ゲスト・単発ドラマ4


<< 母に捧げる犯罪 >> テレビ朝日

土曜ワイド劇場

放送日: 1983年7月9日
共演者: 酒井和歌子 加茂さくら 長門博之 山本紀彦 馬渕晴子 他
沖さんの役名: 速水貴夫
原作:ジョーン・フレミング

幼い頃母から「お前は美男子なんだよ。いつかそのことがあんたを幸せするんだよ」と言われていた男(沖さん)が、一生遊んで暮らせる金を求めて殺人を重ねる物語。本来はもっと後で放送する予定だった(当時の土曜ワイド劇場は撮影から放送まで一年ほど間があった)が、沖さんの死で視聴率が取れると判断されたのか、急遽繰り上げ放映になった。

とりあえず出番は多いのだが、沖さんが亡くなってまだ一ヶ月も経たなかった時だったので、ヒロインと共に恐怖にひきつるはずの物語を、涙で顔をぐしゃぐしゃにして観た。凶悪殺人犯の沖さんが可哀想に見えてたまらないのだ。哀愁をたたえたテーマ音楽が流れる中、最悪の体調の沖さんが画面に映る。

野村孝監督は沖さんのテレビ本格デビュー作品「クラスメート」の監督でもあるが、その時は演技に熱心な若者だと感動していたその同じ監督が、この作品の撮影中の沖さんについて「ダイエットを気にしていてコーヒーしか飲まない。時間があれば横になってゴロゴロしていたので、たしなめた」と語っているように、太ったというよりむくんだ顔の沖さんが、目もうつろな姿で立っている。

お通夜や密葬に駆けつけてはみたものの、沖さんの死がまだ認められずにいた私には大きな衝撃だった。この作品を観れば沖さんがもがき苦しんでいたことが、ファンでない者にも一目瞭然だったはずだ。ましてや、ファンだった私が「頑張って下さい」という内容の手紙を添えて喉の薬を送ったりしたことが後悔された。十分すぎるほど頑張っていたではないか。うつ状態にある人に一番いけない言葉をかけたことになる。

女性とのラブシーンが多い。また、実年齢より上の役が多い沖さんには珍しく「昭和27年生まれ」の役を演じているし、回想シーンでは高校生、ラストシーンは白髪頭になっているのが興味深い。


<< 新・松平右近 >> フジテレビ

第19話 「お夕慕情」

放送日: 1983年8月14日
共演者: 里見浩太朗 立石涼子 火野正平 野川由美子 かたせ梨乃 他
沖さんの役名: 巳の吉

将軍の弟・松平右近(里見浩太朗)が町医者として市井の者を助けて行く物語。巳の吉(沖さん)は昔夫婦になる約束を交わしたお夕(立石涼子)を探して江戸を歩き回っていた。そのお夕は薮太郎(松平右近の別名)の患者で、既に病死していたのだが、彼女にうりふたつの女・お篠がいた。巳の吉の昔の男たちとその女は手を組んで彼が隠した千両のありかを聞き出そうとするが・・・。

沖さんが亡くならなければ後番組「長七郎江戸日記」のレギュラーの話もあり、そのためのゲスト出演だったらしい。

沖さんの死後、これが放映されていない最後の作品と言われた。実際にはお蔵入りになっていた作品があの2つあった(下記参照)のだが、当時の私は沖さんの急逝でそこまで頭が回る精神状態ではなかったので、これで最後だと心して、テレビの前に正座をして放送を待った。

画面に映った沖さんは、体重は元に戻ったように見えるが、目の下に大きな隈をつくって、幽霊のような顔をしていた。こんな大変な状態のまま仕事を続けた沖さんに冒頭から涙が止まらない。

「俺がふがいねえばっかりにお前に辛い思いをさせちまった。勘弁してくれ」
とお夕の墓前で泣き崩れる巳の吉。勘弁して下さい、沖さん。私は多くを望みすぎました。一線で活躍してくれなくてもいい、俳優が大変なら辞めてもいい、沖さんが幸せでさえいてくれれば、何もいらないはずだったのに。薮太郎の腕の中で息絶えた巳の吉に、私は心の中で叫び続けた。

ラストは時代劇お約束の里見浩太朗氏の華麗な殺陣とレギュラーの笑顔で大団円だが、涙で何も見えない。キャストの最初に「沖雅也」の文字をみて、「今まで本当にありがとうございました」と、テレビの前で土下座をしたまま、いつまでもいつまでも動けなかった。


<< 幻の結婚式 >> テレビ朝日

土曜ワイド劇場

放送日: 1985年1月26日
共演者: 大場久美子 篠ひろ子 三ツ木清隆 久慈あさみ 横内正 佐藤仁哉 他
沖さんの役名: 山田刑事
原作:「祟りの家」小林久三 著

光夫(三ツ木清隆)との婚約が決まって幸せな気分の京子(大場久美子)だが、光夫の兄が二人とも結婚式の前日に謎の自殺を遂げていることだけが気がかりだった。そして彼女の結婚式の前夜、その光夫も京子の目の前で電車に飛び込んでしまう。意識が戻らない光夫の姿を前にして、京子は兄二人の死の原因を突き止めることが事件の解決に繋がる、と確信する。彼女は光夫の兄(佐藤仁哉)の婚約者と真相解明に乗り出すが、探り当てたのは意外な犯人だった。

1983年正月発行の後援会報ではもうこの番組の予告をしているので、82年後半、それも11月21日に沖さんが自宅で昏倒する前の撮影とみられる。
確かに倒れる前に沖さんは過酷なダイエットとジョギングに励んでいたので、右目が斜視気味で大きなサングラスをかけてはいるが、顔はすっきりと痩せており、スコッチが「太陽にほえろ!」に再登場した時のようだ。

沖さんの出番は光夫の事件があってからなので、番組開始後約30分後になる。
少ない出番の殆どが主役の大場久美子さんとのツーショットだが、小柄な女優さんが多い芸能界でもひときわ小柄で顔が小さい大場久美子さんと並ぶと、まるで大人と子供だ。二人とも首がこりそうな角度で話をしている。

沖さんが亡くなってお蔵入りになっていたものを、視聴者からの要望が多いので放映することになった、と当時の記事に出ているが、その理由はラストシーンかも知れない。自殺した犯人(推理物なので誰かは伏せる)の飛び降り死体のアップ。それは舞い落ちるシーンはいつものお約束通り「手足が固いぞ私はお人形」だった割には、倒れている死体はリアルな映像だった。しかも犯人は・・・うーん、書きたいがやめておこう。臨時ニュースとして○口組系暴力団四代目組長が射殺されたテロップが流れる。そんな時期だったのか。


<< 浴室の死美人 >> テレビ朝日

土曜ワイド劇場

放送日: 1985年2月8日
共演者: かとうかずこ 木村理恵 高松英郎 新藤恵美 青木義朗 他
沖さんの役名: 岡村喬

岡村喬(沖さん)と野島久美子(木村理恵)は同棲しながら同じ美容院で働いていた。二人の夢は自分たちの店を持つことだったが、お客のホステス(片桐夕子)の顔に熱湯をかける事故を起こしてしまった喬は、高額な慰謝料から逃れるためにパリに修業に出かけた。快く喬を送り出した久美子だったが、修業先で大手のビューティーサロンの一人娘・有川由紀(かとうかずこ)と出会ったことで、喬には野望が芽生える。やがてそのために邪魔になった由紀の父親の愛人を殺害、さらには久美子までを自らの手にかけてしまう。由紀は妊娠しており、結婚式を迎えた二人だが、その喬の前に現れたのは・・・。

撮影されたのは1982年だが、放映は「幻の結婚式」と同じく放映が遅れていた。
沖さん演じる岡村喬は完全犯罪を目論む非情な男で、自身の野望のために愛する女の命さえも犠牲にするのに、ドライアイス詰めにした裸身の久美子の遺体に向かって「寒いか久美子。許してくれ」と手を合わせる。自分の犯した罪のために徐々に常軌を逸して行く男。演じようによっては面白い役かも知れないが、当時心を病んでいた沖さんには酷だった。まるで魂が入っておらず、これが本当に沖雅也なのだろうか、誰か他の人が沖さんの中に入ってしまったのではないだろうかとまで当時の私は思った。沖さんが既に故人であったことも影響したのかも知れないが、役柄はともかく沖雅也らしくない雰囲気が感じられる。純白の花婿姿が哀しい。夜一人で観ると、ちょっと怖いシーンもある作品。


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