MIDIシーケンサーソフト『世界樹』の概要と使い方

日本で開発されていて、海外でも使われているオープンソースソフトウェアのイチオシといえば、おーぷんMIDIぷろじぇくと世界樹が挙げられるでしょう。

世界樹のスクリーンショット

世界樹は、簡単に言えば曲を作るソフトです。ただ、そのようなソフトであれば、いくらでも高性能なものがこの世には存在します。これの良いところは、MIDIに限定してオーディオなどの機能を一切持たせないことによって、極めてシンプルで、かつ軽快に動作するように仕上がっていることです。とりあえず音符をパレットから選んで並べれば音が鳴らせるので、初心者でもなんとなくいじるだけで曲を作れます。一方で、無制限回のアンドゥ・リドゥをはじめ、メタイベント・システムエクスルクーシヴイベントを含む全ての種類イベントが編集可能なので、上級者の方にとっても商用製品を上回る編集ができます。スクリーンショットを見ていただければ、その完成度の高さがお分かりいただけると思います。

これほどすばらしい、おそらくは日本を代表するようなオープンソースソフトウェアであるにもかかわらず、他サイトや雑誌などで取り上げないのは、やはり日本のオープンソースに対する考え方が非常に遅れていると言わざるを得ないでしょう。そこで、この世界樹の概要と使い方を取り上げてみました。

1. トラックリストウィンドウ

トラックリストウィンドウ

MIDIデータの全体像を表示するウィンドウです。左半分では、各トラックの名称・色・入力・出力・初回のボリューム・パン・音色などを設定します。右半分では、トラックの内容を概略的に表示しており、トラック・小節単位でのコピー&ペーストをするのに便利です。特に世界樹はMIDIシーケンサーとしてはめずらしくマルチドキュメントインターフェイスなので、他の曲からのコピー&ペーストが簡単にできます。

各トラック上で右クリックをすることで、そのトラックのピアノロールウィンドウ・イベントリストウィンドウ・譜面ウィンドウを開くことができます。また、■4/4,0#,120.00の欄を右クリックすることで、テンポ・拍子記号・調性記号の挿入・変更・削除をすることができます。左半分の数値部分は、テンキーでも直接入力出来るほか、上下ボタンを右クリックすると±10ごとに値が増減するなど、迅速な操作ができるようになっています。

2. ピアノロールウィンドウ

ピアノロールウィンドウ

縦軸にキー、横軸に時間をもち、音符をピアノロール形式で入力していくウィンドウです。選択ツールで選んだ音符は黒くなり、ドラッグ&ドロップでまとめて移動、Ctrl+ドラッグ&ドロップでまとめて複写できます。音符上で右クリックすると、ノートイベントのプロパティを詳細に編集するダイアログが表示されます。また、■4/4,0#,120.00の欄を右クリックすることで、テンポ・拍子記号・調性記号の挿入・変更・削除をすることができます。

通常は右上のリストボックスで選択されているトラックが表示されますが、F9を押すと単一トラック表示モードとなり、F10を押すと全トラック表示モードとなります。また、グラフ部は右下のリストボックスで選択されているトラックが表示されますが、F11を押すと単一グラフ表示モードとなり、F12を押すと全グラフ表示モードとなります。必要に応じて使い分けると便利です。

3. イベントリストウィンドウ

イベントリストウィンドウ

すべての種類のイベントをリスト形式で表示するウィンドウです。メタイベント・システムエクスクルーシヴイベントも編集可能です。時刻や値を1単位で編集したいときに使います。数値部分は、テンキーでも直接入力出来るほか、上下ボタンを右クリックすると±10ごとに値が増減するなど、迅速な操作ができるようになっています。

通常は右上のリストボックスで選択されているトラックが表示されますが、F9を押すと単一トラック表示モードとなり、F10を押すと全トラック表示モードとなります。また、イベントの種類は右下のリストボックスで選択されているトラックが表示されますが、F11を押すと単一のイベントの種類表示モードとなり、F12を押すと全イベントの種類表示モードとなります。必要に応じて使い分けると便利です。

4. 譜面ウィンドウ

譜面ウィンドウ

おなじみ譜面ウィンドウです。音楽系の方にはもっとも入力しやすく見やすいでしょうが、音の長さや強さをひとつひとつ調整しながら入力するにはピアノロールの方が向いています。音符の入力中に右クリックをするとシャープやフラットがつきます。音符上で右クリックすると、ノートイベントのプロパティを詳細に編集するダイアログが表示されます。選択ツールで選んだ音符は黒くなり、ドラッグ&ドロップでまとめて移動、Ctrl+ドラッグ&ドロップでまとめて複写できます。また、■4/4,0#,120.00の欄を右クリックすることで、テンポ・拍子記号・調性記号の挿入・変更・削除をすることができます。

5. 世界樹ならではの機能

世界樹の作者は実際にこれを使って曲を作ってらっしゃる方です(最近は会社が忙しくて曲を作らないそうですが)。それゆえに、他にはない便利な機能がついています。ここでは「グラフの等間隔描画」と「音符の細分化とトリル化」と「印刷」の3つを紹介します。

5-1.グラフの等間隔描画

グラフの描画、ことさらにCC#11(エクスプレッション)の描画は、普通に描くと大量のイベントが挿入されてしまい、あとでデータを間引くのに苦労しますが、ピアノロールウィンドウのツールバーにある、グラフのスナップ機能を使えば、指定した音符の間隔でしかイベントが挿入されなくなります。マウスの手ぶれ問題も解消します。用途に応じて使い分けると便利です。

グラフの描画(自由間隔)
▲通常のモードでは、このように大量のイベントが挿入されてしまう。
グラフの描画(16分音符にスナップ)
▲グラフスナップを16分音符に指定して描画すれば、16分音符の位置にのみ挿入される。

5-2.音符の細分化とトリル化

作者は、オーケストラっぽい曲をよく作るらしいことから、ティンパニの連打やフルートのトリルの入力は、32分音符を何個も入力しなければならず、苦労したそうです。そこで、全音符を入力するだけで、選択された音符をまとめて細分化し、挙句の果てにトリルまでつけてしまう機能がついています。

音符の細分化とトリル前
▲元の状態
音符の細分化とトリル化ダイアログ
▲音符の細分化とトリル化で、16分音符を指定し、トリル幅は2半音に設定してOK。
音符の細分化とトリル後
▲選択されている音符が一瞬でこの通り細かい連打・トリルになります。

5-3.印刷

MIDIデータは演奏データなので、音源を鳴らすだけでなく、見ることも使い道のひとつです。世界樹では、トラックリストウィドウ、ピアノロールウィンドウ、イベントリストウィンドウ、譜面ウィンドウのいずれも印刷することができます。MIDIシーケンサーを持っていない方にでも、紙やPDFで視覚的に情報を見せることができるので便利です。

音符の細分化とトリル後
▲印刷(おーぷんMIDIぷろじぇくと提供)。

6. 便利なミニ技

世界樹は、細かいところで気が利いたMIDIシーケンサーです。この技を使えば作業効率がアップするかもしれません。

6-1.特定の音階だけ選択して別トラックに移動

昔はチャンネル10でしかドラム音を扱えない音源が多かったので、すべてのドラム音をひとつのトラックにまとめる習慣がありました。しかし、これは編集に不向きです。ここではキックドラムとスネアドラムのみを選択して別トラックに移動する方法を示します。まず、ピアノロールウィンドウでドラムトラックのみ表示し、左の鍵盤エリアでキックドラムをクリックすると、キックドラムの音符がすべて選択され、さらに左の鍵盤エリアでスネアドラムをCtrlを押しながらクリックすると、追加でスネアドラムの音符がすべて選択されます。あとは、編集メニューでトラックを変更するか、トラックリストウィンドウで部分選択されたハッチングエリアをドラッグ&ドロップで他のトラックに移動するだけです。

6-2.特定範囲の値だけ選択して値を一括増減

後から、ベロシティが強すぎた、CC#1-モジュレーションが強すぎたなど、特定範囲の値を一括修正したくなることもあります。ここではCC#1-モジュレーションの64~127の値を一括変更する方法を示します。まず、ピアノロールウィンドウで該当トラックのみ表示し、グラフエリアにCC#1-Modulationのみ表示された状態します。次に左の数値表示エリアで、64~127の範囲を縦にドラッグすると、CC#1-Modulationの64~127の値のイベントだけがすべて選択されます。あとは、編集メニューで増減値を指定するか、パーセンテージを指定するなどして、値を一括変更できます。



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