原発不要論・反原発

ホームへ 目次の分離 更新情報 (最終更新日:2012/03/27 )


 大手ゼネコン元社員が原子力発電の効率や発電比率などを徹底的に客観評価した上で語る反原発論。
  1. 下層無 前書き
    自己紹介と当ページの趣旨。
  1. 開閉 建設関連の検証
    原発に絡む建設関連の不正や意見などの紹介と検証をする。
    1. 下層無 美浜原発の手抜き工事(シャブコン)
    2. 下層無 耐震強度偽装
    3. 下層無 阪神大震災の手抜き工事について
    4. 下層無 反省能力の低い国民性
    5. 下層無 地下原発の是非
    6. 下層無 激震に耐えたという勘違い
  2. 開閉 日本のハンディ
    原発を運営する上で不利になる日本特有の要素
    1. 下層無 非軍事限定
    2. 下層無 地震国
    3. 下層無 大河がない
    4. 下層無 ウランの自給率
    5. 下層無 人口密度が高い
    6. 下層無 島国の事情
  3. 開閉 原発安全神話の崩壊
    福島原子力発電所事故で明らかになった原発安全神話の嘘
    1. 下層無 想定外は想定内(千年に一度は十年に一度)
    2. 下層無 設計者の証言(大地震と津波は想定外)
    3. 下層無 洗脳から目覚めない人たち
    4. 下層無 フランスの自信と日本人の驕り
    5. 下層無 原発の危険を語る技術者たち
    6. 下層無 M9で倒れなかった
    7. 下層無 原発事故の頻発
    8. 下層無 原発格納容器水位の異常低下
  4. 開閉 原発推進派に対する疑問
    1. 下層無 全体の約2割に過ぎない発電量
    2. 下層無 化石燃料とウランの枯渇
    3. 下層無 本当に地球温暖化防止に役立つのか?
    4. 下層無 国情に合わない地球環境論
    5. 下層無 炭酸ガスは放射能より有害?
    6. 下層無 原発全停止で電力が足りている謎(後日追加予定)
    7. 開閉 発電効率の検証
    8. 開閉 感情的な原発推進派
      1. 下層無 反原発派はヒステリー?
      2. 下層無 反原発派は電気を使うな?
      3. 下層無 代替案を出せ
  5. 開閉 巨大技術としての問題点
    日本の巨大技術に共通する「理念なき技術開発」の一つとして原発問題を捉え検証する異色の反原発論。
    1. 下層無 技術亡国
    2. 下層無 露呈した技術力の低さ
    3. 下層無 資源が少ないという言い訳
    4. 下層無 技術立国幻想
    5. 下層無 非軍事限定の建前
    6. 下層無 孤立主義
  6. 開閉 原発を推進(存続)したがる理由
    原発推進(存続)には理由がある筈だが、それは一体何か。
  7. 開閉 原発停止のメリット(長所)とデメリット(短所)
    反原発派なので全停止しても特に困らないが、強いて困る点を考察する。
  8. 開閉 福島第一原発事故の国際的影響
    福島第一原子力発電所事故を受け各国で反原発が叫ばれだしたが、国際世論が日本の原発に与える影響を客観的に考察する。
    1. 開閉 原発に有利な要素
    2. 開閉 原発に不利な要素
  9. 閉 反原発関連サイト

前書き

 反原発派には訳の分からない素人が騒いでいるだけというイメージがあるが、私はそうではない。
 私は大学の建築工学科で構造力学を専攻し、準大手ゼネコン鴻池組で現場監督、構造計算、人工知能による建物診断システムの構築などを担当した。
 鴻池組東京本店建築技術部に所属していたため建造物の破壊の実態には詳しい。
 従って原発の安全性に関しては素人ではなく、少なくとも耐震性など建屋の安全性については東大出の原子核物理学者より余程詳しい。

 また、当ページで使ったデータは原発の発電効率など殆どが原発推進派のデータで、反原発派のデータは殆どない。
 当ページを読めば分かるが、原発推進派に有利なデータを使ったにもかかわらず原発を存続しなければならない客観的な要素が殆ど見当たらなかった。

 思想的にも日米安保に賛成で核兵器の保有にすら反対していない私は極左活動家とは対極的な存在だ。
 当サイト内の他ページ アメリカの陰謀に関する検証週刊金曜日の大研究社会科学 を読んで頂ければ分かるが、我が国にとって重要な同盟国である米国を大した根拠もなく悪者に仕立て上げる左翼らの態度を厳しくたしなめている。
 この事からも反原発という以外は教条主義的な極左活動家と殆ど接点がない事がお分かりになろう。

 私は権力や企業に媚びる御用学者でない。
 あくまで客観的に事実を評価する技術者であるだけなのであり、それだけでヒステリーな極左活動家と決め付けられてはたまらない。
 真の愛国心とは自国の技術や安全性などを厳しく客観的に批評する事であり、それが出来なかったから日本は戦争に負けたのだ。
「政府が言ったから」とか「偉い学者が言ったから」ではなく、このページをよく読んで原発の真実は何なのかを自分自身でよく考えて頂きたい。


建設関連の検証

シャブコン・美浜原発の手抜き工事(他ページ)

 上記タイトルをクリックすると当サイト内のゼネコン・建設業の実態のページに飛びます。

耐震強度偽装問題(他ページ)

 上記タイトルをクリックすると当サイト内の耐震強度偽装問題のページに飛びます。

阪神大震災の手抜き・欠陥工事について(他ページ)

 上記タイトルをクリックすると当サイト内の自然科学と技術のページの技術亡国(日本の技術が過大評価される理由>御用学者が多い)に飛びます。

反省能力の低い国民性

 上記で説明した通り阪神大震災の手抜き工事や耐震強度偽装問題や美浜原発の手抜き工事など原発や建設関連の大きな不正は度々発覚している。
 特に耐震強度偽装問題は国会の証人喚問まで行われる大騒ぎになった。
 しかし不正の発覚が教訓として活かされるどころか更に驕りに繋がった例も少なくない。
 よく聞かれる勘違いの一例を挙げると耐震強度偽装に関して「こんな大事件があったから規制が強化されて安全になっているに違いない」という様な書き込みをインターネット掲示板で見た。
 実際にはたちまち全国規模に展開した耐震強度偽装問題に当時の小泉自民党行政がマンション住民に対する責任問題が膨らみ過ぎるのを恐れ放置したのみならず、被害者救済もしなかった。
 こういう状況は少なくとも阪神大震災の頃から続いており改善の兆しは見られない。

 今回の福島第一原発事故についても「これだけの大事件が起きたのだから規制が強化されて原発は安全になるだろう」というインターネット掲示板の投稿を見た。
 お粗末過ぎる大事故が心を引き締める要因になるどころか更なる驕りを招く信じられない状況を生み出している。
 こんな甘い見通しではこれからも状況は改善される事はないと私は思っている。

地下原発の是非

 地震に伴う津波の影響で発生した福島原発事故を受けてインターネットの掲示板などで「原発を地下に造れば安全ではないのか」という意見を多数見かける。
 建築工学の専門家として見解を述べると教科書的には地下建造物は耐震性が高いとされる。私が鴻池組建築技術部で勤務した経験からも阪神大震災など大地震時のデータでは一般に地下構造物の被害は比較的軽い。

 しかし地下建造物は建設や維持のコストが高いので私は地下原発について否定的な見解を持っている。
 当ページの他項目で詳しく説明するが、原発の発電効率は抜群に高い訳ではなく発電の大半を占める火力発電の主流である石炭火力発電や天然ガス火力発電と大差ない。
 原発を地下に建設すると発電効率が著しく低下する。
 原発で国家の命運をかける新兵器の開発もするなら話は別だが、建前では平和利用限定になっている原発の発電効率が低ければ商業的意味はない。

 商業目的で存在する以上多額の赤字を出せないので原発につぎ込める金は当然無尽蔵ではない。
 地下建設により他の安全予算を削られる事になってしまうと却って危険を招きかねず、「安全のための地下原発」の筈が本末転倒の結果を招きかねない。

激震に耐えたという勘違い

 2011年3月の福島第一原発事故については当初、福島原発は地震による被害を殆ど受けていないと思う人が多かった。
 しかし、ほぼ2ヶ月経った2011年5月15日のインターネットの「47NEWS」で原発が致命的な地震被害を受けていた可能性が明らかになった。
 記事の一部を下記に記す。
1号機、津波前に重要設備損傷か 原子炉建屋で高線量蒸気

 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋内で東日本大震災発生当日の3月11日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出されていたことが14日、東電関係者への取材で分かった。高い線量は原子炉の燃料の放射性物質が大量に漏れていたためとみられる。

1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。
想定外の津波により被害を受けたが、未曾有の激震に耐えたのは立派だ」と原発の耐震技術の高さを誇りにする意見すら見られたが、残念ながら勘違いだった。

日本のハンディ

 2011年福島原子力発電所で大事故が発生したが、そもそも建前では軍事利用しない上に地震国の日本に原発は不適だ。
 そんな事も知らない自民党政治家などの素人が欧米で流行っているという理由だけで金と権力に飽かして強引に推進した結果がこの惨状だ。
 それでは軍事と地震という要素について詳しく解説する。

非軍事限定

 元々原子力発電は核兵器の技術から転用されたものであり軍事との関係は密接だ。

 現在の典型的な例では北朝鮮が原発や宇宙開発に力を入れているのはいずれも軍事と関連が深いからだ。
 もちろん原発の技術がいきなり核兵器に結びつく訳ではないが、無い場合より間違いなく核兵器開発に有利だ。
 だからこそ国民が飢えで苦しんでいるにも関わらず北朝鮮は原発や宇宙開発の負担に耐えている。
 この様に原発には核兵器開発費を減らすメリットがある。

 また、米軍がイラクなどで使った劣化ウラン弾は凄まじい威力を発揮したが、原料は原発の廃棄物なので極めて低コストだ。

 原発を保有する全ての国が軍事目的とは限らないが、軍事に使わない国はその分コストにおいてメリットが少ない。 

地震国

 日本が世界屈指の地震国である点も原発に不利な要素だ。
 理屈からすると耐震性を十分強化すれば原子力の運用は可能という見方もある。
 しかし、原発は発電効率が高いとされている(実際には他の方式と大差ないが)が初期建設費が極めて高い。
 耐震性を高めるため更に高い建設費を使って果たして採算が合うのか? そこまでする必要があるか?

 例え千年に一度の地震だろうと原子力発電所を50年使うとすれば、日本中に原発が存在する現状では約5%の割合で原発が被災する事になる。
 風力発電機なら「どうせ人がいない所に建てられる事が多いから極めて稀な大地震が来たら倒れても構わない」と割り切れるが、原発はそうもいかない。

大河がない

 原発の冷却方式には冷却塔による方式と川や海の水で冷やす方式がある。
 日本には川が多いと言っても小さな川では原発の巨大な熱量を冷やすのに十分な水を確保できない。
 水冷方式は巨大な冷却塔の建設が必要ないというコストや工期などのメリットがあるが、日本では大河がないために海辺に原発を建設している。
 これは先に述べた地震国と絡んでくるが、その事が地震により発生する津波の被害を受け易い要因になっている。
 福島原発の事故は正にその弱点を露呈してしまったが、日本に大河があり内陸に原発を造っていれば悲惨な事故は防げた可能性もある。

ウランの自給率

 原子力発電の燃料がウランである事をご存じの方が多いだろうが、日本はウランの自給率が極めて低く殆ど輸入に頼っている。
 これは当然、日本の原発政策にとって不利な要素だ。
 風力発電、水力発電、地熱発電、太陽光発電などは燃料を輸入する必要はないし石炭火力発電についてもコストは高いが国内の石炭を使う手もある。

 火力発電の主力は石炭火力と天然ガス火力だ。
 石油は限りある資源という事が強調されるが、ウランにしても石油と比べて埋蔵量が特に豊かという訳では必ずしもない。

 従って原子力発電のメリットを強いて挙げるとするとたくさんある発電方式の選択肢が一つ増える事くらいだ。

人口密度が高い

 福島第一原発事故について原発推進派から「絶対にチェルノブイリほどにはならない」とされてきたが、チェルノブイリ原発事故に並ぶレベル7に認定された。
 既に放射性物質の放出量がチェルノブイリ原発事故の1割に達しているが、仮にこれで収まったとしても日本は国土が狭く福島原発が首都圏に近い事を考えると人的被害でチェルノブイリ原発事故を上回る可能性は十分ある。

 当然の事ながら人的被害を考える上で人口密度は重要な要素だ。
 サハラ砂漠の真ん中で放射性物質が漏れるのと東京近辺で漏れるのでは当然結果が異なる。
 人口密度の高い国では他の方式(例えば火力発電など)でも人的被害が高くなる可能性はあるが、原発事故ほど顕著ではないだろう。
 人口密度の高さも日本で原子力発電をする上で不利になる大きな要素だ。

島国の事情

 日本が他国との距離が遠い島国である事も原子力発電の立地にとって不利な要因だ。
 なぜなら原発は機構が複雑なため一か所にまとめて大量に発電する方が効率的だ。
 福島第一原子力発電所の様に6号機まであるのは多過ぎるが、ある程度集中させる必要がある。
 そして陸続きの国があれば他国と電力を融通出来るので有利な条件となる。
 ここでは特にフランスを意識する。
 フランス自体は面積こそ日本より広いが人口は日本の半分程度に過ぎない。しかし、陸続きの国が多いため互いに電力を融通出来る。
 実際、フランスはイタリアやドイツに原発で発電した電気を送電している。
 フランスをEU域内の一つの県の様なものとして考えると周辺にはスペイン、イタリア、ドイツ、オランダと人口密度の高い国が多いし、イギリスとは海峡を隔てているがユーロトンネルの長さは青函トンネルと大差ないので英仏間の送電も理論的には十分可能だ。
 また、例えばイタリアは原子力発電を殆ど行っていないが、フランスとイタリアで個別に同じ様な技術を持つ必要が無いので、技術の集中という点でも効率的で一種の分担とも言える。
 その点で日本は韓国とさえ電力の融通が難しいのでフランスの様に電力の8割を原子力発電に頼るなど、とてもおぼつかない。

原発安全神話の崩壊

 2011年3月の東日本大震災による福島原発事故はチェルノブイリ原発事故と並ぶレベル7の原発事故となった。

想定外は想定内(千年に一度は十年に一度)

 福島原発のお粗末な事故について、地震の規模が「想定外」或いは「千年に一度の大地震」という言葉を耳にした。
 しかし、私は「想定外」という言葉を何度も聞いた気がする。
 大地震が発生して思わぬ被害を受ける度に「想定外」という言葉が免罪符のように使われるが、十年に一回位は聞いている気がする(私の気のせいか?)。
 また、東日本大震災は史上4位で千年に一度の大地震という話も聞いたが、素朴な疑問としてそれでは人類は4千年前から精密な地震計測をしていたのだろうか(だとすれば凄過ぎる・・・)。

 関係者が保身のため想定外で誤魔化している気がするのだが。私にとって「想定外」という言葉は想定内だ。
「想定外」という事は要するに読みが甘かったという事だし、仮に千年に一度の大地震だったと認めるにせよ確率からすると今来ても全く不思議はなかった訳だ。
 一つ間違えば世界が吹っ飛ぶ原発管理において見苦しい言い訳は通用しない。

設計者の証言(大地震と津波は想定外)

 チェルノブイリ原発事故と並ぶレベル7の原発事故を起こした福島原発について北海道新聞2011年3月17日の記事に下記の記述がある。
福島原発設計 元東芝の技術者 「津波全く想定せず」(03/17 10:22)
東京電力福島第1原発を設計した東芝の元技術者、小倉志郎さん(69)=横浜市=が16日、東京の外国特派員協会で記者会見し「1967年の1号機着工時は、米国ゼネラルエレクトリック社(GE)の設計をそのままコピーしたので、津波を全く想定していなかった」と明かした。

 三陸沿岸は津波の多発地帯だが、津波が比較的少ない米国技術が今回の被害の盲点となった可能性がある。

日本の原子力発電は英米の技術輸入で始まり、福島原発はそのさきがけ。小倉さんは1、2、3、5、6号機の冷却部分などを設計し「1号機は、日本側に経験がなく無知に近い状態だった。地震津波の多発地帯とは知っていたが、批判的に検討、判断できなかった」と話した。2号機からはGEの設計図を改良したが、「マグニチュード8以上の地震は起きない、と社内で言われた。私の定年が近くなってやっと、地震対策の見直しをしたが、それでも大地震は想定しなかった。責任を感じる」と述べた。
 大事故を起こした福島原子力発電所の設計者は米国の技術の単なるコピーだと告白している。
 日本の事情を考えず津波を全く考慮していない上に、地震に対する想定も甘過ぎた。
 政府や電力会社が強調してきた安全設計とは程遠い現実が浮き彫りになった。

洗脳から目覚めない国民

 これほど深刻な状況に陥ったにも拘らずインターネットを見ると未だに「日本には原発が必要だ」と言う人が少なくない。
 欧米諸国でさえ「二酸化炭素の排出を考えるとぎりぎり採算が合うかどうか」というレベルだ。
 他の反原発派はどうか知らないが少なくとも私は上記の「日本のハンディ」の根拠を含めた計算の上で「安全を確保すれば採算が合わない筈」と主張しているだけなのだが。

 多くの人が未だに頑迷に原発が必要と思い込んでいるのは恐らく政府による長年の「安全」洗脳によるものだろう。
 行政などが主導の公聴会に行くと「なぜこの人が」と思うような訳の分からないタレントが原発の安全性をやたらと強調する。彼らに共通しているのは声が大きくて威圧感のある点だ。
政府が安全と言っているのだから安全だ」、「優秀でまじめな日本の技術者が高度な日本の技術で管理しているのだから安全だ」、「それでも反対する反原発派は極左過激派だ」とそれこそ過激で科学的根拠のない民族主義的発言で反原発派を黙らせている。
 しかし、どんなに滅茶苦茶な発言でも繰り返し言われると人間の意識は数十分で支配されてしまう。(これについては当サイト内の他ページ男女共同参画の罠でも述べた)

 私は日米安保に賛成で核開発にすら反対しておらず教条主義的な極左活動家とは対極にあるが、それでも反原発というだけで偏向思想の持ち主と思われてしまうのは原発推進ファシズムとしか言いようがない。

フランスの自信と日本人の驕り

 東京電力福島第1原子力発電所で起こった爆発事故を受けてフランス政府は2011年3月12日、エネルギー関連の関係閣僚と原発業界の合同会議を開いた。
 会議後の記者会見でベッソン産業・エネルギー・デジタル経済担当相は「フランスの原発は地震や洪水など全てのリスクを想定している」と述べて安全性を強調した。

 フランス人から以前もこの様な指摘をされた記憶がある。
 一九九九年九月三十日、茨城県東海村にあるJCOのウラン再転換施設で臨界事故という原子力関連施設としては致命的な大事故が発生した。
 この事故の発生に対してイギリス人やフランス人からは、「信じられないようなお粗末な事故であり、厳重に管理されている我が国ではこのような事態は考えられない」というようなコメントがあった。
(当サイト内の自然科学と技術のページの日本の技術が過大評価される理由自国の技術に対する自信で詳しく解説した)

 後で詳しく述べるがフランスの方が安全性が高い事については福島原発の建設に携わった日本の技術者からの証言もあり全くの嘘ではなさそうだ。
 少なくとも日本人は人種差別とかフランス人の驕りとか偉そうに批判できる立場にはない。
 日本は原発事故大国でありながら技術の高さと安全性をやたらと強調し誇りにさえしてきた。
 日本の驕りを示す例として阪神大震災がある。阪神大震災の約一年前にロサンゼルスで地震が発生して建造物が大被害を受けた際に「日本ではこんな事はあり得ない」と大見得を切っていた学者がたくさんいたが、阪神大震災では多数の手抜き工事や欠陥工事が発覚し、米国よりずっと現場管理が酷い事が露呈した。
(当サイト内の自然科学と技術のページの日本の技術が過大評価される理由御用学者が多いで詳しく解説した) 

 自国の技術の高さを信じたいあまり安全性について客観視できない日本人の在り方に強く反省が求められる。

原発の危険を語る技術者たち

 北海道新聞3月23日号に東京電力福島原子力発電所を造った元技術者たちの証言が掲載された。一部を紹介する。

 東芝で放射能を閉じ込める原子炉格納容器の耐性研究グループ長だった後藤政史さんは下記の様に語る。

 フランスは、内圧が上がりにくく、放射能物質が漏れにくい巨大なフィルター付き格納容器を造った。我々も必要、と議論したが、会社は不採用。コストだなと思った。
 1960年代、国内に技術がなく、津波を想定しない米国の設計図をコピーして福島第一原発を設計した元東芝社員小倉志郎さんは下記の様に語る。
 高台に建てたり、防水構造にしたりしていれば。想像力が足りなかった。
 4号機の設計にかかわった元日立グループ社員で科学ライターの田中三彦さんは今回「政府や公共放送が危機を正しく国民に伝えていない」と感じ下記の様に語る。
 格納容器内が8気圧になった時、普通は4気圧などと流していた。普通は約1気圧で、4気圧とは事故に備えた設計値だ。8気圧なら異常事態なのに、パニックにしないという配慮が多過ぎる。
 3人が受けてきた仕打ちについて記事では下記の様にまとめられている。
 3人はこれまでも匿名、あるいは著作、集会などで原発の危険性を訴えてきた。だが国や企業から返ってきたのは「冷笑だった」(後藤さん)。
東京のNPO環境エネルギー政策研究所顧問竹村英明さんは「日本には許認可権を持つ経産省、学者、電力会社などで作る原発ムラがある」という。竹村さんによると、ムラは強力で、疑問や批判を口にする技術者を村八分にする。3人がそうだったという。

M9で倒れなかった

 原子力事故史上(暫定)第2位の事故を起こした福島原発に対して妙な褒め方をする人がインターネットで見られる。
津波で冷却装置が流されてしまったが、本体がマグニチュード9の激震に耐えたのは原発の優秀さを示すものだ。
 これは間違っているのだが、何が間違っているのか素人が答えるのは案外難しいかもしれない。
 この点に関して大学で建築構造力学を学び、ゼネコンでも構造計算を担当した専門家の私が解説する。

 まず、マグニチュード9は地震の規模を示す指標で原発の耐震性を問うなら、その場所の震度で考えるべきだ。

いや、福島原発は震度6に耐えたのでやはり立派だ」と思うかもしれないが、次なる問題としては「そもそも本当に耐えたのか」だ。
 当ページの激震に耐えたという勘違いでも述べたが津波の前に地震で大きな被害を受けた可能性が示唆されている。
 実際には放射能が強烈なので地震直後は人がなかなか近寄れず、遠くからの画像を一見すると大きく傾いたり一階が押し潰されるなど明らかな変形がなかっただけだ。
 地震被害を受けた建物の柱や壁に斜めの大きな亀裂(X字型)が入っている事がよくある。
 そうなると放棄せざるを得ない物も出てくるが、マンションなら酷く傷んでも人命が守られればよいという前提の設計も許される。
 しかし、病院や原発は更に高度な耐震性が求められる。

 仮に福島第一原発の躯体が地震によって殆ど被害を受けなかったとしても大して偉いとは思わない。
 なぜなら破壊のメカニズムは複雑であり地震の方向や周波数など様々な要素が複雑に絡み合い、崩壊するかどうかは運の要素も多分に含まれるからだ。
 阪神大震災では高架橋が横倒しになった反面、高架橋が倒れた直ぐ傍で旧式の木造建築や地震に弱いとされるブロック塀が殆ど被害を受けずに残った例も見受けられた。
(これは当サイト内の「自然科学と技術」のページの「御用学者が多い(技術亡国)」で説明した)

 この様に震度6で倒壊しなかったから偉い訳でもない。
 阪神大震災の神戸についても震度6で建物が全部潰れた訳ではない。
 もし全ての建物が激しく変形するほどの損傷をうけていたなら神戸の様な大都市で死傷者が一万人に満たない筈がないし未だに復興は終わっていない筈だ。
 耐震性の高さで有名な五重塔をはじめとして古い技術でも十分に激震に耐えている建物は幾らでもある。
 現代の建築にしては特に上下方向に細長い訳でもなく、強固な地盤を選んで設置されている筈(行政や電力会社が言っているだけで本当にそうなのかは疑わしいが)の原発で震度6程度に耐えられなければそれこそ大問題だ。

 地震後、暫くして配線用ピットのひび割れから大量の放射能汚染水が漏れ出している事が明らかになった。
 コンクリートピットは通常、地下などの低い部分に設置され、ピットのコンクリートは他の部位より厚みがある事が多い。
 コンクリート厚さ1m以上を誇る原発において激震があったにせよピットにひび割れが生じるのはお粗末であり、ひび割れの原因が地震ではなく手抜き工事だとすれば更に問題だ。

原発事故の頻発

 原発事故史上2位以上が確定となった2011年福島原発事故(1〜4号)以前にもあまり注目されていないが、深刻な原発事故が頻発していた。
 主な原発事故を紹介する。
1973年 3月 美浜原子力発電所燃料棒破損事故
1978年 11月 2日 東京電力福島第一原子力発電所3号機事故
1989年 1月 1日 東京電力福島第二原子力発電所3号機事故
1990年 9月 9日 東京電力福島第一原子力発電所3号機事故
1991年 2月 9日 関西電力美浜発電所2号機事故
1991年 4月 4日 中部電力浜岡原子力発電所3号機事故
1995年 12月 8日 動力炉・核燃料開発事業団高速増殖炉もんじゅナトリウム漏洩事故
1997年 3月 11日 動力炉・核燃料開発事業団東海再処理施設アスファルト固化施設火災爆発事故
1998年 2月 22日 福島第一原子力発電所事故
1999年 6月 18日 北陸電力志賀原子力発電所1号機事故
1999年 9月 30日 東海村JCO核燃料加工施設臨界事故
2004年 8月 9日 関西電力美浜発電所3号機2次系配管破損事故
2007年 7月 16日 新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原子力発電所事故
2011年 3月 12日 東京電力福島第一原子力発電所1号機事故
 主な原発事故だけでこれだけあるが、他にも細かいトラブルは頻発している。
 以前から反原発派により原発事故の深刻さは訴えられてきたが、政府や多くの国民はあまり気にすることなく2011年の福島原発事故に至る。
 2011年の福島原発事故は非常に不運な事故では決してなく杜撰な管理を長年に渡り放置してきた当然の帰結だ。

原発格納容器水位の異常低下

 2012年3月26日に福島第一原発に関するトラブルが報道された。
格納容器内、水位60センチ=2号機、内視鏡で初確認―福島第1原発・東電
時事通信 3月26日(月)21時6分配信
 東京電力福島第1原発事故で、東電は26日、2号機原子炉格納容器に内視鏡を入れて内部を調査し、底部から約60センチのところで水面を確認したと発表した。格納容器内に水がたまっているのを直接確認したのは初めて。27日に放射線量を測定する。
 東電によると、格納容器側面にある配管開口部から内視鏡を挿入。カメラと温度計が付いたケーブルを底部に向けて垂らしていったところ、開口部から約6.4メートル下、底部から高さ60センチで水面を確認した。水温は48.5〜50度で、格納容器内の気温は44度前後。水は透明だが、カメラを水中に入れると、黄色い砂状の堆積物が巻き上がったという。
 水位60センチと言われても分かり難いかもしれないが、異常に低い。
 本来は4〜5m近い水位がなければならないのに、その六分の一にも満たない水位がいかに低いか素人でも分かるだろう。
 更に格納容器は言わばフラスコの様に球面形になっている。
 具体的な計算をしていないので正常時の何%位なのか分からないが、イメージとしては底の方に水がほんの少しだけ残っている状態だ。

 福島原発内部については1年近く前から監視している筈であり、隠蔽説も出ているが、そう思われても仕方ない。
 逆に本当に気付かなかったのだとすれば、それもまたお粗末すぎる。


原発推進派に対する疑問

全体の約2割に過ぎない発電量

発電比率(%)
石炭火力 26.8
LNG火力 26.3
原子力 24.0
石油火力 13.0
水力 7.1
その他 2.8
 福島原子力発電所がメルトダウン寸前の大事故を起こたにも拘らず未だに原発の必要性を唱える人が少なからず存在する。
 それでは電力消費量に占める原子力発電の比率について考えてみよう。
 左の表は2008年現在の発電比率(電気事業連合会【電気の情報広場】)で原子力発電の発電比率は24%(2010年には更に低下して23%)だ。
 今すぐに全ての原発が停止すれば発電できる電力は約2割強減って8割弱という事になる。

 素朴な疑問として仮に全ての原発を停止して現状の約8割の電力になったとしても絶対やっていけない数字だろうか。
 また、一時的には困るかもしれないが、今まで原発にかけていた金と手間を現存の他の発電方式に回せば少なくとも1割程度は電力増産が可能ではないか。
 なぜ1割の増産が可能かと聞かれるかもしれないので答えるが、既に述べた様に電力会社の示すデータでさえ原発の発電効率は他の方式の発電効率より何倍も高い訳ではなく何割か高い程度に過ぎない。
 それなら原発以外で最も効率の高い方式に重点的に金を注ぎ込めば十分に1割の増産は可能と思う。
 そうなると原発無しでも従来の8割程度の電力は賄える事になり、極端に国民生活が逼迫するとも思えない。

 また、近年著しく人口は減っているし今後、日本の人口が著しく増えるとも思えない。
 電力消費量についても省エネ家電など日本が誇る省エネ技術に力を入れれば消費電力を1割近く減らす事は可能ではないだろうか。

 この様に現状で2割程度に過ぎない原発の発電量は他の方式の発電量の増産と消費電力の削減で十分対応できそうだ。

化石燃料とウランの枯渇

 原発推進派からよく「火力発電に使われる化石燃料はいずれ枯渇するので資源を守るために原子力に移行する必要がある」とか「先行きの見えない不安定な原油輸入に依存しない電力の発電」などの意見が聞かれるが、それでは化石燃料とウランの残量はどうなっているのか。
石油 10,500億バーレル 40年
石炭 9,845億トン 216年
天然ガス 155兆立方m 62年
ウラン 393万トン 61年

 左の表は「化石燃料の枯渇」問題あれこれというブログからデータを拝借した。
世界のエネルギー資源の確認埋蔵量と可採年数だ。(資料:BP統計2002、OECD/NEA、IAEA URANIUM2001)
可採年数とは確認埋蔵量を年間生産量で割った数字だ。
これを見ると化石燃料の可採年数の合計がウランと比べて圧倒的に多い。
個々の燃料に関してもウランは3位に過ぎないし、確認埋蔵量はあくまで確認された数字であり今後ウランが最下位になる可能性も十分ある。
 特に石炭は十分な埋蔵量があり国内でも一時的には自給可能だ。

 石油は何十年も前から「30年で枯渇する」とされながら未だに使われている。新たな油田の発掘や低燃費エンジンなどの開発で寿命が予想より伸び続けている。
 既に述べた様に火力発電が全発電量の約7割を占め、中でも石炭火力発電と天然ガス発電の占める割合が高い。
 従って石油の枯渇はさほど深刻に考える必要が無いのではないか。

 ウランは燃料としては現時点で発電と空母、潜水艦など一部の艦船の発動機などに用途が限定されている。
 従って量的に少ないだけでなく核兵器や軍艦の動力など軍事利用でも需要が見込まれる事から「日本が燃料資源に乏しいから」という理由で原子力に頼り過ぎるとむしろ危険ではないか。
 少なくとも「限りある化石燃料資源を守るため」という大義名分は説得力に欠ける。

本当に地球温暖化防止に役立つのか?

 原発推進派は「原発は二酸化炭素を出さないので地球温暖化対策に好ましい」としているが、反原発派から疑問視されている。
 原発の初期の目的は高効率エネルギーを得る事であり、地球温暖化対策は全く視野に無かった。
 原発が地球温暖化防止に有効だというのはとってつけた様な意見であり、全く存在意義の無くなった原発を存続させるために後から作られた苦しい言い訳に過ぎない。
 日本の原発は海に面しているが、これは海水で冷却するためだ。
 原発の温排水については共産党などから何度も指摘されている。
 下記のサイトが参考になりそうだ。
<地球温暖化の防止策として原子力発電所は効果的か?>

 又、コンクリートの発熱については意外に知られていない。
 セメントの焼成には大量の熱を要するし、コンクリート練り混ぜ時にも水和熱を出す。
 水和熱はコンクリートの種類によっては巨大構造物の場合、数十年に渡り発熱する場合もある。
 原発もコンクリートの厚みが1m以上もあるそうだが、土木構造物並みのコンクリートが必要なので水和熱は大きな量になる。

 専門家の中には、「地球温暖化からすると、むしろ最低のシステムだ」と言う人も少なくない。
 電力会社などの説明では運転時に発生する二酸化炭素についてしか計算していないようだ。
 上記のコンクリートやセメントなどの建設時の発熱などは全く話題になっていない事からすると、恐らく計算の中に入っていないのだろう。
 その他にも見落とした点はあるかもしれないので、二酸化炭素や熱量の発生については徹底的に検証し直す必要がある。

国情に合わない地球環境論

 前項の化石燃料とウランの枯渇本当に地球温暖化防止に役立つのか?に関係するが、限りある燃料資源問題と二酸化炭素の放出量について考えなければならないにせよ全ての国で一律に対処しなければならないのか疑問だ。
 前項では原発の二酸化酸素排出量削減効果に疑問を呈したが、ここでは一応効果があるという前提で考える。
 そうだとしても世界全体として考える必要がある。
 ウランが有り余って全ての国に十分行き渡るだけの量があるなら話は別だが、既に述べた通りウランの埋蔵量はさほど多くないし、原発導入を希望する国は多い。
 日本が原子力発電を積極的に推進した結果、他国がウランを購入出来なくなり火力発電に頼るようになっては無意味だ。

 個々の国で二酸化炭素排出量を減らす努力は重要であるにせよ、ここにも国際協調は必要になる。
 地震や津波などで不利な要素の多い日本で無理に原子力発電を使う必要があるのか。
 地震や津波などの危険性が低く人口密度が低く国土が広いなど有利な要素を備えた国に原発を優先的に使わせる(ウランを優先的に供給する)べきではないか。
 一度事故が起これば日本国内だけでなく偏西風に乗ってアメリカ大陸まで放射能が撒き散らされる恐れがある状況を国際社会は望まないだろう。

炭酸ガスは放射能より有害?

 原発推進派が原発の必要性を示す時に炭酸ガスの排出量をよく持ち出すが、火力発電は炭酸ガスの放出量が原発より遥かに多いそうだ。
 それを原発推進或いは存続の根拠とするのなら、日本の火力発電により炭酸ガスがどの程度発生して原発からの放射性物質漏出と比べてどちらがより環境に悪いか客観的に比較する必要がある。
 原発推進派が具体的なデータを示した例を殆ど見ないが、これは「原発がクリーンだ」という事を前提にした「ゼロを何倍しようとゼロだ」という理屈なのだろうか。

 しかし、福島第一原発事故では大量の放射性物質が放出されたし、以前から原発の放射性物質の漏出はあった。
 環境基準の何百倍とか通常濃度の何万倍と聞くと放射能の素人である私からすると「日本は終わった」感じもするのだが原発推進派から見ると大した事のない数字に見えるらしい。

 放射能による人的被害は分かり辛いというのは確かにあるだろうが、逆に言うと炭酸ガス自体は毒ガスではないので環境に与える影響は比較的分かり易い筈ではないか。

 炭酸ガス放出量が圧倒的に違うにしても「火力発電は原発の何倍」という相対的な比率だけでなく日本の火力発電の放出する炭酸ガスによる絶対的な結果の予想値を示すべきだ。
「1年間で海面が何ミリ上昇し、気温が何度上昇する」という具体的数値だ。
 当然その位出来るだろう。
 もし、年間で1ミリ程度の海面上昇或いは0.01°程度の気温上昇に留まるのなら炭酸ガス問題は取り敢えず短期的にはあまり気にしなくてよいのではないか。
 その程度であれば極端に海面や気温が上昇する前に自然エネルギー発電の技術が確立している可能性が高いので日本の火力発電による炭酸ガス放出は環境に影響のないレベルと考えられる。

原発全停止で電力が足りている謎(後日追加予定)

発電効率の検証

原発の発電効率は抜群か

発電コスト(円)
原子力 5.9
LNG火力 6.4
石炭火力 6.5
石油火力 10.2
水力 13.6
 左の表は1999年に通商産業省資源エネルギー庁が発表した試算による1kWhあたりの発電コストだ。(wikipediaを参照)
 これを見ると原発の効率が最も良い数字にはなっているが、LNG火力や石炭火力と比べて1割程度の差しかなく言われるほど発電効率に大差がある訳ではない。
 通産官僚は当然、原発推進派という事になるが、そのデータでさえ火力発電の主力である石炭火力発電と比べて大差ない。
 この程度の差なら産出国の政情不安やウラン需要の急増などにより効率が十分に逆転しうるレベルだ。

 東京電力の原子力発電の経済性というページでも原子力発電と石炭火力発電の差は似たようなものだ。

 実は隠さずに言うとこれより原子力にとってずっと有利なデータを見た事もある。
 しかし、私は意図的に原子力に不利なデータを出した訳ではない。
 通商産業省資源エネルギー庁という事で出所がしっかりしているし、見方が分かり易いから使っただけだ。
 そもそもかけ離れたデータがあるという事はどちらかがインチキをしている訳ではないにせよ、計算の仕方や考え方の前提によって値が大きく変わり得る当てにならない数字という事だ。

 また、原子力発電所は数が少なく一か所で大量に電力を発電している上に大都市などの電力消費地から離れている場合が多い。
 そのため分散して存在し大都市圏に隣接する事も可能な火力発電所などと比べて送電ロスも大きい。

 発電効率を考えると原発が必要不可欠である根拠が薄弱と言わざるを得ない。

数のメリット

(効率は円/kWh)
発電方式 比率 効率
石炭火力 26.8 6.5
LNG火力 26.3 6.4
原子力 24.0 5.9
石油火力 13.0 10.2
水力 7.1 13.6
 自動車などの工業製品では製造する数が多いほど一般に効率は上昇する傾向がある。
 これは素人でも割と容易に理解できると思うが、同じ物をたくさん作る事により工作機械などの負担の割合を減らす事が出来るからだ。
 当然、発電についても同じ事が言える。
 左の表は当ページで使った発電比率と発電効率を一つにまとめたものだ。
 石炭、ガス、原子力の上位3方式の比率はほぼ等しく効率も大体同じで他の方式より高い。
 多少順位にずれはあるものの比率が高いほど効率が高い傾向がある事が確認された。

 正確に試算した訳ではないので実際にはどうなるか分からないが、石油火力を今の2倍、水力を3倍程度の水準にすれば原子力の効率を上回る可能性がある。
 逆に原発推進派の立場で言うとフランスの様に原発の発電比率を7割程度まで上げれば原発の発電効率は著しく向上するだろう。
 しかし、推進派によると「資源のない日本は発電方式のバランスを取らなければならない」筈なので原発の発電効率が相対的に向上する可能性は低い。

莫大な原子力研究開発費

原子力関連研究費
フランス 77%
日本 70%
ドイツ 51%
スウェーデン 25%
アメリカ 10%
フィンランド 10%
 反原発派から日本の原子力関連研究開発予算が非常に高い事がよく指摘される。
 左の表は各国がIEAに報告したデータを基にした原子力関連研究費の割合だ。
よく分かる原子力−各国のエネルギー開発予算のサイトを参照)
 2位の米国は日本の3倍近い経済規模がありながら日本の原子力関連研究開発予算は米国の倍以上だ。
 日本の再生可能エネルギー予算は原発関連の十分の一以下で、原発関連が約7割。

 これだけ原子力関連の予算が多ければ発電効率が非常に高くて当然という気がするが、その割には既に述べた通り石炭火力発電や天然ガス発電と比べて発電効率は大差ない。
 素朴な疑問として原子力とそれ以外のエネルギー関連の研究開発費の割合を逆転させた場合に石炭火力発電や天然ガス発電辺りなら完全に原子力発電を上回りそうな気がするし、もしかすると自然エネルギーに関しても原発を追い抜くのではないか。

 これだけ研究費に格差がありながら他のエネルギー(特に自然エネルギー)が非効率と決め付けるのはアンフェアだ。
 当然、研究開発費も各発電方式の比較において発電コストの計算に入れるべきだと思うが、果たして入っているのだろうか?
 また、「研究開発費と発電効率の因果関係は明確でなく仮に予算の配分を逆転させても発電効率に大した差は現れない」というのであれば研究開発自体が無駄な可能性もあるので、原子力発電の研究をやめてはどうだろうか。

感情的な原発推進派

反原発派はヒステリー?

 自民党の石原伸晃幹事長による2011年6月14日の記者会見が物議を醸している。
自民・石原氏、反原発は「集団ヒステリー」
2011.6.15 07:57
自民党の石原伸晃幹事長は14日の記者会見で、東京電力福島第1原発の事故後、反原発の動きが広がっていることについて「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは心情としては分かる」と述べた。

 「反原発は簡単だ。脱原発というのも簡単だ。しかし生活を考えたときどういう選択肢があるのか示さなければいけない」とも指摘した。

「集団ヒステリー」という表現に反感を持つ人が多かったが、当然だろう。
「心情としては分かる」なら集団ヒステリーなどと人を愚弄した言い方をすべきではないし、「反原発は簡単だ。脱原発というのも簡単だ」というのは一体何が言いたいのか分からない支離滅裂な発言だ。

 反原発派として石原氏のヒステリー発言に反論させて頂くが、嫌煙者を罵倒する喫煙者に見られるように相手に対してヒステリーなる言葉を使う者は論理で追い詰められた敗者が多い。
 ヒステリーかどうかは主観だから「お前こそヒステリーだ」と言われれば水掛け論になるだけだ(実際言った本人が一番ヒステリーである場合が多い)。

 私は今まで政府や自治体による原子力発電の広報活動を見てきたが、コメンテーターには声が大きくて発言に威圧感のある中村浩美氏の様な人物が多用された。
 コメンテーターの大声で圧倒しているだけで中身が無かった。
 原発が安全とか必要などの根拠については、「偉い先生が言ったから間違いない」とか「日本人は世界最優秀民族だから」、しまいには「政府のやる事に反対する奴は極左活動家だ」など科学的或いは客観的な要素が無く、それこそヒステリーな感情論だ。
 原発反対派が冷静かつ科学的に対応しようとしても原発推進派が聞く耳持たず大声で威圧してくるのだから、原発反対派としては対抗手段としてヒステリーにならざるを得ない。

 原発推進派は原発反対派をヒステリーと感じるなら、それは鏡に映された自分の姿を見ていると考えるべきではないか。

反原発派は電気を使うな?

 原発推進派による感情的で的外れと思う例を挙げる。
「代替案を出せ」という意見と共に原発推進派が反原発派を恫喝する意見に「発電量の3割を占める原発の電気に世話になっていながら電気を使うのはおかしい」という妙な話がある。
 あまりにも的外れな意見をいきなり出されると却って言葉に詰まるが、これはその典型だ。

 まず既に述べた様に原子力による発電量は2割強に過ぎないので2割節電すれば済む。
 そもそも私は「原発を使え」と頼んでもいないのに世話になっていると言われても・・・(頼んでもいないのに勝手に押し付けるのはヤクザより酷い)。
 その地域の発電所の管轄を決めるのは実態としてほぼ独占企業である電力会社が決める事であり我々一般市民が決める事ではない。
 私の住区では恐らく北海道電力の泊原発から送電されていると思うのだが、仮に選べたとしても「原発に反対だから伊達火力発電所から送電してくれ」とは言わない。
 そんな事をしたら社会全体としては電力の無駄になるし反原発の代替案の一つである「節電」に反する事になるので、原発が近くにあればその電気を使う。

 逆に言うと推進派こそ「発電の7割を占める火力発電の世話になっておきながら電気を使うのはおかしい」という話にならないか?
 炭酸ガスの排出量を理由に原発の必要性を訴えるなら「火力発電が主流であるのはおかしい」という事になる筈なのであり、火力発電が大半を占める状況には反対なのだよね?
 なら電気など使わずに江戸時代の様な質素な生活を送って頂きたい。

代替案を出せ

 原発推進派が反原発派に対してよく突きつける意見に「原発が要らないと言うなら有効な代替案を出せ」というものがある。
 一見もっともらしく見えるかもしれないが、数値的にみると的外れな言い逃れだ。
 既に述べた通り原発が全発電量に占める割合は2割強に過ぎず必ずしも全停止出来ないレベルではない。

「代替案を出せ」とは言論で追い詰められた者が相手の言論を封殺する際よく苦し紛れに使う手だ。
 実際には反原発派が代替案を出している場合が少なくない。
 最も有力な代替案は火力発電だ。
 火力発電は発電量の7割を占め、石炭、天然ガス、石油など様々な方式によりバランスを取り易いのも特徴だ。
 発電所の建設自体に原発ほどの金や時間がかからないし、そもそも原発周辺には同等の発電力を備えた補助の火力発電所があり原発が停止した時に備えて待機している。
 従って現時点で原発を全停止しても特に困らない。
 この様に短期的には火力発電で代替できるし、長期的に考えると自然エネルギーでの代替が考えられる。

 そもそも「代替案を出せ」というのは原子力発電の比率が無視できない比率を占めていればこそだろう。
 火力発電が7割を占めている現状を考えると、現状の代替案を出さなければならないのはむしろ反原発派ではなく原発推進派の方だ。
 つまり根底には「火力発電をこれ以上増産してはいけない」という思想があるらしいが、その根拠は一体何なのか。
「様々な方式によりバランスを取らなければならない」という推進派の意見からすると原発の発電量を3割以上にする事は出来ない筈だ。
 語るに落ちたとはこの事だ。  

巨大技術としての問題点

技術亡国

 上記タイトルをクリックすると当サイト内の自然科学と技術のページの技術亡国に飛びます。
 理念なき日本の巨大技術の在り方に疑問を呈しており原子力問題とも間接的に絡んできます。
 全て読めとは申しませんが、暇な時にでも覗いてみれば参考になると思います。

露呈した技術力の低さ

 チェルノブイリに並ぶレベル7の原発事故となった福島第一原発事故に関する報道は世界最高水準と思われてきた日本の原子力技術水準の低さを露呈した。
 技術力の低さについては当サイトで既に述べたが東芝の技術者によると福島原発の設計は米国の技術のコピーに過ぎないし、安全性でもフランスに劣るそうだ。
 津波を想定せず冷却設備を全て流されてしまったお粗末さもさる事ながら、その後の対応も日本製ハイテク機器は殆ど使えずヘリコプターや放水車によって人が水をかけるという原始的方法に頼らざるを得なかった。

 それに対して欧米、特にアメリカのハイテク機器の活躍は目覚ましかった。
 無人偵察機「グローバルホーク」を始めとして前述の放水車にしても一部は米軍の借り物だ。
 フランスからもロボットが送られるなどハイテク機器が提供されたが、ハイテク王国を誇っていた筈の日本の技術が活躍する事は殆どなかった。

 当サイト内の自然科学と技術のページの技術亡国に書いたが日本の技術が欧米に劣る事自体はやむを得ない事であり恥すべき事ではないが、問題はハイテク国家という下らないプライドが技術大国である米仏に対する技術支援の要請を大幅に遅らせてしまった事だ。
 日本人は自国が技術小国に過ぎない事を素直に認め反省する事こそが次なる災害を防ぐ道と心得るべきだ。

資源が少ないという言い訳

 原発推進派から「日本は資源がないから原発が必要だ」という意見がよく出されるが、「資源がないから・・・」は原発に限らず科学技術振興の必要性を説く際によく聞かれる。
 最近ではノーベル賞受賞者が盛んにこの台詞を口にしていた。

 これについて妙に思う点が二つあるが、まず日本は本当に資源が少ないのか。具体的な数値データを示された例を殆ど見ていない。
 勘違いされている可能性があるので私が例を挙げよう。
 日本は雨量が多く北から南まで世界に勘たる大森林国だが木材の自給率は約2割に過ぎない。
 日本の木材は量だけでなく質も高いにもかかわらず、なぜわざわざ大半を輸入しているのかと言うと呆れた事に「森林伐採や管理のノウハウに乏しく国産材を使うと却って高くつくから」だ。
 要するに「自給率が低い=資源が乏しい」と考えている人が地位の高い学者の中にさえ多い様なのだが、米国が石油を輸入している例を見て分かる通り競争の激しい国際競争社会において主要工業国は国内に資源があっても外国から大量に資源を輸入する事が多い。これは当たり前過ぎる事だ。
 例えば火力発電の主力である石炭は日本で埋蔵量の1割程度しか掘られていないとされる。なぜ中国から輸入するのかと言うと質の問題もあるが、大きな理由としては日本では中国より命の値段が高いという事もある。

 それ以上に妙に思うのは仮に日本は資源が乏しいとして、それならなぜわざわざ資源を余分に消費する産業や発電方式を取り入れたがるのか。
「資源が少ないから物作りに励まなければならない」と言われても農業でも商業でも医療技術でも良い訳だがなぜわざわざ工業技術にこだわるのか。
 原発についても同じ事が言えるが、「日本は資源が無いから」と言いながら、なぜ限りある燃料資源の中で特に残り少ないウランが必要な原子力発電でなければならないのか。
 無尽蔵のエネルギーとして日本が進めている核燃料サイクルのプルサーマルに期待を寄せているのだろうか。
 しかしプルサーマルはまだまだ確立していない技術で、原子力発電を続けるならこれからもウランを輸入し続けなければならないだろう。

 この2つの素朴な疑問に対して推進派は果たして答えられるのか。是非答えを聞いてみたい。

技術立国幻想

 日本において臆面もなく使われる奇妙な言葉に「(科学)技術立国」なるものがあり、その技術の一つとして原子力発電が位置付けられている。
 いかにも民族的自尊心をくすぐる言葉だが、私に言わせると恥ずかし過ぎる(或いは馬鹿過ぎる)。
 技術立国なる発想は非現実的で有り得ない概念だからだ。
 なぜなら、技術を国内だけで使うならともかく国際取引で黒字を得ようとした場合に相手が市場を閉ざしてしまえば技術が幾ら優秀であろうと売り様がないからだ。

 例えば中国市場における自動車販売を考えてみよう。
 性能や価格競争力において中国製自動車は日米欧の自動車に圧倒的に劣っている。
 にも関わらず中国市場において中国自動車はある程度のシェアを確保している。
 これは中国政府が保護しているからだ。

 技術立国というのは全ての国が市場を完全に開放し公平な国際取引を実行している事が前提にあるが、そんな国は一つも存在しない。
 姑息な理由をこじつけて輸入農業物を阻止しようとする我が日本国などはその典型だ。

 どこの国だって重要な製品や重要な技術において他国に依存したがらないものだ。
 だからこそ北朝鮮までが宇宙開発や原子力発電を独自開発している。
 この様に相手の事情次第なので原子力発電の様な商用を目的とした技術においてはそれだけで国を支える事は難しいが、軍事においては多少話が違ってくる。
 詳しい事は当サイト内の自然科学と技術のページの技術亡国で解説したが、興味があったら読んで頂きたい。

非軍事限定の建前

 日本の原子力開発が(建前では)非軍事に限定されている事が技術開発において不利な要因になっている事は当ページでも既に触れたが、ここでは更に詳しく検証する。
 反原発派から「日本の原子力開発の根底に軍事目的がある」とよく指摘されるが、私は非武装中立論者ではないし当ページは客観的技術批評が目的なので核兵器開発の善悪については述べない。

 当サイト内の自然科学と技術のページの技術亡国でも触れたが、巨大技術と軍事には密接な関係がある。
 宇宙開発、スーパーコンピューター、原子力などの巨大技術は何れも軍事が起源だ。
 軍事が絡むと研究に有利な面があるが、2大要素を解説する。

 まず、非軍事に限定した技術と軍用にも商用にも使える技術を比較すると当然、後者の方が市場が広く研究資金回収において有利になる。

 もう一つの理由としては軍事研究であれば多少赤字でも許される点だ。
 国民が飢えで苦しむ北朝鮮が人工衛星を打ち上げたり原発を開発したりしているのは軍事が密接に絡んでいるからだ。
 北朝鮮の国民が単に衛星放送を見たいのであれば欧米や日本などに衛星を打ち上げて貰う方が安上がりの筈だ。

 原発停止で原子力技術の逸失を危惧する意見もあるが、軍事に使う気が全くないなら上記の理由で米国やフランスなどに勝てる筈がないのだから技術を持ち続ける意味はない。

孤立主義

 当サイト内の自然科学と技術のページの技術亡国建設業の恐るべき実態のページのゼネコンの内弁慶的体質でも触れたが、日本の技術には国際標準とか国際協力という概念が乏しい。
 日本の鉄道は英国や台湾など島国でしか受注されず(フランスの新幹線やドイツのリニアモーターカーは他の方式との乗り入れが考慮されている)、家電では日本の大手7社を合わせても韓国のサムスン電子に適わない。
 大手ゼネコンは海外事業で軒並み大赤字を垂れ流している。

 原子力発電もそうした巨大技術の一つで日本国内だけで完結する言わば島国の技術だ。

 当ページでも触れたが震度6で倒壊しなかった原発の耐震性を誇る原発推進派が存在するが、それがセールスポイントになると思うなら、その人が海外で営業すればよい。
 そんな事で評価されて受注が増える事はまずなかろう。なぜなら、わざわざ地震多発地帯を選んで原発を建設したがるのは世界中探しても日本しかないからだ。
 耐震技術が素晴らしいとされる日本のゼネコンが海外で全く振るわない事からも容易に想像はつく。

 また技術に国際標準という概念が欠けるだけでなく、国際協調や国際協力という概念も全くない。
 自然科学と技術のページの技術亡国で述べたが、欧州の宇宙開発は約20ヶ国が出資しあい負担を軽減しているのに、日本は一国だけで欧米に対抗している。
 原子力についても「フランスは発電量の7割以上が原子力発電」とされるが、周辺のドイツやイタリア(原子力発電の比率は0)にも原発による電力を供給している。
 これは結果的にはイタリアがフランスの原子力開発に資金を提供している事になり、ある面で合理的と言える。(資金的には言わば共同開発みたいな形になり各国が個別に独自の方法で開発する無駄が省ける)
 欧州が域内で積極的に相互協力しているのに日本が国内だけで完結するのみならず、東日本で50Hz、西日本で60Hzと周波数が違うなど国内でさえ電力が融通出来ない状況だ。

 国際社会で協調出来ないだけでなく日本国内でさえ協調できないのであれば当然国際競争に勝てる筈がない。  

裸の王様(後日追加予定)


原発を推進(存続)したがる理由

 原発推進(存続)派が原発を推進あるいは存続させたがる理由を考察する。

軍事利用

 日本の原子力発電は1954年に改進党党員の中曽根康弘らによって始められたとされる(wikipediaより)。
 日本の原発には軽水炉が使われており北朝鮮の黒鉛炉よりは核兵器開発に不利だが、やはり核兵器の原料であるプルトニウムが発生する。
 過激な保守派が先鞭を付けた事と原子力発電でプルトニウムが増え続けている事などから「日本の原子力開発の目的は実は核兵器開発ではないのか」という疑念がある。
 原発推進派から納得のいく反論がない事から、あながち穿った見方とは言えない。
 兵器開発だけでなく米軍による核持ち込みに対するアレルギーを無くす狙いもあったかもしれないが、これも結果的には軍事利用だ。

 この様に導入の時点で軍事が念頭にあった可能性は高いが、発電能力に期待していたのも間違いない。
 何しろ一発で一つの都市を壊滅出来るエネルギーなら極めて効率の高い発電が出来るに違いないと考えてもおかしくはない。
 この時点で軍民どちらが主従かは知らないが、一石二鳥の効果を狙ったのだろう。

 但し現時点では原発の軍事的要素は殆ど期待されていない可能性もある。
 何しろ既に世界を破壊するのに十分なプルトニウムが有り余っているのだから。

利権

電力会社と総括原価方式

 日本の電気料金設定に使われている総括原価方式についてマネー用語辞典から解説文の一部を引用する。
公共料金が決められる際に用いられる考え方の一つ。
料金を、商品やサービスを提供するのに必要な原価をちょうど賄うだけの収入を得る水準に設定すること。
つまり、事業運用にかかる費用と適正な事業報酬の和を適正な原価とし、設定するものである。
最近は規制改革の流れを受け、これの修正方式や別の方式の採用がなされている。
 意味が分かり難いかもしれないが、要するに掛かった金が高いほど電力会社は料金を高く設定出来るのだ。
 勘の良い方はお気付きだろうが、「それじゃ建設費などを余分にかけた方が儲かるのか」と言われると「その通り」だ。
 この方式で電力会社の儲けだけを考えた場合、どの発電方式が最適か考えると現状では原子力発電という事になる。
 ご存じの様に原発の初期建設費は非常に高い。
 安全性を高めるという大義名分のもと非常に高規格な建屋を建設しているし原子炉も凝った工業製品なので高価だ。
 しかも、原発推進派が得意になって強調するように原発の運転コスト自体は非常に高い訳ではない。

 この様な事情があれば電力会社としては原発を是非使いたくなるのも分かる。
 逆に安値な自然エネルギー発電所を造っても儲かり難い事になる。
 必ずしも原発を有利にするために考えられた訳ではなく利点もそれなりに存在するのだろうが、結果的に原発建設を後押しする制度になっている。

ゼネコンと建屋建設(後日追加予定)

自治体と核燃料税

「福島、原発停止で核燃料税44億円がなくなる」というニュースが話題になっているが、核燃料税についてはwikipediaに下記の説明がある。
核燃料税(かくねんりょうぜい)は、法定外普通税のひとつとして都道府県が条例で定める税金であり、原子力発電所の原子炉に挿入する核燃料の価格を基準にして、原子炉の設置者に課せられる。
 他の交付金の様に増収があれば7割以上が減額される恐れがないらしく、自治体にとっては税収が大きくても減額される事はなく丸ごと入るため大きなメリットがあるそうだ。
 これなら「なるほど自治体がこぞって原発を受け入れたがる筈だ」と頷ける。

 但し原発推進派にもデメリットはある。
 電力会社にしてみると金を出さなければならない立場になる。
 また冒頭のニュースのタイトルでも分かる通り原発が停止すれば自治体には金が入らなくなる。

 先に述べた総括原価方式が必ずしも原発推進を図った政策ではないのに対して核燃料税は明らかに自治体の原発誘致推進を図ったものだろう。

巨大技術は止まらない

 反原発派から利権についてよく指摘されるが、原発利権と言うと政治家、大企業、暴力団などが絡み裏で不正な大金が動くイメージがある。
 その一方で、「利権なら他にもあるし原発より火力発電の方がずっと多いのなら、そっちの方が酷いんじゃないのか」という意見もあるが、これは一理ある。

 実は案外詰まらない理由で巨大事業が存続する事がよくある(これについては当サイト内の「自然科学と技術」のページの「技術亡国」で詳しく述べた)。
 既に述べた通り原発導入時点では極めて優れたシステムと思っていた専門家も多いだろうが、やってみると欠点が目立ち良い物ではない事に気付いた。
 期待されたプロジェクトが金と手間をかけた割には大して良い成果を挙げず今後の見通しも立たない場合に開発担当者としては「あまり上手くいっていません。中止した方がよいと思います」と言うべきなのだが、現実問題として言い辛い。
 私自身がゼネコンで「人工知能による建物診断システム」の構築に取り組んできたから研究者や技術者の立場はよく分かる。
 責任については勿論だが、一見最先端に見える凝った仕事は潰しが利かず再就職が極めて困難なのが実態だ。私も再就職する際に「そんな凄い人は要らない」となかなか採ってもらえずに苦労した。
 原子核の技術者の様に特殊なハイテク技術を担ってきた人が下手すると最低時給のアルバイトすら出来ない状況もあり得る。
 特に東大で物理学を学んだ超エリートの筈だった人には辛い選択だろう。

 社会全体として考えた場合には研究者や技術者としては中止を提言するのが正しい態度だ。
 しかし既に兆単位の国家予算を使っているし、上述の理由で言い出せないのが現場の本音だ。
 当ページの「原発の危険を語る技術者たち」に書いたが「原発ムラ」を批判する技術者は村八分にされるという証言もある。
 自分自身より社会全体の利益を優先する人が全てという訳ではない。  

廃炉の難題

 電力会社にとってある面で最も厄介とも言えるのが原子力発電所の廃炉問題だ。
 既に解体を始めた日本初の商業用原子力発電所である東海原発(16.6万kw)では解体と廃棄物の処分で合計約930億円の見積もりが出ている。
 公共事業などでは工費が初期の見積もりの2、3倍に膨れ上がる事は当たり前の様にあるが、原発の後処理に関しては経験がないので大幅に上回る可能性もある。
 小規模な初期の原発でさえ一千万円近くかかると見込まれているのだから、これから原発一基を処分するのに数千万円から場合によっては兆単位の費用がかかる恐れがある。

 原発の寿命を2、30年程度で終わらせてしまうのであれば1年辺りのコストは極めて高い事になるが、問題は費用を誰が負担するかだ。
 私は「原発は低コストだと言ってきた電力会社がするべきだ」と思うが、電気事業者は電気利用者から徴収するつもりらしい。

 費用に負けない位厄介な問題として安全に処分出来るかが問われる。
 何しろ経験がなく核廃棄物の最終処分地さえ未定の状態だ。
 解体は容易ではなく恐らく少なくとも数十年という単位の年数がかかるとされている。

 この様な事情があり運転中の原発を簡単に止める事が出来ず、問題を先送りする状況になっている。
 廃炉の難問について多くの国民が気付ば一気に反原発世論が沸騰する可能性もある。

川下推進論者

 当サイト内にある「アメリカの陰謀に関する検証」のページの「野次馬的陰謀論者(川下陰謀論者)」で誰かの話を信じ込み自身も怪しげな噂を垂れ流す二次的な陰謀論者について説明した。
 この構造は原発推進についても同じ事が言える。
 タイプとしては「米国の陰謀」をやたらと垂れ流す人は政府に懐疑的な人が多いので思想的には原発推進派と対極にある場合も少なくないが、他人の話を鵜呑みにする思考回路はよく似ている。
 ここでは原発を積極的に推進したくて主導的に必要性をPRする政治家や財界人などを「川上推進論者」、その話をすっかり信じ込み原発が必要と思い込んでいる原発推進論者を「川下推進論者」と呼ぶ。
 川下推進論者は持論(理論と言える様な高尚な代物ではないが)を得意になって述べるが、多くは政府や御用学者の受け売りに過ぎない。
 ただ、新聞やTVや教科書などで散々、原発の必要性を刷り込まれているから信じ込んでしまう人を馬鹿と呼ぶのは酷な気もする。
 教科書の内容が間違っているとすれば「もしかすると教育の全てが間違っていて勉強する意味がない」と勉学の意欲を失う可能性もある。

 川下推進論者は上流で積極的に推進工作を進める政治家や官僚などと比べるともちろん力は弱いが、何しろ数が圧倒的に多いので社会に対する影響は大きい。
 この川下推進論者の動向で原発政策が決まると言ってもよい位重要な役割を果たす可能性がある。
 まず、自分たちが騙されてきた事に気付けば反原発になびく可能性があるし、元々周りを見て原発支持を決めた人が多いから周囲が反原発に流れるのを見て一気に反原発が進む可能性もある。
 逆のシナリオとしては、政治家や官僚や電力会社の中に「もう原発の様な面倒な物は使いたくない」という人が増えても庶民の方が長年に渡る洗脳から目覚めず上からの押し付けではなく原発推進が民意になるという逆転現象も考えられる。

 これからの日本の原発政策を考える上で今まで川下推進論者だった人たちの動向が大きな鍵を握る。 

原発停止のメリット(長所)とデメリット(短所)

デメリット(短所)

発電量が約2割減る

 原発推進論者から「発電量のかなりの部分を占める原子力発電を今すぐ停止すると電力供給量が大幅にダウンするので現実的ではない」という意見がよく聞かれる。

 実際には2008年現在の原子力発電による発電比率は24%(電気事業連合会【電気の情報広場】)に過ぎず2010年には更に低下して23%になっている。
 既に述べた様に他の発電方式で多少増産すれば従来とほぼ同じ水準まで発電量を増す事が可能ではないか。
 他の方式だと例え一割程度の増産だろうと何が何でも増やせない理由が何かあるのだろうか?
 また、電気消費量を多少減らす事は可能と思うが、例え一割程度でも減らすのがそんなに困難なのか?
 原子力発電以外の発電で1〜2割程度増産し電力消費量を1〜2割程度減らす事で対応出来そうな気がするのだが。

 私の案はさほど無理があるとは思えないが、何が何でも今すぐ全停止は出来ないのであれば各原発の半分を停止して検査するというのはどうだろうか。
 これなら現状の9割近い電力を賄える計算になる。

 いずれにせよ「原子力発電が総発電量の約2割を占めているから」という理由は発電方式自体の優位性を述べたものではないから少なくとも新規に建設しなければならない理由にはならない。

選択肢が一つ減る

 電気事業連合会のサイトにある「エネルギーを安定して確保するためには、一つのエネルギー資源に頼らず、様々なエネルギー資源をバランスよく使うことが必要」という文言は原発の広報によく使われる。

 一見もっともらしいが、日本ではウランが殆ど自給出来ない。
 原子力発電大国の米国でさえ原子力発電量は2割弱に過ぎず、3割を超える国はフランスと韓国くらいだ。
 ウランは石油より残り資源が乏しいという説もある。
 意外に知られていないが世界の発電の主力は石炭であり総発電量の約4割を占める(日本でも石炭火力発電量の割合が最大)のに対し原発の占める比率は1割弱だ。(電気事業連合会【電気の情報広場】
 石炭は埋蔵量が多く、日本でもしばらくは自給可能だ。

 また、選択肢が多い方が良いという考え方には同意できるが、原発が無くなったところで選択肢が一つ減るだけだ。
 逆にやたらと金のかかる原発を導入した事で他の方式に金や人などが回らなくなり、むしろ選択肢が大幅に減る要因になっている。

二酸化炭素排出量が増える?

 原子力発電が火力発電と比べて二酸化炭素の排出量が少ないとされる事に対する疑問は本当に地球温暖化防止に役立つのか?に記したが、ここでは温暖化ガスに関する推進派の意見を正しいと仮定しよう。
 それにしても既に述べた様に原子力発電の比率は約2割に過ぎないから発電方式を変えたとしてもせいぜい二酸化炭素排出量が2割程度増えるに過ぎない。

 地球環境問題は二酸化炭素だけが課題ではない。
 既に述べた様に原子力発電所の温排水は無視できない。
 また、地震や津波による放射能漏れなどの環境破壊の危険を冒してまで発電による排出量のせいぜい2割に過ぎない炭酸ガスの発生を抑える必要があるのだろうか。
 日本が地震多発国である事を考えるとそこまでする必要はない。

核兵器開発の停滞

 日本の原子力開発は核兵器開発が目的の一つである可能性が高い事は既に述べた。
 世界屈指の経済大国である日本が絶対に核兵器を持ってはいけない理由は特にないが、保有するつもりなら国内外にはっきりと表明すべきだ。
 既に述べた様に北朝鮮の原子炉は恐らく核兵器開発と関係しているし米国は原発の廃棄物で劣化ウラン弾という強力な兵器を作っている。
 これを褒める気はないが、国益という点では原発を有効に活用していると言える。
 もし日本が原発を軍事利用する気がないのであれば、原発の発電効率が低く日本が地震国である事だけでなく、国際社会から妙な疑惑を持たれない様に原子力発電は中止すべきだ。

関係者が失業する(後日追加予定)

メリット(長所)(後日追加予定)


福島第一原発事故の国際的影響

原発に有利な要素

ウランが入手し易くなる

 2011年の福島第一原子力発電所の事故は東京電力、日立・東芝など関連企業の国際的信用を失墜させた。
 この原発事故が日本の原発推進にとって有利になる要素は何も無いと思う人が多いだろうし反原発派の私としてもそう思いたいが、ここでは技術者としてあくまで客観的な推測を述べる。

 世界に蔓延する反原発ブームはウランの入手を考えると原発推進国にとって有利な要素になってくる。
 買い手が減るわけだから当然、今までよりウランが安く買えるようになる可能性が高い。
 現時点で原発のコスト面で見た効率が必ずしも抜群に高くない事は既に述べたが、原発推進派が「安くなったウランによる原発の低コスト」を導入の理由に入れてくる可能性も出てくる。

 インターネットの掲示板には「こんな大事故があったのだから規制が強化されて原発が安全になるに違いない」という何の根拠もない意見があった。
 阪神大震災の手抜き工事や耐震強度偽装事件などの発覚後に規制が強化されたのは形だけだと当サイト内の「ゼネコン建設業の恐るべき実態」や「耐震強度偽装問題の真実」のページで述べた。
 考えたくないシナリオだが、過去の不祥事に対する反省能力の低い日本社会においては福島第一原発事故が電力会社、原子炉メーカー、ゼネコンなどにとって焼け太りになる可能性がある。

原発に不利な要素

「欧米では」の言い訳が困難

 原発推進派が原子力発電を正当化する時に「欧米では」という言葉がよく使われてきた。
 導入時もそうだったが、スリーマイルやチェルノブイリなど大きな原発事故により一時衰退した後に地球温暖化問題などで再び欧米で原発推進の兆しが見えた時も「欧米では原発推進に転換するのが主流だ」と強調された。
 日本人は「皆がやっている」という言葉に弱いが、原発については発電量の1割にも満たない国が殆どなので推進派はこの言葉を使えない。

 男女共同参画でも「欧米では・・・」という言葉がフェミニストによく使われる。
 左翼も右翼も自分に都合良く「欧米では」という言葉を使ってきた。
 もちろん「欧米がどうだろうと関係なく日本に最適のシステムを導入すればよい」という考え方が正論だが、欧米には先進国も多く白人に劣等感のある日本人の性質もあり、なかなかそういうふうに割り切れない人も少なくない。
 やたらと欧米を持ち出して比較するのは幼稚だが、現実問題として「欧米では」という言葉を使うのは原発を推進する上で極めて説得力のある実に効果的な作戦だった。

 昨今、欧州で盛り上がる反原発世論が日本の原子力政策に影響を与えるのは必至だ。
 今更、原発推進派が「欧米が反原発だろうと日本に関係ない」と言われてもご都合主義の誹りを免れない。

日本メーカーの信頼低下

 福島第一原子力発電所の事故は当然ながら東芝と日立という日本の原子炉メーカーの信用を失墜させる要因だ。
 日本では「想定外の津波」とか「震度6の地震に建屋がよく耐えた」という台詞で国民が納得するかもしれないし、「こんな大事故があったから、これからは気を付けて安全になる筈だ」と企業や政府に対して非常に甘い人もいるが、海外ではそうはいくまい。

 ドイツの自動車メーカーであるベンツ社製の車は安全性で有名だ。これは衝突破壊検査や事故の報告例などを聞く事により多くの人が安全性を想像出来る。
 しかし原発の安全性については実際に大地震などの災害を起こして破壊検査をする訳にはいかないので顧客としては原子炉メーカーのネームバリューで判断する位しか方法がない。
 日本の新幹線の安全性の売り文句も「長年に渡り運営してきたが事故が極めて少ない」点が強調される。
 日常的に大事故の発生が報道される訳ではない原発において一度大事故を起こすと悪いイメージを払拭するのは容易ではない。

 仮に日本人が東芝や日立に対して寛大な態度を示したとしても、これらのメーカーが活躍できるのは日本に限られるから数の論理でコスト高になり国内の原発政策にもやはり影響を与えるだろう。

市場規模の縮小

 福島第一原発事故は日本の原子炉メーカーのシェアを縮小させる可能性が大きいだけでなく、この原発事故で盛り上がった世界的な反原発機運により原子力業界の規模自体が縮小してしまう可能性が高い。
 米仏など個々のメーカーについては寡占化が進み逆に規模が拡大する企業もあるかもしれないが、福島原発事故に恐れをなして意欲が低下した企業の方が恐らく多いだろう。
 製造する原子炉の基数が多い方が当然ながら製造コストが安い訳であり、規模が縮小してしまうという事は利益が出辛くなる。
 そうなると原子炉メーカーは世界的に高コスト体質となり、それを嫌う電力会社が原子力発電の導入をためらう要因になると考えられる。
 その事が原子炉メーカーの原子力にかける熱意を低下させる事になり更に高コスト体質となる。

 こういう循環を私は期待しているのだが、恐らくそうなるのではないかと思う。


反原発関連サイト

 相互リンクしている反原発サイトを掲載しました。
浅根通信 浜岡町原発問題を考える会の反原発HP
市村 正也の反原発 市村正也氏の反原発論
外道竜神ホームページ 個人の反原発サイト
県民投票を実現する会 福井県民の反原発運動
反原発の館 一市民が反原発を語る
広島瀬戸内新聞 東京電力の福島第1原発・第2原発・柏崎刈羽原発で発生した事故から反原発を語る
プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク 柏崎刈羽原発の停止を求める反原発運動
村田光平氏オフィシャルサイト セネガルやスイスの大使を勤めた村田光平氏の活動を紹介するサイト(反原発など)
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