか見えないから色気は感じられないのだが、間違えられないように、わざわざ「ポルノ噴水」と大きな看板が添えてあった。
この噴水が現存するのかは不明だが、良江が次々と新しい方法を考えついて質店は大成功するのは、いかにも花登コバコらしい。

最終回でやっと一宮は釈放されて帰って来るが、すでに肺を患っており、良江の腕の中で死んで行く。


「さぼてんとマシュマロ」ではデビュー前に一瞬のテスト出演で沖さんと共演した坂口良子さんは、その後雑誌の対談、彼女主演の「アイちゃんが行く!」への沖さんのゲスト出演、「Go!Goスカイヤー!!」、映画「女王蜂」そしてこの「細腕一代記」と共演が多かった。
この後さらに「闇を斬れ」(絡みはほとんどなし)、そして「大奥」でも沖さん演じる家光は彼女に腕をつかまれたまま臨終を迎えた。

共演の多さから沖さんが亡くなられた後で恋人の本命として噂もされた坂口良子さん。本葬ではインタビューで、
「事実じゃないのにそういう風に言われて、沖くんが可哀想です。右も左もわからない芸能界で親切にしてくれて、兄のような存在でした」と答えられている。
二度も彼女の腕の中で死ぬ役を演じた沖さんは、弔辞で彼女が見せた涙をどう感じただろうか。
ファンとしては是非もう一度観たい作品。


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