引用者の見解


明治時代にできた国内法を厳粛に解釈するならば、本来ならば、身売りは禁止されていますが、法の抜け穴をつく業者が多く、娼妓稼業契約と前借金契約の二つに無理やり分けてしまい。借金は借金だから返せという詭弁がまかり通るようになりました。 この章と身売りである人身売買契約に対して少ないながらも違法と判決を下した少ない判例を別の章で紹介します。

明治5年太政官布告第295号



1 人身を売買致し、終身又は年季を限り、其主人の存意に任せ虐待致し候は、人倫に背き有るまじき事に付き、古来制禁の処、従来年季奉公等、種々の名目を以て奉公住致させ、其実売買同様の所業に至り、以て外の事に付、自今厳禁たるべき事

1 農工商の諸業習熟の為め、弟子奉公致させ候儀は勝手に候えども、年限満7年に過ぐべからざる事。但し双方和談を以て、更に期を延るは勝手たるべき事

1 平常の奉公人は1ヵ年宛たるべし、尤奉公取続け候は証文相改むべき事。

1 娼妓・芸妓等年季奉公人、一切解放致すべし、右に付ての貸借訴訟、総じて取り上げず候事。

司法省省令第22号(通称「牛馬きりほどき令」)



1 人身を売買するのは古来の制禁の盧年季奉公など種々の名目をもって其の実売買同様の所業に至るに付娼妓芸妓等雇入の資本金はぞう金と看做す故に右より苦情を唱える者は取締の上その金額の全額を可取楊事。

1 同上の娼妓芸妓は人心の権利を失う者にて牛馬に異ならす人より牛馬に物の返還を求むる理なし故に従来同上の娼妓芸妓へ借す所の金銀並びに売掛金てい金等は一切債るへからさる事 但し本月2日以来の分はその限りにあらず。

1 人の子女を金談上より養女の名目に為し娼妓芸妓の所業をなさしむる者は其実際上則ち人身売買に付従前前後今後可及厳重の所置事。

明治6年の改定律令略売人条例



第145条 凡人を略売して雇人と為す者は懲役2年半、其賊辱虐使を受けしむる者は為娼妓律に依る

第146条 凡妻を略売して為す者は凡人略売法に依る、和売をする者は懲役70日

第147条 凡子孫を略売して娼妓と為す者は懲役50日、妹姪及び外孫は各2等を加ふ

第148条 凡人を略して自己の妻妾雇人と為す者は略売と罪同じ。 第149条 凡人の妻を略して他人の妻妾と為し、及び自己の妻妾と為す者は懲役5年。人の妾を略して妻妾と為す者は懲役3年、和誘する者は各1等を減じ、誘せらるる婦女は各3等を減ず。

第150条 凡人を略して外国人に売る者は成否を論ぜず皆懲役10年、因て人を傷する者は皆懲役終身、殺す者は皆斬、其和誘する者は1等を減じ、誘せらるる人は3等を減ず、若し子孫を略して外国人に売る者は懲役1年、和売する者は1等を減ず、和略未だ成らざる者は和略の罪に又1等を減ず、売らるる卑幼は和すと雖も坐せず、若し外国人を買ふ者は、前に照らして各1等を減ず。

娼妓取締規則の主な内容



第3条 娼妓名簿の登録は娼妓たらんとするもの自ら警察官署に出頭し左の事項を具したる書面にて具申すべし

(1)娼妓たらんとする理由

(2)生年月日

(3)同一戸籍内に在る最近尊属親なきときは戸主の承諾を得たること承諾を与ふべき者なきときは其の事実

(4)〜(9)略

第5条 娼妓名簿削除の申請は書面又は口頭を持ってすべし

・・・・・略・・・・・

第7条 娼妓は庁府県令を以て指定したる地域外に住居することを得ず。・・・

略・・・

第9条 娼妓は庁府県令の規定に従い健康診断を受くべし

第10条 警察官署の指定したる医師又は病院に於いて疾病に罹り稼業に堪へざるもの、又は伝染病疾患ある者と診断したる娼妓は、治療の上健康診断を受くるにあらざれば稼業に就くことを得ず。

第12条 何人も雖も娼妓の通信、面接、文書の閲読、物件の所持購買其の他の自由を妨害することを得ず

・・・・略・・・・

注:当時、建前上、人身売買は違法であった。だから内務省の通牒では「そして大審院の判決、それを受けた内務省の「支那渡航婦女の取扱に関する件」では五、醜業を目的とする婦女の渡航に際し身分証明書を発給するときは稼業契約其の他各般の事項を調査し婦女売買又は略取誘拐等の事実なき様特に留意すること 」と通牒を出しています。藤岡たちの論理は通用しません。