ゼネコン建設業の恐るべき実態

ホームへ 目次の分離 更新情報 最終更新:2013/12/26


  1. 下層無 耐震偽装問題と耐震相談
    元ゼネコン社員がマスコミや国会議員などにより歪められた耐震偽装の実態を検証(他に耐震相談も)
  2. 下層無 東京スカイツリーの無意味な高さ
    技術、年収トップクラスのスーパーゼネコン大林組施工の東京スカイツリーに関する論評
  3. 開閉 ゼネコンとは(ゼネコン解説)
    ゼネコンとは何か、日本のゼネコンの実力などの詳しい解説。
    1. 開閉 ゼネコンの国際比較
      1. 下層無 特殊な形態
      2. 下層無 日本のゼネコンの実力
      3. 下層無 ゼネコンの内弁慶的体質
      4. 下層無 ゼネコンの耐震技術
    2. 開閉 ゼネコンの紹介
      1. 下層無 ゼネコン社員の年収
      2. 下層無 ゼネコンランキング
      3. 下層無 ゼネコンの株価
      4. 開閉 スーパーゼネコン(大手ゼネコン5社)
        大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店など大手ゼネコン(スーパーゼネコン)
        1. 下層無 スーパーゼネコン(大手ゼネコン)の特徴
        2. 下層無 大林組
        3. 下層無 鹿島建設
        4. 下層無 大成建設
        5. 下層無 清水建設
        6. 下層無 竹中工務店
      5. 開閉 準大手ゼネコン
  4. 開閉 建設業界就転職の心得
    ゼネコンや設計事務所など建設関連の就職・転職の心得。
    1. 開閉 職種
      1. 下層無 ゼネコンの現場監督
      2. 下層無 設計業務
      3. 下層無 住宅産業
    2. 開閉 会社の種類や企業の規模  
      1. 下層無 ゼネコンの規模(スーパーゼネコンとそれ以下)
      2. 下層無 ゼネコンの特色
      3. 下層無 設計事務所
  5. 開閉 欠陥マンション対策
    深刻な社会問題である欠陥マンション問題。購入者や住民はどうすべきか。
  6. 開閉 ゼネコンは三社で十分だ
    日本にはゼネコンが多過ぎる。三社で十分だ
  7. 開閉 鴻池組の実態
    大林組・竹中工務店・錢高組・奥村組と並ぶ在阪ゼネコン鴻池組の元社員による経験談と論評。
  8. 開閉 青函トンネル水没計画
    無用の長物の青函トンネルは今すぐ水没させるべきだ。
  9. 開閉 コンクリートの崩壊
    日本各地でコンクリートの崩壊が始まろうとしている。
  10. 開閉 なぜいけないのか
    公共工事における談合や官僚の天下りなどの不正が建設業界では多いとされています。これらの行為がなぜ悪いか分かり易く説明しました。
    1. 下層無 談合
    2. 下層無 天下り
  11. 開閉 ゼネコン関連犯罪
    ゼネコンや社員などによる恐るべき犯罪についてまとめてみた。
    1. 下層無 羽田滑走路の砂利不正転用(鹿島建設)
    2. 下層無 名古屋市下水道談合(大林組・鴻池組)

姉歯単独犯行説(耐震偽装問題の真実)

 上記タイトルをクリックすると当サイト内の「耐震偽装問題の真実」のページに飛びます。

東京スカイツリーの無意味な高さ

 上記タイトルをクリックすると当サイト内の「自然科学と技術」のページの「東京スカイツリーの無意味な高さ」の項に飛びます。

ゼネコンとは(ゼネコン解説)

ゼネコンの国際比較

特殊な形態

 ゼネコンの語源である英語のGeneral Contractor(ゼネラルコントラクター)は総合請負者を指す。
 日本でゼネコンとは一般に総合建設業者を指すが英語のGeneral Contractorは建設業に特定されない。
 日本を代表する大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店というゼネコン大手5社はいずれも総合建設業者だが、欧米ではむしろ大手建設業に少ない形態で、あったとしても比較的小規模な会社しかないそうだ。
 従って日本におけるゼネコンとは和製英語と言う事もできる。
 欧米だけでなく中国でも日本のゼネコンの様な業者は存在せず、設計と施工が明確に分離されているそうだ。

 主として設計部門と施工部門という大きな柱を抱えた日本のゼネコンが良くも悪くも外国の建設業者との大きな差を生み出している。
 当項目ではゼネコンについて詳細に解説する。

日本のゼネコンの実力

 日本のゼネコンの国際的実力がよく話題になるが、答えは簡単ではない。
 特殊な形態で説明したが、日本のゼネコンは設計事務所と建設施工会社を足した様な組織だ。
 異なる概念の比較になるので単に「日米どちらが優秀か」問われても答えられない。
 設計部門では当然ながら設計専門の大手設計会社に劣る。一般にこういう国際比較は施工能力をイメージしたものだろう。

 建設業はとっくに先端産業でなく施工能力は国際的に大差ない。コンクリート建造物は紀元前から、鉄筋コンクリート技術は百年以上前から存在する。特に建築に関しては近年さほど進歩がなく品質も戦前と大差ない。
 近年、中東や東アジアなどアジア各国で建物の高さ世界一を競っているが、日米仏辺りの技術なら高さ千m位の建築物は問題なく建設できるし高さ2千m級建造物の建設も恐らく可能だ。
 高さ百m程度の建物が建設できるなら後はタワークレーンの支柱を継ぎ足して高さを上げていけばよいだけなので理論的には千mでも2千mでも建設可能という事になる。但し極端に高くても空き室や余分な維持補修費が発生するだけだ。

 という訳で国家の威信をかけて高さを競うのならともかく実用的な範囲内の建設技術は大差ない。
 差があるとすれば工期やコストの違い位だ。

ゼネコンの内弁慶的体質

 前原誠司国土交通相は欧米の大手建設会社の海外受注比率が5割を超えているのに対して日本のゼネコンは海外受注が2割にも満たない点を強調し「あまりにも内弁慶だ」と評した。
 国内公共事業を縮小せざるを得ない以上、大手ゼネコンは海外受注を増やせという意味だが、ゼネコンの海外事業は芳しくない。大手ゼネコンは軒並み海外事業で大損失を被って大成建設の様に倒産が噂されるスーパーゼネコンまで出る有様だ。

 鹿島建設、大成建設、西松建設、ハザマ、伊藤忠商事のJV(共同企業体)が2006年9月に受注契約を結んだ「アルジェリア東西高速道路」は1200kmの高速道路建設計画だったが、工事は難航した。
 2010年1月の完成予定が、2009年12月の時点で工事進捗率が約60%という惨憺たる有様でスーパーゼネコンの大成建設に至っては倒産まで噂されるほどだ(但し、大成建設 倒産説は噂に過ぎない)。

 大手ゼネコン大林組は2010年3月期の連結営業損益が660億円の赤字に転落する見通しだと発表した(予想では205億円の黒字)。アラブ首長国連邦ドバイの無人鉄道システム「ドバイ・メトロ」工事で想定の約3倍に費用が膨らんだ結果だ。

 竹中工務店の2010年1〜6月期連結決算では海外事業の不振が目立ち、特に欧州が振るわず海外売上高は367億円だった

 スーパーゼネコン(鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店)は正に内弁慶と呼ばれるにふさわしい様相を呈している。既に述べたが、とっくに先端産業ではなくなった建設業は高い技術力と言っても差は小さい。
 例えば言葉の壁をはじめとする文化の差を解消するには他の製造業ほど容易ではない。日本の様に仕事が終われば現場監督と作業員が酒を飲んで心を通わすという単純な発想では成功しない。海外では契約が絶対なので国内の公共事業と違い甘えの構造が通用しない。

ゼネコンの耐震技術

 日本のゼネコンの実力ゼネコンの内弁慶的体質の延長的な話だが、ここでは日本のゼネコンが誇る免震技術や制震技術を解説する。
「耐震・制震・免震」技術について当サイト内他ページ耐震強度偽装問題(姉歯事件)と耐震相談耐震・制震・免震構造の違いに具体的説明があるので個々の違いを知りたい方はそちらをご覧頂きたい。

 大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店のスーパーゼネコンは独自の耐震技術を開発したが、現時点では性能に関する明確な検証はなされていない。
 建設業は経験産業であり大災害の度に現場検証し学者など専門家により指針が変更されてきた。
 ゼネコンが耐震関連技術を導入した建物が大地震に遭遇した例は阪神大震災くらいなので、ゼネコンの説明が必ずしも嘘という訳ではないが、耐震性能が確実とは断言できない。

 仮に日本のゼネコンの耐震技術が確かだとして国際的競争力を持ち得るか考える。
 日本の制震技術は地震国という日本の特殊な事情から生まれたものだから、海外需要に大して期待出来ないと思う。
 地震が殆どない国では特に必要ない。もちろん地震の少ない地域でも大地震の可能性はあるが、大地震に遭遇した場合でも制震技術がなければ必ず建物が大被害を受ける訳ではない。五重塔が地震に強い事は有名だが、古代技術でも地震に耐え得るのだ。
 大都市圏の地震地帯はトルコか米国西海岸辺りに限定されるが、優れた建築技術を有する米国市場に日本の建設会社が食い込むのは難しい。
 また、制震技術がある事自体はむろんマイナスではないが、米国市場に参入する場合に米国の建設会社は高層建築の建設を得意としているので比較的建物が低い日本の技術では高層建築の技術でやはり米国と比べて不利だ。

 結局、日本のゼネコンが誇る制震技術も外国企業が日本の市場に参入する際には非関税障壁になり得るが、国外では必ずしも有利にならない。
 これもまた内弁慶的技術となる可能性が高い。

ゼネコンの紹介

ゼネコン社員の年収

 ゼネコン社員の年収が気になるが、インターネットで見た限りでは他の業界よりかなり高い。
 特に大手ゼネコン社員の年収は驚くほど高い。年により変動もあるが、ゼネコン大手五社の一つ鹿島建設は年収が9百万円台半ばで他のスーパーゼネコン、大林組、清水建設、竹中工務店、大成建設の年収も数十万円程度の差はあるが、それに近い年収らしい。
 バブルの頃の話なので必ずしも参考にならないかもしれないが、私は大学卒業5年目に鹿島建設に就職した同級生(当時26歳前後)の年収が8百万円という話を聞いた。大手ゼネコン特に鹿島建設の高い年収が印象に残った。

 ゼネコン社員の年収が高い理由について諸説があるが、その一つに公共事業による多大な公的資金投入がある。
 これは的外れではなくゼネコン全体として考えると、大きな要因である事は間違いない。
 しかし、大手ゼネコン(鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店など)については必ずしも当たっていない。公共事業は土木工事主体だが、これらスーパーゼネコンは土木工事の比率がせいぜい2割程度に過ぎない(竹中工務店は土木工事部門が無い)。

 トヨタや日産を遥かに上回る年収だからと言って必ずしもゼネコン社員が得とは言えない。
 年収9百万円台は鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店などスーパーゼネコンだけだ。
 ゼネコン社員、特に現場監督は残業時間が非常に長い。夜の十時まで働いて土日も出勤する人は珍しくない。小さな現場では三ヶ月休みがなかったという話も聞く。
 ある大手ゼネコン社員の平均年齢は「45歳」だったりして高い場合も少なくない。それも平均年俸を上げる要因と思われる。
 また、ゼネコンの主力である現場監督の仕事は「潰しが利かない」とよく言われるように他の業界に転職するのが難しい。
 埃が舞い喫煙者も多く不健康で過酷な環境で働く現場員が多い。

 ゼネコン社員の年収が不当に高いと言うより、特に現場監督は「その位貰わないと割に合わない」のだ。

ゼネコンランキング

ゼネコンランキング
(2010年3月期売上予想高)
会社名 連結/百万円
1 鹿島建設 1,650,000
2 清水建設 1,600,000
3 大林組 1,510,000
4 大成建設 1,490,000
5 竹中工務店 1,297,836
6 戸田建設 471,000
7 長谷工 470,000
8 西松建設 446,000
9 NIPPO 400,000
10 三井住友建設 350,000
11 前田建設工業 345,000
12 五洋建設 332,000
13 フジタ 284,000
14 熊谷組 269,000
15 東急建設 241,000
 左の表はJC-NETのゼネコンランキング 売上高予想ランキングから引用したゼネコンランキングだ。

 ご覧の通りゼネコンランキング上位五社(鹿島建設、清水建設、大林組、大成建設、竹中工務店)とそれ以下のゼネコンの差が顕著だ。
 この傾向は過去数十年に渡りほぼ一貫している(バブルの一時期、熊谷組が売上高でスーパーゼネコンに肉薄した)。
 大手ゼネコン5社間では戦後の業績に顕著な差がなく順位も固定的ではなかった。

 スーパーゼネコン5社のゼネコンランキングが固定的(大手ゼネコン5社間では変動はある)だが、6位以下のゼネコンは単にスーパーゼネコンとの差だけでなく変動も大きい。
 かつてスーパーゼネコンに肉薄した熊谷組はゼネコンランキング14位に落ちたし、日本屈指のゼネコンだった鴻池組はゼネコンランキング15位にすら入っていない。
 かつての準大手ゼネコンの中には今では中堅ですらないゼネコンもある。

 この様に上位5社のスーパーゼネコンと6位以下のゼネコンでは天と地ほどの差があり6位以下はいつ倒産してもおかしくないゼネコンが多い。
 ゼネコンランキング5位の竹中工務店と6位の戸田建設の間で3倍近い格差がある事がスーパーゼネコンとそれ以下のゼネコンの違いを象徴しているが、それが後に述べる年収などの大きな格差に繋がっている。

ゼネコンの株価

 企業の経営状況を知る有力な指標が株価だ。
 まずゼネコンを株式公開組と株式非公開組に分ける。大手ゼネコンや準大手・中堅でもスーパーゼネコンの竹中工務店や中堅ゼネコンの鴻池組など株式非公開のゼネコンは少なくない。
 当然、ゼネコンの株価を見る場合は株式公開組を意識する事になるが、十年以上前からゼネコン倒産が危惧されているにも関わらずゼネコンの株価は意外に安定的だ。
 強制捜査の対象となったスーパーゼネコンの株価に大した変動がなかったり、経営難のゼネコンでも株価が激しく低下しない事も多い。

 理由は様々だが、一つは株式非公開組はもちろん株式を公開しているゼネコンでも一般市民が保有する株式の比率は恐らくあまり高くないせいだ。
 政治家にせよ企業にせよゼネコンの株式を保有している人や組織には恐らく身内が多いだろう。(株式持ち合いはゼネコンに限らず日本企業全般に広く見られる)

 また、ゼネコンが危機に陥ると「ゼネコンの倒産が社会に与える影響は非常に大きいから潰せない」として、ある程度規模の大きいゼネコンは銀行や行政が積極的に支援してきたので「経営は不健全」とされながらも倒産の可能性は比較的安全という市場の見方があるかもしれない。
(とは言え大成建設級のゼネコンが倒産するなら下請けに対する影響は甚大だろうが、準大手ゼネコン以下の倒産なら影響はさほど大きくないという意見もある)
 事実、スーパーゼネコンの鹿島建設、大林組、清水建設、竹中工務店、大成建設で倒産した会社はないし準大手や中堅も殆ど倒産していない。(大成建設は倒産の噂があるが噂に過ぎない)

 ゼネコンは経営の健全性や透明性ではお世辞にも高いとは言えないが、倒産の危険性は皮肉な事に低いと見る事もできる。
 但し、あくまで今までそうだったという事で将来の保証は出来ない。

スーパーゼネコン(大手ゼネコン5社)

スーパーゼネコン(大手ゼネコン)の特徴

 ゼネコンランキングの項でも述べたが、年収、技術、経営に関しては鹿島建設、大成建設、大林組、清水建設、竹中工務店の大手ゼネコン5社はスーパーゼネコンとも呼ばれ6位以下との差は大きいが、5社間では技術や経営や年収に大差ない。
 いつからなのか詳しく知らないが、少なくとも数十年前からそういう傾向はあった。(戦前は鴻池組が上位の時代もあった)
 ここではゼネコンランキング上位5社(スーパーゼネコン)の特徴を記す。

 まず建築と土木の比率では圧倒的に建築の比率が高い。特に竹中工務店は百%が建築部門だ(竹中土木と分離しているので当然だが)。
 比率は過去において常に一定ではないが、大手ゼネコン5社では大体8割以上が建築部門だ。

 工事の規模は高層建築など大規模工事が準大手以下より多い。
 大きな工事を請けるメリットは、現場の規模の割に必要な人員が少ない事だ。例えば受注額1億円の工事でも通常は一人以上の現場監督が必要だが、百億円の現場では百人の現場監督が必要かというとそうではない。現場にもよるが、普通は工費百億円の現場でも20人も監督がいれば十分だし大手ゼネコンなら恐らく十人程度いれば十分だろう。

 但し、超大型建築物については必ずしも大手ゼネコンが独占している訳ではなく、むしろ準大手以下のゼネコンの施工例が目立つ。
 例えば、1997年から2001年まで高さ世界一だったマレーシアのペトロナスツインタワーの一棟は中堅ゼネコンの間組(通称ハザマ)が、2004年に509.2mで世界一の建物として竣工した「台北101」は準大手ゼネコン熊谷組が中心の施工だ。これらを高さで上回る大手ゼネコン施工物件は大林組の「東京スカイツリー」だけだ。
 上述の2件の海外工事については日本の大手ゼネコンなら当然施工可能だ。政治絡みだったのかもしれないし詳しい事情は知らないが、海外工事では言葉や習慣などの面倒も多く欧米や日本ならともかく確実に金が回収できない危険性もあるので大手ゼネコンが無理に手を出さなかったのかもしれない。

 技術的にスーパーゼネコンが特別抜きん出ている訳ではないし、高層建築が特に優秀な技術や人材を必要とする訳でもない。
 例えば中堅ゼネコンの鴻池組が百m以上のマンションの施工実績がある。
 技術的に隔絶している訳ではないが、大規模工事に慣れている大手ゼネコンはやはり大型工事が微妙にうまいし準大手以下が競争力で優位なのは人件費位だ。
 また、大型工事を発注する側は同じ額なら当然、実績と信頼の高いスーパーゼネコンに頼みたくなる。という訳で準大手以下が大型工事を受注する際は厳しい採算でも引き受けざるを得ない。

 大手ゼネコンとそれ以下でやる事は大差ないが、上述の微妙な差が両者の差を決定的にしている。
 準大手ゼネコン以下は当然スケールメリットで勝てる訳がないから大手ゼネコンにない何らかの特徴を積極的に打ち出さなければならないのに単なる「スーパーゼネコンの縮小版」の様なゼネコンが多過ぎるので今後も格差が縮まる可能性は低い。

大林組

 スーパーゼネコン(大手ゼネコン5社)で述べた様に大林組の年収、技術、経営力などは他の大手ゼネコンと大差なく、スーパーゼネコンの中では比較的地味な存在だった。
 私はスーパーゼネコンの経営状況を完璧に把握していないので断言できないが、様々なサイトや最近の施工状況を見ると大林組が微妙に良い立場にあるらしい。
(スーパーゼネコンの経営状況は年毎に多少変動するので一時的状況に過ぎない可能性はある)

 私が最近の大林組について象徴的に思うのは東京スカイツリーを事実上単独で建設した事だ。(正確には東京スカイツリー建設は名目上は複合プロジェクトの一つでありプロジェクト全体はJVを組んだ)
 私は大林組が単独で東京スカイツリーを施工した事自体は特に驚かない。鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店でも技術的に単独の施工は可能だ。
 ちなみにマレーシアにある高さ452mのペトロナスツインタワーの1棟を日本の準大手ゼネコンのハザマが建設しているし、高さ509.2の「台北101」は熊谷組を中心としたJVが施工しているので技術的には大林組が単独で施工しても特に不思議はない。

 ただ、普通これだけの大規模工事は単独で施工出来ても安全のためにJVでやる場合が多い。
 また一応、私企業の所有物とはいえ公共の電波を扱う公共物だから公共事業として多くのゼネコンにばら撒くのかと思ったが、東京スカイツリーについてはそうではないようだ。

 それだけ今の大林組が高い信頼を持たれているという事か。
 少なくとも経営危機を疑われるゼネコンに日本の私企業がこんな大事業を任せないだろう。

鹿島建設

 大手ゼネコン5社(スーパーゼネコン)は年収や経営など実力で6位以下と大差があるが、ゼネコンランキング1〜5位のゼネコンは大差ない。
 大手ゼネコン5社の中で絶対的リーダーは存在しないが、強いて印象に残る企業を挙げると鹿島建設だ。
 鹿島建設の年収は推定900万円台半ばでゼネコンの中で1番高いと思われる(但し最も年収が低いスーパーゼネコンより数十万円高い程度らしい)。
 代表的人物として日本商工会議所会頭や経団連会長を務めた石川六郎氏が思い浮かぶ。彼は注目される発言で鹿島建設の存在感を示してきた。
 福島第一原発も鹿島建設が施工している。

 過去における悪い面の代表は戦時中の中国人労働者虐殺だ(花岡事件)。
 2007年に桑田秀延営業所課長代理が強姦と強盗容疑で逮捕された。桑田秀延容疑者は「他にも百人以上の女性を襲った」そうだ。

大成建設

 大成建設はスーパーゼネコンでは唯一の非同族会社だが、他のスーパーゼネコンと技術や経営で大差なく鹿島建設と大成建設の年収や社風が特に違う感じもない。
 海外で失敗したせいか「大成建設 倒産」の噂が流れているが、大成建設の年収や株価に極端な変化はなく大成建設 倒産説は単なる噂の域を出ていない。
 2007年 大成建設、鹿島建設、新日本製鉄JVが建設中のカントー橋が崩落。死者54人、負傷者80人を出すベトナム建設史上最悪の事故となった(wikipediaより)が、福島第一原発事故の際は大量に人員派遣して存在感を示した。(産経新聞によると大手ゼネコンでは大成建設だけが事故の復旧に当たったらしい)

清水建設

 清水建設は1804年創業のスーパーゼネコン。
 ゼネコンランキング上位5社の技術や年収などに大差ないと何度も書いたが、清水建設は大型工事を無理に受注しないそうだ。
 その点が世間一般からするとスーパーゼネコンの中では地味で個性がないと思われがちだが、ある意味で重要な特徴だ。
 と言うのは、私は「大きな工事の方が一般に受注額と比べて人員が比較的少なくて済むので効率的だ」と述べた。大きな工事は型枠などが上層階にも繰り返し転用できる回数が多いなどの面でも効率が高い。

 しかし、そういうメリットがあるからこそ逆に多くのゼネコンによる激しい受注競争が起き易い。
 準大手ゼネコン以下には技術力や施工実績を得るため採算度外視で大型物件の受注に臨む会社も多いので、大型物件の方が必ずしも儲かるとは限らない。

 また百億円以上とか百階建以上の巨大工事は少ないので大手ゼネコンといえども大型工事だけ受注するのは難しい。

 そんな中で大型工事を無理に受注せず中小の物件も積極的に探す清水建設の姿勢は準大手ゼネコン以下にとっては嫌だろうが、賢い選択だ。

竹中工務店

 竹中工務店は年収、技術力、経営などで大差ないスーパーゼネコンの中で最も特徴的なゼネコンかもしれない。

 大阪に本社のある関西系スーパーゼネコンだが、関西発祥のスーパーゼネコン大林組は竹中工務店ほど西に重点は置いていない。

 そして非上場の大手ゼネコンだ。鴻池組などの非上場ゼネコンはあるが、ゼネコンランキング上位5社のスーパーゼネコンでは竹中工務店だけが非上場だ。
 この点で経営の善し悪しがあるが、外部から見ると経営実態が分かり難い。そのためゼネコンの経営診断などの際に他のスーパーゼネコンと分けて考えられる事もある。

 竹中工務店など大手ゼネコンの年収や技術力に大差はないが、札幌・東京・ナゴヤ・大阪・福岡の5大ドーム球場を全て建設しており、巨大ドームに関しては竹中工務店が他社に先行している。

準大手ゼネコン

戸田建設

 ゼネコンランキング上位5社のスーパーゼネコンとそれ以下では隔絶した差があると述べたが、準大手ゼネコン以下の筆頭が戸田建設だ。
 スーパーゼネコン同様に建築主体で、堅実経営が高く評価され財務体質はスーパーゼネコン並みと評価されている。

 この様に戸田建設は高い評価を受ける事が多いが、私の評価は必ずしも高くない。
 なぜならゼネコンは多過ぎるので規模や内容が単なる「スーパーゼネコンの縮小版」の様な中途半端なゼネコンが真っ先に潰れる可能性もあるからだ。
 戸田建設の財務体質がスーパーゼネコン並みとされる事はあっても「大手ゼネコンを凌駕する」とは誰も言わず、財務体質がせいぜい同格という扱いだ。
 年収もスーパーゼネコンの鹿島建設、大成建設、大林組、清水建設、竹中工務店の年収より遥かに低い。
 施工主や求職者にとって何が何でも戸田建設でなければならない理由が見当たらない。

西松建設

 西松建設は準大手ゼネコンの上位に位置し、財務体質もスーパーゼネコン以外のゼネコンの中では比較的良好とされる。
 土木工事主体のゼネコン。

三井住友建設

 ゼネコンの殆どが財閥などとの結びつきが薄い独立系が多い中で三井グループと住友グループに属する点に特徴がある。
 建築工事の比率が高いゼネコン。

前田建設工業

 大型土木工事に強みのある準大手ゼネコン。
 飛島建設や間組(ハザマ)や熊谷組などの土木系ゼネコンほどバブル崩壊の影響はなかったが、土木主体のため公共事業の落ち込みが経営の重しになっている。
 年収ではスーパーゼネコン竹中工務店の年収より百万円程度低いようだ。

建設業界就転職の心得

職種

ゼネコンの現場監督

 建築系学生の代表的な就職先がゼネコンの現場監督だ。
 特に高度な計算能力が要らず高卒でも十分勤まる職業なので大卒者には勧めない。
 過酷な労働条件がよく知られているが、長時間の肉体労働だ。

 損得で考えると絶対に損だから決める際のポイントは仕事が好きか嫌いかだ。
 大成建設など大手ゼネコンの年収が9百万円近いという資料もあるが、あくまでスーパーゼネコン(鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店)の40代辺りの年収で新入社員がいきなり年収一千万円にはならない。
 準大手ゼネコン以下の現場監督の時給換算では下手するとコンビニの店員並みだ。
 現場監督は非常に労働条件が悪い割に辞める人が少ない。条件が悪過ぎて逆に辞められないのだ。
 また、楽か辛いかと考える人もゼネコンの現場監督は向いていない。
 何が楽で何が辛いかは人によるが、「楽か辛いか」と考える人にとっては肉体的な辛さで決める事が多いから辛い仕事という事になり、やはり止めた方がよい。

 また、現場監督は潰しが利かない職業の典型なので転職については進退を早めに考えよう。
 他業種に転職するつもりなら25歳以前に決断しよう。30歳を超えると再就職は極めて困難だ。
 20代半ばで迷っているのなら例え入社1年目であろうと早く辞めるべきだ。
 危険も多い仕事なので迷っていると事故に遭う確率も上昇し会社も迷惑する。
 逆に現場監督に生甲斐を感じ長く勤めたいなら一生勤める覚悟でいるべきだ。

 ゼネコンは構造的不況業種で将来性が低いし、現場監督は高度な数学の知識などが不要なため労働条件が悪いなりに志願者が多く、過酷な労働条件が改善される可能性は低い。
 現場管理が好きな人や誇りを持っている人は多いので「誰もやらないから仕方なく自分がやる」という使命感はくれぐれも持たないでほしい。

設計業務

 建築工事などの設計業務には大きく分けて「意匠設計」と「構造設計」などがあり中身は大きく違うが、ここでは両者の差にこだわらない。
 ある程度大きなRC構造物の設計の仕事をする場合の就職先には主に設計事務所とゼネコンがある。
 設計志望者がどちらに行くべきか考えよう。
 設計志望であればやはり通常は「設計事務所」と考えるのが自然だ。
 但し、ゼネコンの設計部勤務にもメリットが当然ある(だからこそゼネコンの設計部が存在する)。
 まず設計事務所は零細企業が多く経営が安定せず給料が必ずしも高くないが、鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店などのスーパーゼネコンは給料が高い。
 またゼネコン社員は現場の状況が把握し易いが、当然ながら現場をよく知っていた方が設計業務を覚える上で役立つ事も多く、その点仕事上も有利になる。
 但し、準大手ゼネコン以下は必ずしも給料が良い訳ではなく残業時間も考えるとむしろ設計事務所以下かもしれないので、十分確認が必要だ。
 またゼネコンでは設計部配属であろうと基本的に一度は現場に行かされるが、それが嫌ならゼネコンに就職しない方がよい。
 更に言うと設計部配属でも会社の都合で暫く現場監督として使われる事もあるが、現場経験が役立つと言っても長過ぎると必ずしもそうならないので現場に暫く配属されそうなら転職或いは最初から就職しない事も考えよう。

住宅産業

 建設関係の就職先としてポピュラーではないし正直言って私はこの分野に詳しくはないが、この方面を狙う人も極端に少ない訳でもないので簡単に説明する。
 広い意味の住宅産業はマンションを建設するゼネコンも含むが、ここでは「主に戸建住宅を建設するメーカー」とする。
 個人住宅なので当然、一戸当たりの規模は小さい。構造はゼネコンが手掛ける様な大型物件よりRCの比率は低く(SRCは殆どない)、木造建築の比率が高い。
 年収は気になるだろうが、スーパーゼネコンと呼ばれる鹿島建設、清水建設、大林組、竹中工務店、大成建設の年収と比べると低いが、中小ゼネコンや零細設計事務所より住宅産業の方が一般に高い様だ。
 ただ、私の個人的見解としては「大成建設の年収より安いからやめる」という様に今の待遇で決めるより、やりがいや転職の際に潰しが利くかなどで決めるべきと思う。
 なぜなら、建設会社は民間企業とはいえ多分に公共事業など政府の意向で業績が左右され易いので政情が不安定な昨今、住宅産業と大成建設の年収が逆転する可能性もある。
 大学の建築科での講義は主に木造以外の構造なので、その点に抵抗があるかどうかも問題だ。
 工期が短いため最初から最後まで現場を通して見られる可能性も高く、その点でやりがいを感じる人にとっては向いているかもしれない。
 私は住宅産業にも詳しくないので行けとも行くなとも言わないが、建築関係者にとって有力な選択肢の一つなのでよく調べて検討する価値はある。

会社の種類や企業の規模

ゼネコンの規模(スーパーゼネコンとそれ以下)

 就職先を選ぶ際に自分の好きな仕事より会社の安定性や年収などで決める人もいるだろう。
 それは勿論個人の自由だが、そういう風に将来性や年収などを考えてゼネコンを選ぶ人は当然ゼネコンの規模に注目するだろう。
 企業にはスケールメリットがあり、例えば同じ1億円の研究開発費でも大手ほど負担は小さい。
 安定性や年収に惹かれて鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店、大林組のスーパーゼネコンを希望する人は多いし、それは間違いではない。
 6位の戸田建設については「スーパーゼネコン並みの財務体質」と言われる事もあるが、あくまでスーパーゼネコンと同等かそれ以下に過ぎず凌駕しているという話は聞かない。
 同じ財務体質なら給料の高いスーパーゼネコンを選んだ方が当然得だ。

 スケールメリットと言っても規模で選んでよいのはゼネコンランキング5位迄のスーパーゼネコンだけで6位以下は必ずしも規模のメリットが享受される訳ではない。
 後で詳しく説明する予定だが、全国展開や焦点を絞らずあれもこれもやる手広い商売が足かせになっている中途半端な準大手ゼネコンや中堅ゼネコンが多い。
 準大手以下には深刻な倒産危機が危惧されるゼネコンも多く、実際に倒産したゼネコンもあるので規模で選んでよいのはあくまでスーパーゼネコンだけだ。

ゼネコンの特色

 前項の続きなので繰り返しになるが、規模で選んで良いゼネコンは鹿島建設、大成建設、清水建設、大成建設、大林組などゼネコンランキング5位迄のスーパーゼネコンだけだ。
 準大手ゼネコン以下はむしろ大きさがマイナスになる事もある。
 例えば日本中に支店を置けば当然各支店に最低一人は社員を置く必要がある。
 支店もそうだが、担当する分野についてもスーパーゼネコンほどの体力がないゼネコンが広過ぎる範囲に手を出すと体力を消耗する要因になる。
 従って準大手ゼネコン以下についてはむしろ特定の地域に強力な基盤を持つ地場ゼネコンの方が良い場合もある。
 また土木も建築もあれもこれもという様に中途半端な規模で特色のないゼネコンより、「海外事業に強い」、「海洋土木に強い」など何らかの特色を持つゼネコンや特定の分野に特化したゼネコンの方が良い場合も多い。

 但し土木中心のゼネコンだと多少話が違う。なぜならスーパーゼネコンは建築の比率が圧倒的に高く、土木部門だけなら準大手ゼネコンでも規模で対抗し得るからだ。
 中途半端な大きさで一番駄目なのがスーパーゼネコンをそっくりそのまま縮小した様なタイプの準大手ゼネコンや中堅ゼネコンだ。
 建築主体の準大手ゼネコンや中堅ゼネコンは言わばミニ・スーパーゼネコンなので大手に勝てないし、かと言って中小工事専業のゼネコンに対しても特に強みはない。

 この様に準大手ゼネコン以下を選ぶ際には中途半端な規模が却ってマイナスの場合もあるので単純にゼネコンランキングだけで決めずに明確な目的意識を持って特色のあるゼネコンを選ぶべきだ。

設計事務所

 設計事務所はゼネコンと比べて一般に零細で年収も低い。
 年収や安定性でゼネコンを選ぶ人も多いが、「同じ年収や安定性なら設計をやりたい」というのが大方の大卒の本音だろう。

 メリットとしてはまず生甲斐を求める人には向いている。建設系大学を出て設計事務所に勤めるのは適性としては自然だ。
 設計事務所勤務からだと将来的に独立し易いというのも魅力の一つだ。

 この様に生甲斐か金かで設計事務所かゼネコンか選ぶのが一般的と思うが、昨今の情勢を考えると経済的に考えても結局は設計事務所の方が安定している可能性もある。
 と言うのは既に述べた様に現場監督の仕事は潰しが利かないし、ゼネコンの設計部にいても無理矢理現場に配属される事もよくある。
 今やスーパーゼネコンの鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店以外のゼネコンはいつ潰れてもおかしくないし、ゼネコンの年収は残業時間を考えるとスーパーゼネコン以外は高いとは言えない。

 現場が好きでない人はゼネコンではなく設計事務所に行くのが基本だと私は思う。


欠陥マンション対策

絶対的な方法は無い

 マンション建設後に手抜き工事や欠陥工事を見抜くのはプロでも困難です。
 建付けが悪いとか床が水平ではないなど仕上げの欠陥は素人でも何となく分かる事がありますが、鉄筋やコンクリートに関する内部の構造的な手抜きや欠陥については余程はっきりした事例でなければ表面を眺めただけでは容易に分かりませんし、そもそもタイルや壁紙などの仕上げが施されている部分が殆どなので、コンクリートが露出している面積は通常あまり多くありません。
 絶対的な方法が無いというのは当ページについても当てはまります。当ページを読んだからといって全ての人にとって必ずしも役に立つ訳でも欠陥対策が万全という訳ではありません。あくまで一部の人の欠陥マンション対策の一助となるに過ぎません。

役に立つ素人の感性

 素人の素朴な疑問や感性は案外当たっていたり役に立つ事が多いのです。
 施工業者としては消費者に対して「これは大した事が無い」と思わせたいので、業者や専門家と称する人の言葉を鵜呑みにせずに自分で考える事が大切です。
 逆に「素人の視点だけでは事実とかけ離れた間違いを犯す」場合もよくありますので自分の直感だけに頼るのも危険です。
 業者が「大した事が無い」と説明した場合に本当に大した事が無い事もあります。
 一見矛盾するような話ですが、どの事例が素人にとって判断しづらいのか代表例を幾つか紹介しますので相反する命題にどう対応するか参考にして下さい。

参考事例

 素人の感性が案外役に立つ事は述べましたが、素人だけの視点では事実とかけ離れた判断をしてしまう場合もあります。
 素人の場合、見た目が派手な事例に目が行きがちです。「見た目は深刻だが実際には大した事が無い」或いは「見た目は大した事はないが重大な欠陥だ」というように見た目と実情が違う場合もありますので、どういう場合がそうなのか具体例を知っておくと便利です。
 見た目が深刻でも必ずしも大した事がない症状の代表的な例として「エフロレッセンス」、「ひび割れ」、「コンクリート木片混入」などがあります。
 但し、これらの事例が「常に大した事が無い」或いは「殆どの場合、大した事が無い」という意味ではありませんのでくれぐれもご注意下さい。あくまで「中には大したことの無い場合もあり得る」という意味です。

 まず、欠陥かどうか判別しづらい3つの例をあげます。

エフロレッセンス

 エフロレッセンスはコンクリートの表面などに白い析出物が発生する現象でありコンクリート劣化の指標の一つです。
 白い物質はCaの化合物です。派手に白い物質が出現する事もあり、時には驚くほど多量の白い液体がヨーグルトの様に発生する事もあります。それを見ると重症に見えるもしれませんが、見た目ほど深刻ではない場合も少なくありません。エフロレッセンスが発生しても直ちに補修が必要ではない事もあります。外壁のタイル目地などにエフロレッセンスが広範囲で発生した場合など、全て補修するとかなりの費用が必要です。
 要注意の現象ですが、重大な欠陥と決め付けずに心配なら専門家に相談して補修するかどうか決めると良いでしょう。
 専門家の中にはエフロレッセンスよりむしろ外壁タイルの浮きを心配すべきだという人もいます。但し、これは程度の差によるものでありエフロレッセンスとタイルの浮きのどちらがより深刻とは一概に言えません。また外壁タイル工事の施工精度が悪い場合には剥離していなくても浮いて見える可能性もあります。
エフロレッセンス事例1エフロレッセンス事例2

ひび割れ

 新築間もないマンションのベランダなどに、ひび割れが発生した事例は少なくありませんが、必ずしも欠陥ではありません。
 早い時期から出現していても細かいひび割れなら許容範囲の場合もあります。手抜き工事ではなかったとしても早い時点でひび割れが発生する可能性はあります。
 ひび割れは程度や状況によっては許容できます。

 また、ひび割れに関する規定は一応ありますが、単純に「何ミリからは大規模補修が必要だ」と言えない場合が少なくありません。
 例えば幅が5ミリのひび割れが建物全体に一様に密な状態で存在しているのであれば数字的には大規模修繕が必要な極めて重大な事態という事になっていますが、それが建物の内の10センチ四方位に集中して他にどこもひび割れがないのであれば大規模修繕はおろか全く何もしなくても構わない可能性もあります。
 数字で言い尽くせないものがあり、微妙な事例も少なくありません。

 はっきりしているようで判定は案外難しいのですが、下記の様にコンクリートが爆裂して鉄筋が見える場合は明らかに欠陥です。
爆裂事例1爆裂事例2

シャブコン

 シャブコンは生コンを水で薄める手口で手抜き工事の代表です。生コン車の洗浄水を全て注入すれば三分の一近くまで強度が低下する可能性があると言われるほど大きな影響があります。
 チェックする際の問題は打設後に表面を見ただけでは例え専門家でも見破るのが殆ど不可能だという事です。不当に加水すると表面に縞模様が出来るとかザラザラになるとは限らず、むしろ流動性が高くなっているので型枠にきれいに流れ込み表面がきれいな場合も多いのです。
 マンションの欠陥を暴くHPなどでコンクリート表面に見つかった異常について「これはシャブコンのせいではないのか」と書かれている事がありますが、先に説明した通りシャブコンが行われていたからといって特に表面に異常が発生する訳ではないので関係ない可能性もあります。

 逆に下記の4つの事例は明確な答えが出し易かった例です。

コンクリート混入木片

 阪神大震災では崩壊した橋脚のコンクリートに木片が挟まっていた事が話題となりました。コンクリートに木片が挟まっている事が「手抜きか」と聞かれれば、私は迷わず「手抜き工事です」と答えます。木筋コンクリートなる物は基本的に存在しません。
 但し、この場合も構造的にはさほど気にしなくてもよい場合も少なくありません。実は木材は意外に強度が高く特に圧縮強度に関してはコンクリートより遥かに高いのです。木材の質や大きさや混入した箇所や空洞があるかなどにもよりますが、通常は著しく強度が低下する事はないと思われます。
 心配なら専門家に相談してみるとよいでしょう。この事例が手抜きである事は間違いないので例え構造的に大した事がなくても、業者が雑な仕事をしてきた証拠なので抗議して構いません。
 下記のコンクリート混入木片の事例については「手抜きか」という問いに対して「間違いなく手抜きだが、この程度なら構造的には恐らく大した問題ないと思う」と答えました。
コンクリート混入木片の事例

露出鉄筋

 コンクリート表面などに筋が見える露出鉄筋についてはよく報告があり「これは手抜きではないのか」と聞かれたりしますが、明らかに手抜き工事です。
 コンクリートの初期状態はアルカリ性ですが次第に中性化が進み鉄筋に達すると鉄筋が錆び始めます。そのため「かぶり厚さ」というコンクリート表面から鉄筋までの距離が規定されています。これは地中と地上など場所により数値が違います。かぶり厚さを確保するためにスペーサーの装着が義務付けられていますが、作業の邪魔なので施工者が故意に外したり何らかの理由で外れたりした場合に所定のかぶり厚さが確保できない事がよくあります。
 下記の露出鉄筋の事例は明らかな手抜き工事です。スペーサーを外さなければこの様な状態には絶対になりません。
露出鉄筋の事例

梁を貫通するパイプ

 あるマンションの住民が「地下室に梁を貫通するパイプがあるが大丈夫なのか」という疑問をHPに書きました。
 梁は重要な構造体ですから穴を開ければ強度に影響しますが、空調などのパイプが梁を貫通する事はよくあり、それだけでは違反になりません。
 着目点はパイプの下端と梁の下端の距離が十分確保されているかどうかです。一律に何センチと決まっていませんが、パイプの下には主筋と補強筋という少なくとも二本の鉄筋が通り、補強筋と梁の下端の間にはかぶり厚さという距離を確保しなければなりません。
 更に貫通孔断面を法律で定められた形状の斜め鉄筋で補強しなければなりません。
 一概に何センチ必要とは言えませんが、少なくともパイプの下側に通常は半径分位の余裕は必要です。設計図を見なければ何センチで違反という明確な数値は出せませんが、下端の余裕が極端に少なければ調べるまでも無く違反だと分かる場合もあります。

 下記の貫通パイプの事例については現地で計測した訳ではないので断言は出来ませんが、見た目からするとまず間違いなく違反だと思われます。
違反の疑いがある貫通パイプ

ベランダ天井の傾き

 マンション住民でバルコニーの天井が水平ではなく住居部に従って下がっているのに気付いた人がいました。
 バルコニーの天井という事はつまり上の階の床の部分に当たります。その写真を見た私は「これは正常です」と答えました。
 バルコニーの床の部分の断面は長方形ではなく住居側に近づくほど太くなる台形なので、バルコニー天井は斜めで正解です。
その写真

複数の専門家に聞く

 欠陥の様な気がしても素人には判断が難しいので専門家に相談した方がよいですが、専門家と称していても悪質な業者や知識が拙劣な可能性がありますから複数の人に質問して答えが合うか確認してみるとよいでしょう。
 著しく答えが違う場合は誰かが間違った可能性が高いです。但し、人により得意分野が違ったり慎重さに差がありますので、そのために嘘をついていなくても答えが多少違ってくる可能性はあります。答えが違った場合には何故違っているのか確認してみましょう。
 複数の専門家に相談すれば金が余分にかかりそうな気がするかもしれませんが、まず、ホームページなどで無料で相談に応じてくれる人に聞く手があります。
 聞いた事を鵜呑みにしてはいけません。
 既に述べた通り、このページを読んだからといって全ての人にとって必ずしも役に立つ訳でも欠陥対策が万全という訳ではありません。
 あくまで一部の人の欠陥マンション対策の一助となるに過ぎませんが、このページを読むのは無料ですし、複数のページを読む事がかなり役立つと思います。

ゼネコンは三社で十分だ

甘えた業界

 長引く深刻な不況により多くの業界で大企業の経営破綻が相次いだ。大企業といえども放漫経営を続ければ容赦しない風潮が見られたが、ゼネコンだけは例外だ。
 準大手ゼネコン熊谷組は一社で有利子負債と保証債務の合計額が一兆円を超えたが、熊谷組に対して倒産ではなく、債権放棄による救済の道が選ばれた。

下請けへの影響

「ゼネコンが潰れると下請けに対する社会的影響が極めて大きいから潰せない」という事がゼネコンを特別扱いする理由とされる。
 私は準大手ゼネコン鴻池組の元社員だが、これに大きな疑問がある。
 中堅ゼネコンの大都工業と多田建設と東海興業は事実上の倒産に追い込まれたが、下請けに対する影響は予想を遥かに下回った。
 確かにゼネコン一社当たりの関連業者や就業者の数は多い。準大手ゼネコン一社でも関連人口十万人を超えるかもしれず全員路頭に迷えば大変だ。
 特定のゼネコンに下請け業者が絶対服従すると思われがちだが、協力業者は必ずしも一つのゼネコンに忠誠を尽くしていないので、ゼネコンが潰れても違うゼネコンの仕事を受ければ済む。
 下請けにとっては工事の代金が間違いなく受け取れるか、業界全体として仕事があるかが重要だ。

合併のメリット

 ゼネコンは日本に三社あれば十分なのに大手ゼネコンや準大手ゼネコンだけで二十社近い。
 小さなゼネコンが合併すればよいのだが、ゼネコン経営者は合併を極端に嫌がる。
 その理由として「合併すれば公共事業の受注機会が減るからメリットはないし、借金をしているゼネコン同士が合併しても更に借金が増えるだけだ」と説明する経営者が多い。
 しかし、受注機会は減るだろうが、合併には研究開発や見積もりなど重複が減るメリットがある。
 ゼネコンの経営者が合併を嫌う本音は「社長は一人いればよく主導権を握れなければ冷遇される恐れがあるから」だ。それは単なるエゴイズムに過ぎず、経営努力により会社を潰さずに済むならそれに越した事はない。
 どうしても倒産が嫌なら、合併や業務の特化など徹底的な合理化努力が必要だ。

早かろう悪かろう

 日本の建設技術を世界一と思う日本人は少なくないが、日本のゼネコンのレベルは高くない。
 日本では鋼製の枠組足場が工事現場で一般に使われるが、香港では竹で編んだ足場が高層建築工事でも使われる。この様に建築技術は様々だが、品質に大差なく日本の建物が特に高機能でもない。
 大型建造物で一般的構造用材料は鉄とコンクリートだ。鉄は近代から多用されているが、コンクリートは紀元前からあり、一説には一万年近く前から存在するそうだ。現代の建築は構造用材料として鉄筋や鉄骨が使われる事以外は古代建築と構造上大差ない。

 日本の技術の特徴は「早かろう。悪かろう」だ。日本のゼネコンだと工事が早い分、作業が雑な場合が多い。これは技術の差というよりゼネコンのモラルや公的機関の検査システムの差だ。
 建造物の老朽化問題に関するNHKのドキュメンタリー番組でアメリカの実態が紹介された。米国の建築工事現場ではスペシャル・インスペクターという第三者による監視がある。コンクリート打設時にスペシャル・インスペクターが、「もっと均等に入れなさい」と厳命していた。彼は「建設会社を放って置くと手抜き工事をする」とインタビューに答えた。
 私の建築工事現場監督経験では日本の検査はゼネコン任せでザル状態だった。日本でも米国でも放置すれば業者は手抜きする。手抜き工事の少ない米国の建設会社でも日本に来れば検査が甘いので、手抜きする可能性が高い。もちろん手抜きをする業者の責任は大きいが、行政の責任も大きい。
 日本では品質より工期が優先されがちだ。工期と品質のどちらがより大事か簡単に決められないが、強いて言うと品質だ。工期を守るためなら品質が多少悪くても構わない訳ではない。「工期はごまかす事ができないが、内部の構造は手抜きがあってもごまかす事が出来る」という発想は許されない。

 日本のゼネコンの耐震技術が優秀だという話も疑問だ。
 免震工法や制震工法は過大評価されている気がする。阪神大震災ではこれらを採用した建物が殆ど被害を受けなかったと強調されたが、装備した建築自体が少なかった。地震の被害は偶然にも大きく左右されるので、安全性が証明されたとは言い難い。場所や造られた年代がほぼ同じなのに向きの違いで大きな被害を受けた物や殆ど被害を受けなかった物がある。
 これらの工法について直接研究に関わっていないので、全く駄目だと決め付ける気はないが、(株)鴻池組東京本店建築技術部部長の話では、免震工法の効果に疑問がある様で、「鉛ダンパーなんてあったって役に立たないのじゃないか」と述べた。免震工法では上部と下部を切り離し、間に緩衝材を置くので上下の接合に弱点がある。これはあくまで私の個人的見解だが、非常に強い揺れにより接合部がもげて建物が横倒しになる恐れがある。普通の工法より危険かもしれない。
 制震工法についても不安がある。原理を簡単に言うと地震の揺れと反対の方向に錘を移動させて、揺れの力を相殺する。この錘が建物と一体化してしまうと、揺れによる水平力を却って助長し兼ねない。何かの間違いで錘が滑らかに動かず建物と絡んでしまう可能性もある。

 結局、日本の建設技術で明らかに優秀だと断言できる点は仕事が早い事くらいだが、工期の早さは造るものが減った現在では重要性が低い。
 多過ぎるゼネコンを合併して技術と効率を高める必要がある。


鴻池組の実態

 株式会社鴻池組は大林組・竹中工務店・錢高組・奥村組と並ぶ在阪準大手ゼネコンだ。
 私は九年間、鴻池組に勤め、建築工事現場の管理、構造計算、仮設構造物の設計、建物診断システムや情報検索システムの構築など広範な業務を経験したのでゼネコンの実態を熟知している。
 ゼネコンはよく言われる様な優秀な組織ではないが、一端を紹介する。

原始的無法地帯

 私が大学二年生の時に北朝鮮のスタジアム建設工事をTVで見たが、人力で鉄筋を組み立てており「日本と比べて恐ろしく原始的」と思った。
 私は準大手ゼネコン株式会社鴻池組に就職した。最初の仕事は横浜市のライオンズマンション伊勢崎町新築工事現場の監督だった。
 現場監督は威張っていて下請け業者はゼネコンからピンはねされたり苛められたりすると思う人が多い様だが、逆に下請け作業員が威張っていた。
 作業員から監督への怒号や暴力は日常茶飯事だった。鹿島建設や清水建設や大成建設や大林組や竹中工務店などゼネコンランキング上位の大手ゼネコンはともかく、鴻池組の現場監督の立場は弱い。普段は大手の下請けだが、片手間で鴻池組の下請けをする業者が多かった。ある大手ゼネコンのトップは「ゼネコン一社が破綻しても公共工事は続行するし、民間工事も他社が肩代わりできる。仕事さえあれば、かなりの下請けや資材供給会社はやっていける。言われるほど連鎖倒産が出たり、失業が増大する訳ではない」と見る(日本経済新聞二〇〇〇年八月十二日)。一般イメージよりゼネコンは弱い。
 その現場で鉄筋圧接検査用の印を付け遅れた時に、S工務店という鉄筋業者の A という若い職長が殴りかかってきた。( S工務店は大手鉄筋業者だったが、倒産した)。その事は私にも落ち度はあったが、焼肉パーティーで S工務店の A ともう一人の社員の悪ふざけで火炙りにされそうになった。また、 S工務店の作業員が排水用らしき塩ビ管に故意に空き缶を入れるなど態度が悪過ぎた。Aは私より若いが、三十歳近い主任を怒鳴るなど態度が悪かった。作業員の一人はヤクザとの関係を強調した。本当かどうかともかく発言自体が異常だ。
 現場でくわえ煙草作業は禁止だが、守らない作業員が多かった。ある型枠大工に注意すると「もう、この現場には来ねえよ」と言って現場に来なくなった。先輩たちも作業員の喫煙に見て見ぬふりをした。
 土方の職長には泥棒もいたが、ばれても反省せず威張っていた。彼は私によく雑用を命じるので断ると、私に金属製工具を投げ付けた。彼は横暴の限りを尽くしたが、何の咎めも受けなかった。
 どちらが監督か分からない有様で怒声と暴力が渦巻く無法地帯だった。

 土建業者には悪い噂が絶えない。警察に逮捕されて留置所に入れられた首都圏のあるダクト工によると、社長を含め社員全員が麻薬をやっていて、自分も勧められて中毒になったそうだ。
 同じ工事現場で働く建設作業員の運転する車に同乗していた北海道の元建設作業員の話では、警察を見かけた運転者から、「やばい、お前、代わってくれ」と頼まれたそうだ。車を運転していたその作業員は、お尋ね者であり運転免許証の名前と本当の名前が違っていたそうだ。
 私が現場監督をしていた建築工事現場にも元殺人犯だとか前科を誇る作業員や暴力団との関係を強調する職長もいた。他の工事現場では新入社員が土工に殴られたそうだ。私も作業員から何度も暴行されたし、殺されそうになった事もある。

鴻池組社員の質

 建設作業員だけでなく、鴻池組社員も酷かった。
 私が新入社員の時の工事現場では、先輩は私には威張るが下請け作業員に怒鳴られて年下の職長にさえ頭が上がらなかった。
 ライオンズマンション伊勢崎新築工事現場にいたBという土工の職長は午後の打ち合わせに来ないので主任が私に「Bさんを呼んで来い」と毎日尊大に命じた。私が呼びにいくと B は狂った様に怒鳴り従わなかった。ある日、腹に据えかねて主任に言った。「来たくない者は放っておけばいいじゃないですか。そんなに来てほしいなら自分で連れてこればいいでしょう」。主任は「なんだ。この野郎」と怒ったが、そもそも主任の命令を聞かない土方が新入社員に従う筈が無い。
 喫煙マナーについては現場監督もヘビースモーカーが多くマナーも悪い。
 ノイローゼで無断欠勤と失踪を繰り返した建築技術部副部長もいて家族でさえ所在を知らなかった。なかなか辞職せず、本人が辞表を出さないと解雇できないらしい。
 もっと質が悪いのは、構造計算が出来ないのに分かるふりをした上司のT だ。彼はやくざと関係があるらしく、やくざとの喧嘩を自慢していた。彼は私が計算を間違ったと勘違いして、皆の前で私を馬鹿にして罵り暴行した。後で間違いに気付いた様だが、それでも間違いを認めずに私を馬鹿にした。人命に関わるので、どうしても間違いを認めさせる必要があったため大阪本店の技術部に訴えた。面子を潰された Tは激怒して、私に罵詈雑言と暴行を加えた。彼は構造計算も満足に出来ず、パソコンも全く使えなかった。低能で部下に対して尊大で上司に媚びる彼は東京本店建築技術部部長に出世した。
 朝から飲酒して働かず自慢話と悪口で勤務時間を過ごした建築工事現場所長もいた。彼は私が現場にワープロを持ち込むと「わしはワープロなど使えないが、勘と経験がある。ワープロだかヘープロだか知らんがそんな物は全く役に立たん」と毎日の様に嫌味を言った。私は自慢していないが、高卒の彼は私が大卒でワープロが使える事を僻んでいた。

 マッキンゼー・グローバル・インスティテュートが調査した国別の「労働・資本生産性」というデータはゼネコンの低い生産性を示す好例だが、アメリカ企業が百なら日本の建設業は四五だそうだ。
 ある本によると「ゼネコン社員は一人で出来る事を二十人でやっている」そうだ。本当かどうかはともかく、鴻池組は極めて非効率的だった。「ゼネコン社員は一人で出来る事を二十人でしている」というのが大袈裟だとしても「鴻池組では一人で出来る事を五人でする」というのが私の実感だ。

シャブコン

 建設工事現場では手抜き工事や欠陥工事が横行しているが、特に悪質で深刻なのが生コンクリートに余分な水を加えて薄める手抜き工事だ。
 (株)鴻池組の建築工事現場で横行していた典型的な手口だが、他社でもやはり代表的な手口だ。

 福井県美浜町の関西電力美浜原子力発電三号機建設工事でシャブコンが日常化していた事が工事関係者の話や生コン会社の内部資料などで明らかになり朝日新聞などで報道された。
 生コンに加水する事で余分に水が加わり空隙が出来るため強度や耐久性に影響を与える。
 朝日新聞の取材に対する美浜原発の建設工事現場関係者の証言によると、加水は生コンをミキサー車で工場から運ぶ途中や現場到着直後に行われた。気温が高いと生コンが固まり易いが、夏場には約百リットルを超える水を加えたそうだ。生コン車の運搬量は一台当たり五立方メートル前後だった。この場合、生コンに対して不当に加えられた水は約二%だ。大した事なさそうに感じるかもしれないが、コンクリート強度で肝心なのは生コンに占める水の比率だ。加水で水が幾ら増えたかが重要だ。生コンに含まれる水分量はコンクリートの種類にもよるが、せいぜい二割程度に過ぎない。という事は、二%水分が増えると一割近く水分が増える事になる。正確な計算はしていないが、二、三割程度強度が下がる可能性があり設計基準強度を下回る恐れもある。

 これに対して関西電力土木建築室では次の様に回答している。
建設段階では現地に多数の当社建築技術者を常駐させ、品質・安全確保を図っている。コンクリートの打設などにおいては当社社員や建設会社の技術者が常時現地で立ち会っており、加水などの不適切な行為があったとは考えられない。建設後は年一回の検査で打音等により構造物のコンクリートの健全性をチェックし、日常的に黙視点検も実施している。四年前と昨年、配管などの工事に際して外部遮へい壁と原子炉周辺でコア(資料)を抜いてコンクリートの強度を調べたが、設計強度を大きく上回っていた。強度や耐久性に問題はないと判断している。
 現場関係者の証言と関西電力の説明が真っ向から食い違っているが、私には前者の方が信頼できる。この手の手抜き工事の証言では普通、嘘はつかない。証言者は不正の張本人だから余程覚悟がない限りそんな事は言わない。また、証言の内容は私の鴻池組での経験や他の現場で聞くシャブコンの話とよく合致し、不自然さはない。
 それでは関西電力の社員が嘘をついているのかというと必ずしもそう思わない。そもそも、関西電力は工事の発注者だ。もし、手抜き工事があったとすれば、最大の被害者は関西電力という事になる。従って、関西電力が率先して手抜きをするとは考えにくい。当然、関西電力の社員も工事のチェックはしているだろう。しかし、多くの作業工程がある建築工事現場で手抜き工事のチェックは非常に難しい。まして、莫大な数の工程がある原子力発電所の建設工事で、現実問題として手抜き工事の完全なチェックは難しい。特にコンクリート打設では手抜きが発生し易い。私はマンション建設工事の現場監督としてコンクリート打設を担当していたので、よく分かる。コンクリート打設のチェックは作業中にしなければいけないのであって、終わった後で見ても駄目だ。いつ手抜きがあるか分からないから、常に打設現場に張り付いていなければならないが、現実問題として発注者側の検査担当者が常に現場に張り付く事は少ない。検査員の目を盗んで加水するのは容易だ。
 また、手抜きは現場だけで行われるとは限らない。工事現場以外の場所で不正が行われる事もある。現場だけでなく生コン工場もチェックが必要だが、実際やっている例は少ない。途中の路上で加水されると、手の打ち様がない。業者の良心が頼りだ。現場に張り付いているプロでさえ、手抜き工事を完全に監視するのは難しい。
 まして、関西電力の社員が手抜きを見落としたとしても何ら不思議は無い。
 もし、生コン車に積載している洗浄水を全て注入すると、強度が加水しない場合の三割程度にまで低下するという人もある。非常に重大な問題である事が素人でも分かるだろう。生コンの容積の僅か四%程度加水しただけでこれだけ大きな影響を与える可能性がある。加水は思ったよりも遥かに重大な事態を招く。

 この手抜きが横行している理由は、生コン工場でコンクリートが製造される様になった事とコンクリートポンプ車の登場が大きく関係している。
 工場でコンクリートが製造されるようになった事で、時間の経過に伴いコンクリートが硬化して、打設開始時には圧送が困難になる事がよくある。
 生コンは練り混ぜから打設まで原則として九十分以内と定められている。気温が高い時は更に厳しい条件が付けられるが、九十分は簡単に経過する。現場が生コン工場から遠かったり、道路が渋滞していたりすると厄介だ。気温が高いと更に硬化が早く進む。
 コンクリートポンプ車の登場もコンクリート打設を効率的にしたが、これも生コン車同様厄介な点がある。高層階のコンクリート打設時は建物に取り付けたパイプを通して圧送するので、コンクリートが硬いと作業し辛いため現場で生コンに注水する業者が増えた。

 この手抜きに救いがあるとすれば、必ずしも費用を切り詰めるためにやっている訳ではなく殆どが作業を容易にするためという点だ。
 洗浄水を全て注ぎ込んだところでせいぜい四%程度容積が増加するに過ぎない。もし、費用を安くするためにやっているのなら、生コン工場で不正をした方が合理的だ。
 だから、ミキサーの中に入れていれば生コンの効果が極端に遅くなる技術が開発されれば、シャブコンが殆どなくなる可能性がある。

アフリカODA疑惑

 2002年3月11日第154回国会予算委員会証人喚問でケニアへの最大のODAであるソンドゥ・ミリウダム疑惑について社会民主党の辻本清美議員が鈴木宗男議員に質問した。
「内容については詳しく覚えていない」という鈴木宗男議員に対して辻本議員は「よく覚えているじゃないですか。何が忘れたですか。度忘れ禁止法を適用したいくらいですね」と舌鋒鋭く迫り「ごまかすな」と一喝した。彼女は終始優位な質問攻めで鈴木宗男議員を追い詰めた。
 この日の鈴木宗男氏の発言で鴻池組(本人は「鴻池」と言った)について何度か語ったが、議長から制止された。後日、鴻池組の証人喚問が行われようとしていた矢先に突然、辻元清美議員の秘書給与不正疑惑が持ち上がり逮捕、起訴されてしまった。
 超巨大プロジェクトであるソンドゥ・ミリウダム疑惑に対して秘書給与不正というのはあまりにも小さ過ぎる。あまりのタイミングの良さに「恣意的な国策捜査ではないのか」と思う人も少なくなかった。
 辻元清美氏は釈放後、議員に復職したものの牙を抜かれた様に大人しくなりアフリカ利権について殆ど語らなくなった。マスコミも辻元氏の逮捕後は不思議とアフリカ利権を殆ど報道しなくなった。
 辻元氏が再びアフリカODA疑惑に挑まなかったのはとても残念だ。裏に何かあったのだろうか。禊を済ませて戻ってきたのなら自分自身の前科を気にせず堂々と疑惑を追求すべきだ。
 それとも単なる思い違いで鴻池組は悪事に関与していないと思い手を引いたのだろうか。それならそれで明確に表明すべきだ。

青函トンネル水没計画

昭和の三馬鹿

 青函トンネルは最近まで世界最長のトンネルだったが、開業前の一九八七年、当時の大蔵省主計官はこのトンネルを戦艦大和の建造、伊勢湾干拓と並べて「昭和の三馬鹿」と酷評した。
 当時この発言は物議を醸したたが、私は正論だと思う。世界の三馬鹿に入れてもよい程だ。こんな無意味な代物はさっさと水没させるべきだ。
 異論もあろうが、少なくとも戦艦大和と比べて青函トンネルの方が馬鹿である事は間違いない。戦艦大和は航空機優勢の時流に乗り遅れた大艦巨砲主義の産物とされている。当時の大艦巨砲主義が間違いだった事は、今日では多くの人が知っている。昭和の軍人の思考能力を右寄りの人でさえ悪し様に非難するが、我々は結果を知っているから大艦巨砲主義は間違いだったと言えるのだ。
 当時の航空機は欠点が多く全面的に信頼できなかったので、大艦巨砲主義を支持した海軍首脳を責められない。最近の爆弾は殆ど命中するが、当時は極めて命中率が低かった。当時の飛行機は夜間飛行が困難で荒天に弱かった。陸上への着陸でさえ難しいが、揺れる空母の狭い飛行甲板への着陸はより困難だ。さらに空母は一般に戦艦より脆いし、飛行甲板があるので対空火器が少ない。
 更に、肝心な事は日米開戦の時期だ。当時、航空機は目覚しく進歩していた。もし、日米開戦が十年早ければ、海戦は戦艦中心になっていた可能性もある。当時は、いつ日米間の戦争が起きてもおかしくなかった事もあり将来性はあっても不安定な飛行機を主力とするのをためらった。
 そういう訳で、旧日本海軍が航空機優先に切り換える事に二の足を踏んだのは必ずしも愚かではない。米英にしても航空機優先になったのは太平洋戦争突入後だ。だから、大鑑巨砲主義に対する日本と米英の意識のずれはせいぜい四年だ。
 それに対して巨大トンネルや巨大橋の無意味さについて欧米人は何十年も前から気付いている。瀬戸大橋完成時の海外の評価は技術力を評価するどころか、無駄な投資をこきおろしている。青函トンネル建設計画当時は航空機が発達しておらず、現在見られるような飛行機による日常的長距離移動は全く思いつきもしなかった。その点は戦艦大和と状況が似ている。

技術のための技術

 青函トンネルを散々けなしたが、何が馬鹿なのか具体的に説明する。一言で言うと費用対効果だ。トンネル内の土砂の搬出量と長さの積はトンネルの長さに比例するのではなく、通常、長さの二乗に比例する。だから、青函トンネルのように極端に長いトンネルは土砂運搬の効率が極めて悪い。青函トンネルとほぼ同じ規模のユーロトンネルは赤字に苦しんでいる。ヨーロッパの大都市を結ぶ路線でさえ、経営難に陥っている。函館と青森を結ぶローカル路線が赤字で当然だ。また、トンネルの開通で地元は単なる通過地点となってしまった。
 建設費だけで約六千九百億円、維持補修費、借金の利子を加えると間違いなく兆単位の出費だ。ゼネコンへのお小遣い或いは無邪気に長さを競って喜んでいるのだとしても、外国人が費用を負担するのなら私は一切文句を言わない。しかし、そんな金を中国人や韓国人が出してくれる筈が無い。負担するのはイギリス人でもアメリカ人でもなく、日本人だ。
 そもそも、今の建設技術があれば、太平洋横断道路というような突飛なものは除いて、常識的に考えうる大抵の建造物は建設可能だ。現在の世界最高の建造物は五百メートル台だが、千メートルは十分いけるだろう。理論的には幾らでも高くできる。採算を度外視すれば二、三千メートル級の構造物の建設も可能だが、そこまでする必要性がないから造っていないだけだ。
 仮に時速四百キロの蒸気機関車の開発したとすれば、間違いなく世界最速の蒸気機関車だろう。ターボチャージャーを搭載したり、液化石炭を使ったりするなど現代の最新技術を盛り込んで、金をふんだんに使えば実現可能かも知れない。しかし、列車の最速記録が五百キロを超えている現在、そんな物を作っても実用的な意味は無い。仮に実現できたとして、それを誉める人がいるだろうか。よほど暇で金を持て余しているとしか思われないだろう。
 ソ連では、本土とサハリンを海底トンネルで結ぶ計画があったが、建設を断念している。日本は世界最大の海底トンネルである青函トンネルを計画通り完成させた。これらを比較して、日本の建設技術がソ連より上だったと無邪気に喜ぶのは間違いだ。ソ連は単に土木技術が低くて海底トンネルを完成できなかったのかもしれない。しかし、結局、そんな物を造らなくて大正解だった。もし造っていたら、ロシアの経済状態は今よりもっと悪化していただろう。
 技術自体が目的では困る。「世界最長のトンネルを造れるほど日本の建設技術は優秀だ」などと無邪気に喜ぶのは愚かだ。

莫大な維持補修費

 現状では建設費を返済するだけでも困難だが、それを上回る厄介な問題がある。維持補修費だ。準大手ゼネコンである(株)鴻池組建築技術部の社員教育用資料によると、コンクリート構造物の建設計画から解体までの一生にかかる建設関連費用のうち、調査費用、用地買収費用などを含めた初期建設費の割合は約二五%程度に過ぎない。残りは維持費、補修費、解体費などだ。維持補修費が建設費の五、六倍になるのは当たり前で、十倍になる事もある。これほど維持補修費が大きい事は意外に知られていない。
 青函トンネルの設備機器にかかる維持費は、将来的に年間七〇億円を超えると予想されている。旧都庁舎跡に建てられた東京国際フォーラムの維持費は年間五〇億円に上る。都庁クラスでも年間数十億円の維持補修費がかかる。それらより遥かに規模の大きい青函トンネルでは、恐らく、年間の維持補修費は七十億円ではとても足りないだろう。
 私は建築技術者だから、土木の維持補修費について正確には知らないが、一般に土木構造物の方が条件が過酷だから、恐らく維持補修費は建築物より高くなるだろう。
 建造物の維持補修費は、経過年数や種類や立地条件によって違うが、老朽化した建造物の維持補修費の年間負担額は、初期建設費の一割程度とも言われている。そうすると青函トンネルの年間維持補修費は約六九〇億円という事になる。年間の維持補修費が一千億円を超える可能性もある。突飛過ぎると思う人がいるかもしれない。しかし、その程度になっても全然不思議はない。
 そもそも、維持補修費の予測は難しい。なにしろ青函トンネルは世界最大のトンネルだし、これに匹敵する規模のトンネルはユーロトンネルだけだ。しかし、ユーロトンネルは青函トンネルの後に造られたので、将来の維持補修費予測の参考になりにくい。日本の公共事業は建設費が当初の予測の三倍に膨れ上がる事が珍しくない。建設費より遥かに予測が困難な維持補修費が当初の予測の十倍を超えたとしても不自然ではない。そう考えると年間の維持補修費が一千億円に達しても何ら不思議は無い。
 特に青函トンネルは他の建造物と比べて条件が過酷だ。何しろ長いから点検や補修は困難で海底トンネルは海水と接する。コンクリートは意外に透水性が高い。むろん防水対策は施してあるだろうが、それでも海水がどうしても染み込んでくる。鉄筋は塩分に弱い。錆びると膨張し、周辺のコンクリートを圧迫する。列車の通行の合間を縫って、作業をしなければならないのも点検や補修を困難にする。
 これらの理由から、青函トンネルの年間維持補修費が百億円を超える事はまず間違いないし、しつこいようだが一千億円になったとしても本当におかしくないのだ。インチキくさいと思ったら自分で調べてみると良い。今の時代はインターネットという便利なものがある。あるいは、教えてくれるかどうか保障はできないが、役所や新聞社に聞いてみるという方法もある。この手の数字は素人でも比較的調べやすい。工学的知識は必要ないし、手抜き工事のデータと違って、業者としては通常は隠す必要がない。公表された数字は比較的信頼性が高い。

恐怖の海底事故

 一九九八年四月四日に新関門海峡トンネルで漏水事故が発生したため、乗客が新幹線の車両に長時間閉じ込められた。この事故は朝日新聞が大きく報道したくらいで大して注目されなかったが、極めて重大な意味がある。
 一九九八年四月十四日のNHKのクローズアップ現代では、新関門海峡トンネル事故の経緯が詳細に放送された。それによると、この事故は極めて幸運な要素が偶然幾つも重なったため大事故にならなかったそうだ。一人の犠牲者も出なかったのは奇跡的だった。
 また、去年は山陽新幹線トンネルをはじめとして日本各地でコンクリートの崩落が大きな話題となった。北海道のトンネルでも事故が相次いだ。
 何故、コンクリートが一斉に崩壊し始めたのかという疑問を持つ人は多いだろう。実は以前から危険な事故は頻繁に発生していた。偶然、落下したコンクリート片が新幹線車両に命中したから注目され始めただけだ。
 海底トンネルは海水に晒されるため、トンネル内には常に海水が染み出しており、ポンプを止めるとたちまち水没してしまう。浸水事故を防ぐため、トンネル内の僅かな破損も見逃せない。しかし、海底トンネル内で異常を見つけるのは大変難しく、破損した個所を補修するには列車を止めなければならないという厄介な問題がある。特に青函トンネルや東京湾アクアラインのような巨大な海底トンネルは危険性が高い。東京湾アクアラインについては、浸水に対して手の打ちようがないという事が、以前から専門家によって指摘されていた。
 全長が五十三キロメートルもある青函トンネルの中央付近で事故が起きようものなら一大事だ。長さがあるだけに現場に辿り着くのは困難だ。
 単に長さだけで比べると、青函トンネルは一番危ないトンネルと言える。更に、海底トンネルという海水が染み込みやすい条件を考えるとさらに厄介だ。このように青函トンネルは、事故に対する危険度が高い。

北海道新幹線に対する疑問

 青函トンネルの膨大な額の赤字を解消する起死回生の策として、北海道新幹線の開通をあげる人がいる。考えうる解決策としてはその程度しかないが、これにも大きな疑問がある。
 乗客の住んでいる場所と駅や飛行場のアクセスにもよるだろうが、北海道から東京まで行くのにわざわざ新幹線を使う人がどれだけいるだろうか。どう考えても飛行機の方が早く到着する。
 また、青函トンネルの維持補修費を空港の整備に使えば、航空料金はもっと安くなる。仮に千歳発着の国内線利用者が全て青函トンネル利用者になったとしても、新幹線の建設費、トンネル建設費六千九百億円と最低でも年間数十億円する事は間違いない維持補修費、それに借金の利子を返す事は困難だ。新幹線が開通しても、赤字が解消する可能性は極めて低い。
 そもそも、千歳空港の利用者が全て新幹線の利用者になってしまったら千歳空港は寂れてしまう。青函トンネルを活かすには効果があるかもしれないが、旅客自体は限られているので、北海道内で客の奪い合いをしても北海道全体としては何の得もない。超高速輸送機関は鉄道か飛行機のどちらに集中的に資金を配分した方が得策だ。千歳空港は国際空港でもあり、絶対になくす訳にはいかない。
「もったいない」と思い青函トンネルを存続させたら、維持補修費を余分に負担しなければならなくなる。無駄な金を使い続けて累積赤字を増やすより、ポンプを止めて水没させた方がよいと思う。やはり、青函トンネルを放棄して、維持補修にかかっていた費用を千歳空港に注ぎ込むべきだ。いずれ、青函トンネルは放棄せざるを得ないのだから、早めに放棄するのが賢明だ。

コンクリートの崩壊

建設関係者の雇用問題

 現在、深刻な構造的不況に陥った日本の中でもゼネコンの不振は極めて深刻だ。ゼネコンの株価も低迷している。
 戦後の復興期と違い、今日では橋や道路など必要な社会資本はほぼ完成した。日本では国家予算に占める公共事業費の割合が欧米の数倍という非常に高い水準だ。工事自体が目的になって、殆ど使われない事も少なくない。これ以上、無駄な新築工事を進めると財政が破綻する。
 日本ではやたらと建設業者が多く、その数は煙草屋よりも多いと言われほどだ。公共事業にたかる利権誘導体質が染み付いてしまったせいだ。「将来、建設関係労働者から百万人の失業者が出る」という予想する人もいる。
 このように建設関連労働者の未来は一見絶望的だが、建設業界の雇用問題については一般に言われているのと全く逆のシナリオもある。
 近い将来、建設関連の仕事が激増し、建設関連労働者が大幅に不足する可能性がある。

崩壊するコンクリート建造物

 これを読んで、「そうか、日本の将来は明るいのか。日本の経済は復活するのだな」と喜んだ人がいるかもしれないが、実は全く逆だ。
 二十世紀末に山陽新幹線トンネルでのコンクリート落下事故をはじめとする建造物の事故が多発し、騒がれた。同じ頃、コンクリート工学専攻の小林一輔千葉工業大学教授が著した「コンクリートが危ない」(岩波新書)が実に良いタイミングで出版され、多いに注目された。小林教授は、「二〇〇五年から二〇一〇年にかけて、コンクリート構造物が一斉に崩壊し始める可能性が高い」と述べた。
 こうなった理由は手抜き工事や欠陥工事、超突貫工事などで雑な工事が横行した事、砂などをはじめとする建設材料の品質が悪かった事などがあげられる。これは山陽新幹線だけの問題ではない。手抜き工事や欠陥工事、海砂の使用などは日本各地で横行している。山陽新幹線の事故が話題になったのは、たまたま、コンクリートの塊が走行中の新幹線車両を直撃したからであって、以前から高架橋などでのコンクリートの落下は頻繁にあったし、JR職員もそれを知っていた。私をはじめとして一部の関係者から警告されていたが、今まであまり話題にならなかっただけだ。JRに限らず、日本の組織は問題点を隠したがる。他にも深刻な欠陥を抱えている構造物は少なくない筈だ。

 人間なら怪我をして瀕死の状態に陥っても放っておいて一年経てば健康な体に戻るという事はあり得るが、建造物については残念ながら現時点で高度な治癒能力を備えていない。だから、補修せずに放っておけば建造物は確実に老朽化する。「十年経ったら、風雨によって錆や汚れやひび割れが消えてなくなり、最初より耐久性が高まった」という可能性は極めて低い。「一年間掃除をしないで、部屋を放っておいたら、部屋中ゴミだらけになる」という予想はまず間違いないと誰もが思うだろう。それと同様に建造物の老朽化も確実に進行する。これは土木建築の専門家でなくても、素人でも何となく直感的に理解できるだろう。

維持補修に対する投資

 建造物の維持補修費が如何に高いかについて説明する。
 準大手ゼネコン(株)鴻池組社員教育用資料によると、建造物の一生にかかる費用の中で初期建設費の割合は約二五%程度に過ぎない。残りは維持費、補修費、解体費などだ。維持補修費が建設費の五、六倍になるのは当たり前で、十倍になる事もある。この様にライフサイクルコストに占める維持補修費の割合は、一般のイメージより遥かに高い。
 この事は建設関係者にすら、あまりよく認識されていない。そのためかどうか知らないが、日本の年間建設投資額に占める維持補修費の割合は異常に少ない。日本の建設投資は年間約八〇兆円だが、そのうち維持補修投資は僅か五兆円程度に過ぎない。欧米の様に成熟した社会では補修費が建設費を上回っているのが普通だ。
 建造物の維持補修対策は国家の存亡に関わる。コンクリート崩落事故を起こしたトンネルでの点検作業をテレビで見ていると、目視と打音調査という人間の勘と経験による極めて原始的な作業に頼っていた。広く長いトンネルをこの方法で調べるのは大変であろう事は素人にも容易に想像がつくだろう。この事からも分かるが、日本の維持補修技術は先進国に大幅に遅れをとっている。維持補修に関しては日本はとても先進国とは言えない。大学でもゼネコンでも補修にあまり力を入れていないし、技術者も少な過ぎる。

維持補修に全力を注げ

 いずれ余剰な建設関連労働者は整理が必要になる。既に述べた通り、建設関連労働者は一時的にはむしろ不足する可能性がある。公共事業では新規建設は基本的に止めて、維持補修に全力を注ぐべきだ。わざわざ、建設労働者の雇用のために無駄な新築工事を無理に創出しなくても、維持補修すべき建造物がそのうち嫌というほど現れる。今のうちに老朽化した建造物の補修作業に着工し、手遅れにならないようにしなければならない。維持補修の分野に、無駄な新規公共事業に費やしている費用や仕事が無くて困っている建設関連労働者をつぎ込めば丁度よい。
 JRにしても列車を止めると赤字になる事もあり、建造物の危険性についてはなかなか認めようとしない。そこで劣化した公共施設に公的資金を積極的につぎ込んではどうか。手をあげた会社に対して優先的に補修費を補助すればよい。これだと手抜き工事をした建設会社が得をしてしまう事になり不公平だという見方があるかもしれないが、人身事故が起きてからでは遅い。国家の存亡に関わる緊急事態だから、不公平もある程度やむを得ない。
 こうして建設関連事業を維持補修に特化すれば無駄なコンクリートを使わずに済むし、取り敢えず経済回復の繋ぎにもなる。

なぜいけないのか(「社会科学」のページ)

 公共工事の談合や官僚の天下りなどの不正が建設業界では多いとされています。これらの行為がなぜ悪いか分かり易く説明しました。
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談合

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天下り

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ゼネコン関連犯罪

羽田滑走路の砂利不正転用(鹿島建設)

 産経新聞の2009年11月25日の記事に「鹿島を家宅捜索 砂利不正転用の詐欺容疑で」というタイトルで下記の記事が掲載された(インターネット版)
 羽田空港D滑走路建設をめぐる大手ゼネコン「鹿島建設」(東京都港区)の砂利転用問題で、発注元の国土交通省から受注額との差額を詐取した疑いが強まったとして、警視庁組織犯罪対策3課は25日、詐欺の疑いで、鹿島の現地事務所(江東区)など関係先7カ所の家宅捜索を始めた。新滑走路は鹿島を中心とする共同企業体(JV)が17年3月、約5985億円で受注、来年10月の供用開始が予定されている。同課は巨額公共工事を舞台とした疑惑の全容解明を目指す。
 同課の調べによると、鹿島は平成19年12月、横浜市の「かながわドームシアター」跡地に、ホールや放送局が入居する10階建てビルを建設する工事を受注。この工事の過程で約5000立方メートルの玉砂利が採取された。
 このうち約1190立方メートルの玉砂利について、鹿島側は20年10月、国交省に届け出ていた資材とは異なると知りながら、新滑走路の海底部分で土台を支える「築堤材」として転用。届け出よりも安価な玉砂利を使うことで、受注額との差額分約470万円をだまし取った疑いが持たれている。
 鹿島は国交省に「岩ズリ」と呼ばれる岩を細かく砕いた資材を使うと届け出ていた。未承認の砂利は、ブローカーが複数の業者を経由させる形で現場に投入されたという。
 私の見解としては鹿島建設を庇う気は毛頭ないが、恐らく鹿島建設による会社ぐるみの詐欺ではないと思う。
 なぜなら、ゼネコンランキングが常に上位で売り上げが2兆円近くあり、 ゼネコン社員の年収鹿島建設などでも書いた通り鹿島建設社員の年収は1千万円近くありバブルの頃は20代中盤の社員でさえ年収が800万円だった。そんな会社が470万円という僅かな額のために詐欺をする可能性は低い。
 談合の様な数十億円という単位で儲かる可能性がある不正なら上層部が積極的に関与する可能性もあるが、わざわざ暴力団と関係のありそうな業者に恐喝のネタを与えるような真似はしないだろう。

 では他のニュースによると暴力団関係者とされるこのブローカーが「鹿島建設からの指示でやった」と証言したそうだが、それが嘘なのかというと必ずしも嘘とは断言できない。
 どういう事なのかと言うと、意図的かどうかは分からないが指示した部材ではなかった事に慌てた担当の現場監督が独断で「うわぁ、これは指定された材料ではないが、正直に言ったら上司に怒られてしまう」と正直に報告せず、そのまま業者に使わせた可能性もある。
 その場合、下請けの業者から「権限が与えられている現場監督が認めたのだから、鹿島建設の意向と受け取るのが当然だ」と解釈されても間違いとは言えない。

 当ページや耐震強度偽装問題のページでも述べた様に手抜き工事や耐震強度偽装など品質に関する不正は組織的な力に頼らずとも末端の現場監督や作業員や建築士などの個人の場当たり的な思い付きで簡単にできるし、そういう場合の方が圧倒的に多い事こそが実は恐ろしい。
 スーパーゼネコンといえども手抜き工事や欠陥工事は少なからず存在する。

名古屋市下水道談合

 読売新聞に下記のような談合情報が掲載されていた。
 名古屋市発注の下水道工事を巡る談合事件で、同市港区の工事での談合を取りまとめたとして、名古屋地検特捜部は19日、大手ゼネコン「大林組」名古屋支店元顧問柴田政宏(70)、元副支店長小林恵二(59)両被告を競売入札妨害(談合)罪で追起訴し、準大手「鴻池組」名古屋支店元副支店長森本晃弘容疑者(61)を同罪で起訴した。鴻池組名古屋支店元土木営業部長上田義裕容疑者(52)については略式起訴し、名古屋簡裁は同日、罰金80万円の略式命令を出した。
 起訴状によると、柴田被告らは、昨年3月9日に入札のあった港区の「第2次当知雨水幹線下水道築造工事」で、鴻池組を幹事社とする共同企業体(JV)に落札させることを計画。同年2月上旬、同市東区の大林組名古屋支店などで、鴻池組JVが落札できるように調整し、同月中旬から3月上旬にかけて、入札に参加する8JV24社を決定した上で、鴻池組JVに12億7000万円で落札させた。

 これだけ「談合がいけない」とされているにも関わらずゼネコンランキング上位の大林組と鴻池組という大手ゼネコンが堂々と談合をしている事実には呆れ果てる。
 それにしてもこれだけの犯罪に対して罰金80万円の略式命令というのはあまりにも刑が軽過ぎないか。
 そんな事だから「たまに捕まることはあっても、やった方が得」という意識を持ってしまい談合がなくならないのではないか。

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