タイの耕地精糖                  季刊 糖業資報 no.117
                                 精糖工業会
 

   あとがき

 タイで耕地精糖の生産が始められて丁度20年となった。91/92年期には25の工場で精製糖設備が稼動するに到っている。精製糖生産に対する技術援助の要請に応えて、現地に出張した最初は、71/72期であった。その頃のタイの分蜜糖の生産高は約50万屯で、耕地白糖と原糖が大体等量であった。当時原糖の生産割合が年々増加していたが、この年を境として、原糖生産が白糖量を上廻る変換年となっている。その後も産糖量は増加を続け、現在では500万屯となるに到っている。

 経済事情も大幅に変化した。頭初工場よりの迎えの車は雨洩りのするジープで、車の内で傘をさした事を覚えている。工場には電話はなく、バンコックの本社とは無線で連絡されていた。現在では、工場の技術者の自宅にも電話がつき、日本より直接掛けられる様になっている。ガタガタ道も大幅に良くなり、町を走る車の数が大幅に増えたのみでなく美しい車となった。工場の技術者も自家用を持っている。工場従業員の古い自転車は日本製のオートバイに代った。

 74/75年の国際砂糖相場の急騰は、甘蔗代金の上昇、次いで分糖法の実施と輸出課徴金の設定及び金額の上昇、更に今(92/93)期よりは、C.C.S.買の実施と、製糖工場への甘い汁は次々と塞されて来ている。分糖法及び課徴金の実施時には、最大の製糖グループのタイルムランは、製糖業に見切をつけたか、その工場の多くを手離した。それでも産糖量は増え続けている。これは老朽工場の地方移転等による大型化と近代化で、薄利多売となったとは言え、絶対値では相当な利益があるものと推定される。砂糖の増産に応えるだけの原料甘蔗増産の余地(未開地等の農地及び労力等)があったと言うことでもある。

 工場数は現在の46のままと考えられるが、大型化(主として更新時)で砂糖の増産は、まだ続くものと推定される。

 大型工場の未開地域への貢献は極めて大きい。1つの製糖工場が出来るとその町は着実に発展する。能力1万T/Dの工場には、100万屯以上の甘蕉が売却出来、農家は分糖法で、工場売上の70%の収入が得られる。従業員は正規が500人に臨時300人の外、製糖中は刈取人夫として1万人の人夫に仕事が与えられる。又甘蔗は毎日500台の20屯トラックで搬入される。このトラック並びに運転手及び助手が必要となる。これらの人々の収入は、近くの町へと還流、町が年々発展する。

 当レポートは、頭初から多くの工場に技術協力を行い、タイのRefineryについては、タイを含めて、誰よりも資料を持ち事情に詳しい筈と言う責任からも、書いておく可きと考え記述した。糖業全般に範囲が広がり、上手にまとめたとは思っていないが、その責を果し得たものと考えている。

 日本糖業の不景気に縮小均衡で対応する会社内にあって、業務を拡げるための海外への技術協力であった。私にとってその主力となったのが、タイの耕地精糖であった。出来ない筈はないと引受け、ギブアップは許されないと頑張り、会社の合理化による退職後も先方の要請に応じて長年に亘り続けた。斯くて幸にも、CARE方式が確立し、多くの工場に普及した。これは度重なる出張を通じての現地事事情への適合の努力が実ったものであり、文字通り日タイの技術協力の実をあげる結果となったと考えている。この方式はインドネシアや中南米辺りの亜硫酸法白糖工場にも極めて有効な製糖法であると信ずるが、私にはそれを実施する時間も体力もないのが残念である。

 数年前までは毎年現地工場に滞在(製糖期間)して、技術協力を行った。現地の多くの工場に親しい知人を持つことが出来、現在に到っている。頭初タイの大学を卒業し製糖工場に就職した若い技術者に、製糖法や生産管理の手ほどきをしたが、今では彼等は、工場長とか独立して会社を経営したりして、多忙な毎日を送っている。現地滞在中は色々な人々にお世話になった。お互必ずしも充分でない英語で話し合ったが、異国の人の人生感にはその国の歴史の重みのあるを知り、又貧しくとも笑顔で接してくれる地方の人々をみて、私の価値観は大きく変化した。

 現地の皆様の一層の活躍、工場の技術水準の一段の向上並びにタイ糖業の健全なる全天候型への発展を心より祈ります。

 最後に当レポートを書くに当り,最近の事情を知らせて頂いた,旧友Mr.SawarajとMr.Tsaiに厚く御礼申上げます。          
              筆者は元大日本製糖(株)技術部主査、公害防止管理者(水質一級)

   目次  タイ国の糖業
 
 

                                                  Counter