「猫 下痢」検索でおいでいただいた方へ  ここは慢性的原因不明の下痢のみを症状とする可能性もある猫のIBDという病気に関するHPの一部です。アメリカでは最も重要視される猫の病気の一つです。下痢を引き起こす他のおもな病気は除外診断をご覧ください

猫の便の見分け方

便をよく観察すると、消化管のどこに問題が存在しているのかがおおよそわかりますし、それがわかれば、食事内容として何を気をつけたら良いのがわかってくる可能性が高いのです。一番のポイントは問題が小腸性なのか大腸性なのかを見分けることです。

健康な便 濃い茶色、形はしっかりとあるが適度に水分を含むやわらかさはある。一日1〜2回ぐらいの排便が正常。


便の異常

1.下痢

頻繁な下痢は脱水を招きます (下の脱水の見分け方参照)

下痢の種類

回数 便の総量(食事量が一定として) 嘔吐 体重の減少 ポイント
小腸性

十二指腸

空腸

回腸
正常〜やや増加 多い・水様・粥状・フカフカ 伴いやすい

起こる・栄養失調・貧血や血中タンパク質の低下

消化不良・吸収不良

多様

脂肪便・タール便

口臭・腹鳴・オナラ・腹部膨満・脱水

粘液は在っても少し
大腸性

結腸

直腸

通常の三倍以上

少しづつ何回も出る

便のお漏らし(あらぬ処でウンチ)

しぶり

総量は不変〜微増。見た目はゆるくもない普通便であることも

一回あたりの便の量は減少
あまりない

体重減少はおこしにくい

脱水はあり

通常は茶褐色

赤い血便

ゼラチン状の粘液

粘血便(大量の粘液に血が混じる)

など
肛門掻痒感

猫においては7:3ぐらいの割合で小腸性の下痢である確率が高い。ただし、小腸大腸両方に病変が存在している場合もありうる

色から見た便の異常

黒、タール状、暗赤色 血便、上部消化管からの出血を示唆
鮮赤色

血便、下血、下部消化管からの出血、明らかな血液や血の凝まり。大腸からの出血を示唆。

便全体が赤い場合 ←直腸より上部の大腸からの出血

便の表面にスジ状の血が付着している場合 ←直腸からの出血
灰色〜白っぽい 消化不良、酢えた臭いを伴う、脂肪便※
色が薄い感じ 胆汁(便の色の元は胆汁中のビリルビンという黄色い色素なので。)の不足を示唆

脂肪便とは

脂質(脂肪)の吸収不良が起きると、脂肪便が出る。脂質は、胆嚢から胆汁が、膵臓から酵素が分泌されていて、しかも腸が正常に機能していないと十分に吸収されない。比較的カサのある白っぽい軟便。フカフカな感じ。正常な便の臭いとは明らかに異なる特有の酸性臭を放つ。小腸性の問題。(あるいは肝臓、胆管、膵臓の問題)

しぶり腹(テネスムス、裏急後重とも呼ぶ)  炎症によって直腸が過敏状態になり、その結果、便が少したまっただけで肛門の筋肉が痙攣し、頻繁に便意を催す状態です。実際の排便そのものは極少量か粘液のみ、あるいは全く認めらず、排便終了感がありません。猫がトイレで排便姿勢をしょっちゅうとるので便秘しているのかと家族が勘違いをおこすこともあるでしょう。見分けるためには、食事と排便の量の関係、便の性状に注目して下さい。腹痛も伴うことがあるようです。大腸性の問題。

     猫の行動だけ見ているとしぶり腹と間違えやすいものに、尿閉(おしっこが出ない、出にくい)があります。命にかかわる緊急事態ですので、わからない場合はすぐ獣医へ

慢性下痢で原因や管理が食事に関係するもの

       ★猫に下痢を引き起こす他の主な病気は除外診断を参照して下さい。

主な障害の内容
小腸性 栄養が吸収されない IBD 食物アレルギー 乳糖不耐症 グルテン不耐症(セリアック)、 ラクツロースやソルビトールなど消化されない糖質接取、腸内細菌異常 膵外分泌機能不全 肝臓病 胆肝道疾患
大腸性 蠕動運動の異常 IBD 食物アレルギー 腸内細菌異常 過敏性腸症候群(IBS)

 

 


2.便秘

数日おきで(2日に一回までは正常)、コロコロ、カチカチ、割って中を見て水気がほんとんどなく毛の混じったようなパサパサの便なら便秘。

            猫の行動だけ見ていると便秘と間違えやすいものに、尿閉(おしっこが出ない、出にくい)があります。命にかかわる緊急事態ですので、わからない場合はすぐ獣医へ

便秘のエックス線写真

便秘の種類 理由 対策
機能性便秘

弛緩性便秘

痙攣性便秘

蠕動運動が弱く、大腸での便の通過速度が遅い為に、便の水分がなくなって便が硬くなる 下剤が効きやすいタイプでもある

腸の動きが強すぎ腸壁が痙攣状に収れんするため、便が停滞。 便秘と下痢を反復することも (この項目はヒトの場合を参考)

腸に刺激を与える為に高繊維食を与える。

ことに不溶性繊維質を控えた、消化の良い食事。水をよく飲ませて腸の動きをコントロール
器質性便秘 腸管の形の異常

強い炎症を呈した後の、硬く動きの悪くなった大腸

巨大結腸症

腫瘍など

本質的解決方法はないとされる。

高繊維食、あるいは逆に高消化性低残渣食、マッサージ、下剤、便軟化剤、摘便、浣腸、外科手術。

排便しようとして、いきむ(腹圧がかかる)と嘔吐しやすいというのは、よく経験される。

IBDの猫が巨大結腸症 リンク先にレントゲンと切除された腸ありを併発している場合がある。ただしその場合も小腸大腸全体の状態によっては従来、巨大結腸に良いと言われてきた高繊維食が必ずしもIBD猫に良い結果をもたらすともいえないだろう。固定観念にとらわれず家族が食事の変更に対する猫の反応をよく観察していることが大切。(巨大結腸の原因は不明のことが多いのですが、一般的に言われていることとは全く逆に高繊維食こそが巨大結腸症の原因だと考えている獣医も少なくなく、彼らは高消化性の食事で糞便量を少なくすることが予防としても、管理としても大切だと言っています。) 家庭に猫が一匹だけだと比較が無いためわかりにくいですが、結腸の直径が増大ぎみであることを早期に見つけるためには 日頃の便の太さにも注目したほうがいいでしょう。便秘が巨大結腸症の直接的原因ではないと考えられていますが、全ての巨大結腸症の猫が結果として便秘するということはその通りでしょう。

IBD猫の便秘対策としては、

    非吸収糖であるラクツロースの投与

    乳酸菌製剤投与

    N−3系脂肪酸の投与(EPAやDHA)

    ラニチジンの投与   胃酸の分泌を抑えるいわゆるH2ブロッカーのひとつであるが、同時に大腸の運動を刺激するというエビデンスが多少あると専門家が述べている             

などが考えられる。    (以前用いられた消化管運動改善剤のcisaprideは副作用のため販売中止となった)      ネコのため便秘薬については巨大結腸の対策に詳しいのでここ参照

ラクツロースはアンモニアの腸管壁からの拡散防止や糞便中への排泄促進作用もあり肝性脳症対策でもある(ただしエビデンスは強いものではないらしい)。アメリカの便秘ぎみのIBDネコたちは、ほとんどがラクツロースを処方されている。 ただし、長期投与によって腸内ガスによる腹部膨満がおこりやすくなったり、あるいはリーキーガットぎみであるIBDの猫には適当でないかもしれないと言う意見も一部には聞く。

肝機能が低下しているときに便秘になると腸内でのアンモニア産生増加の為、肝性脳症のリスクを高め、死期が早まることさえあるので特に注意。肝機能の低下時には便は少しゆるめぐらいの方が良いようです。

腸閉塞(糞詰まり、イレウス)は急激に重篤な全身状態の悪化をもたらす、恐い状態です。IBDの場合、腸の運動をつかさどる神経の異常や炎症によって腸管の蠕動運動がとまり、消化物が肛門へスムーズに移動できない状態が引き起こされることがあります。

 



脱水の見分け方

皮膚トルゴール(膨圧)テスト:猫の背中、肩甲骨の間からやや下あたりを優しく両手で幅広につまんで皮膚をテント状に持ち上げます。そしてすぐに手を離した時に、脱水がなければ皮はすぐ(1秒以内)元の状態に戻りますが、脱水をおこしていれば、その程度に応じて、時間がかかるようになります。5〜10秒もかかるようだと体重の10%近い重度脱水の可能性があります。ただし、猫の年齢、肥満か痩せかなどによっても若干差がありますので、家族が普段から一定の体位、一定の部位でこのテストを習慣化し、その猫の通常の状態を把握しておく必要があります。

     高齢の猫の場合にはおしりの皮膚でテストしたほうがわかりやすい場合があります。体調の良いときに皮膚がすぐ戻る場所を確認しておきます。

CRT(Capillary Refill Time 毛細血管再充満時間):猫の上唇をめくり、指先で歯肉をそっと押して貧血帯を作ります(粘膜が白くなる)。指を離してその部位が元の色になるまでの時間がCRTです。正常値は2秒未満です。それ以上かかるのは脱水の証拠です。

また、猫の口の粘膜の濡れ具合を家族の指先で確認するのも、有効です。脱水していれば、外側の歯肉の乾燥感あるいはネバつきが明らかに感触として伝わってきます。口腔粘膜の色は(正常はピンク色)、貧血の指標となるとともに、脱水の指標にも使えますので、普段から心がけて観察しておきましょう。

脱水時には、いつもに比べて毛並がボサボサでそそけ立った感じがするものです。(人間の場合にはそうではないと思うのですが、猫の場合はすぐに毛艶に変化が表れます)

非常に重度の脱水の時にはがくぼむことがあります。

急な体重の減少、元気喪失、食欲低下、尿量の減少、心拍数や脈拍の増加をみたときは、脱水の可能性を考慮すべきです。

激しい嘔吐や下痢は脱水を招きます(同時にカリウムなど電解質の異常もおきています)。そして脱水は放置され進行すればすぐさま命にかかわる重大な事態であることを理解しておきましょう。

以下はあくまで目安です  

脱水の程度(体重%)

 

 皮膚つまみ上げ試験    所要時間    

 CRT

 眼

 粘膜

0〜0.5 %

異常は認められない

 すぐに元の位置にもどる

正常

 正常

ピンク色で濡れている。

5〜 8  %

 

 少し遅れる      (2〜4秒)

 2       

 わずかに眼窩に沈む

若干の乾燥感あるいは粘つき感

8〜10  %

 

 明らかに遅れる   (5〜10秒)

 2〜2.5

 眼窩に落ち込む

乾燥しており軽くくっつく感じ

10〜12 %

沈鬱。 ショックの兆候(手足が冷たい、脈が速い/弱い、頻脈など)を認めることもある

 テント状のまま    (10〜30秒)

 3秒以上

 とても凹んだ感じ

乾燥

12〜15 %

ショック状態 死亡する確率は高い

 

 

 

 

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