実験室 〜 Laboratory of R/C 〜

ラボ#01 どのモーターが良いのか?(1)

− モータートルク測定 −

トイラジを改造しようとした時に、真っ先に考えるのがモーターの交換。しかし、一体どのモーターにすれば良いのか迷ってしまいますよね。特に、多くのミニラジに使われている130クラスモーターは、非常に種類が多くなおさらです。トイラジの場合、高価なモーター=速いとは言い切れません。モーターのパッケージにもスペックが書いてあったりしますが、「速そう」程度の判断しか出来ず、実際に交換してみると遅くなったりとか・・・。
そこで、実際にモーターの回転力(=トルク)を把握すべく、実際に測定してみることにしました。

■モーターのトルク
「トルク」とは、回転させる力または回転を止めようとする力(負荷)の事をいいます。
単位はg・cmとか、kg・mなどと表示し、[回転軸の中心から力の作用点までの距離]×[かかる力(負荷)]で表します。
例えば、トルク10g・cmとは、回転軸より1cm離れた作用点にかかる10gの負荷を動かす事が出来る力を言います。言い代えれば、回転軸より5cm離れた作用点にかかる2gの負荷を動かせる力も同様に10g・cmです。

■実際に測定するトルクの種類
一概にトルクと言っても様々です。モーターが回転中に発生するトルクもあれば、回転を始めるときのトルクもあります。
しかし、回転中のトルクを測定することは困難ですよね。単にモーターの回転数ならば、電流を測ったり又は回転そのものを測定したりして把握する事が出来ますが、回転中のトルク測定は、そうは行かないようです・・・。
ですが、機材を持たない自分にも測定可能なトルクがありました。
それが、モーターが回転を始める時に発生するトルク、いわゆる「起動トルク」です。

■測定装置測定装置
測定に使用する装置(と言う程でもないですが)は、スイッチ付きの電源と巻上げ輪、受皿、ハカリ、それとオモリ、程度でOK。要は、モーターに巻上げ輪を装着してオモリを吊り下げ、どのくらいのオモリまで吊り上げられかを測定してやるわけです。


■測定方法
オモリを吊り上げてモーターのトルクを測定する方法は以下の通りです。
まずは右図のように測定装置を設置しておきます。

  1.使用バッテリーは、単3ニッケル水素電池(Panasonic製2300mAh)×2個とする。
  2.電池は1セル当たり1.3V、2個で2.6Vになるようにしておく。
  3.巻上げ輪には、ミニ四駆用のホイールを使用(直径1.74cm)。
  4.巻上げ輪に吊り糸を介し、受皿を設置。(あらかじめ受皿+吊り糸の重さを量っておく)
  5.受皿にオモリを載せる。
  6.スイッチをONにして、巻上げ輪が1回転以上巻上げられる最大のオモリを探し出す。
  7.吊り上げされたオモリの重さに、吊り糸および受皿の重量を足したものを吊上げ重量とする。
  8.回転軸から作用点までの距離は0.87cm(=1.74÷2)で計算する。
  9.測定した吊上げ重量から、モーターのトルク(吊上げ重量×0.87)を算出する。
  10.巻上げ輪の重さは考慮しないものとします。


測定装置画像  測定装置動力部  使用電池

■測定結果
思いつく限りのモーターを片っ端から測定してみました。
基本的には未使用モーターを2個ずつ、所有の使用済みモーターがある場合は更に1個を計測してます。ラジカン・ノーマルのみ、未使用モーターを3個測定しました。また、入手事情から1個のみのモーターもあります。

※受け皿+吊り糸の重さは、測定の結果、2.1gでした。

 ++モータートルク(起動トルク)測定結果    ※オレンジ色は使用済みモーター
モーターの種類 用途 吊上げ重量
(g)
起動トルク
(g・cm)
新品/使用 一言コメント
ラジカン・ノーマル A ラジカン 27.8 24.2 未使用
ラジカン・ノーマル B 19.3 16.8 はずれモーター?
ラジカン・ノーマル C 24.9 21.7
ラジカン・ハイパー 45.8 39.8 1個のみにつき参考数値
トルクチューン A ミニ四駆 69.5 60.5 今回最高値!
トルクチューン B 66.8 58.1
トルクチューン C 59.2 51.5 使用済 板ブラシ寿命?
レブチューン A 46.6 40.5 未使用
レブチューン B 45.8 39.8
レブチューン C 49.9 43.4 使用済 未使用よりなぜ高数値?
アトミックチューン A 63.5 55.2 未使用 安価で高数値
アトミックチューン B 60.5 52.6
ハイパーダッシュ2 A 64.6 56.2 安価で高数値
ハイパーダッシュ2 B 62.8 54.6
ハイパーダッシュ2 C 61.1 53.2 使用済 板ブラシ劣化?
プラズマダッシュ A 62.5 54.4 未使用
プラズマダッシュ B 59.1 51.4
プラズマダッシュ C 58.5 50.9 使用済
ゴールドチャンプ A 37.0 32.2 Bよりも慣らし大の影響?
ゴールドチャンプ B 33.3 29.0 Aよりも慣らし小の影響?
ウルトラダッシュ A ラジ四駆 61.1 53.2 未使用
ウルトラダッシュ B 64.5 56.1
ウルトラダッシュ C 62.5 54.4 使用済
スプリントダッシュ A 61.0 53.1 未使用
スプリントダッシュ B 66.4 57.8 当たりモーター?
パワーダッシュ A 68.5 59.6
パワーダッシュ B 68.5 59.6 バラツキが少ない
ハイスピン A クラッシュギア 47.2 41.1
ハイスピン B 39.8 34.6
ハイダッシュ A 52.3 45.5 高数値を期待したが
ハイダッシュ B 54.1 47.1
メガスペック A 61.5 53.5
メガスペック B 64.5 56.1
メガスペック C 55.5 48.3 使用済 はずれモーター?
マブチFA-130 工作用 37.1 32.3 ノーマルより高く意外!?
ミニッツ・ノーマル A ミニッツ 31.3 27.2 未使用
ミニッツ・ノーマル B 30.8 26.8
ミニッツ・ノーマル C 35.6 31.0 使用済 もともと好調だったモーター
ミニッツXspeed A 58.6 51.0 未使用
ミニッツXspeed B 57.9 50.4
ミニッツXspeed C 62.2 54.1 使用済 アタリが取れ慣らし良好?
モーターの種類 用途 吊上げ重量
(g)
起動トルク
(g・cm)
新品/使用 一言コメント

※トルク=吊上げ重量×作用点までの距離(=0.87cm)
 吊上げ重量=最大吊上げ重さ+吊り糸及び受皿の重さ(=2.1g)
※起動トルク欄において、50g・cm以上は太字、さらに55g・cm以上は青字、60g・cm以上は赤字としました。

■結果まとめ
次に各種モーターの起動トルクの平均を、次表にまとめてみました。(※この表のトルクを最終の値とします)
ただし使用済みモーターに関しては、それぞれ使用状況が異なるため単純に比較は出来ないと考え、新品モーター2個の平均としました。また、ラジカン・ノーマルに関しては新品3個の平均、ラジカン・ハイパーは新品1個のみ、ゴールドチャンプとマブチFA-130は使用済みモーターの結果となってますが、あらかじめご了承下さい。

 ++モータートルク(起動トルク)測定まとめ    ※オレンジ色は使用済みモーター
モーターの種類 用途 起動トルク
平均(g・cm)
ノーマル比 新品/使用 順位
ラジカン・ノーマル ラジカン 20.9 1.0 未使用 17
ラジカン・ハイパー 39.8 1.9 12
トルクチューン ミニ四駆 59.3 2.8
レブチューン 40.2 1.9 11
アトミックチューン 53.9 2.6
ハイパーダッシュ2 55.4 2.7
プラズマダッシュ 52.9 2.5
ゴールドチャンプ 30.6 1.5 使用済 15
ウルトラダッシュ ラジ四駆 54.7 2.6 未使用
スプリントダッシュ 55.5 2.7
パワーダッシュ 59.6 2.9
ハイスピン クラッシュギア 37.9 1.8 13
ハイダッシュ 46.3 2.2 10
メガスペック 54.8 2.6
マブチFA-130 工作用 32.3 1.5 使用済 14
ミニッツ・ノーマル ミニッツ 27.0 1.3 未使用 16
ミニッツXspeed 50.7 2.4

※起動トルク欄において、50g・cm以上は太字、さらに55g・cm以上は青字、60g・cm以上は赤字としました。

■考察
++高起動トルクを発生するモーターは?
測定結果まとめから、起動トルクが最も高いモーターはパワーダッシュとなりました。また、トルクチューンも2位とはいえ、パワーダッシュに匹敵する数値であり、なおかつ個々の測定値では唯一の60g・cmを超えるトルクを発生している事からも、トルクチューンの起動トルクの太さがうかがえます。3位には、回転型モーターのスプリントダッシュが入ってきました。おすすめモーターとしてよく挙げられるハイパーダッシュ2も、4位(55.4g・cm)とまずまずの起動トルクを発揮してます。

++クラッシュギア用モーター
また、5位(54.8g・cm)のメガスペックも、ハイパーダッシュ2なみの高起動トルクを発揮しつつ、ハイパーダッシュ2よりも回るモーターですので要チェックモーターです。ただし、クラッシュギア用モーターには多少のバラツキがあるようにも感じました。意外だったのが、ハイダッシュモーター。もっと図太いトルクを発生する事を期待していたのですが・・・。

++意外にも
そして、数値を見ただけではパッとしませんが、ラジカン・ノーマルより高い起動トルクを発揮しているのがマブチFA-130。ノーマルモーターの1.5倍(32.3g・cm)の起動トルクです。これだけでは何て事はないのですが、このモーター、非常に安価なのです。(ハイパーダッシュ2の半額ぐらい?) リーズナブルなのにノーマル1.5倍! ブラシの耐久性が低いのだけが難点です。

++モーター特性がはっきりと
トルクチューン、アトミックチューン、レブチューンは、同クラスのタミヤ製モーターであり、レブチューンは回転型、トルクチューンはトルク型、アトミックチューンはバランス型となってます。今回の測定で、そのモーター特性がハッキリと現れました。この3つのモーターを比較した限りでは、トルクと回転数は相反する要素である、と言えそうです。ただし、高回転モーターの中にも高トルクを発揮しているものもあることから、モーターの性能を決定する他の要素により、トルクを発揮させているのでは考えられます。

++板バネブラシ
130クラスモーターに使われているブラシには、大きく分けて2種類あります。ノーマルな板バネブラシと、カーボンブラシがそれです。板バネブラシは耐久性に乏しく、長時間使用すると磨耗によりブラシが破損します。こうなると、トルク・回転数ともに低下してしまいます。
計測結果におけるトルクチューンCは、おそらくこの影響が出始めていると考えられます。もちろん、カーボンブラシにも磨耗による性能低下はありますが、板バネブラシに比べると寿命は長いです。

■測定結果の利用について
起動トルクは、静止しているモーターが回り始める時のトルクであるため、起動トルクが高いモーターほど発進加速(出だし)が良いと考えられます。ただし、モーターには様々な特性があり、起動トルクが高いからといって回転中のトルクまで高いとは限りません。つまり、発進加速が良くても高速の伸びがないとか、発進加速は悪いが回り始めてくるとトルクが出てくるとか・・・考えられるわけです(発進加速が良くて高速の伸びがあれば理想ですが)。

また、実際には基盤を介してモーターを使う事になりますので、RCに載せた時も同じ様な起動トルクを発生するとは限らない事をご承知下さい。(特に、高回転・大電流モーター) この点をふまえた上で、モーター選びの参考として頂ければ幸いです。
さらには、測定サンプル数が各種2〜3個と少なく、数値にバラツキが多少見られること、測定誤差の関係からも、数値は参考程度にお考え下さい。
Home  実験室Top  掲示板