武漢兵站から読み取れること


はじめに



山田清吉著『武漢兵站』は以前のHPには、『従軍慰安婦資料集』に収めていました。 しかし孫引きした時、引用者の説明文もそのまま書き写したため、純粋に資料集に収めるのもどうかと思いまして、武漢兵站だけ独立することにしました。

女性が慰安所に入所した時



1 係りの下士官、慰安婦の写真・戸籍謄本 誓約書、親の承諾書、市町村長の身分証明書を調べる。

2 所定の身上調書用紙に、前歴、父兄の住所・職業・家族構成、前借金の金額を書き入れる。これには、後で、営業停止や病気入院などの事項を追加していき、「酒癖あり」などといった本人の特徴もわかり次第。追加していく。

3 身上調書の写しを憲兵隊にまわす。(吉見著「従軍慰安婦」)
こうやって軍が女性の身元を詳しくチェックするので、女性が違法に徴集されたかどうか、その気になれば、わかるはずです。しかし現に違法徴集されているのを見れば、軍が違法行為を黙認していたのが伺えます。更に、軍が慰安所の管理をしているのをみれば、慰安所が軍の施設であり、軍の法的ないし道義的な責任が問われることが理解できると思います。

慰安所が軍の施設である



軍の命令で嫌々来た業者と一発千金を狙って来た業者の二通りがあります。 しかし「これ(作戦軍に従って入城した業者)を全て積慶里(慰安所)に集め、兵站施設として漢口兵站の監督下に置くことにした」と書いてあります。 つまり民間の業者も軍の命令で来た業者も一緒にして、慰安所を作りました。 つまり。慰安所は軍の施設であったのです。著者である山田清吉さんも92年1月の朝日新聞で「当時はこの手の資料はいろいろあったが、今はほとんど残っていない。珍しいものだと思う。私は漢口で慰安所の監督をしていた。軍が慰安所を統制、管理していたのは誰でも知っていること。反日感情が起きるのを防ぐことも目的の一つだった」と述べています。

こうした事実を見ても、慰安所が軍の施設であったことがよく理解できると思います。

未成年女子の徴用



内地から来た妓はだいたい娼婦、芸妓、女給などの経歴がある20から27、8の妓が多かったのに比べて、半島から来たものは前歴もなく、年齢も18,9の若い妓が多かった。(吉見義明・川田文子編『「従軍慰安婦」をめぐるる30の嘘』

朝鮮半島出身の慰安婦は未成年が多いことでも違法行為を黙認した事実がよくわかると思います。

名実ともに前借金での労働の強要



戦前には、法律的には建前上、前借金年季奉公は禁止されてい ましたが、業者が借金契約と娼妓稼業契約を無理やり分けてしまい。 前借金で娼妓稼業契約を強要するのは違法であるけれど、借金は借金だか返せという判決が出てしまいました。このような判決が出たために、 女性は娼婦となり、その稼いだ分から借金を返済しなければならなくなりました。当時、女性の職というのは極めて限られており、業者の『説得』によって娼妓とならざる得なくなりました。しかし建前上、女性は借金を返せれば、別の労働でも構わないのです。だから、娼婦となるのが嫌なので、別の就職口から借金を返済しますとか断ることができました。しかし『武漢兵站』を読むと、軍はこうした法的な建前をかなぐり捨てて、女性に対して前借金娼妓稼業を強いていることが下の記述でわかると思います。

P95引用。 「翌朝発って行く時、今度は生きて帰れない。前線ではお金を使うこともないから、君にこのお金を全部あげる、前借を返すのに使って欲しい、と若い将校は言い」

立ち去っていきました。

引用再開

その金は儲備券でたしか2千円ぐらいだった。しかしこうした、外から入ったまとまった金で前借を返すことは許されていない。前借金は全て妓が自分の体で働いて返さなければならないのである。三春は、 「このお金は兵站に寄付しますから、何かに使ってください」という。 「その将校さんが帰ってくるまで、主人にでも預かってもらったらどうだ」
とすすめてみたが、三春は自説を曲げず、もしもあの将校さんもう一度来てくれたら、自分の身銭を切っても遊ばせてあげる、と真顔で言っていた。
 軍の規定では、恤兵金に使途を指定することは許されない。また兵站で寄付を受けつけても、軍へそのまま納入することになる。
「じゃあこの金で『つわもの文庫』(兵站の公開図書館)へ寄付した方がいい。お金はあずかっておいて、適当な本があったら買って、寄贈者にお前の名前を書いておくことにしよう」とわけを話して金を私が預かることにした。

引用終了

つまり、合法的に得たお金で借金を返済をすることができず、体で借金を返済しなければならなかったのです。

こうしたような最悪な労働条件だから、日本人慰安婦でさえ、「こんな辛いところに、1日だって辛抱できない」とか「もう積慶里には死んでも帰らない」と叫んだことを山田氏は書き留めています。

慰安部隊とは



『一言で言えば、慰安部隊とは戦場にある兵士達のセックス処理のために送り込まれた女性たちの一団、売春部隊である。これは売春業者を軍が直接監理した組織で、おそらく外国の軍隊には見られない日本独自の軍隊構造であったろう。もちろんそれが軍の方針であったとしても、売春であることに変わりはなく、女性の人権軽視であることはいうまでもない。慰安係長を命ぜられた私は、戦争の中の必要悪と言う兵站兵站司令官の考えに従うほかなく、その体制の中で、よりよい環境を作り出すこと、慰安婦達が一日も早く自由になることを願い、そこにいささかの救いを求めるしかなかった。しかし聖戦の名に隠れて、悪辣な楼主の搾取に目をつぶり、人身売買に手を貸した共犯者ではないかと言われるのならば、筆者は甘んじてその謗りを受けなければならない』