空力特集

「空気抵抗の色々」 text & illustration by tw  (Web公開日:2012. 4.12木)

我々の身の周りにごく自然とある「空気」。

過去N社にて空力を担当された高木通俊教授のお話では、
「直径1mmの針金」と、「厚み8mmx前後長46mmの翼」
の空気抵抗は同じ値になると云う。

そしてクルマの速度とサイズの世界では、
空気抵抗の内訳は、形状(圧力)抵抗9割、摩擦抵抗1割との事だった。

では高木教授のお話はここまで。

ここからは筆者が得て在る知識から、空気抵抗について考察してみよう。

 1mm径の棒と、8mm厚の翼の空気抵抗は同じ!




閉じられた空間では、
空気は圧縮される。

開かれた空間では、気流速度が音速未満ならば、
圧縮されずに「速く」流れる。

(尚、空気力学の世界では、空気の高圧を正圧と呼び、低圧を負圧と呼ぶ。)



そもそも「空気抵抗とは何か?」と根本的な事を問えば、それは
「物体が空気中を進行している時に、空気を押しのけた際に費やしたエネルギー」である。

また、物体が移動していなくても「風」に吹かれれば、その物体は空気抵抗を受ける。

つまり空気抵抗は、「空気と物体との相対速度」で決まるのだ。これは「風洞実験設備」で利用されている。





ところでクルマの「最高速」とは何だろうか?

それは、
リミッター装置無しで、機械(物理)的な回転速度の上限内の状態であれば、
クルマの最高速とは「パワーユニットの出力と走行抵抗がつり合った状態」の事だ。



  車の走行抵抗の内、空気抵抗は速度の二乗で増加する。

  よって乗用車でも、高速道路などでは空気抵抗の値が 燃費効率に影響する。




空気抵抗の正体は「圧力抵抗」と「摩擦抵抗」だ。

更に空気抵抗を種類別けすれば、形状抵抗、誘導抵抗、内部流抵抗、干渉抵抗となる。



「形状抵抗」は、その名の通り気流が流れ易い形状か否かの事で、
「物体の前後にかかる圧力抵抗」+「物体の表面の摩擦抵抗」となる。

空気は「圧力の高い所」から「圧力の低い所」へと流れる。

ただし、空気には水の7倍もの 粘性 があると云う。


右図で気流の状態をイメージしてみよう。
ベルヌーイの定理上、「物体の断面が最大厚」となる箇所が「最速の流れ」となるので、
球形の後半では、流速が低下し、圧力が上昇し、粘性の影響で気流が剥離する。

空気の流れが剥離すると、
球体は「後部の流れなくなった空気の塊を引きづりながら」進まなければならず、
これが非常に強い負圧の抵抗となるのだ。

この空気の塊は「ウエイク」と呼ばれる。


通路の先が開いていて、気流が剥離しない形状の通路なら、気流は圧縮されない。

この通路では、最も狭い箇所で、最も速く流れ、最も低圧となる。





しかし球体では気流が剥離してしまう。
原因は、流体のエネルギーが粘性に奪われるからだ。





「誘導抵抗」は、リフトやダウンフォースがある場合に生じる。

翼(ウイング)の仕組みでリフトやダウンフォースを発生させた場合、
翼の形状によって(結果的に)、空気の位置(=高さ)を 移動(=誘導)させている。
(右図) この空気の上下位置を移動させるにあたって費やしたエネルギーが誘導抵抗だ。

右図の2次元的なウイングの場合、
「ウイング自身で生じさせた渦」と吊り合う形で、後方では「逆回転の渦」が発生し、
これでプラス・マイナス・ゼロとなって「誘導が終結」し、静止した大気圧へと戻る。




「内部流抵抗」は、車体のエア・インテークから排出口までに発生した抵抗で、
 ラジエーターの狭い通路を気流が通過する際に運動エネルギーを消費した分が大きい。



「干渉抵抗」は、気流が物体の狭い通路を通過する際に生じる抵抗だ。



境界層とは、流体が持つ粘性の影響で、(右図)

空気が物体に触れた所でブレーキがかかって流速が低下し、
(右図ではオレンジ色の底板が“物体”)

更に、その流速が低下した気流に触れた周りの気流も流速が
低下してゆき… と云った具合の現象だ。





2枚の物体の間や、パイプの中を流れる場合、
成長した境界層同士が触れ合って更に流速が低下する。


その為、地面上を走る自動車用の風洞は、
ムービングベルトを備えていなければ正確なデータを得られない。

このムービングベルトは、車体モデル計測部の区間で、
気流と同じ速度で進む様に設計・制御される。



そしてダウンフォースを発生する車輌では、
負圧を発生する模型底面にベルトが吸い寄せられない様に、
ベルトの吸引装置も必要となる。




空気流の特性として、
物体の表面を「つるつる」にすれば摩擦抵抗は少なくなるが、流れの剥離は発生し易くなる。
物体の表面が「ザラザラ」の方が圧力抵抗を少なくできるが、摩擦抵抗は大きくなる。

このザラザラによる圧力抵抗軽減の現象は、物体の表面に小さな凹凸を設ける事で、
意図的に小さな渦流を作り出し、抵抗となる大きな渦の発生を抑制するものだ。

既述の通り、クルマの環境では圧力抵抗が9割で摩擦抵抗が1割なので、
空気抵抗の軽減の為には、気流剥離の軽減を優先した方が有利である。







空気抵抗の値は、地上の「どの高さに居るか」でも変わってくる。
大気は地球の引力で留められている為、高地では気圧が低くなる。
気圧が低ければ空気の密度も小さくなり、その結果、空気抵抗は小さくなる。(同時に空力ダウンフォースも小さくなる。)
これは気温の高低でも同じ事が起きる。

よく耳にするクルマの「Cd値」とは、「Coefficent Drag」の略だ。(=抗力係数、抵抗係数)



Cd値は「レイノルズ数」でも変化する。
レイノルズ数とは、「物体の大きさと流体の粘性」で決まる値で、
流体の粘性が、物体の周りの流れ方にどの程度影響するかを表す。

例えば「霧吹き」を使うと、微小の水滴がゆっくりと空気中を落下するが、この時のレイノルズ数は小さい状態だ。

自動車の場合、速度が時速50キロメートルから400キロメートルの範囲内なのであまり考慮する必要は無いかもしれないが、
スケールダウンした風洞実験モデルにおいてはレイノルズ数も計算に入れる必要がある。


(このページの最新更新日: 2012. 4.12木)
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