ビークル・ダイナミクス入門 「オーバーステア・ニュートラルステア・アンダーテスア」

 text & illustration by tw (Web公開日:2012. 5.20日)

 理想のマシン・セッティングとは何か? 今回のテーマは、「ビークル・ダイナミクス」(=車輌運動力学)の考察だ。

 まず最初は、車体とタイヤの純粋な力学関係を明らかにする為に、空力ダウンフォースを撤去したマシン状態から考察を始めてゆこう。





図の は、車体の重心位置を示す。

停車状態では、タイヤには地球の重力で車重の垂直荷重がかかっている。
左図には、前後重心位置だけが異なる3種類のマシンを用意した。
(3台とも車輌自体は同一で、バラストを積む位置で重心が異なると考えよう。)

このページでは、装着するタイヤは4輪全て同じグリップ力を持った物と仮定する。
(後輪にもフロントタイヤを着用させた様なマシンと捉えよう。)

そして、マシンは性能の限界速度でコーナリングをし続ける状態とする。

ドライビングのテクニックで、マシンの前後荷重移動は可能だが、ここではそれは行わず、
車速は一定のまま、円形のサーキットを走っている状態としよう。

その場合、左図に示した、重心が前寄りの車と、中央の車と、後ろ寄りの車、
どれがオーバーステアで、どれがニュートラルステアで、どれがアンダーテスアだろうか?


とりあえず、ここでは4輪全てが同じグリップ力で、空力ダウンフォースも無い状態なので、
重心がホイールベース(=前輪車軸と後輪車軸の長さ)
の中央にある車がニュートラルステアである事は間違いないだろう。

しかし、重心が前寄りの車と、後ろ寄りな車とでは、果たして……??




コーナリングで発生する遠心力(=横G)は、車体の重心へ作用する。そしてコーナリング中、タイヤは横Gに耐えている。
重心が前寄りの車では、地球の(縦方向の)重力で前輪の荷重が大きいが、同時に、横方向のGもフロントへ強く掛かるのだ。
この時、前輪は横Gにグリップの限界まで耐えているが、後輪は横方向へのグリップにまだ余裕を残している。
車重は同じままだが、車速が高い程に横Gは強くなってゆくので、高速になる程アンダーステアが強くなってゆく。

(このページのここまでの最終更新日: 2012. 5.20日)

(2012. 6.29 更新)




左図の3車は、車体前後重心位置をホイールベースの中間とし、
空力ダウンフォース発生中心位置だけを前寄り、中間、後ろ寄りと設定したマシンだ。

低速域では、3車・上から順に、弱オーバー、ニュートラル、弱アンダーとなるが、
空力ダウンフォースの発生量は、おおまかに云うと車速の二乗で増加する為、
高速域では、3車・上から順に、強オーバー、ニュートラル、強アンダーとなる。


オーバーステアの車では、ステアリングの操舵角に応じて前輪が強く作動するが、
後輪が常に横滑りし易くなってしまうデメリットがある。
これでは後輪のグリップ性能をフルに発揮したコーナリングとは出来ない。
そしてブレーキング時の不安定さや、
トラクション(=駆動輪が路面にグリップして加速できる力)の不足につながる。

アンダーステアの車ではこれらと逆の特性となるが、
しかしその場合は前輪のグリップ性能をフルに発揮したコーナリングとは出来ない。

4つのタイヤがある車では、4輪全てのグリップ力をフルに発揮した状態が、
最速ヘ最も近い車輌特性と云えるだろう。


(このページの最終更新日: 2012. 8.31金)

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