はぐれ刑事 1975年10月7日〜12月30日

沖さんは二十三歳。
浅草が舞台の刑事ドラマ。
主演は平幹二朗(風間史郎)。若い妻(浅茅陽子)にメロメロの刑事課長に小沢栄太郎、風間の幼なじみでシカゴ帰りの外科医・新藤(田中邦衛)、その妹で風間に心を寄せる看護婦・美智子(夏純子)、クールな勤務医・大辻(火野正平)、いつもフラフラしている色っぽいお姉ちゃん・ラリパッパのお京(ホーン・ユキ)らが脇を固めて、渋いドラマに仕上がっている。お京は影山のことを「くそ刑事」と呼びながらも彼に思いを寄せているが、借金で首のまわらなくなった中年男に体を投げ出すことで慰めようとするような、本能的に母性を感じさせる役柄で、その頃の彼女にぴったりの役だった。
主題歌の「陽かげりの街」の高橋真梨子のハスキーボイスも、けだるい下町の雰囲気によく溶け込む。

この影山はスコッチ刑事の土台になっているとよく言われる。
先輩刑事を撃とうとした犯人に対して、一瞬発砲を躊躇したために先輩を死なせてしまったスコッチ。一瞬目をつぶってしまったために先輩刑事を撃ってしまった影山。設定がよく似ている。
この「はぐれ刑事」は好評で、続編を作るという話もあったようなので、スコッチのキャラクターを作るとき参考にしたのかも知れない。

その頃の記事を少し紹介する。
沖さんのここまでの経歴を紹介しているが、
・30数本の日活映画に出演
− ということは、かなりの数のエキストラ出演もあるようだ。
・刑事役はこれが2度目
− 映画「ザ・ゴキブリ」のことだろうか。
・温泉の湯を浴びて育ったためか、色白の二枚目
− 彼の出生地は大分県別府。温泉のすぐそばだったという。
・現金は裸で所有。洋モクのラークを一日一箱半吸う。ライターもたばこにふさわしくカルチエ。何となく胃腸薬も携帯。
− その後、あまりに何度も高価なライターを失くすので、使うのは100円ライターだとTVで語っていた。
・愛車キャデラックでの駐車違反が一回。空手、ボクシング、バスケットなどのスポーツになじんだが、これといった段位も賞も獲得せず。
− ボクシングは日活デビュー時のデモンストレーションで公開したし、「俺たちは天使だ!!」でもトレーニング中にスパークリングをする。空手は「姿三四郎」の時に空手と柔道をとりまぜた柔術の達人として披露できたから、段位も賞もなくても十分役に立っているようだ。
・酒は全然ダメです。自分にとって酒は飲まない方がいいと考えたから、自発的に“下戸”になりました。食べ物では納豆がニガ手、絶対に食わない。その他はナンでも食べ、1.5人分はペロリとたいらげます。
− 自分にとって良くないと考えて自発的に“下戸”になるのは意志が強いともいえるが、自分で自分を縛ってしまう性格がよく出ている。
・もっか鉢植えのコレクションにこっている。松、椿、さつき、ききょう、サボテンなどベランダ狭しと並んでいる。いま、“月下美人”なる年1回、それも真夜中にしか咲かない珍種のサボテンを物色中。
− 盆栽だけでなく、普通の鉢植えもあったようだ。
・この日の行動は、朝6時に起床。9時に国際放映のスタジオ入り。撮影は7時に終了。愛車を駆って夜の巷へ。外車のスピードに、当方の追跡およばず。あるいはネオン街に“月下美人”でも求めに行ったものか。

現在では放送禁止用語となっている言葉がかなり含まれているので、最近は再放送をしないようだが、それとは別にひとつだけNGシーンがあるので、それを内緒で(ってネットで配信しているじゃないか)お教えしよう。

「影山司」と発表された沖さんの役名だが、刑事役であるし、恋人もいない、家族も出てこないから名前で呼ばれることはない。だが、一度だけ親に電話を入れるシーンがあり、彼は
「息子のケンザブロウだよ!」
とはっきりと言っている。
昔のドラマは、結構こういう凡ミスがあったりするのもご愛嬌・・・ということにしておこう。

このドラマは主演はもちろん平幹二朗氏だが、沖さん演じる影山司刑事の成長が軸となっている。ベテラン陣が新人を優しく見守る形だ。そういう意味でも「はぐれ刑事」はファンにとって貴重なドラマだと思われる。

はぐれ刑事 −当時の私

「幡随院長兵衛お待ちなせえ」「はぐれ刑事」と共演が続いた平幹二朗氏と沖さんだが、沖さんの死後、平氏が涙を流しながら「彼の好きな胡蝶蘭のように、蝶になって飛んで行ったような気がする」と言った言葉がとんでもない方向へ飛んでしまった。

沖さんの死後、養父・日景氏との関係が取りざたされ、遺産問題、家族の確執、果ては殺人事件の参考人だったとまで書いた週刊誌が出たりして、死人に口なしとばかりの報道合戦が続いたが、そんな中で平氏との関係も取りざたされ、彼の私生活にまで報道が及んだ。平氏は沖さんが亡くなった翌年に離婚している。
「はぐれ刑事」は男の友情が根底に流れるテーマだ。あんな報道によって、この名作を曇った目で観る人が出ないことを祈らざるを得ない。

今改めて見てみると、平氏はさすがに名優だ。目がものを言う。歩き方や食べ方もきれいだ。
平氏の舞台を見た知人は、あまりの存在感に圧倒されたという。

俳優にとっての仕事は、観客にいい芝居を見せることであって、私生活がどうあろうと関係ないではないか。あれほどの役者である平氏が、その事件のあとは、テレビでは活躍の場がないのが残念でならない。まあ、舞台で評価されているからいいのかも知れないが。
「はぐれ刑事」を見ていると、平氏が沖さんをたてて芝居をしてくれているのがよくわかる。それだけにますます悲しくなるのだ。

さて、愚痴はこれくらいにして、「はぐれ刑事」の頃に浅草に行った時のことを書こう。

早朝や深夜の撮影が多いとは聞いていたが、もしかしてばったり、という淡い期待を抱いて、友人を引っ張り込んで浅草へ出てみた。
東京の下町といえば巣鴨しか知らなかった私(決して『私の原宿』ではない。断じて違う)にとって、雑多な感じのするその町は、初めて目にする雰囲気でいっぱいだった。
タイトルバックで沖さんが煙草を吸っている浅草寺の前で写真を撮ったり、仲見世で観光客よろしく買い物をしたり、ひなびた喫茶店で影山とお京よろしくコーヒーを飲んだ。
おみやげ屋の奥さんに「はぐれ刑事」のロケのことをきくと、
「沖雅也?あーみたみた。ひょろっと背が高くていい男だったよ。抜けるように色が白くってね。」
と教えてくれた。抜けるように色が白い?確かにこの番組の時の沖さんはメークが濃すぎる。色白メークに眉毛ばっちり、七曲署のボスのようにアイシャドーも入っている。あんな刑事がいてたまるか・・といってしまうと、ボスもそうだが。とにかくお京役のホーン・ユキさんもお肌の美しさを絶賛、と雑誌の記事に載っていたほどの美しさだ。女もほれぼれ、ということか。

友人がトイレに行っている時に一人で外で待っていると、一台の車が停まった。
「ねえカノジョ、あそび行かない?」
沖さんとは対照的に、眉毛のない若者が車から顔を出した。こわい。無視するしかない。
目が合わないようにして立っているのに、しつこく声が響く。
「ようカノジョ!あんただってば!!」「お茶しようぜ!」
くるりと背を向けた瞬間、一番気にしている言葉がコダマのごとく響き渡った。
「けっ、ブース!!」
そう思うなら放っておいてくれよ・・・。

ブースな私が世にも美しい男に憧れてしまった。ああ何たる悲劇、何たる運命のいたずら・・・手鏡をもって自分の顔をまじまじと見てしまった。しかし、手鏡を持つとどうしても
「鏡よ鏡よ鏡さん、みんなに会わせて下さいな。そーっと会わせて下さいな」
と、うつみ宮土理お姉さんのモノマネをしてしまうところこそが私の悲劇だったかも知れない。しかし、そう考えてみると、うつみ宮土理お姉さんは若いなあ。

〜〜 以下はドラマのあらすじのため、ネタばれがあります。未見の方はご注意下さい 〜〜

お楽しみはとっておきたいので「沖雅也よ 永遠に」トップへ引き返す


はぐれ刑事 第1話「銃弾」

浅草に新任刑事として赴任した影山(沖さん)は、「こぎたねえ」町に配属されたことにいらついていた。早く手柄を挙げて「ジュクかブクロに替ってやるんだ」と言い、滝川課長(小沢栄太郎)や先輩刑事たちに生意気な口をきいている。
先輩刑事の風間史郎(平幹二朗)はそんな影山を一人前の刑事にしてやろうと世話を焼くが、影山は自分はもう一人前のつもりだと思っているので、忠告にも耳を貸さない。先輩への挨拶もぞんざいだ。

三角関係のもつれから殺人が起きた。
自分の女に手を出した男を射殺し、隅田川のたもとで銃を持って暴れている犯人に、風間は銃を渡せ、とそっと近づく。だが、犯人は半狂乱になって発砲、同時に影山も発砲する。だが、胸を押さえて倒れたのは、風間だった。

犯人は自殺し、風間は幼なじみの新藤小太郎(田中邦衛)の病院に運び込まれる。レントゲン写真を見た新藤は滝川課長に連絡。弾は犯人の22口径ではなく、影山が撃った38口径だったのだ。
弾は抜かなくても体に吸収される、と風間を説得して事実隠蔽を計る新藤と滝川。風間も真実を知ってからは弾摘出を拒む。

何となく皆に庇われているような気がした影山は、すさんだ気分でラリパッパのお京(ホーン・ユキ)と朝まで町をうろつく。

明け方、隅田川のたもとに立って、やっと素直になった影山はお京に言う。
「生身の人間を撃ったのは初めてなんだ。ざまあねえよな」
お京は影山の心を察して慰めるつもりで言う。

「好きじゃないんだよね、デカって。カッコ悪くてさ。でも、サイコーにカッコ良かったよ。目をつぶって撃ったあんた」
衝撃を受ける影山。

署に戻った影山は三角関係で生き残った女(桃井かおり)を厳しく追及するが、彼女は影山には何も言わない。見かねて風間が出て来て優しく話しかけると「浮気じゃないんだもん・・・」と語りはじめるので、影山はますます気にくわない。そんな影山に風間は言う。
「てめえに腹たてて人に当たる奴はくずだぜ。そのうちわからあ、刑事ってもんがさ」


第1回は七曲署とは違ってかなり雑然として汚い台東署の様子と、風間刑事の幼なじみの新藤保太郎の外科病院とそこの医師・大辻(火野正平)、新藤の義妹で看護婦の美智子(夏純子)などを物語にからめて登場させる。

滝川課長には若い妻・淳子(浅茅陽子)がおり、毎回「あ・な・た」とお弁当を持って来るし、先輩刑事の四谷は昇進試験のために、いつも参考書と首っ引きだ。ラリパッパのお京はいつも町をうろついていて何を生業にしているのか不明。要所要所に隅田川のどんよりとした景色を映し出して浅草の匂いをうまく出している。夜9時台の放送となると、同じ日本テレビでも「太陽にほえろ!」とはひと味違った大人のドラマになったようだ。

風間刑事と新藤小太郎は地元出身で幼なじみ。お互いに「しろうちゃん」「こたろー」と呼び合って、リズムの良い会話を聞かせるのも楽しみのひとつだ。例えば看護婦の美智子は新藤の妻の妹だが、彼女の後ろ姿を見て新藤は言う。
「慌てて饅頭食ったら後からショートケーキが出てきたようなもんだぜ」

沖さんもツッパった新米刑事を本当に突っ張って演じている。刑事にしてはいつも派手なネクタイをしているのと、ちょっとお化粧が濃いのが気になるが、明け方の隅田川を背景に、お京とちょっとセクシーなシーンもこなす。
「ねえ、煙草ちょうだい」
と色っぽくたずねるお京に、影山は自分の吸っていた煙草を渡す。
いいじゃないか、なかなか。

クールだが人間味のある男・影山が、これからさまざまな事件を通して一人前の刑事に成長して行く様を描いた「はぐれ刑事」。主役は平幹二朗氏でありながら、物語は影山を中心に進んで行くのが、ファンには嬉しい作品。

はぐれ刑事 第2話「逃避行」

野球とばくの賭け師をしている太田(蟹江敬三)が、縄張り争いのために刺された。
小太郎の病院に担ぎ込まれて一命をとりとめるが、内縁の妻・さちえ(宮下順子)が顧客リストを隠したため、胴元である「組」から狙われてしまう。

そのさちえは風間と小太郎の若き日のマドンナ「氷屋のさちえちゃん」だった。彼女は小太郎のことは分からなかったが、風間のことはすぐに思い出す。どうして自分のことは覚えていなかったのだろう、とぼやく小太郎に、風間が慰めの言葉をかける。

「ユニークすぎるとかえって目立たないんじゃないかな」

自分に任せろと言ってのんびりと聴きだそうとする風間が歯がゆくてしかたがない影山は、しぶしぶ病院を出たところで太田を刺した男を発見して逮捕するが、病院には他の男から脅迫電話が入る。胴元が顧客リストを取り戻したいと思って揺さぶりをかけてきたのだ。

そうとは知らずに、逃げれば組がかばってくれると信じて、病院から抜け出す太田とさちえ。だが、組の者はリストだけ取って二人を置き去りにしようとしたので、3人はもみ合いとなる。太田は刺殺され、さちえは組の者を刺してしまう。

現場にかけつけた風間は、走る途中で横腹を押さえて立ち止まる。
「大丈夫ですか」と立ち止まる影山を犯人逮捕に向かわせる風間。

さちえから包丁を取り上げた影山は
「何で逃げたりしたんだ!」とさちえと問い詰めるが、太田の死体に取りすがって泣く彼女をを見て、何も言えなくなって風間の顔をチラリと見る。それどころか、手錠をかけようとする風間に「風間さん、何も今かけなくても」と言うのだが、「つとめだろ、刑事の」と逆に言われてしまう。


取調室から出てきたさちえを無言で見送る風間。影山はそんな風間に冷たく言い放つ。
「女に幻想を抱き続けると、ロクなことありませんよ。猫と一緒でてめえ勝手なんですからね、女ってのは。病院であの女に吐かせてりゃ太田を死なすことはなかったと思うんですがね」
滝川課長が見かねて「もうやめろ」と言うが、「しかしですね・・」と続けようとする影山。
「言えた義理か」と課長に言われても何のことかわからず、
「とにかくね、女は信用できない。幻想ですよ」と吐き捨てるように言って去る。

入れ替わりに入って来た滝川の妻・淳子が差し入れを持って来た。刑事の一人がつぶやく。
「亭主が50で女房が20、これも幻想だね」


第2回は人物紹介から少し掘り下げた人間関係が描写される。
影山は風間から「カゲ」と呼ばれ始めているし、四谷刑事は口癖の「たまんねえよ」を連発、「さぼてんとマシュマロ」で文平ちゃんだった片岡五郎(のちに「姿三四郎」でも共演)は、ゲスト出演の泉ピン子にからかわれていたりする。「金時」と呼ばれる刑事もいるし、熊本弁を話す「山さん」も登場(もちろん別人)。
風間がさちえとが太田の女だったことに驚いていると、美智子がヤキモチと思える表情をしたりもする。
また、この回から小太郎が
「ノー・バッド・フィーリング。悪く思うなよ」を連発しはじめる。どうやらこの言葉を流行らせたかったらしい。

さて、肝心の沖さんだが、カゲは少し風間に懐柔され始める。自分に任せてくれ、と病院から追い出す風間に「よろしくお願いします」と素直に頭を下げて出て行くし、ラリパッパのお京との仲も睦まじく(?)なって来る。

なじみの店「おでん浅若」に入るとお京が焼酎のミルク割りを6杯もやっつけてからんで来るシーン。
「今日は情緒不安定なんだからな。ボインタッチするなよな。いつも触りたがってるくせに」と言うと、
「よくわかるな」と笑顔でかわした影山は、おかわりを注文しようとするお京を「もうおしまい!」と優しい笑顔で止めたりする。ここで影山は初めてお京に「くそ刑事」と呼ばれている。

後日、当直で丼をかきこんでいる影山に、お京がおでんを差し入れるシーンでは、
「情緒不安定じゃなかったのか」
「すぐとんがんだからな、バーカ」
と親しげな会話が続く。こういう何気ないシーンに最終回の伏線が張ってあったりするのだ。

ゲストの泉ピン子は、当時「ウィークエンダー」という番組での下品なレポートで人気が出始めた頃だったので、近所に住む主婦として署に来て、「薄壁一枚裏表だからね、聞こえて来るのよ、色々と」とレポートする。いわゆるサービス出演だ。今になってみると沖さんとのからみがないのが惜しいと思ってしまうのは私だけか。

スコッチから比べると、たった一年なのにかなり若く見えるのは、耳を出しているからかも知れない。「太陽にほえろ!」のような派手なアクションシーンはないが、今改めてよく観察すると、スコッチとは走り方も歩き方もちゃんと変えている。エライ。犯人を追いかけるシーンではやはり追いつかないように走っているが、これは沖氏の運動神経が良すぎるので仕方がないのかも知れない。尾行に気づかれて「しまった」という表情をするシーンなどは、見事に新米刑事らしい表情だ。

蛇足だが、さちえを演じた宮下順子は日活ロマンポルノで一世を風靡したこともある女優さんなので、浴衣姿がとても色っぽい。太田の髪を撫ぜる仕草、保太郎の子供と花火をする笑顔・・・。
「そうか、こうやれば色っぽいんだぁ」と遅ればせながら学ばせてもらうところが多かった。え?遅すぎた?

はぐれ刑事 第3話「復讐」

ポン引きのヒロシ(三ツ木清隆)は18歳の妹・ミコ(津山登志子)に体を売らせて稼いでいる。兄妹の夢は3年後に喫茶店を開くこと。
二人は体を売って稼いでいることに罪悪感もなく、キャッシュカードでお金をおろして、「アパートでこんなカード持ってんの、あたしたちだけだね」とはしゃいでいる。

同じ売春婦のカヨが客に首を絞められるという事件が起きた。ポン引きのヒロシに事情をききに行く風間と影山だが、影山の強い口調にヒロシは苦い顔をする。
「風間さん、誰?この人」
「うちの新人だよ」
「ニガテだよ、こういう人」

お京の協力でカヨから事情をきこうとする影山だが、またも口調がきつすぎてお京に咎められる。
お京とおでん屋から出て行く影山の後ろ姿をみて、保太郎が風間にきく。
「使いもんになるのか?」
風間「ピッチャーでいえばストレート一本やりってとこかな。あれで少しカーブでも投げられりゃ使えるかもしんねえな」

兄が麻雀仲間の紹介でとった客に無邪気に話しかけるミコ。だが、彼こそがカヨの首を絞めた変質者だった。

台東署。
コツコツと捜査を進めようとする課長に影山は「むだでしょう」とあっさり言う。
滝川課長「刑事の仕事なんていうのは99%無駄だと思ってやって来たんですが・・ 古いんですかね、こういうのは」
「そうでしょう」
あっさりとした答えに先輩刑事たちは、「言ってくれるな」「一年生はねえ」「たまんねぇよ」とつぶやくが、影山は意に介さない。
そこに電話が入る。ミコが殺されたのだ。

ミコの死体を見て泣き叫ぶヒロシを見てから、影山の表情が変わり始める。
霊安室で途方に暮れるヒロシ。
「刑事さんよ、つかまえたら死刑にしてくれ」
と言うが、影山は
「それは裁判所が決めることだ。とにかくホシを挙げることが第一だ。それにはお前が協力してくれないと」と諭す。
だが、ヒロシは自分で死刑にしてやる、と言い残して去って行く。

台東署。
風間「おい、カゲ。お茶でも飲みいくか」
影山「飲みたくありません」
だが、次のシーンで影山は風間と向き合って大衆食堂でアイスクリームを食べている。
「なあカゲ。お前、年はいくつだ」
「5です」
「ふーん、5か・・。ヒロシは23だったな。いやね、俺は時々お前たちの年の奴がふとわからなくなる時があってね。やると思うか?ヒロシの奴」
「やりませんね、俺なら。馬鹿馬鹿しい。済んだことは済んだこと。割り切りが早いんですよ、俺たちは。賭けますか、千円?」
「千円で人の命を賭けるのか!?」
「はー、まともなんだな、案外」
とにかくヒロシに人殺しをさせないように先手を打とう、という風間に「わかりましたっ」と白けたような返事をする影山。

進藤外科。
検査を受ける風間に保太郎が訊ねる。
「気がついてんのか、あのわけーの。てめえの撃った弾だってことを」
「知らんだろうな、まだ」
「言ってやりてえよ。向こうじゃ撃つときは目を開けて撃つそうじゃないか」
「つぶるさ、誰だって。初めての時はな」
あくまでも影山をかばう風間。

道でお京をみつけた影山はヒロシの行方をきくが、お京は
「あんたたちは人殺しを庇おうってのかい?やりたいようにやらせてやりゃあいいんだ。断っとくけどね、あんたなんか仲間じゃないんだ。いい気になんないでよね」
お京に言われるとちょっとしょげる影山。

浅草ロック座の中に潜むヒロシ。お京は彼に差し入れを持って来たのだ。自分が死んだときには、とキャッシュカードをお京に渡すヒロシだが、後ろに影山が立っていた。

ロック座のロビーに座り込むヒロシに、影山は
「損だなあ、これはどうやってもお前が損するに決まってる」と説得。
「もう一晩頭を冷やして考えろ。ミコさんだって生きてたらきっとそう言うんじゃないか?」
肯いて立ち上がったヒロシだったが、お京はいきなり後ろから影山に抱きつき、ヒロシに逃げるように言う。お京を振り払って外に出た影山だが、ヒロシの姿はもうなかった。
「バカヤロウ!」お京に怒鳴る影山。
「ふーんだ、ざまあ見ろ!」

ヒロシに客を紹介した男が犯人を知っていた。
工場の作業員・土本(松山照夫)だ。だが、警察が駆けつける前に、ヒロシは作業所から出てきた土本を尾行し、同じバスに乗り込んでいた。パトカーのサイレンをきいて意を決したヒロシは土本に包丁で斬りかかる。だが、ヒロシは同乗の客に羽交い絞めにされ、逆に包丁を奪った土本に刺されてしまう。
バスに駆け込んだ影山は、正当防衛だという土本を「ふざけるな!」といって鼻血が出て倒れるまで殴り倒す。
ヒロシの死顔を涙をためてみつめる影山。

墓地。
ヒロシの納骨に出席した風間と影山のところに、お京が現れる。
「刑事さん、あたいが殺したのかね」
「お前じゃないよ」肩をポン、と叩いて微笑む影山。キャッシュカードを握りしめるお京。

影山は風間に告白する。
「甘いな、俺は最後の最後までヒロシは絶対殺すはずないって心のどっかで思っていたんですよ。死刑になりますか?土本は」
風間「ならんだろうな」
影山「二人殺してんですよ!」
風間「せいぜい20年ってとこだ」
影山「殺され損か・・・」


この回で影山は前半に生意気な新人刑事を強調、後半に被害者に同情しはじめる変化を見せている。回を追うごとに成長する影山を、丁寧に描いた演出は、さすがは俳優座だ。確か当時若者が「しらけ世代」という言葉で呼ばれていたので、「必殺仕置屋稼業」の市松同様、影山にその世代を代表させていたのかも知れない。

ただ、影山がこの回でしているネクタイはエル○スのスカーフと身間違うような大きな金模様というのはいただけない。尾行をするのに、あまりにも目立つ柄だ。納骨式にも派手なネクタイで参列、風間はいつもと同じ皮ジャンだ。「はぐれ刑事」だから服装もはぐれて良いのか?

はぐれ刑事 第4話「密告」

売春婦殺しの罪で服役していた和子(赤座美代子)が出所して、10年ぶりに浅草に戻って来た。彼女が逮捕された10年前、一緒にベッドにいたのは、いつも「たまんねぇよ」とぼやいている四谷刑事(山本清)だった。和子は麻薬の売人・田川(蜷川幸雄)の元情婦で、田川にそそのかされて殺人を犯したのだ。

浅草に戻って来た和子はまず四谷刑事に電話をするが、四谷が電話に出ると何も言えずに切ってしまう。
昔よく来ていた「おでん浅若」に立ち寄ってみるが、そこへ縄張り争いでこてんぱんに殴られた末、お京に助けられた田川もやって来た。またちょうど良くというか悪くというか、四谷も店に来て鉢合わせしてしまう。

狼狽する四谷と和子を見て、昔話を影山に教えて笑う刑事たちは、正義の味方・お京に怒鳴られる。
「人のこと笑うやつは出てけよ!くそ刑事!」

雰囲気が悪くなり、刑事たちは四谷と一緒に店を出て行くが、田川はニタニタと笑って和子に近づく。
お京がつぶやく。
「ドジだね、あたしって」

台東署では田川を検挙する相談をしている。
影山「あの女使やいいじゃないですか!囮ですよ、囮。四谷さんとワケありなんでしょ。この際協力してもらってですね」
課長が怒鳴る。「いかん!」
影山「ヤクを追ってるんでしょうが、ヤク!挙げるためには手段を選ばずですよ。囮だろうがなんだろうが、使えるエサは皆、使やいいんだ!私情抜き!私情はなし!」

他の刑事も同意見なのを見て、四谷が激昂して叫ぶ。
「よし、俺が言ってやる!」
そこへ風間がが入って来る。
「デカより前に人間だろうが」
影山「ネコはネズミとりゃいいんじゃなかったンすかねえ。風間さんの考え方は。大体こういう捜査に囮はつきもので」
風間「イロハのイがわからんうちに、ロやハを言うな!」
気色ばんで影山がからむ。
「どういう言い方ですか、そりゃ」
「1+1がいつでも2になるわけじゃねえんだ」
影山「そういう言い方で手柄、一人占めにしようとしているだけでしょうが!」
言い合いになる風間と影山。
風間がダメ押しに言う。
「そういうのを本当に小汚ねえって言うんだ」
思わず風間の胸座に手が伸びる影山だが、それより早く風間が張り手をかます。もみあう二人。しかし、風間が突然胸を押さえて倒れる。呆然とする影山。
風間の体内の銃弾が動いて、胸膜をこすっていたのだ。

病院で課長に訊ねる影山。
「教えて下さい。あの弾、本当に俺の撃った弾じゃ・・・」
課長「おい、さっきはえらい剣幕だったじゃないか。本ボシ追うためにゃ、私情は抜きだろ。え?グジグジ言ってる間に、ネタとって来い、ネタ!」
うつむく影山。

その頃和子は田川のアパートで、彼の怪我の手当てをしていた。部屋に赤い女もののコートが下がっているのを和子は見逃さない。
だが、帰ろうとした和子の背中に、田川の声が響く。
「10年か。長かったな・・・痩せたよ、お前」
泣き崩れる和子を抱きしめる田川。
気をつけよう、甘い言葉と暗い道。

翌朝、和子を送る道で、田川は和子に麻薬の取り引きの場所と時間を教える。
「廃工場でな、あそこは。ふふ、警察ってのは、ほら、バカだから、廃工場なんかでヤクの取り引きがあるなんて、思いもつかないからな。」
(ヤクの取り引きといえば廃工場という気もするが、台本では『東京球場跡』となっているので、何かの理由で場所だけ変更になり、台詞はそのまま残ったらしい)
和子はその情報を、四谷に電話で知らせる。

和子の情報を元に、取り引き現場で張り込む刑事たち。和子も来て、四谷と二人で待つ。
四谷が「来た!」と緊張をみなぎらせると、和子がいきなりキスをする。
「がんばってね・・・」

取り引きに現れたのは、田川と縄張り争いをしていた宮田(田口計)だった。汚く田川をののしる宮田を見て、四谷は田川がわざと和子に情報を流したことを知る。

四谷が落胆してうずくまっている間に、和子の姿が消えていた。田川のところへ行ったと気づいた風間と四谷、そして課長に言われて影山も走り出す。

田川のアパートへ駆け込んだ和子は、台所の包丁を取り、田川に向かって行くが、田川の愛人・安代(阿川泰子)に止められる。包丁を奪った田川は逆に和子を刺そうとして、誤って安代を刺してしまう。
刑事たちが飛び込んで来る。手錠をかけてもヘラヘラと笑っている田川に腹を立てた影山は、田川を殴り飛ばす。

四谷は包丁を握り直した和子の前に立ちふさがった。包丁を握り締めている手からは、血がボタボタとしたたり落ちている。和子は畳をじっとみつめて言った。
「本当って言えること、たったひとつでいいから、したかった・・」

隅田川の岸辺に立つ四谷。
風間に連れられて影山がやって来る。
「四谷さん、生意気言ってすみませんでした」
小学生のように頭をさげる影山に、テレたように笑うだけの四谷。


今回はちょっとマニア好みの出演者が出ている。
田川役の蜷川幸雄氏は、今では舞台演出家としての地位を確立しており、平幹二朗氏とコンビを組んで数々の賞を受賞しているし、海外公演もしていることは周知の事実だ。だからこそ、このちょっと笑い方のヘタクソな蜷川犯人と、それを逮捕する平刑事の組み合わせが今となっては面白く見られる。

田川の情婦・安代は、のちにジャズ・シンガーとして人気が出た阿川泰子さん。綺麗だが、「助けて!人殺し!」の台詞が、まるで学芸会だ。
その他に田川の用心棒として、「笑点」で座布団を運んでいた松崎真氏、冒頭とラストシーンに登場する山形弁の警官に丹古母鬼馬二氏など、70年代のドラママニアにはたまらない配役だ。

和子を演じた赤座美代子さんには、一度エキストラの仕事の時にお世話になった。
女優さんというのは自分勝手で生意気なのかと思ったら、そんな人はごくわずかで、少なくとも私が見た限りは、礼儀正しくて真面目な方がほとんどだった。特に今でも活躍している方ほど真面目に仕事をしていたのが印象的だった。何事も真面目に取り組まなければ本物にはなれないのだ。

赤座美代子さんは台本を読みながら他の役者さんと論じていたが、そんな役者さんに混じって隅の方で申し訳なさそうにしている私に、色々と気を遣って下さった。羽があったら機を織って恩返しをしたい位だ。

その時、彼女の息子役で出ていた松田洋治くんも小さいながら立派な役者で、当時はどこの番組でも必ずみかけるほどの売れっ子だった。そして彼も今は蜷川氏演出の舞台に出演しているらしい。 松田洋治氏の顔が浮かばない方には、「疑惑」でスコッチにお馬さんをしてもらっている男の子、といえばわかるだろうか。

はぐれ刑事 第5話「偽証」

川のほとりを歩く影山にまとわりつくお京。今日も「刑事さん、キスぐらいしてもいいわよ」とからかわれている。そのすぐそばで結婚について語り合うカップルがいた。鑑別所あがりの川端(小野進也)とその保護司・土井(加藤嘉)の娘・ナツコだ。父に結婚することを話してくれ、とさがむナツコだが、心配顔の川端。だが、背後の草むらから川端と鑑別所で一緒だった村田が倒れ込むようにして出てきたことで、事情は一変する。川端は思わず村田の腹からナイフを抜き取ってしまうが、犯人にされることを怖れてそれを川に投げ捨てる。ちょうど通りかかった影山にそれを目撃される。
その頃、買い物帰りの土井は、あわてて逃げて来たようにみえる不審な男にぶつかられる。

犯人が川にナイフを投げ込むのを目撃した、川さらいをすべきだと息巻く影山だが、課長も風間も冷たい反応だ。
「おれはカナヅチだってはっきり言やあいいじゃないか」いじけて捨てぜりふを吐く影山だが、はりきって川に入る。
証拠のナイフはすぐにみつかり、川端の指紋が検出されたと、ナイフを持って課長のところに飛んで来る影山。勢い余って課長の顔に向かって大きなクシャミもお見舞いする。課長たちが事件について話し合っている間に、画面の後方でネクタイで鼻を拭いているのがご愛嬌だ。
そこへ土井が川端を伴って入ってくる。「土井さん!」土井は元刑事であり、風間の大先輩だった。
風間「俺が新米ホヤホヤの頃に、土井さんが教えてくれましたよね、指紋なんかアテにするなって」
「どうせ俺は新米ですよ、ホヤホヤですよ。ホヤホヤはホヤホヤのやり方で、ハクション!やらせてもらいますよ」またネクタイで鼻を拭く影山。

川端が犯人だと信じる影山は、川端の周辺の聞き込みに廻り、彼が土井の娘と結婚するという事実がわかった時には、土井が身内となる川端をかばっていると思い込み、その疑問を土井にぶつける。だが、刺された村田の身辺を洗い直していた風間は、村田がバクチの掛けとりをしていることをつきとめ、掛けの返済を迫られていたラーメン屋の玉井(江幡高志)という男に突き当たる。
一方影山は村田が川端と鑑別所で傷害事件を起こしていることから動機もある、と息巻いて主張するのだが、刑事たちは課長の若い妻・ジュンコ(浅茅陽子)の作ったシュークリームに夢中だ。

自分の娘が川端と付き合っていることすら寝耳に水だった土井は、ナツコに事実を確かめ、強く結婚に反対する。取調室に呼ばれた玉井をマジック・ミラーで見て自分の見た男だと確信しても、人違いだと偽証する土井。さらに、自分は川端に泣きつかれて庇ったのだとまで言ってしまう。ほら見たことかという顔で、外へ飛び出て行く影山。

影山は川端に土井が話した内容を告げ。重要参考人として引っっぱろうとするが、パニックになった川端は逃げ出してナツコの元へ行く。一緒に逃げようと言う川端だが、「おやじさんのことをちっとも恨んじゃいないよ」という言葉をきいて、「私、逃げない」ときっぱり言うナツコ。

ナツコはこのままでは共犯になってしまうといって土井を揺さぶる風間に、土井は「誰からも祝福される、そういう結婚をさせてやりたい。それだけだ」と呟く。

重体だった村田がついに意識不明のまま死亡した。影山はあくまで川端犯人説を主張し、課長に逮捕状を頼むが、課長は
「影山さんよ、事件の上っ面ばかり見てちゃダメなんだな。もっとも裏っ側をのぞけるようにあなるまでにゃ、あと十年かな」と茶化される。
「じゃあお手並み拝見と参りましょうか」とふてくされる影山だが、課長に意味ありげな視線を送る風間と、「賭けるか?」と嬉しそうに応える課長に目が?となる。

面白くない影山は、浅若で焼酎のミルク割りをイッキ飲みする。店のおやじに「刑事なんて、あっちぶつかりこっちぶつかりして、それで一人前になるんだよ」といわれるし、お京にも「お前なんてまだぶつかり足りないくらいだよ」とからかわれる。

村田が生きていて、しかも明日には口がきけるようになるだろう、と玉井を引っかける作戦に出た風間だが、病室で張り込んでいると川端とナツコがやって来る。村田の証言を自らとろうとしたのだ。そしてもう一人ナイフを持って忍び込んで来た者がいた。案の定、玉井だった。玉井に飛びかかった川端だが、乱戦の末玉井にナイフをつきつけられて押え込まれる。
どうしてここを知っていたのか、静かに入って来た土井は、「お前が子供が可愛いように、俺も子供が可愛い。放してやってくれ。その子は俺の子だ」はっとする川端。土井の気迫に崩れ落ちる玉井はすぐに手錠をかけられ、土井はそのまま来た時と同じように静かに去って行く。

土井が台東署に偽証したことを謝りに来たが、課長も風間も不問に付す。とぼとぼと去る土井を見送る風間のところへやって来た影山は
「見送る方も見送られる方も影が薄いですね」と顔色ひとつ変えずに憎まれ口をたたくが、風間は
「カゲ、よく見とけ。いずれ俺もお前もああなるんだ」と返す。
「冗談じゃないぜ、俺があんな・・・?」


ベテランの面々の迫力ある演技が素晴らしい。今のドラマが薄っぺらに見えてしまう。鋭い目の動き、表情の確かさ、存在感。さらには品格も漂う。さすがだと思う。こんな「怪物」たちに囲まれては、ドラマの設定通り「新米ホヤホヤ」の沖さんにとっては大変だっただろうが、良い刺激となり、勉強にもなったことだろう。

はぐれ刑事 第6話「姉弟」

今日は浅草のパチンコ祭り。道路にもパチンコの玉が散乱し、はめをはずした者を取り締まる影山だが、非番の風間は下駄ばきでお京と高みの見物だ。息巻く影山を
「ほっとけほっとけほとけのこころ」
とからかって去ってしまう。二人の後ろ姿にちょっとおどけた顔でつぶやく影山。
「バッキャロー」
ちょっと肩の力が抜けてきた影山だ。

露店販売をしている女(渡辺美佐子)の弟・マサオは金融会社を経営。幼い頃から世話になった近所の人々の店六軒をだましとり、店を売却する話を進めていた。
飲み屋を経営するおやじ(今福正雄)はのれんを出そうとして、座り込んでしまう。
そこへマサオがやって来て、客に店を売る相談を始めた。土下座をして頼むおやじを無碍に扱うマサオに、お京は「おまえなんか切ったって赤い血なんか出やしねえんだろ!」とどなり、おやじをおでん屋に連れて行く。
おやじを慰めているところに影山たち刑事が入って来る。
「遅いんだよ、くそ刑事」
「お前がそう言うとホントにクソに見えてくるだろ、自分が」
「ねえ、このおじちゃん助けてやってくれよ、可哀想なんだよ」
「実際の世の中はそう単純には行かないんだな、これが」
何のための警察なんだ、となじるお京だが、おやじがいきなり店を飛び出したので、慌てて後を追って行く。影山も行こうとするが、風間に
「こういう役はあの子の方が適役だろ、くそ刑事よりさ」
と止められてしまった。

歌を歌って明るくつとめるお京だが、おやじは電車が去った後の踏み切りに走って行って座りこんでしまう。
それを見たお京はおやじを抱き上げて天使のように言う。
「おじちゃん、あたいのこと抱いてもいいよ・・・ね、うち行こ」
その笑顔を見たおやじは、突然叫び声を上げ、車に飛び込んだ。

蒼白な表情でお京がおでん屋に戻った。
「どうした?」何も知らない影山がとぼけた表情できく。
「だから助けてくれって言ったんだよ。おじちゃん車に飛び来んじゃったんだよ。おじちゃん、死んじゃったんだよ!」
慌てて飛び出て行く影山たち。

おやじの通夜。浅草の古い遊園地・花やしきから物悲しい子供の声の歌が流れている。
焼香をしようとして断られるマサオの姉。そこへ銀竜会の高橋(藤岡重慶)たちがやって来て、おやじの未亡人に仇討ちの話を持ち掛ける。彼らはマサオのものになった土地を横取りしたいのだ。

銀竜会に狙われていることを知ったマサオが、警察に保護を求めてやって来る。善良な市民を守るのが警察のつとめだろう、というマサオに、「ふざけるな!」とどなる影山。だが、結局は身辺警護をすることになる。

マサオのためにお百度参りまでする姉だが、マサオの事務所に行くと
「姉ちゃんの顔見てるとやなんだよな、陰々滅々って感じでさ。帰ってくれよ!」
と言われる。一旦去った姉が、急いで戻って自分の分の折詰めを持ち帰るところが笑える。

相変わらず身辺警護を続けて外で見張る影山。
「腹が減った〜」と背中を丸め、先輩刑事が「じゃ俺、メシ食ってくるから」と行ってしまうのを呆然と見送るところなど、「太陽にほえろ!」の新人刑事のようで可愛らしい。(言うまでもないがスコッチは転任して来た身なので、新人ではなかった。先輩刑事に対する態度も思い切りデカかった)
外で折詰のお鮨を食べる姉を慰める風間。
「あの子にだけは、パーっとひまわりみたいな人生歩んでもらいたかったんだ」
姉にはマサオが生きがいだったのだ。
だが、話しているうちに風間が急に腹を押さえて倒れた。

新藤外科。
風間はすぐに手術を受けることになる。
台に乗せられて油汗を流している風間。影山に現場に戻るように命令するが、影山は動かない。レントゲンをチェックする保太郎に、見せてくれと迫る影山。
「どうしてそんなに隠すんですか!」
それでも保太郎はレントゲンを影山に見せない。

『あの時、俺は目をつぶって撃った・・・』

目をギュッとつぶり、発砲するシーンのフラッシュバック。銃弾の音、倒れる風間・・・そしてマサオが倒れた。銀竜会の条件を拒んだマサオは、あえなく撃たれてしまったのだ。

やはり新藤外科に運び込まれるマサオ。他に病院はないのか?というツッコミはさておき、俺は後でいい、と言う風間に、影山は
「なんでそんないいカッコするんだ!抜けば何もかもはっきりするんだ!」
風間の乗る台を手術室へ勢いよく押して行く。
だが、マサオの姉が影山を突き飛ばす。
「マサオを助けてやってよ!」
「てめえ勝手なこと言うな!こっちが先だ!」
もみ合う影山と姉を見て、この二人が後に家光と春日局となって争うシーンを思い出した人は、もうオタクだ。

風間の頼みでマサオの手術が先になった。呆然と風間の顔を見下ろした影山は、「ばかやろう!」と叫んで走り去る。

手術中、座り込んでお経を唱える姉に、横で寝ている風間が言う。
「俺のこと拝まれてるみたいで、気持ち悪いんだよ。やめてくれないかなぁ」
注射で痛みが治まったのか、風間は起き上がって姉に煙草を勧める。病院の待合室で。さらに、血が足りないといわれて献血までしてしまう風間。いいのか?

その頃、警察はマサオを撃った銀竜会を追いつめていた。発砲する子分に銃を向ける影山。
一瞬の迷い。目をつぶって撃つ自分の顔のフラッシュバック。だが、影山は目を開けたまま、見事に相手の手を撃った。さらに、おやじの女房にマサオを殺してくれと頼まれただけだ、という銀竜会の高橋を何発も殴り飛ばす。

マサオの手術は成功したが、半身不随になるという。
「よっぽどあたし、星のめぐりが悪いんだね、刑事さん。でも、また十五の時に戻っただけさ。きっとまたいいことあるよね」
泣き笑いをしながら姉が言った。少し笑って見せる風間。
マサオのことをきいて、風間は手術が怖くなった。小太郎も疲れていたので、またもや手術は延期になる。

おやじの女房が殺人教唆で逮捕される。露店の荷物をパトカーに運び入れようとする影山だが、マサオの姉が来て、「今日からおばちゃんの分も商売するから」と荷物を影山に運ばせる。
マサオの姉が叫ぶ。
「おばちゃん、保釈金、心配いらないよ」
「頼んだよ」

今日は出るから、とパチンコに影山を誘った風間だが、まったく出ない。外に出て風間が言う。
「鉄の弾だぜ、ここらの連中は。叩かれても踏まれても、へこみもしない」
銀の玉が道へ落ちる。その光をみつめる影山の表情のアップがラストシーン。
これも伏線なのかも知れない、と思わせるシーンだ。


影山のネクタイ以外にもツッコむところが多いこのドラマだが、手術を待つ人間が煙草を吸ったり献血までしてしまうのは凄すぎる。
ただ、この時代はまだ喫煙者が世間で容認されていたのだな、と改めて思う。医師である保太郎も、いくら幼なじみだとはいえ、手術を控えた患者である風間と一緒に病院内で喫煙している。今だったら日本テレビに苦情の電話が殺到していることだろう。嫌煙権が主流になったのは、いつごろからだろう?


はぐれ刑事 第7話「蒸発」

この第7回は、再放送の可能性が少ないだろうと言われている。トルコ大使館の要請で、ソープランドと名前が変り、現在では放送禁止用語になっている「トルコ風呂」という言葉が連発されるからだ。たとえ放送されても音声が消してあるかも知れない。

「浅若」でいつものように、お京がおでんをつついていると、若い女がやってきて、突然お腹を押さえて苦しみ出した。進藤外科に運ばれたその女は、トルコ風呂(現在のソープランド)で働く山城ケイコ(片桐夕子)。彼女は妊娠5ヶ月で、美智子の小学校の同級生だったが、流産すれば良かった、とつぶやく。
「人殺しの子供を生むわけにはいかないでしょ」
その言葉に驚いて、風間に連絡する小太郎。

風間が駆けつけた時、すでにケイコは美智子の親切がかえって辛かったのか、無理に退院して出て行くところだった。
彼女が乗ったタクシー会社とナンバーを控えて自宅をつきとめられるという風間を見つめる美智子の目には「信頼できるお方」とでもいうようなハートマークが浮かんでいる。

署内では影山が先輩刑事たちに甲斐甲斐しくお茶を配っている。お茶くみがいる署は、やはり七曲署だけなのだ。
大阪から出張して来た三好刑事(中谷一郎)は、花谷ジローという、自称シナリオライターを殺人犯として追って、台東署に協力を求めてやって来ていた。雄琴のトルコ嬢殺しだという。
早速、影山と三好はジローの東京での足取りを追い、以前同棲していたというトルコ嬢に電話をする。実はジローは山城ケイコのヒモだった。

ジローの友人のふりをしてケイコに電話する影山だが、その会話から、ジローは友人を使ってケイコと連絡をとっていること、そしてジローが指名手配されているのを知っていることが分かる。

翌朝、ケイコを心配して自宅を探す風間と美智子。このシーンもちょっと二人の間にキューピッドがうろうろしている。
そこへ三好刑事がやって来て、お互いが訪ねているのが同一人物とわかり、定職屋で一緒に定食を食べながら情報交換をする。

どうも雄琴の女たちが話していたジローと、東京できく文学青年のジローの人物像が違うような気がする、という三好に、風間はドフトエフスキーの「罪と罰」では、文学青年が殺しをした、と語る。学があるんですな、と風間をほめる三好。風間をみつめる美智子の目には、もはやハートが飛び散り始めている。
そこに影山がやって来て、ケイコがでかける、と知らせる。急いで出て行く三好刑事。支払いは風間だ。

ケイコは上野公園で2時間もジローの友人という男を待っていたが、誰も現れなかった。刑事の尾行に気づいていたのだ。
仕方なく、そのままトルコ「徳川」(すごい名前だ。葵の御紋まで入っている)に出勤するケイコ。

再び署内。
風間に「食べるか?」ときかれて、食べかけのラーメンをもらってすする影山。昔のドラマに出てくるラーメンは、どうしていつも伸びきってまずそうなのだろう。しかも人の食べかけをもらって、肘をついてズルズルすする影山の姿は、もう浅草に馴染んでしまっている。相変わらずド派手なネクタイと、ビシッと決まったオールバックの髪型とは不釣り合いだ。

そこに大阪から連絡が入る。電送写真(さすがの私も一瞬何かと思ったが、今でいうファックスのこと)で送られたジローの写真を見て、雄琴のトルコ嬢たちは、全くの別人だと証言したという。ということは、ジローは既に真犯人によって殺され、その人物がジローの名前を語っているに違いない。あわてて三好刑事に伝えに行く風間と影山。

トルコの前のおでん屋で張り込みを続ける三好と風間。犯人は金を目当てにジローの友人を装って電話して来たに違いない、と話す二人。

上野公園でみかけた男がトルコに入って行った。「おっさん、なんぼや」と言っておきながら、支払いもせずに走り去る三好刑事。風間は何の疑問もなく支払いをしているところを見ると、これは経費で落ちるのだろうか。余計なお世話か。

トルコ風呂で客の相手をするケイコ。相手はそう、真犯人・須藤だ。通帳とハンコをジローに渡すからよこせという須藤。疑惑を募らせるケイコに、須藤は真相を嬉しそうに語り出す。
雄琴のトルコ嬢を殺したのも、ジローを殺したのも自分だ、ジローは万馬券を当てたのが運のつきだった、と笑いながら語る須藤。そして魔の手はケイコにも迫った。首を絞められるケイコ。

三好にみつかって逃走する須藤だが、風間と格闘になる。毎回のことだが、ここ一番の時に胸が痛み出す風間。影山が逮捕し、三好に引き渡す頃にはもう痛みが止まっているのがちょっと笑えるが、肩を落として歩き去るケイコの姿は哀れだ。

遊覧船に乗って隅田川上にいる風間と美智子。
ケイコの友達になれそうか、と聞く風間に、美智子は答える。
「私、ケイコさんを見習わなくちゃ。一度心に決めて男の人を愛したら、その人がどんなぐうたらでも、死ぬまで愛し続けるの。うらやましいわ。」
風間と美智子に愛の芽生えを感じさせる回だった。


美智子役の夏純子さんは、沖さんと共演の多い女優さんの一人だが、このドラマの中では、キリッとして清潔感あふれる看護婦がハマリ役だ。
さて、あとはどんな共演作があっただろうか。数えてみるのも楽しいかも知れない。

はぐれ刑事 第8話「裏切り」

拳銃強盗の三人組のうち二人は早々に逮捕されたが、主犯の保(本郷直樹)の行方がわからなかった。保は風間が昔下宿していた先の、向かいにある食堂の息子だ。早速、風間と影山は母親を訪ねて食堂へ向かう。

下町の小さな店で保の母親(中北千枝子)が天ぷらを揚げていた。トレンチコートから赤い柄のネクタイがのぞく影山刑事には全く似合わない場所だが、
「牛乳ある?おばさん」などと庶民的な台詞を言っている。

最初は風間を懐かしがった母親だが、保が警察に追われているとわかると、顔色が変わった。
あんな息子はもう息子と思っていないから、家に来たら必ず警察に知らせると風間に約束する母親。だが、警察は張り込みを続けた。

同僚の坂田(望月太郎)に体内の弾のことをきかれてもシラを切り通した風間だが、また急に胸が痛み出す。あわててタクシーを拾おうとした時、保がタクシーに乗り込むのが見えた。痛みに耐えて保をホテルまで追いつめる風間。だが、あと一歩のところで激痛に倒れてしまう。

「逃がした?!」
あきれた様子の影山。
「逃げられるなんてドジもいいとこだ」とののしる影山を困惑顔で見る同僚たちだが、影山は何も気づかずに張り込みに向かう。

新藤外科のベッドに横たわった風間は、いつになく弱気になり、昔話などをはじめている。挙げ句の果てに「もう駄目だな」と涙まで浮かべ、弾丸摘出を保太郎に頼む。

張り込みを交替して帰ろうとする影山の前に、保の母親が立ちふさがった。みつけたら必ず知らせるから、張り込みなんてやめてくれと毅然とした表情で告げるのだが、課長は張り込みを解くわけには行かない、と影山に告げる。
記者たちが事件のことをかぎつけて騒ぎはじめたので、課長が記者会見をすることになるが、影山の「新聞に出たら、またあのおふくろさん泣くな」という一言に課長も苦り顔だ。

夕方まで眠り続けた風間は、目が覚めると出かけようとする。美智子に諭されても
「でっかい目。吸い込まれそう」(本当にそうだ)とおどけて見せ、彼女が姿を消した隙にさっさと病院を抜け出してしまう。

かくまってもらおうとあちこちを訪ねる保だが、新聞に載ってしまった今、保をかくまってくれる者はいない。
食堂のそばで張り込みを続ける影山。今度は車の中での張り込みだが、そこにお京がやって来る。
「ギョーザ食べる?」
無理矢理車の中にもぐりこむお京だが、影山はお京には甘いので、「静かにしろ」「わかったよ」の声にも迫力がない。その隙に、家にそっと忍び込む保。

母親が保の頬をたたいた。出て行け。お前なんかもう息子じゃない。警察につきだしてやる、と保の腕を引く母親だが、妹は「お兄ちゃんを警察に突き出すなんて、そんなことできない」とかばう。もみあった末に保が言う。
「わかったよ。出て行くよ。今度は一年や二年じゃ出られないんだよな。いいおふくろだよ。有り難くって涙が出らあ」だが、その目は弱々しい。とぼとぼと外へ向かおうとする保に、母親が低い声で一言言った。
「待ちな」

お京と車の中でふざけあっている影山のところに風間がやって来た。
「俺はね、ホシくをとっつかまえといて逃がすようなドジはしませんよ」
憎まれ口をたたく影山だが、保を逃がそうとして外に出てきた母親をみつけたのは風間だった。
銃声が響き、影山はやっと保がすでに家の中にいたことに気づいて飛び出す。あっさり逮捕された保だが、影山はバツが悪そうに風間に頭を下げる。なかなか素直だ。

影山は諦めなかった。課長に母親は犯人隠匿罪ではないのかと詰め寄ったのだ。だが、先輩刑事の四谷が六法全書を読み上げる。
「親族はその刑を免除される」
課長が諭すように言う。「法律ってのはうまく出来てるよ。血も涙もある。」

まるで事件解決後の七曲署のように、屋上で立ち尽くす風間と影山。
影山「裏切りですよ。あのおふくろさん、俺たちを裏切った」
風間「だからおふくろなのさ」
ちょっとエクボを見せて笑って、すぐに真面目な顔に戻ろうとする影山。
それぞれ違う方向を見て立っている二人の間に五重の塔が聳え立っていた。



はぐれ刑事 第9話「誘拐」

道であやうく車にはねられそうになったお京は、運転していた者が材木問屋・大松商店の自宅の庭に何かを放り込むのを目撃した。

大松商店の主・大松(渥美国泰)は、頑固でケチだと評判の男。大学生の息子・ヤスオの買った本もチェックして、不必要だと思った本は返してくるように命じるほどだ。その大松に、男から電話が入る。
「娘は預かった」
庭にはニワトリの死骸が投げ込まれていた。

父親の頑固さにいらついたヤスオは空缶を思い切り蹴とばすが、それがよその主婦らしき人にぶつかって、ちょうど通りかかった影山が怒られてしまう。それが縁で飲み屋で語り合う二人だが、ヤスオは父親の悪口を重ねて言う。
「俺も一年故郷にはかえってない。離れて暮らしているのが、かえっていいのかもな」
と、ヤスオに同情する影山。だが、自己紹介するヤスオには
「俺は影山。職業は・・・・セールスマンだ」
と嘘をついてしまう。

夜になっても帰らない娘を気遣う様子もなく平然と食事をする大松だが、一千万円を要求する速達が届く。
台東署に、大松家のお手伝いさんから電話が入る。大松家の高校二年の娘・ケイコが夕方、赤いスポーツカーに乗せられていたのを目撃したが、夜になっても帰宅しないという。
風間が「まだ九時すぎだ」と言うと、影山は
「大松って男は頑固で時間にうるさいんですよ。これはどうも、俺の勘じゃ・・匂うな」
と、したり顔なので、風間がからかう。
「へえ、こりゃあ驚いた。科学捜査第一、勘なんて骨董品だと言っていたお前さんがねえ」

「定期便」で新藤外科へ行った風間は、受診を終えた大松とすれ違う。
保太郎が言う。
「世間では彼のことをがめついとかケチとか言うが、残された人生を精一杯生きているんだ」
「残されたって・・・まだ、そんな年でもないだろう」

お京のお尻を触る手。
「エッチ!痴漢!!」
振り返ると風間が笑って立っている。並んで歩き出す風間に、お京は「サングラスしてたよ、あの男。年は25〜6。」とすかさず答える。もう何のために風間が来たのか分かっているのだ。
被害届が出ていないので、正式な捜査は出来ないが、影山は気になって大松家を訪れて、お手伝いさんから話をきく。ヤスオにはそれで刑事だとばれてしまうが、
「刑事だって言うと、人が壁を作ってしか付き合ってくれないんだ」
と言うと、ヤスオは笑顔で納得する。根は優しい青年なのだ。

大松家に再び脅迫電話が入る。一千万の要求に、鞄に古雑誌を詰め込む父親をみて、ヤスオは、無慈悲な金の亡者だ、自分の娘より金の方が大切なんだ、とくってかかるが、父親は黙ってその鞄を持ってでかけてしまう。

指定された公園で待つ大松を張り込む影山だが、実はその間に風間はこっそり大松家の電話を盗聴して(違法じゃないのか?)事実を掴んだ。この誘拐はいつもうるさくて冷たい父親にひと泡ふかせるために、兄と妹で仕組んだ狂言誘拐だったのだ。

「馬鹿な奴らだ」つぶやく大松に、影山がくってかかる。
「大松さん、あんたヤスオ君たちに随分恨まれてますよ。ひどいのはあんただって同じじゃないですか!」
「やめないか、カゲ」とめる風間だが、影山はさらに大松を責める。
「よっぽどのことがなけりゃ偽装誘拐までして抗議はしないでしょう」
そこへヤスオが戻って来る。
「妹さん、広川が返さなかったんだな」
おどおどと肯くヤスオを影山が張り飛ばす。「バカヤロウ!」
そこへ広川から電話が入る。
ヤスオに水上バス乗り場の公衆電話に金を持って来させろ、という。

刑事ドラマでいつも気になることだが、あからさまに一列になって、いやに近距離からの尾行が続く。橋の真ん中で立ち止まるヤスオ。
川をのぞいた風間がひらめき、影山を引っ張ってその場から走り去る。

小型ボートに乗った広川が現れ、投げられた鞄を受け取ってそのまま逃走。だが、影山と風間も小型ボートに乗っていた。影山が操縦している。(沖さんは小型船舶の免許があることがここで判明)

船をつけて逃走しようよする広川に追いつく影山と風間。だが、いつものお約束で風間は胸の痛みに倒れ、影山が一人で広川と格闘の上、逮捕する。

新藤外科。
痛み止めの注射を打たれる風間。
「痛みが治まったらレントゲンだ」
「ヤバイのか?」
「毎度のことだろ、史郎ちゃん」
本当に毎度のことだ。もう第九話なのに。

取調室で兄妹を諭す影山。
「ゲームがゲームでなくなったらどうなるか、よく分かったろ。なあヤスオ君、俺は今日、お前のおやじさんに息子のような気持ちになってつっかかって行ったんだよ。だけどな、その後で考えたんだ。おやじさんを責めるだけの資格が俺にあるんだろうかってな・・・。君たちはどうだ。その資格があると思うか」
その時、大松が血を吐いて倒れたという知らせが入る。子供たちは知らなかったが、大松は肺ガンで余命いくばくもない身だったのだ。

病院へ兄妹を連れていく影山だが、病室の中で風間に告白する大松の声をきく。
「・・・私が死んだら世間の荒波を乗り越えられるよう、二人に生きる厳しさを教えようと思ったんです」
大松は一千万円の小切手を用意していた。
「本当にケイコを返してくれるなら、お金なんか惜しくない。ケイコと、いやヤスオと二人のためなら、私はいつでも全財産を投げ出すつもりでおりますよ」
その言葉に病室へ飛び込むケイコとヤスオ。
泣き崩れるケイコの頭をそっと撫ぜる大松。
風間と影山はそっと部屋を出て行く。

保太郎と話している風間に、影山が声をかける。
「先輩」
「あ?お前今何て言った?」
「先輩」
「キモチ悪いな、お前にそんな事言われると」
「ちょっと用を思い出したんで、あの二人のこと、お願いします」
そそくさと出て行く影山を見送ってニヤリと笑う風間。
「史郎ちゃん、何ニヤニヤしてんだよ」
気味悪がる小太郎に風間は
「俺の勘によれば、多分・・・」

赤電話に十円玉を沢山入れる影山。
「ああ、もしもしオヤジ?俺だよ。・・・息子のケンザブロウだよ!おい、しっかりしろよ」

例の問題のシーンで第九話は終わる。しっかりしなくてはいけないのは、影山さん、アナタです。台本にはちゃんと「影山 司」って役名が書いてあるじゃないですか。誰です?ケンザブロウって。まだドラマの中では姓名を名乗ったことがないから、ケンザブロウが正しいのだ、と言われてしまえばそれまでだが、たしか新聞にも「影山司」と書いてあったと思うのだが・・・。


父親への愛情がテーマのこの回は、沖さんにとって思うところが多かったのではないだろうか。
「おやじさんを責める資格が俺にあるか」
沖さんも同じようなことを女性誌のインタビューで言っている。
「オヤジが死んで、オヤジの気持ちがわかった。・・俺はオヤジと同じタイプの人間だから」

この回まで読んで下さった方にはおわかりだろうが、「はぐれ刑事」はもちろん平幹二朗氏が主役のドラマだが、肝心なところで風間刑事がいつも倒れることによって、影山は手探りで事件に挑み、成長しなくてはならない仕掛けになっている。最初に「沖さんのために作られたドラマ」だと書いたのはこのためだ。最初の頃に突っ張っていた影山も、とうとう今回風間を「先輩」と呼ぶ。これからラストにかけて、影山の成長は著しい。沖さんにとっては成長の過程を表現するという使命が、俳優座と日本テレビから与えられたわけだ。やりがいがあっただろうと思う。それが認められたからこそ、やがて人気番組「太陽にほえろ!」のレギュラーとして声がかかったのかも知れない。
ファンとしては感謝にたえない作品のひとつなのだ。


はぐれ刑事 第10話「本ボシ」

大学生の相良勇(三景啓司)が自宅のアパートで刺殺された。手口からみて犯人は女性だ。
早速、相良と交際していた高井カズコ(佐野厚子)に事情をききに行く風間と影山だが、カズコの家庭は複雑だった。カズコは父親の子で、妹のユカは母親(真屋順子)の連れ子だ。

相良のアパートを検証する風間と影山。
状況からカズコを疑う影山は、
「カズコはそういう不幸な家庭に育っているんですよ」
と説明するが、棺の前で泣き崩れているカズコの姿を見ていた風間は、
「犯罪を犯す者が不幸な家庭の出とは限らんよ、と影山を諭す。彼女の涙を信じていると言って部屋を出て行く風間に、影山は「涙にもろくなったのは、年取った証拠だよ!」と憎まれ口をたたく。

アパートの下で口紅を発見した影山は、カズコの家を訪ねて口紅を持っているか確認する。自分の口紅を探すカズコだが、何故かそれはなくなっていた。
警察で事情聴取をしてカズコを責める影山。だが風間に、
「彼女が犯人なら、口紅はなくしましたなんて正直にいうバカいないだろう」 と、また諭される。
「彼女は口紅の持ち主が誰かわかったのでは?」とヒントまで出された影山だが、
「いい加減なこと言わないで下さいよ」

とぶっきらぼうに言って出て行ってしまう。 先輩刑事に「相変わらず素直じゃなかね、あいつも」と笑われる。

妹のユカの口紅だと気がついたカズコは、ユカが新しい口紅とショルダーバッグを買っていることを問いただすが、ユカはのらりくらりと言い逃れをする。
一方、影山もカズコの友人に口紅のことを尋ねて、ユカが同じ口紅を持っていたことを知る。

もう一度カズコに事情をきこうとして彼女の元に向かう影山のところに、お京がやって来る。モーニングコーヒーに誘うお京だが、すげなく断られて、
「チンピラ刑事!悔しかったら学生殺しの犯人でもつかまえてみな!」
と憎まれ口をたたく。影山を励ましているのだ。

カズコを尾行する風間。カズコは相良の友人の「誰か別の女性にスキーに誘われていた」という証言から、ユカのところに行って問い詰める。だが、ユカはまたもやのらりくらりとカズコをかわし、
「どうせ私は後妻の連れ子ですもんね」
と憎まれ口までたたく。

ユカをつかまえて話をきく風間。ユカは姉のことを罵り、
「相良さんが姉のBFのことをききにきたことがあるの。きっと姉は自分のやっていることが相良さんにわかっちゃって・・・・」
「それで殺した・・・本当にそうかね」
ユカの目をみつめる風間。

今度はカズコと話をする風間。
あくまで妹をかばおうとするカズコに、
「君がかばえばかばうほど、妹さんを救えなくなるんだよ。法律はね、ねじまがった妹の根性までは直してはくれないよ。今こそあんたの愛情を示す時じゃないのかな。じゃ、待ってるからね」

タクシーの運転手の証言で、事件当日、ユカが相良のアパートに行ったことがわかり、ユカのショルダーバッグからはルミノール反応が出る。決定的だ。だが、逮捕に向かおうとする影山を止める風間。
「行くなよ、絶対に」

警察がユカの持ち物を持ち去ったときいて激怒する父親。姉妹を分け隔てしたことはない、と言いながらも、
「ユカのおかげでカズコの一生はメチャメチャじゃないか!」
その言葉を聞いて部屋に飛び込むユカ。
「お母さん、なぜ黙ってるの?お父さんやお姉さんに遠慮してオロオロして・・・。お姉さんみたいにいい子ちゃんにはなれないのよ。だから、お姉さんの一生をメチャメチャにしてやろうと思った。相良さんを殺したのは私よ。私が相良さんに言い寄ったの。からかってやるつもりだったのよ。そしたら、あの人、ケダモノみたいに向かって来た。そして、私に正体を見られて・・・」
ユカの首を絞める相良のフラッシュバック。
「気がついたら、気がついたら・・・」
相良の胸にナイフが刺さっている。

「お母さん、もうビクビクすることないのよ。私はこの家からいなくなるんだから!」
ユカの頬を平手打ちするカズコ。涙が頬をつたっている。
「これ以上お母さんを悲しませるのはやめて!」ユカも泣き崩れる。

時計の音だけが響く捜査課。
「あぁ・・・あ」影山は待ちくたびれている。

カズコは、自分たちは今まで本当の親子ではなかった、自分はユカと本当の姉妹になりたかった、と父母に訴える。
「ユカちゃんが帰ってきたら、もう一度みんなでやり直しましょう」

再び捜査課。時計は1時40分を指している。
立ち上がる影山。
「もうこれ以上待てない!風間さんの気持ちはわかりました。ユカをどうしようとしたのか。だけど、今の若い連中には、風間さんの浪花節は通用しないんですよ。行きますよ」
その瞬間、父と姉に連れられて、ユカが入って来た。

風間と影山が歩道橋の上にいる。
「ねえ、風間さん。もしかしたら、姉さんの恋人を横取りに行って、意外と姉さんのために相良を殺したんじゃありませんかね。いや、何となくそんな気がするんですよ」
「ふーん、赤ん坊も一年経ちゃひとつだなあ」
「はあ?」
「いや、こっちのこと」
ちょっと考えてから、嬉しそうにする影山。


ラスト・シーンからもわかるように、影山の心境に進歩がみられる。最終回に向かっての助走が始まっているのだ。

殺された相良を演じた三景啓司氏は、沖さんの事務所に所属していたので、沖さんが出た番組にちょこちょこ出演している。一番の大役は「俺たちは天使だ!」のレギュラーだが、「太陽にほえろ!」でも犯人になったりドックの弟になったりしている。

さて、この頃(正確には鶴吉の頃)の沖さんのインタビューから、彼の考え方を探ってみよう。
「ある日は自信まんまん、ある日はダメまるきりダメ、もうオレはなんてダメなんだろうって思っちゃう。それでいいと思うんだ。こうだ!と思っちゃったらオワリだと思う、慣れることはいけないことだって・・・。演技っていうのは、テクニックと感受性だと思うんだ。テクニックっていうのは磨けば光るけど、感受性っていうのは持って生まれたもので、ない人にはまるっきりないものだと思うんだ、だから、磨けば、訓練すれば光るってもんじゃない、そう思ってるね、俺は」

生意気盛りだ。その代わり自分にも厳しい。22、3の若者がここまで言えるだろうか。
このインタビュアーは女性だったせいか、かなりツッパった発言が続く。

「俺はいつもいじめられてないといけない方だから、もっと勉強しなくちゃと思ってる。今は仕事、いい仕事でシビレたいね。それから人間になること、男だから勝ちたいさ」

インタビュアーは沖さんの印象をこう綴っている。
「彼は端正なマスクとギラッと光る目で、ほとんど演技論について話をした。自分のこと、生活や心理の面に分け入ろうとすると、とたんに話が抽象的になってしまうのだ」

話を抽象的にしてごまかすのは、沖さんの特徴だ。ファンとして何度煙に巻かれたことだろう。木内みどりさんとテレビで対談をした時も、
「抽象的になってごめんね」と自ら言っておきながら、やはり殻を脱ごうとはしなかった。

さらに同じインタビューから。
「『俺が燃えると、周囲が傷つくし、燃えていないと、俺は化石になっちゃうんだ』
恋についてきいた時、彼はこの謎のような言葉を吐いた」

この時、私は思った。血がつながらない親ではあるが、沖さんは日景氏を傷つけたくなかったのだ。当時、高校にあがったばかりの私には、かなり痛い現実だった・・。

はぐれ刑事 第11話「氷雨」

誤って兄貴分の増田(田中浩)を撃ってしまった健(佐久間宏則)。慌てて増田を新藤外科に運び込もうとするが、影山たちにみつかってしまったため、ちょうど「左の盲腸が痛いんだよ」と来院したお京が人質にとられる。
影山は「お京!」と叫ぶが、なす術がない。
「バカヤローくそ刑事、下がっちゃってどーすんだよ!」
台東署では本庁のエリートたち(地井武男・外山高士)もやってきて、対策を練っているが、現場では刑事たちが「仲間が仲間を撃ったんだってさ。似たような話だよ」と噂をしている。はっとした影山は思わず病院の裏ドアで張り込む風間の元へ走り、つぶやく。
「ドジな若造が間違えててめえの兄貴分を撃っちまった。俺の弾でしょう、胸の弾」
風間は「ハムレットみたいなツラしてる前に中のこと考えろよ」と茶化すが、夕食の材料を届けるふりをして突入しようとした瞬間、またもや胸を押さえて倒れ込む。その隙に中へ飛び込み、ドアを閉めてしまう影山。

お京をみて思わず頬が緩む影山に、「くそ刑事!」と笑顔を返すお京。
拳銃を渡す影山だが、犯人の一人は健に「ハジキってのはヘボに限ってめくら撃ちしやがんだ」という台詞にまた反応する。
横に並んだお京は、「ねえ、来てくれて嬉しいよ」と呑気に笑う。

台東署。
「スマートでカッコ良くてクールなのが刑事かも知れません。でも、刑事ってのはどっかドジなところがある方がいいんじゃないですか」と上司たちに語る課長。
「そこを乗り越えてくれれば、本物になるんじゃないでしょうか、影山も」
そこへ中の影山から電話が入る。電話に出た風間に
「一点貸し」と言う影山。犯人の要求は救急車の用意と警察の撤退だ。

恐怖のあまり逃げようとした入院患者がみつかってしまい、ひどく殴られる。騒ぎを聞いた影山は患者の前に立ちふさがる。
「自分の拳銃で死ぬんなら本望だ!」

手術で増田の腹から取り出された弾は38口径。だが、依然として昏睡状態の増田を動かすのは命の危険があると言われて、混乱した健は、引き出しをひっかき回し始める。出て来たのはレントゲン写真だ。「カザマ」の文字を発見した影山は、ひったくるようにして確かめる。
「38口径・・・やっぱり俺が風間さんを撃った」
呆然とする影山に「しっかりしろ」と渇を入れる保太郎。

救急車に増田を搬入する際に、飛びかかる風間。同時に犯人逮捕をする影山。
「ごくろうさん」と、暖かい表情で近づく課長をみつめた影山は風間の方に向き直り、突然土下座する。
「すいませんでした」
「おいおい・・」笑おうとする風間に保太郎が目で合図をする。保太郎を見た影山は「先生、お願いします。風間さんの胸の弾、抜いて下さい」と大粒の涙を目にためて訴える。肩を優しくたたいて影山を立たせる風間。「史郎ちゃん、よくやったよ。こいう本当によくやったよ」と言って去る保太郎。うなだれたままの影山に、課長も優しく微笑む。

はぐれ刑事 第12話「傷痕」

父が若い後添えをもらったことに腹をたてた高校生・アケミは、男友達の進に頼んで、父が開業のために銀行からおろした退職金500万円と100万円の結婚指輪を盗んでくれるよう頼む。だが、家から出た時に帰宅した父親と 鉢合わせしてしまい、進は父親を射殺してしまう。

娘を犯人と決め込む継母に反感を持った風間だが、アケミが事件に関係していることに気がつく。

影山は宿直をサボって、深夜喫茶でお京に膝枕をしてあげている。
「やさぐれ刑事。こんなんもいいじゃん」と言っていたお京だが、事件のことをラジオで聞き、顔色を変える。「あんた、早く行かなきゃ。ついてってやるよ」だが影山は「いいんだ、オレはもうデカじゃない」と、淋しそうな横顔だ。

台東署に出向き、退職願を課長に差し出す影山。
あくまで風間の弾は犯人の撃った22口径だと言う課長は、
「泣きの涙ですよ、最近は。こういうカッコつけばかりの若者が配属されるもんでね。」と受け流し、「歯を食いしばって走れ!」と励ます。だが影山はすっかりすねたまま部屋を出て言ってしまう。四谷が外まで追ってきて、課長の気持ちをわかってやれと諭すが、「そんなのえせヒューマニストのマスターべーションじゃないですかね?!」と反抗する。影山は全共闘世代か?
余裕の課長は「不良娘とうちの一年坊主。どういうことになるでしょうね。」と笑う。

ラブホテルに潜伏している進に見張りの目を逃れて会いに行くアケミだが、「一緒に死んで」と頼んでも「冗談キツイぜ」と本気にしない進に絶望する。

署の前で風間をつかまえた影山は「何で手術をしてくれないんですか」と絡む。他のにも「あんたは黙っててくれ!」と、ひどい口の利き方だ。

「たまんないんですよ。あんたのそういうセンチメンタリズムが」
あくまで全共闘ワードで絡む影山に、
「この子のツッパリかたは尋常じゃないんだ。心がズタズタに傷ついてるんだ。だから、差し伸べられるところまで手を差し伸べてやりたいんだよ」
それでも拗ねる影山に、70年代お定まりのビンタが飛ぶ。だが、倒れたのは風間の方だった。

新藤外科。
「右の肺がつぶれた」
すぐに手術にかかる保太郎。駆けつけた課長に「心残りだろうな、九分九厘だめだって分かっていても、一厘の優しさに目をつぶれない男なんだ」と言われた影山は、辞表の一時撤回を頼む。
「辞表?そんなもんは知らんね」と粋な課長。
「やらせて下さい。風間さんのやりたかったことを。きっとやり遂げてみせます」信頼の眼差しで見つめ合う二人。

潜伏先のラブホテルをつきとめて受付前で待機する影山。「部屋ある?」ときかれて焦るのはご愛嬌だ。
父の最期を思い出して泣いているアケミだが、警察に包囲されたことを知った進の人質となる。非常口から逃げようとする進だが、影山が後ろから飛びついて逮捕する。下から見上げて、ほっと胸をなでおろす課長だが、アケミは柵を乗り越えて飛び降りようとする。慌てて押えこみ、後ろから抱き締める影山。
「いいか、今死んじゃ何もならないじゃないか。どんなに悪い奴だって一厘ぐらいはいいところはあるんだ。それに目をつぶったりしないんだよ、風間さんも俺も」
影山の胸に飛び込んで泣き崩れるアケミ。

風間の病室に行った影山だが、「ちょっとでも触ったら一巻の終りだ」と釘を刺される。病室に残ろうとする美智子に、「バカ、武士の情ってのがわかんないのか」と諭す保太郎。
「風間さん・・・・」寝顔をみつめる影山。浅草に夕陽が落ちる。


はぐれ刑事 最終話「冬よ せめて美しくあれ」

影山は辞表を提出して隅田川沿いの道をとぼとぼと歩いていた。通りの向かいではお京と友達のマリコ(市毛良枝)が陽気に歌を歌いながら歩いている。影山に気がついて「おーい!」と手を振るが、影山はチラリと彼女たちを見ただけで去ってしまう。

マリコの婚約祝いをするためにスーパーで買い物をするお京とマリコ。だが、お京が向かいの店に魚を買いに行っている間に、スーパーの警備員二人はマリコが万引きしたと見せかけ、裏に連れて行って暴行してしまう。

新藤外科。
ベッドの風間も小太郎も影山を責める。
風間「甘ったれんな!何が辞表だ」
保太郎「こういう時こそ史郎ちゃんの代理で・・・そうすんのが男だろ。史郎ちゃん撃ったミスよりその方がよっぽどみっともないよ」
そこへお京がマリコを抱きかかえてやって来る。内密に診て欲しい、というお京の言葉に察しをつける保太郎。

病院を去ろうとする影山を大辻が呼び止める。
「間違って先輩撃っちまった。怒ってくれりゃあ救いになるのに、そいつが一生懸命自分のことをかばってくれる。重荷ですよね。でもさあ、プロってえのはどっかカッコ悪いもんじゃないの?」
少し笑って頭を下げて去る影山。

鎮静剤で眠っているマリコだが、うなされている。その姿を見てお京が立ち上がる。
「仇とってやるからな、マリコ」
思いつめた表情でスーパーに向かうお京。影山とすれ違うのだが、二人とも気がつかない。

銃声が響く。
お京が警備員二人を撃ったのだ。

スナックでテレビのニュースを見て、あわてて電話に向かう影山だが、署に電話することをためらっている時に、電話がかかって来る。
アメリカンと呼ばれる女(南風洋子)が電話に出る。去ろうとした影山は彼女の「つき出すわけにはいかないからね」という言葉を耳にする。

魚屋で聞き込みをする刑事たち。そこへ影山が来るが、
「まず、課長に詫びを入れてそれから来い」と言われる。
だが、後から来た二人は「カゲ、気にするな。あれ、矢野さん流の思いやりなんだ。」「早く戦線に復帰してくれよな」と暖かい。

ベッドから起き上がって外出を頼む風間。
「刑事にとって一番辛いのは、身内に手錠をかける瞬間だ。俺はカゲのやつにどうしてもこの正念場を渡らせたいんだよ。ここでやりそこなったら、あいつは一生立ち直れないかも知れんだろう。刑事も辞めてしまうかも知れない。俺はどうしてもあいつにイッチョマエの刑事になってもらわなくちゃ困るんだよ。俺は何のために弾をめりこませて頑張ってきたんだよ」

台東署の前に立っている影山。そこへ風間が美智子に付き添われてやって来る。黙って肩をたたく風間について影山も署内に入る。

「この事件に限り現場に戻りたい?」渋い顔の課長。
「違うよな、カゲ」
母親のようにかばう風間。
「プロに私情は禁物でしてね・・・ま、いいでしょう」
そこへ他の刑事も入って来る。「カゲ!」嬉しそうに影山を迎える刑事たち。警備員の素行が悪く、以前から札付きだったという情報に、影山は部屋を飛び出す。笑って見送る同僚たち。

病院のテレビでお京が警備員を射殺してことを知ったマリコは、画面に映し出された彼らの顔を見てパニックを起こし、病院を脱走する。
お京の隠れている屋根裏部屋を見つけ出したマリコだが、意外にもマリコの口からはお京への非難の言葉が出る。
「何で殺したりしたの?ひどいよね、あんた復讐したつもりで気持ちいいだろうけど、見せもんになるのは私だもん。私は見せもんになったっていいけど、そうしたらあの人傷つくもん」泣き崩れるマリコ。
「ごめんよ、マリコ。だって許せなかったんだもん。絶対許せなかったんだもん!」

影山と風間が屋根裏部屋をみつけた時、中には呆然と座り込んでいるマリコだけがいた。
風間「おい、お京はあれで向こう気の強い女だ。それだけに一旦バランスを崩すと脆い。ひょっとすると自殺しかねないぞ」
影山「行きましょう!」
風間「おい、どんなことがあっても死なすわけにはいかんぞ」
ふと、影山はお京と初めて会った隅田川のほとりを思い出す。
「風間さん!」

お京は橋の欄干の上に座っていた。
影山の姿を認めると「来ないで!」と拒絶する。「来たらここから飛び降りて死んでやるから!」
「聞いてくれ、お前ここで言ったな。目をつぶって撃った俺が最高にカッコ良かったって。だから俺は刑事を続けてこれたんだ。お京、お前が言ったから俺は・・・死ぬな!死ぬんじゃない!」
「いや!あたいは人を殺しちゃったんだよ。ただの人殺しなんだよ」
「違う!お前は人の不幸を黙って見ていられなかっただけだ。心底優しい女なんだよ・・・頼む、ここに来てくれ」
素直に降りたお京を抱き止める影山。その胸にすがりついて泣くお京。

パトカーを止めておでん浅若の前で降りる影山、風間、そしてお京。
店にはお京をかばったアメリカンや魚屋のおやじ(桑山正一)、そして近所の店のおやじ(桜井センリ)もいた。影山がカウンターにお金をおく。
「焼酎のミルク割り。お京にな」
皆でお京を囲む。おずおずと飲むお京。
「よーし、今夜はこの店貸し切りにしてくれ!」

座敷で宴会が繰り広げられるが、不意にお京が立ち上がる。
「おじちゃん、おばちゃんありがと」ニコリと笑うお京。
外へ出ると、白々と夜が明けかかっている。
くるりと振り向いたお京が両手を影山に差し出す。
「いいのよ」
ゆっくりと手錠をはめる影山だが、その手をそのまま放さない。

「ねえ、あたし10年くらいしたら出てくるじゃん?」
「うん」
「変わっちまってるかな、ここ」
「変わんないよ」
「でも、あんたはもういないよね」
「いるぜ。ずっとな」
「くそ刑事のまんまよ!」
黙ってうなずく影山の胸に顔をうずめるお京。
「署まで歩いていけよ」一人で去る風間。

署にお京を連行して行くと、課長が一人で徹夜して待っていた。
「課長さん、マリコのこと頼むね、あいつ守ってやってね」
「これもくそ刑事の役目でね」
課長は彼らの後ろ姿を見送ってから影山の辞表を破り捨てる。

影山は朝の町中をマリコを探して歩いていた。ぼんやりと歩くマリコをみつけて腕を引っ張るが、彼女は「いや!」と暴れ出す。
「ほら、おとなしくして!もう、こら!」
抱え込もうとするが、マリコはもう正気ではなくなっていた。影山と犯人の区別もつかない。

銃声がして鳩が一斉に飛び立つ。

倒れる影山。

「何で撃った・・何故だ?!」

無表情に立ち尽くすマリコ。やっとの思いで立ち上がった影山だが、壁にもたれてつぶやく。

「死にたくない。こんなところで死んでたまるか」

崩れ落ちるように倒れる。

「死にたくない、死んでたまるか・・・死にたくない、死にたくないよ・・」

上へ伸ばしていた手がガクリと落ちる。

ベッドから飛び起きる風間。
声もなく泣き崩れる美智子を黙って連れ去る保太郎。
「カゲ・・!」

台東署。
取調室へ連れて行かれるお京の声が響く。
「何よ、こんな朝っぱらから。どうせ調べられんなら、くそ刑事の方がいいよ。ねえ、くそ刑事どこよ!」
「たまんねえよ」四谷がつぶやく。

病院を出る風間に美智子が付き添おうとする。
「一人で行かせて下さい」
保太郎がつぶやく。

「あいつはシビれるようなデカだったぜ。史郎ちゃん、よくあそこまで育てたよ」

浅草の雑踏の中へ消える風間。

−完 −


「死にたくない」
そういって1975年12月30日に殉職した影山。そして数年後、スコッチも同じ台詞を最後に死んで行った。果たして日景城児は最後にどうつぶやいただろう。
投げやりになる影山を暖かく見守る先輩たち。どうしようもなくなったお京に手を差し伸べる影山。どうして沖さんには誰も手を差し伸べられなかったのだろう。

沖氏は最後に会ったホテトル嬢に別れ際にこう言ったそうだ。
「今度僕が幸せな時が来たら、また君を指名するよ」
沖氏は待っていたのではないか。「じゃあ今は幸せじゃないの?」と突っ込んできてくれることを。だが、彼女はそのまま帰ってしまった。彼女は別れ際に手紙を預かったという。だが、その手紙はレポーターが取材して時点でもまだ開封されていなかった。本当にその手紙が存在したのか、だとすれば、どんな内容はだったのか?謎のままだ。

もし自分があの場にいたら・・・そう思ったのは私だけではないだろう。何度も何度も無駄なこととは知りながらそう思った。非常階段を駆け上がる夢ばかり見た。

「一期一会」という言葉がある。どんなに近くにいる人でも、その時が最期かも知れない、だからそのひとときを、もう二度と会えないつもりで大事にしなくてはいけない。そんな意味だと教わった。

「あいつはシビれるようなデカだったぜ」


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