古代守がヤマト艦長!――もう一つの『ヤマトよ永遠に』

昔YouTubeで古代守がヤマト艦長席についているサムネイル画像を見たのがきっかけとなって,松本零士版の『ヤマトよ永遠に』があることを知った(クレジットによると役どころは「総設定デザイン・監修」).

松本零士といえば,『永遠』公開後まもなく発売された豪華本で,松本零士によるプロット案が収録されていたのを思い出す.うろ覚えだが,10〜20年後に設定されていたその筋書きは,主人公の老けや病,退廃的な文明に対する虚無感からくる暗さに満ちていたように思う.それでもさすがというべきか,その独特な暗さの中に不思議な魅力があり,その豪華本の中では唯一繰り返し読んだコーナーだった.

今回紹介するのはそれとは全く別物で,ゲーム機PlayStation2用に発売されたゲームソフトのバージョンだ.ゲーム機に無縁な私は,今の今まで,こうしたゲームソフトのアニメ映像というのはちゃちいCGや本編の名場面の描き直し程度だと思っていたのだが,その思い込みが全く見当違いであったことを思い知らされた.

まず,キャラクターは松本カラーで描き直されており,主だったところはオリジナルと同じ声優も使っていて,決していい加減な作りではない.松本零士の絵は古すぎで21世紀にはとても通用しないと思っていたのだが,これが不思議とはまっていて,オリジナルより細面になって兄・守に似た古代進はじめ,私がなじみのある第1作〜完結編のころの絵と比べて洗練されているとすらいえる.(←と書いてから,私自身の感性が20世紀のものだということに気づいた.)たしかにあくまでも戦闘シーンを扱うゲームの前後の状況説明という性格上,ちゃんとしたセルアニメは一部で,あとは簡単なCG映像に会話がかぶさる紙芝居のような構成が多いのだが,その筋書きは実によく練られている.(しかも,要所要所ではちゃんとオリジナルと同じBGMを使っていて,往年のファンとしては心をかきたてらる.)

そして「古代守が艦長席」ということにも象徴されるように,ストーリーの根本部分さえ『ヤマトよ永遠に』とは大幅に異なるのであるが,その改変は,オリジナルが好きな私でさえ本作のほうが好ましいと思えるものだった.

まず全体構成としては,次の三作からなる.
・宇宙戦艦ヤマト イスカンダルへの追憶(2004)
・宇宙戦艦ヤマト 暗黒星団帝国の逆襲(2005)
・宇宙戦艦ヤマト 二重銀河の崩壊(2005)

そしてストーリーだが,当然ながらプレーヤーの進め方次第でいろいろ変わるのだろうが,YouTubeからわかる範囲で紹介する(以下,ネタばれあります).


『イスカンダルへの追憶』

暗黒星団帝国編三部作の第一作は『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』に対応.『新た』との決定的な違いとして,最後にイスカンダルが自爆することはなく,ヤマトとデスラーの協力によって敵の要塞ゴルバを倒す.『新た』では古代守が赤ん坊のサーシャを抱えてヤマトに到着したあとイスカンダルがゴルバを巻き込んで自爆して終わりだが,本作では,真田の発案でデスラーがガミラスが誇る重力制御技術を応用したマイクロブラックホールを使ってゴルバの動きを止め,許された短い時間の間に,ヤマトの攻撃によってゴルバを撃破する.よって,イスカンダルが消滅することもなく,スターシアも生き残る.

その他,いろいろ細かい設定が追加・変更されているのだが,それがいちいちもっともらしい.

・デスラーからのイスカンダルの急を知らせる通信に超ワープ技術の情報が含まれていた.ただし,通信内容にノイズがありそのままでは使えないので,大山トチローがタイタンで発掘・改造した古代守の駆逐艦「ゆきかぜ」による曳航式のワープで実現する.
・太陽系では当時白色彗星帝国の残敵掃討中だった.
・暗黒星団帝国の採鉱を発見したときのデスラーは大マゼラン各地からの合流を待っていた.
・イスカンダルはワープするのではなく,主星に向けて落下していき,別の惑星アスタルとの衝突軌道に乗ってしまう.デスラーは暗黒星団帝国艦隊を背にしながら無防備になること覚悟でデスラー砲を三連射してアスタルを破壊することでイスカンダルを救う.
・タランがサファイア戦線跡で激戦の末入手した超質量物質を使ってマイクロブラックホールを発生させ,イスカンダルの主星への落下を食い止める.
・ヤマトは単艦でなく艦隊を率いてイスカンダルに向かう.
・イスカンダルに向かう途上のヤマトが七色星団で暗黒星団帝国の空母艦隊に待ち伏せされる(もちろんこのへんはゲームのための設定だろうが,筋運び上も違和感はない).
・イスカンダルを脱出した古代守がヤマトの艦橋に到着したとき,スターシアを伴っていないのを見たデスラーが,「やはり.私でもそうするだろう」とコメント.
・ゴルバに対する勝利後,地球側が伝えた理論でイスカンダリウムを組成変更して暗黒星団帝国から狙われないようにした.
・スターシアは滅び行くイスカンダルに残るが,娘サーシアのために守は地球に帰らせる.
・古代とデスラーは宇宙空間ではなく(!)イスカンダルの海上で対話する.
・ヤマト乗組員とガミラス兵が協力するカットがある.


『宇宙戦艦ヤマト 暗黒星団帝国の逆襲』

(前略)イカロスから出発したヤマトは,オールトの雲でトチローの乗るゆきかぜと合流.ゆきかぜを追っていた敵空母を撃破する.雪のことを思い出して落ち込む古代に,澪がサーシアだと名乗り出る

シリウス星系で,ヤマトは山南艦長・古代守らが乗った「しゅんらん」(「アンドロメダ」の発展みたいな艦形)率いる第七艦隊と遭遇.しゅんらんは連続ワープのテストをしているうちに通信不能になり,しかも暗黒星団帝国に発見されて小惑星帯に追い詰められてしまったのだ.守はイスカンダル星にやってきたのと同じ敵であることを認識したが,その暗黒星団帝国によって地球が占領されていることなどは知らなかった.一方,ヤマトは敵母星の正確な位置は知らずに出撃してきたのだが,「しゅんらん」がたまたま敵のワープアウトを正面から観察したデータをもっていたので,それをもとに敵母星の方向を特定できた.第七艦隊の動ける艦がヤマトに合流し,指揮はヤマトが取ることになる.

山南に言われて古代守がヤマトに乗り込むことになる.ヤマトのブリッジに到着した守はトチロー,真田らの主導でみなの賛同を得てヤマトの艦長に就任する.古代は銀河系の外に出た感慨を兄と語り合う

その後の中間補給基地の撃破からゴルバの大群に包囲されるまでに至る行動もゴルバ群のグロータス准将と前線の艦隊を指揮する若くて有能だが高慢なミヨーズ,中間基地のグノンの確執なども交えて丁寧に描かれている.暗黒星雲の中心部にある巨大ブラックホールの近くでの戦闘でミヨーズを倒すが,しゅんらん(別バージョンでは女性パイロットの椎名)がブラックホールのシュヴァルツシルト半径の内側に捕らわれてしまう.光でも脱出できないとあって絶望しかかるが,相原の発案で瞬間物質移送器を応用して助け出すことに成功する.

地球では暗黒星団帝国の情報将校アルフォン少尉に捕らわれた雪は,パルチザンに加わっていた北野と接触して特殊周波数の通信機を渡すことに成功する.いつしか北野はパルチザンの優秀な指揮官に育っていった.

波動エネルギーとの誘爆のおかげでゴルバ群を殲滅することができたヤマトは暗黒星雲を抜けて白色銀河に到着する


『宇宙戦艦ヤマト 二重銀河の崩壊』

『永遠』では暗黒星雲を抜けたヤマトがあっという間に敵母星に到着する印象だが,本作では広大な白色銀河の中,敵母星を求めてやむなく罠と知りつつ敵艦隊のワープ航跡を追っていく様子などが描かれている.一方,暗黒星団帝国側もグロータスの旧友のサーグラス准将にサーダ自らが命じてヤマトを攻撃させる事情が段階を追って描かれている.サーグラスは麾下の艦隊がヤマトに敗れると自決しようとするが,サーダに慰留され,帰還を命じられる.ヤマトを母星から十分引き離す役は果たしたので,帰還の際のワープではワープの痕跡を消す処理をした.

印象的な番外編というべきなのがStage 6.本作では『永遠』の加藤四郎は登場せず,パート1からの生き残りの山本がコスモタイガー隊の隊長となっており,『新た』の坂本や新キャラクターの女性パイロット椎名がその配下にいる.コスモタイガー隊が偵察に出たとき,山本と椎名の機が敵爆撃機編隊と遭遇し,単機これを撃滅,さらに浮遊惑星のマグマの噴火を利用して敵艦まで撃破するが,椎名は重傷を負ってしまう.敵との遭遇前,椎名はレーダー士志望だったが,白色彗星との戦闘時に見習いとして乗り込んでいたパトロール艦が戦闘機隊に救助されてパイロット志望に変更したと話していた.山本は坂本に確認して,そのパトロール艦を救助したコスモタイガー隊が山本の隊だったと知り,医務室に急ぐのだった.

地球に残されたパルチザンの活動も詳しく語られる.雪の情報提供は察知されたらしく継続できなくなったが,別の情報源から兵器工場の情報を得て破壊し,奴隷として働かされていた地球人を解放したりする(「参謀長」も同行して活躍!).たまたま雪を伴って視察中だったのに阻止できなかったアルフォンは総司令官カザンに断罪される.ヤマトの活躍で軌道上の艦隊が援軍に割かれて減っていることにも勇を得て,パルチザンは司令部に進入して総司令官カザンの暗殺に成功.指揮系統が瓦解した暗黒星団帝国では地位を剥奪されかけていたアルフォン少尉がメトロポリスの臨時司令官にされた.アルフォン少尉は古代のことを忘れようとしない雪を解放することにし,自分を倒すことができれば重核子爆弾の秘密を教えると言った.

回り道をしたヤマトだが,ようやくガス球殻に隠れていた恒星系とその母星に到達するが,それは地球にそっくりだった(大陸はもちろん,遊星爆弾や白色彗星による攻撃跡もある).上陸した古代らは聖総統からそこが200年後の地球だと聞かされる.いったんは地球に帰ろうとするが,持ち帰ったグラスや土が銀河系には存在しない,波動融合反応を起こす物質だとわかった(「考える人」は出てこないし,そもそも太助は上陸チームにはいっていない).200年後の地球という話が嘘だとわかり,改めて敵母星に向かう.その背後から,無限ベータ砲を備えたサーグラスの超弩級戦艦率いる艦隊が迫る.波動砲で敵を葬ったものの,その影響で敵母星は崩壊する.

敵母星に残ったサーシアから通信がはいり,敵の内情を探るために残ったことがわかった.地球ではパルチザンが重核子爆弾の確保と地球側の起爆装置の解体に成功し,雪が重核子爆弾内の回路を使って通信してきた.だがヤマトは敵母星からの攻撃で被弾し,守が重傷を負ってしまう.

聖総統スカルダートは重核子爆弾を起動しようとするが,サーシアが回路を破壊していた.ヤマトはゆきかぜのみを伴って南極からテザリアムに進入し,その間,山南艦隊は北極の出口の確保に当たる.だが,ヤマトが突入してみると,中心部の水晶都市にはバリアがめぐらされていた.波動融合反応への対策が施されていたのだ.外部からエネルギーを受け取るエネルギー伝達ユニットを一つ一つ破壊する.その過程でゆきかぜは被弾して水晶都市に墜落する.

エネルギー伝達ユニットを全部破壊してバリアが解除されたところで波動砲を発射することになるが,まだサーシアが残っている.父・守はサーシアに呼びかける.「死ぬな,共に生きて帰ろう.イスカンダルへ.」サーシアは意を決してゆきかぜに向かって走る.

真田はゆきかぜを介してコンピューターウイルスを送り込んで敵のシステムを混乱させる.古代はなおも波動砲発射をためらうが,守がサーシアを信じろと言って発射.サーシアもヤマトと同調した「ゆきかぜ」のワープで助かる.そして古代守・サーシア父娘はスターシアが待つイスカンダルに帰っていく.(『永遠』と同じくサーシアが助からない別バージョンのエンディングもあるが,波動砲発射をためらう古代,真田を押さえて実父の守が引き金を引くシーンには胸に迫るものがある.)


『新た』でせっかく地球に戻った古代守が『永遠』で活躍することもなくあっけなく自爆してしまったことに唖然としたファンにとって,守の活躍とこのエンディング(大団円版)だけでも感涙ものだ.スターシアの自爆,守の自爆,サーシアの自己犠牲といい,どうもオリジナルのヤマトは簡単にキャラクターを死なせすぎる.古代・雪が特攻する『さらば』に対して,両名が生き残る『パート2』のラストも松本零士の主張だったと聞く.どうも松本カラーのほうが私の性に合うようだ.

ゲームを離れて完結した映像作品として見られる『永遠』のリメイク版としてぜひDVD化してほしいものだ.


私の『宇宙戦艦ヤマト』