<< 大追跡 >>



出演:加山雄三 藤竜也 柴田恭兵 長谷直美 宍戸錠 他
沖さんの役名:矢吹史朗

注)ここではあくまで俳優・沖雅也を中心に話を進めるので、各回の内容については「大追跡川柳」を参照しながら観ると楽しさが2倍です。

大追跡川柳サロン(第1〜13話)
大追跡川柳サロン(第14話〜終)



<<1978年4月発行の後援会報より>>

拝啓
春暖の候、みなさまお元気ですか。
私は、お陰様にて元気で毎日を送って居ります。
二月の帝国劇場(管理人注:「花の巴里の橘や」のこと)では、沢山のご観覧、ありがとうございました。出演が少なく私の為に来て下さった方にはとても感謝して居ります。何ゆえ、お付き合いあっての出演でしたが連日満員で終了し喜こんで居りました。
あれから二ヶ月が過ぎ、私にとっても、全ての人々にとっても、此の四月を前にして忙しい日々に追われていたかと思います。
「四月」此の言葉を聞くと、何かの始まりがあるかの様な、重大さを感じます。
会員の方達も、四月を前にさまざまな、思考が頭の中を通りぬけ、それぞれの思惑が交差し合っていたと思います。
私達、俳優という職業も、四月を転換期に、新しいドラマの構成に追われて行くのです。一般企業で働く社会人も、学生として生活を送って居る人達も、それぞれが共通して、いわば規則的な、時期の習わしの様なものを感じさせられる。
当然の出来事の様にやって来ては、喜こびや、悲しみを人々に与えて行く、社会人にとっては、年毎に味わう先輩としての責任感を自覚させられ、社会人として、上手に橋を渡らなければならない事を認識する。そして、学生には学生としての試練を乗り越えなくてはならない。
入社や進学する為の試験が待ち受け、XXXXそれぞれが、違った意味の不安や期待を迎え、頭の中で渦を巻く。
会員の中にも、難を乗り越えられなかった人、そして何らかの形で条件が合わず此の四月という転換期を逃してしまった人も居るでしょう。しかし、私達の生きて行く過程には、終りという言葉は無いと信じて居ます。
また新たな気持ちで、希望に躊躇する事無く賭けて行ける若者で有りたいし、有ってほしいと思って居ります。
そして私は、此の時期を契機に、更に挑戦出来る俳優に、情しまず努力します。
四月四日から始まった“大追跡”
もう一人の乗客に継ぎ、またも刑事役ですが、味の違いに工夫しているつもりです。空手等のアクションつきで、こうして体を動かせる事に喜こびも加わって居りますが、ご覧頂けているでしょうか。勿論、好き嫌いの問題は別にして、多種多用な役を数多く挑戦出来れば幸いですが、今は、体一ツでは足りない程です。
毎月入って来る呉服ショーでのサイン会等、九月頃に上映されるという東宝の「ブルークリスマス、信子の部屋」の撮影を、“大追跡”の合い間に追われ、時間の足りなさと、体がもう一ツ有ったらと思っているくらいです。すべてをコンスタントに営む事が出来る私に成る事を、頑張って居りますので、みなさまもどうか暖かい応援と、期待を忘れず、宜しくお願い致します。
私も、みなさまと同じ若者で有り、同じ青春を、私は私なりに送っております。目的への歩みは、個々によって違うでしょうが、共に歩いて行く姿は同じです。此の時期を契機に、私もみなさまと共に肩を並べて頑張ります。
どうか沖 雅也、そして“大追跡”宜しくお願い致します。
一九五二年六月十二日生
日景城児
(原文のまま)

今読むと、なかなか考えさせられる文章だ。
まず、この会報が発行される前に、私は事務所に遊びに行っている。そこで、会報に載せるファンレターを書いてごらん、沖さんに返事をしてくれるような挨拶を書いてもらうからと言われた。
私の拙文には大学受験に失敗したことが書かれていて、沖さんは律義にそれに返答する内容を織り込んでくれている。この会報を手にとった時の胸のときめきと言ったら喩えようもなかった。

「しかし、私達の生きて行く過程には、終りという言葉は無いと信じています」
その言葉にどれだけ慰められたことだろう。今読めば、「それなら何故・・」と言いたくなる人もいるだろう。だが、私は「終りはない」と今でも信じている。

また、多忙ぶりも書かれている。こんなスケジュールがかなり長期間にわたって続いていたし、この後も続くことになる。「お付き合い」の仕事を断るほどには出世していなかったということか。だが、それが沖さんの病気を発生させる一因になったのかも知れないと思うと、痛々しい気もする。
最後に生年月日まで書いて「日景城児」と結んでいるのが珍しいが、それもマスクをはずして素顔を見せてくれたような嬉しさがあった。日景城児が沖雅也をよろしく、と頼んでいるのだから。


第一話「ハイエナが集まった」
放送日: 1978年4月4日
ゲスト:八名信夫 穂積隆信 黒部進 阿藤海 他


悪がはびこる犯罪都市に集められた五人の刑事たち。
それは確実に検挙率をあげなければ廃止される特殊セクションである。
彼らの行くところに正義はない、感傷はない、栄光もない。
あるのはただ、孤立無縁な悪との闘いである

森山周一郎氏のナレーションで始まる「大追跡」は、計画の失敗で要職を解かれた神奈川県警の新田刑事を中心に、各署から集まったはみだし刑事で設置された『遊撃捜査班』の型破りな捜査を描いたもの。当時好視聴率だった「大都会パート供廚慮緘崛箸箸靴董同一路線を目指してスタートした番組だったが、出演者たちの強い個性が番組を占領して、独自の雰囲気を確立した作品。

沖さんが演じる矢吹史朗は、企画の段階では合気道と棒術の達人で、マイペースで捜査を進めるため、協調性がないという、スコッチ刑事をひきずった役柄に設定されていた。
バツイチで娘がいるという設定は、とうとう本編では登場しなかったが、それはそれでちょっと観てみたかったなあ、と思う。

第一話の矢吹は確かに融通が利かなくて上司を殴ってしまうが、新しい上司である新田英一(加山雄三)には妙に礼儀正しいし、水原慎介(藤竜也)と対照的にクールである。
このキャラクターは回を重ねるに従って変わってくるのだが、第一回ではくそ真面目なキャラで笑いを呼ぶ。この台詞のために、沖雅也自身もそうであったように勘違いされたという

「私は・・・泳げないんだぁ!」

これは見事なタイミングと表情だった。華麗なアクションで追いつめておきながら、海に飛び込んだ悪玉をしばらく無言で眺めた後での叫び。絶妙のタイミングで叫んでくれる。

共演者の加山雄三氏は事故で怪我をした直後の撮影のため、後半までアクションには加わらないし、走る姿は痛々しく見える時がある。
それでも加山氏は同時期に同じ日テレで「パパの結婚」というホームドラマにも出演している。そんなキャスティングをする日テレもどうかと思うが、それほど加山氏には人気があったということだろう。いつの時代も老若男女に愛されるスターだ。この「大追跡」でもメンバーを締める。

柴田恭兵氏はこの番組がほとんどテレビデビューといっても良い新人であったが、第一話からすでに個性を発揮しており、回を追う毎に輝きを増して行く。
この後「姿三四郎」「俺たちは天使だ!」でも沖さんと共演しており、ファンとしては「管理人独断方式『もっと共演してほしかった人』コンテスト」で、男性俳優部門第一位」に選ばれる共演者だ。

沖さん唯一の写真集「沖雅也in太陽にほえろ!」で柴田氏は当時のことを
「沖さんは他の共演者の方と比べていちばん(ボクに)近いっていう感じでした」
「ビックリしたのはボクと同い年だって聞いたとき」
「ロケというとほとんど横浜だったんだけど、『いっしょに帰ろうか』ってかけ出しのボクを愛車で奥ってくれたり、仕事が終ると中華街によく食事を誘ってくれたり、なにげなく気遣ってくれるんですよ。共演後もよく電話で話しました」と語っている。

長谷直美さんともこの後「姿三四郎」「俺たちは天使だ!」そして「太陽にほえろ!」に復帰した時も共演している。彼女は同誌で
「すっごく気さくなんですよね。はしゃぎ方も人より子供っぽいんで、あれ?って感じしました」
「女の子の相談もよくうけましたね」(むむっ?! ←管理人の声)
「理想が高いからピッタリくる女性となかなか巡り合えなかったみたい。ただね、沖さんの口から『はずかしくて女の子を誘えない』って聞いた時はビックリしました」
「けじめはキチッとした人」と語っている。

藤竜也氏は沖さんが16歳で日活映画にデビューした頃の先輩だ。
沖さんに限らずこの番組にはロマンポルノ女優さんを含めて多くの日活俳優陣が出演しているが、これは藤竜也氏と日活出身の村川透監督の関係のようだ。
LD−BOXの解説書で、藤氏は沖さんについてこう語っている。

「沖さんと僕が最初に会ったのは、彼がまだ少年と言ってもいいぐらいの時代ですよ」
「ひとりでああいう芸風というか、貴公子然としたものを作られた。この作品の時も最初はそのイメージで来たんだけど・・・」
「柴田恭兵さんと沖雅也さんというのは、ふたりとも運動神経が抜群なんです。このふたりで走らせたり、飛び降りのシーンをやると競争しちゃうんですよ」

同じ刑事ものであり、イメージが定着してしまったスコッチ刑事と重ならないように衣装や髪型などに工夫している。第一回はYシャツ、ネクタイ、上着を全て格子柄にまとめている。無地のスーツで通したスコッチとは対照的だ。髪も短くまとめ、スコッチにはないとぼけた表情が可愛い。


第二話「狙撃者の目が光る」
放送日: 1978年4月11日
ゲスト:藤岡重慶 他


『狙撃者』と書いて『スナイパー』と読む。『男』と書いて『あいつ』と読ませる演歌の世界か?それはともかくとして、第二回にして、既に矢吹刑事はくだけ始める。

目がよく動いて表情が豊かになり、制止を無視して飛び出した磯子東署の刑事(藤岡重慶)に「最低だ!」と叫ぶ。(なぜか第三回でも「最低だ!」と叫んでいる。流行語にしようとしたのか?)し、滝本稔(柴田恭兵)との捜査はもう息がピッタリだ。


第三話「悪女が躍る」
放送日: 1978年4月18日
ゲスト:吉行和子 清水紘治 山口美也子 他


後半の方が矢吹刑事の個性は光って来るのだが、ヘロイン患者の女性に対する態度がセクシーで優しいので、矢吹刑事を観るには一番好きな回。へこたれそうになる時に、この矢吹の台詞がしみる。

「自分で歩いてみろ」
「ふらふらしないで。背中ピシッと伸ばして。ちゃんとして!」
「よし・・・もう少しだ」
彼の胸にたどりつくと、とろけそうな笑顔が迎え、大きな腕がくるんでくれる。実際にはそんなことは未来永劫ないのかも知れないが、そうやって自分を励ます。まったく、どれ位この笑顔に助けられて来たことだろう。


第四話「首領を撃て」
放送日: 1978年4月25日

ゲスト:南原宏治 中島ゆたか 岡崎二朗 他


70年代に青春を生きた者には「首領」と書いて「ドン」と読むのは当然。石野真子の「私の首領」を唄いながらオデコに人差し指と中指をあわせて持って行ったら完璧だ。

クスリと笑ってしまう大人の笑いが満載になり始める回。長谷直美も彼女らしい魅力のある台詞で、男たちを翻弄しはじめる。追跡途中で一個所に集まり、その場駆け足で相談するシーンが初めて登場する。


第五話「潜入刑事」
放送日: 1978年5月2日

ゲスト:曽根晴美 天本英世 田口久美 片桐竜次 他


せっかく遊撃捜査班のメンバーの息が合ってきたところで、単独主演ものはどうかと思って観ていたが、命の危険を犯しながら強盗団に潜入する水原と、彼を守ろうとする遊撃のメンバーの絆がさりげなく描かれている。沖さんの出番は少ないが、水原と結城の小芝居が楽しい。


第六話「ワルは眠らせろ」
放送日: 1978年5月9日

ゲスト:青木義朗 片岡五郎 榎木兵衛 八城夏子 他


メンバーそれぞれが独自の面白さを出し始める回。矢吹は女性を紹介されて「困ります!」と硬派なキャラを前面に押し出すが、若い女性に「甘ちゃん刑事」と呼ばた挙げ句プレゼントを捨てられて呆然とするあたりはかなりコミカルに描かれている。ラストのコメディー風な音楽の中、ビミョーなまばたきをする矢吹の表情が秀逸。
沖さんの付き人だった○山○典氏が矢吹に逮捕される役でエキストラ出演している。


第七話「札束と赤いバラ」
放送日: 1978年5月16日

ゲスト:伊佐山ひろ子 田中明男 辻萬長 丹古母鬼馬二 他


遊撃捜査班に独特の雰囲気が出て来る。「軽さ」 − それは身の軽さ、ジョークの軽さ、そして犯罪の重さを軽くいなす遊撃班のメンバー。命知らずというか、命の危険が迫っていても危機感がないというか。
村川透監督の演出に加えて、藤竜也氏がムードメーカーとしての役割を見事に果たしている。共演者の魅力を最大限に引出しながら自分も目立ってしまうというのは、一流の俳優の芸だ。パントマイムでどちらが先制攻撃をかけるかを『あっちむいてホイ』で決めようとする矢吹と水原。最初から素直に右を向いてしまう矢吹が可愛い。

久美子役の伊佐山ひろ子さんは「北都物語」「早春物語」でも沖さんと共演 しているし、後期スコッチ期には「太陽にほえろ!」にもゲスト出演している。うつろな瞳で言う「らく〜に生きたいの」という台詞が、女優多しといえども彼女ほど似合う人はいないだろう。

「大追跡」最大のヒット、『オットー』が初めて登場する回。


第八話「必死の追走」
放送日: 1978年5月23日

ゲスト:緑魔子 深江章喜 宍戸錠 他


たまたま強盗の現場に居合わせて手錠をかけたばかりに、彼らと共に逃亡することになった矢吹の主演回なのだが、イマイチ沖さんに元気がない。「役にノッテいない沖さん」というのを感じたのだが、気のせいだろうか。

冒頭のアクションは軽快で、足がもたつく強盗たちに追いつかないよう苦労しているし、その後強盗たちに痛めつけられたから元気がない様子なのは当然かも知れないが、事件が解決した後の表情が良くない。いつもの矢吹のキリリとしたところがないのだ。いつもより長くかかる「Shadow of a Man」の歌詞が身にしみる横顔の沖さんだ。

Shadow follows him like his memories........


第九話「現金輸送車強奪」
放送日: 1978年5月30日

ゲスト:浜田晃 三谷昇 他


遊撃捜査班が警察のアウトローであることを強調した回。かなり無理な取調べをしているが、九十年代後半にはニュースで神奈川県警の幹部が謝罪する姿が頻繁に登場したから、こういう捜査も今ではリアルにみえる。

沖さんと柴田恭兵氏のコンビネーションが光り始める。警備会社に調べに行った二人の会話のテンポが心地良く響く。


第十話「耳」
放送日: 1978年6月6日

ゲスト:織本順吉 林ゆたか 穂積隆信 他


アルコール漬けの耳を警察に送り付けるというセンセーショナルな事件。3月3日の放送でなくて良かった。
好評だった第一話の矢吹の台詞「私は泳げないんだ」が再登場。ただし、今回は変わって来たキャラと共に、軽快なカナヅチ宣言になっている。
ラストシーンでビールの乾杯があり、一口飲んだ後で矢吹が拍手をするが、誰も同調しないのが気の毒。


第十一話「女豹が跳んだ」
放送日: 1978年6月13日

ゲスト:青木英美 宮口二朗 能瀬哲男 他


結城の主演回。礼子役の青木英美さんと沖さんは、「金メダルへのターン!」で共演済みだが、彼女を殺しに来る仲間の一人を演じる能瀬哲男氏は「スコッチよ 静かに眠れ」の犯人役の方が沖雅也ファンには印象が強いだろう。
矢吹と滝本のコンビはいよいよ佳境に入って来ている。何度も矢吹に頭をたたかれている滝本がちょっと気の毒だが、「起こしてね」と車のシートを倒した瞬間に矢吹の「起きろ」で飛び起きるシーンなど、まるで息の合った漫才コンビだ。
アーケードが溶解されてしまったという話に「妖怪変化〜!」というオヤジギャグな矢吹は良いが、結城が何度となく矢吹の顔を見るラストがファンとしてはちょっと気になったりする。


第十二話「殺し屋に墓はない」
放送日: 1978年6月20日

ゲスト:片桐竜次 川崎あかね 佐原健二 中田博久 他


殺し屋コンビの呂九平とモモコの間に潜入する滝本の主演回。
医師に扮した水原と矢吹のコンビが面白い。白衣を着た沖さんは日活で鍛えたやくざ言葉で脅しをかけるが、白衣を着ると、あふれ出る品の良さが邪魔をしてしまっている。このニセ医者二人はかなりふざけているので、あまりハマリすぎないようにしているのかも知れないが、藤竜也氏はヒゲが生えていることもあってかなり怪しい医者に見えるのに、沖さんはまるで新卒のインターンだ。
数年前、片桐氏がレギュラー出演する番組にチョイ役で川崎あかねさんが出ていた。いつしかこんなところに注目してドラマを観るようになってしまったのだが、それを語る相手が身近にいないというのはつまらないものだ。


第十三話「横浜チンピラ・ブギ」
放送日: 1978年6月27日

ゲスト:峰のぼる 国谷扶美子 草薙幸二郎 他


東京キッドブラザースの峰のぼる氏と国谷扶美子さんがゲスト出演する異色作。当時バイオリニストの辻久子さんが購入して話題となった2500万円のストラディバリウスが実名で登場し、最後に辻さんの元に無事戻ることになる。
辻さんの演奏する「ゴリウォークのケークウォーク」が、峰のぼる氏演じる『本牧のゲジ』の軽快な動きに合わせて流れるのが楽しい。この曲はピアノの発表会で弾いたことがあったので、演奏する人が違うとこんなにいい曲だったのかと驚いた。
沖さんの出番は少ないが、船上で滝本とゲジたちが絶体絶命になった時、マストの上から登場し、「た・き・も・と・さ〜ん!」と手を振る姿は、まるで変身したヒーロー。


第十四話「大逆転」
放送日: 1978年7月4日

ゲスト:待田京介 テレサ野田 岡本麗 他


♪遊撃班に夏が来た イェェェイェイ・・というわけで、ここから先は皆さん汗だくの時が多くなる。沖さんの衣装も白が多くなり、とても夏らしい。
ゲストのテレサ野田さんは、沖さんが撮影中の事故で降板した日活映画「八月の濡れた砂」で共演するはずだった女優さん。
キックボクシングを披露したり、「最高ですよね、スコッチ刑事」と自画自賛するジョークが登場するのが楽しい回。沖さんの付き人が女優のタバコに火をつける役で再登場しているが、タバコはよく見ると沖さん愛用のラークな事に注目。


第十五話「黒い影」
放送日: 1978年7月11日

ゲスト:睦五郎 木下哲夫 絵沢萌子 他


第一話で矢吹に殴られた刑事役の八名信夫さんがヤクザになっている。たった三ヶ月の間にここまで堕落するとは、よほどショックだったのだろう。
水原と滝本が足柄署で活躍する回なので沖さんの出番は少ないが、白のスーツがよく似合う。のちのあだ名『ホワイト・ドッグ』はここからか。(ちなみに水原はタイガー、滝本が黒豹、結城はピンク・パンサー。もう猫科がみつからなかったのだろうか。沖さんの好きな動物はチータだが、それはもう使っている有名な人がいたしねえ。


第十六話「暴行魔W」
放送日: 1978年7月18日

ゲスト:大野木克志 麻生淳子 門間勝美 他


ヤブタキコンビが絶好調。木賃宿に潜入した滝本が臭くなって戻って来ると、矢吹がハンカチで払う仕草をしたり、競馬馬の名前がオキノホマレとシバタノチカラだったりする。滝本が「オキノホマレは先行バテバテ」というと、「いや、ばてるってことはないだろう」と矢吹が答えているのが楽しい。追跡のシーンで滝本にワッと驚かされて「このやろ〜」という矢吹の表情や、尾行をまかれた二人が新田に怒られて、「なんだかこれじゃ俺たちマヌケみたいじゃないですか」と憤慨するシーンを観ていると、楽しんでいる沖さんの表情がみてとれて、共演者を越えた友情を感じてしまうのだ。インタビューのたびに「友達はいない」と言い続けた沖さんが、柴田恭兵氏とこんなにいいコンビを組んでくれたことを思うと、お通夜の席で「悔しいです」と言った柴田氏の涙がこちらの涙も誘ったのだった。


第十七話「殺し屋」
放送日: 1978年7月25日

ゲスト:風吹ジュン 岸田森 蟹江敬三 他


水原が殺し屋に扮して潜入する回。本物の殺し屋の恋人だった女に風吹ジュンさんが扮しているが、この二人がとてもいい大人の雰囲気を出し合っているので、沖さんの主演回でなくて良かったと思ってしまった。
岸田森氏蟹江敬三氏のおかしなヤクザが楽しい。と何度も流れる森山良子さんの ♪私をのこして どこへも行かないで〜 という歌声が耳に残る。『ワン・ツー・スリーのゴー!』初登場。


第十八話「レディ・キラー」
放送日: 1978年8月1日

ゲスト:石橋蓮司 志賀勝 田中浩 黒部進 他


結城の主演であり、矢吹の出番が一番少ない回。ゲストの悪役が豪華で、また皆さんいい味を出してくれている。


第十九話「ご不要な亭主始末します」
放送日: 1978年8月8日

ゲスト:丹古母鬼馬二 他前回までのゲスト日活ロマンポルノ女優多数


第7話で気の弱いヤクザを演じていた丹古母鬼馬二氏が、恐ろしい殺し屋として再登場する。ワイヤーを投げて相手の首に巻き付ける殺しかたは、まるで見た目がまるで違う三味線屋の勇次だ。
滝本に「女嫌いじゃなかったんですか」とつっこまれた矢吹が、とうとう「遊撃に入って堕落したんだ」と軟派宣言をする。
前回までに登場したロマンポルノの女優さんたちが夫への不満を一言づつぶちまけた後、静かな遊撃班の部屋に画面が変わる演出が心憎い。ちょっと元気がない男たちが、水原のウクレレにあわせて加山雄三の「湘南ひき潮」をぼそぼそと歌っているのが、女性たちの濃い場面を洗い流すかのようだ。


第二十話「日の丸愚連隊」
放送日: 1978年8月15日

ゲスト:近藤宏 山本昌平 小林昭二 阿藤海 他


久々の矢吹主演作。ヤクザの組織に潜入しながら所轄にメスを入れる。
終戦記念日の放送にはどうかと思うタイトルではあるが、髪が大分伸びてカールが目立って来ているところへ、カジノ・ディーラーの蝶ネクタイと帽子がよく似合う沖さんを堪能出来る。陽に灼けて鼻の頭が赤いのもなかなか可愛い。沖さんは色白なので、陽に灼くと黒くならずに赤くなるのだ。
毎回のことながら悪役の名演が光る。今回もアイシャドーが美しい山本昌平のヤクザの表情、悪徳刑事を演じる小林昭二の凄味、そして謎の故買商と新田のやりとりなどが楽しめる。
ラストに結城から矢吹へご褒美のチューがある。これまでの結城のキャラだったら「ペッ!」と返されそうなところだが、喜んで気を失いかける矢吹という設定が面白いというか、ヤケルというか。


第二十一話「危険なハイウェイ」
放送日: 1978年8月22日

ゲスト:ホーン・ユキ 南原宏治 他


「はぐれ刑事」でラリパッパのお京を演じた当時のセクシー・ダイナマイト、ホーン・ユキさんが水原とヤクザに追われるストーリー。相手役が水さんで良かったと沖さんファンは思わず胸をなでおろすほど、色気ムンムンだ。
水原と対照的に、囮の護送車の中央高速組はパンを食べたり冗談を言い合ったりして楽しそうだ。是非中央高速組に加わりたいと思わせる一作。
最後は岡崎検事(南原宏治)に狙わせるために、矢吹が囮となった結城のガードにまわるのだが、泳げないという設定なのに競泳用水着を持っているのが面白い。


第二十二話「淳子のミステリー・ゾーン」
放送日: 1978年8月29日

ゲスト:大信田礼子 大塚国夫 浜田晃 他


その頃の連続ドラマの夏の定番、怪談もの。矢吹と滝本のヤブタキコンビが絶好調だ。喫茶店での『お化けオットー』、失神した女性を支える矢吹に、滝本の「不純だなあ」のひとこと、そして超常現象を信じる滝本を信じようとする矢吹。あまりに息の合ってきたメンバーたちのニュー・ギャグ『ペッ!』に、新田さんの禁止令が出るのも、お父さんっぽくて何だか嬉しくなるのだ。


第二十三話「殺人刑事ウォンテッド」
放送日: 1978年9月5日

ゲスト:菅貫太郎 江角英明 岡本麗 他


矢吹の出番は少ないが、その分シャツのボタン全開サービスがある。それも駅の商店街でのシーンだから、かなりの人が楽しんだことであろう。岡本麗さんがセクシー系で出ているのが面白い。彼女は第14話にも登場している。


第二十四話「爆殺魔」
放送日: 1978年9月12日

ゲスト:清水紘治 蟹江敬三 他


フィットネス・ジムで体を鍛えながら結城の報告を聞く男たち三人のシーンもいいが、圧巻は爆発7分前の爆弾を安全な場所まで車で運ぶヤブタキコンビだ。「俺たちは天使だ!」のオープニングを考えた人は、このシーンを観て思いついたのではないかと思うほど危機感がない滝本の表情がいい。
あと2回で終りということもあって、メンバーたちがさりげなく肩を抱き合って歩くラストは微笑ましいが、その直前に滝本の肩を抱く矢吹はちょっと不自然で。『殿下の頭をなぜるスコッチ』を思い出させる。


第二十五話「横浜コネクション」
放送日: 1978年9月19日

ゲスト:山本麟一 片桐夕子 片桐竜次 他


何もシャツのボタンを全部外さなくても良いではないかと思うが、撮影の目撃者によれば沖さんはリハーサルではちゃんとボタンを留めていて、本番だけ外していたそうだから、確信犯だったようだ。
今回もヤブタキコンビは絶好調。佐伯刑事(片桐竜次)のアパートを捜索に行った二人は、古く洋式のアパートで「行くぞアンドレ」「はいなオスカル」と 呼び合う。矢吹の「パリーを思い出すなあ」という台詞は、沖さんがパリ好きであることからのアドリブか。TPOを「躍んでるポリスは俺たちだ」という訳しているが、全くその通りだ。
後半はシャツ全開どころではなく、汗にまみれた上半身裸という目の保養シーンもあるし、結城と肩を抱き合って港を歩く親密な二人というラストも目が離せない。


第二十六話「サヨナラは銃弾で・・・」
放送日: 1978年9月26日

ゲスト:阿部徹 草薙幸二郎 松田優作 他


最終回なのでサービスシーンが盛りだくさんだ。「止まらんと撃つぞ!」といいながらもう撃っている矢吹は、三つ数えるといって二つ目で撃つスコッチより悪質だし、悪漢を海へ投げ込んで「三四郎みたい」という滝本の台詞は10月からの新番組「姿三四郎」の宣伝を兼ねたジョークだ。
最後はメンバーそれぞれがお気に入りのシーンと何故か英語で別れを告げる。サブタイトルは『サヨナラは英語で』の方が良かったんじゃないか?
松田優作が映画の撮影をしていて、婦人警官(結城)と待ち合わせているのだというシーンは村川監督への友情出演らしい。結城の最後の英語は「Never give up!」
ディスコ(死語?)で得意のダンスを披露するダーツ・・・いや、滝本。女性に囲まれて「See you again !」
さて、矢吹。銃の練習をしていると、的の方から婦人警官が沢山花束を持って登場。撃っているところだったら危なかった。矢吹の最後の台詞はシンプルかつ嬉しい「I love you !」
水さんは中島ゆたかを引き連れて「I shall return !」
最後に満を持して登場した新田さんが何を言うのか楽しみにしていたが、短い笑顔だけで終わってしまった。せめて「Good bye」ぐらい言ってもらいたかったものだが、新田さんらしい最後だった。

前編を通じて楽しいのは、刑事もの、それもアクションものでありながら、どこか余裕のある遊撃班の言動だ。命の危険が迫っている時にジョークを言い合えるような仲間が欲しくなるし、そんな心のゆとりを持ちたいと思わせる刑事たちが、本放送から25年近く経った今でも愛おしく感じられるのは、せちがらい世の中であくせく生きている自分を変えたいという願望なのかも知れない。


その2<<1978年9月発行の後援会報より>>

− 後援会の皆さんへ −

空が高く澄みはじめて、雲の息づかいが聞こえるような今日この頃です。事務所のある青山通りを行き交う自動車(くるま)の窓硝子が素早い光を投げて流れます。皆さんの陽焼けした肌のあたりに、そこはかとない風の気配が秋を匂わせてはいませんか。
しばらくご無沙汰致しましたが、皆さんその後もお変りなくお過しのことと思います。
それにしても今年の夏の暑さは格別でしたね。私は夏に入った六月から、あの連日焼けるような真夏日のなかを、現在、日本テレビとテレビ朝日で放映中の『大追跡』と『必殺からくり人』の撮影のため東京都京都をトンボ返りするハードスケジュールを縫って、今上映中の東宝映画『火の鳥』と十二月封切予定の、これも東宝映画『ブルークリスマス』にも出演し、加えて京都以西を主とした呉服関係のサイン会、山陽道、四国、九州、沖縄まで全く文字通り東奔西走のあわただしい夏を過しました。しかし、四季のうちで夏が一番好きな私は健康状態も上々で、やがてクランクインする秋の日本テレビ開局25周年記念番組である、『姿三四郎』の桧垣源之助役の準備と役作り懸命です。この桧垣源之助という役は、もう皆さんもご承知のように『姿三四郎』のなかではいつも仇役のように画かれておりましたが、今度私は、今までも桧垣とは全く違った、それは即ち、桧垣には桧垣の陣bん姓に対する堅い信念と人生観があったということをフィルムの一齣一齣に自分自身をぶっつけて、現在の若者にアッピールする、いわば現代の桧垣源之助を演じてみたいと思っておりますのでどうかご期待下さい。又十一月、十二月には東宝レコードからシングル盤と、LPが出ます。このレコーディングも九月中に決定していますので、あれやこれや自分でも大変だなと思いますが、次々良い仕事に恵まれほんとに幸福だと思っています。これもひとえに日頃の皆さんのご支援の賜ものです。常々、暇が出来たら一度“ファンの集い”を催して皆さんとお話をしたいと思ってはおりますが、何分現在の状態ではそれも果せずほんとに申し訳なく、せめてこの会報のお便りで皆さんと心のつながりを大切にしてゆきたいと念じております。 では、皆さんもお元気で、毎日のお仕事や、学業にお励み下さい。そして私沖雅也にいつまでも変らぬご支援をお願い申し上げます。

一九七八・九月
沖 雅也
(原文のまま)

読めばわかるように、ものすごいスケジュールだ。
テレビの主役級のレギュラーを二つ掛け持ちするだけでも大変なことなのに、映画が2本に着物のお見立て会、そして新番組の役作りにレコーディングだ。 映画は2本ともほんの数シーンしか出ていないが、きっと日頃の関係で断れない仕事だったのだろう。レコーディングもしかり。着物のお見立て会は事務所運営のためのギャラ稼ぎだろうか。

それにしても、沖さんの文章は独特の文体を感じる。やけに堅苦しかったり極端に句読点が少なかったり、不必要に漢字を使ったり。これは遺書にも見られる特徴なので、多分事務所がセットアップしたものではなく沖さん自身が考えた文章なのだろう。最初の数行は練られた文章で、なかなか詩人な沖さんを感じさせる。
同じ会報に掲載された沖さんの詩も載せておく。

− 風のことば −

ああ 秋です

空が遠くなり
風が冷めた砂に
かげを落としてゆきます。

貝は窓を閉して
風の言葉をきいています。

一九七八年晩夏
ロケ先の海辺にて


これも女の子が書くような叙情的な詩だ。窓を閉ざしていた貝は、一体風のどんな言葉をきいていたのだろう。

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